第四話
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(*˘︶˘*).。.:*
すっかり塞ぎ込んでしまった秋人の様子に兄たちは声をかけることが出来ずにいました。
【断ち切りの神】冬人
「駄目です……秋人は僕にも会いたくないと。
あんなに綺麗だった庭も今は荒れ放題でした。」
様子を見に行った冬人の言葉に、
兄たちも胸を締めつけられるような思いでした。
そんな時、
【巻き取る神】咲夜
「……なんか、
今回の事件、おかしくない?」
【断罪の神】真
「咲夜はどこか気になることがあったの?
よくある領地欲しさの裏切りじゃないの?」
【森羅万象の神】美咲
「今の現世ではよく起こってる事象だよね……」
咲夜
「そうなんですけど……。
全部が出来すぎているというか……。
要求を断ってから襲撃までの期間が、
あまりにも短すぎます」
【次代の紡の神】夏織
「そうなの?」
咲夜
「はい、兄様。
私は番と共に、人間として領地を治めていたので分かるのですが――
一つの領地を奪うとなれば、
周辺国への根回しや、新たな同盟の締結、
兵や物資の準備にも時間がかかります。
当然、動きが大きくなれば、
狙われている側にも何らかの情報が入る。
だから普通なら、
襲撃される前に何かしらの兆候を察知して、
対策を取ることができるはずなんです。
なのに今回は――
それが、あまりにもなかった」
【次代の紡の神】夏織
「……なら、少し調べてみよう」
【森羅万象の神】美咲
「それなら僕が、
地上の木々に聞いてみましょう」
【断罪の神】真
「なら僕は、
この時期にやって来た罪人の記録を調べてみます」
こうして兄弟たちは、
今回の出来事について調べ始めました。
そして、その結果――
番の死に至るまでの一連の出来事には、
写し人が裏で関わっていたことが判明したのです。
妻とその実家が、
初めから番の領地を狙っていたことに偽りはありませんでした。
けれど、
その欲につけ込み、
彼らを裏から焚きつけ、
本来ならばもっと長い年月を要するはずだった計画を、
異常なほどの速さで進めさせた者がいました。
それこそが――
写し人だったのです。
すべては、
番を追い詰めるため。
その命を危険に晒せば、
番を愛する秋人は必ず地上へ現れる。
写し人は、
そう考えていたのでした。
すべては――
秋人を、
地上へ誘い出すために。
兄たちは、
この事実を秋人へ伝えました。
すると秋人は、
ひどく取り乱した様子で言い返しました。
秋人
「ですが、兄様!
前に現れた写し人は、
確かに私が倒しました!
それなのに……
どうして、また写し人がいるのですか!」
取り乱す秋人を見かね、
側近が間に入ります。
側近
「秋人様、
どうか落ち着いてください」
それでも、
秋人の興奮は収まりませんでした。
そこへ――
父神がやってきました。
【現・紡の神】父神
「秋人、落ち着きなさい」
そう言って父神は秋人を抱きしめると、
落ち着かせるように、
その背中を何度か優しく撫でました。
やがて、
父神の腕の中で少しずつ落ち着きを取り戻した秋人。
そんな秋人へ、
父神は静かに語り始めました。
父神
「まず、秋人。
お前が以前倒した写し人は、
原初の写し人そのものではない。
私が創った始まりの人間は、
自らにも寿命という定めがあることを知り、
その肉体を永遠に維持しようとした。
けれど、それは叶わなかった。
始まりの人間の最初の肉体は、
遥か昔に朽ち果てている。
そこで彼は、
自らに代わる新たな肉体を作り出し、
そこへ己の魂を移す方法を編み出した。
それが――
原初の写し人だ。
原初の写し人とは、
始まりの人間が別の存在へ
変わったものではない。
肉体を取り替えながら、
今まで生き続けてきた――
始まりの人間、
そのものなんだよ。
そして原初の写し人は、
さらに自らを模した器を作り出した。
お前が倒したのは、
その複製の一つだったんだよ」
冬人
「え……。
じゃあ秋人が倒した写し人は、
原初の写し人が作った、
いわば分身みたいなものなんですか?」
父神
「そういうことになるね。
ただし、
原初と複製品はまったく同じものではない。
始まりの人間の魂そのものを宿しているのは、
原初の写し人だけだ。
他の写し人は、
原初から力と意思を与えられ、
その目的のために動く複製品にすぎない。
だから、いくら写し人を倒したところで、
原初の写し人が存在する限り、
この世界からその脅威が消えることはない。
これまでは、
原初の写し人もそれを理解していたんだろう。
随分と狡猾に行方をくらませていてね。
