40_神聖魔法を求めて11
「ラングインさーん、いらっしゃいますか~、コリーヌです」
「コリーヌか! よく来てくれた! 空いているから入っていいぞ」
ログハウスの中から声がした。在宅中だったらしい。
「とりあえず先に行って、みなさんの話をつけてきます」
そう言ってコリーヌだけ中に入っていった。
「というか、お前、どうやってきたんじゃ。先日から道にドルントが出たせいで、依頼を出しに行こうにも、どうにもできず困っていたのだが・・・」
「ああ、それで最近は荷物の運びの依頼がきてなかったのか。ドルントだったらさっき来る途中で倒したぜ」
「かなりの数がおったじゃろ、お前らで倒せる相手じゃないと思ったが、その様子、かなり無理をして振り切ってきたか?」
「あ、いや、あたしらというか、連れの方がほとんど倒してくれたんだ。出てきたドルントは全部倒しきったから、もう大丈夫だと思うぞ」
「連れとな?」
「そうだ。ラングインさんに会って話がしたいとかで、ギルドで依頼を出していた方がいたから連れてきたんだよ。会ってもらってもいいかい?」
「もちろんじゃ、ドルントを倒してくれたとなったら礼もせんとな」
「おーい、入っていいらしいぞ」
ドアが開いていたので声はだだ聴こえだったが、許可がでたのでぞろぞろと中に入る。
いよいよエルフと対面・・・・
「ドワーフじゃねぇか!」
出てきたのは綺麗な顔のエルフの王子様!なんかじゃなく、小汚い作業着を着て髪もぼさぼさ、そしてヒゲモジャののおじさんだ。身長は人間と変わらないがボテッとした作業