気配すら徹底して隠していたから、
こちらから辿ることもできなかった。
でも――状況が変わった。
向こうは向こうで、
秋人を見つけたことで、
自らの存在を隠すことに、
以前ほど気を張らなくなったのかもしれない。
そのせいか、
これまで完全に途絶えていた気配を、
今はこちらでも僅かに捉えられるようになった。
もっとも――
正確な居場所までは、
まだ掴めていないけれどね。
だから原初の写し人さえ倒せば、
残された写し人たちは、
自らを維持することができなくなる。
やがて動きを止め――
そのまま朽ち果てていく。」
秋人
「じゃあ……本当に……。
本当に、あの写し人は、
父様の力が欲しくて……。
父様の子である、
私の力が欲しくて――
ただ、それだけのために……。
私の番を……殺したのですか……?」
父神
「ああ……。
可哀想だけれど、
お前を地上へ引きずり下ろすために、
お前の番は写し人に利用されてしまったのだよ。
写し人は、
番を苦しめれば、
いずれお前が現れると考えていたんだろう。
だけど――
番を助けたあの夜から、お前は、
番の日々の姿を毎日見守ることをやめてしまっていた。
……写し人は、
そのことを知らなかったんだ。
だからきっと、
番の命が尽きるその瞬間には、
必ずお前が現れると思っていた。
けれど――お前は現れなかった。」
父神の話を聞いた瞬間、
秋人の胸に激しい後悔が渦巻きました。
自分がちゃんと見ていれば。
どれほど苦しくても、
毎日、番を見守っていれば。
番が危険な目に遭っていることに、
気づけたかもしれない。
助けられたかもしれない。
秋人
「許さない…………。
絶対に……許さない……!」
抑えきれなくなった秋人の神気が、
凄まじい怒りとなって空庭を震わせました。
父神
「秋人」
父神は、
そんな秋人の肩へそっと手を置きました。
父神
「お前が見ていなかったから、
番が死んだんじゃない。
そこだけは、間違えてはいけないよ。
悪いのは――
お前の想いを利用して、
あの子の命まで奪った写し人だ」
秋人
「…………父様」
父神
「そうだね……。
私も許せない。
だから今度は、
こちらから原初の写し人を捕らえよう。
写し人にしてみれば、
秋人が最後まで現れなかったことは、
大きな誤算だったはずだ。
だから向こうも、
疑い始めているんじゃないかな。
自分たちが狙っていたあの人間は、
本当はお前の番ではなかったんじゃないか――ってね。
だから今度は、
その疑いをこちらが利用するんだよ」
秋人
「利用するって……
どうやってです?」
秋人の問いに、
父神は優しく微笑んだ。
それは、
怯えさせないようにするかのような、
穏やかな微笑みだった。
父神
「それはね――
私自身が、
囮になるんだよ」
秋人
「え……父様がですか?」
父神は、
驚く秋人へ穏やかな微笑みを向けた。
父神
「そうだよ。
まず、お前には、
番の墓前へ行ってもらう。
長い間探し続けて、
ようやく見つけた番を失ったんだ。
傷ついたお前が、
せめて最後に番の墓前へ――と考えるのは、
何も不自然なことじゃない。
そして写し人が今も、
あの人間がお前の番だったのか疑っているのなら――
お前が墓前へ現れるかどうか、
必ずどこかで見ているはずだ。
番を失い、
打ちひしがれている我が子を慰めるために、
父親である私が地上へ降りるんだ。
向こうにしてみれば、
私の子であるお前の力でも十分だったはずだ。
ところが――
そのお前を待ち伏せていたところへ、
大本命である私自身が現れる」
父神の瞳が、
わずかに細められる。
父神
「ずっと欲しがっていた力が、
自分から目の前へ降りてくるんだ。
そんな好機を前にして、
果たして冷静でいられるかな。
おそらく――
なりふり構わず襲ってくるだろうね」
秋人
「ですが、父様……。
それでは、あまりにも危険です」
父神
「大丈夫だよ」
心配そうに見つめる秋人に、
父神は変わらぬ穏やかな笑みを浮かべる。
父神
「襲ってきたところを、
返り討ちにすればいい。
――みんなでね」
こうして――
父神をはじめ、
秋人や兄たちは、
原初の写し人を討つため、
ついに動き出したのでした。
長きにわたり、
肉体を替えながら生き永らえ、
その姿を闇の中へ隠し続けてきた――
父神が創りし、
始まりの人間であり、
すべての写し人の原点。
秋人と番の運命を、
悲劇へと導いた存在との戦いが――
いよいよ、
始まろうとしていたのです。
最後までお付き合いいただき、
ほんとうにありがとうございます!
次回もお付き合いいただけたら幸いです。
(人´∀`).☆.。.:*・゜




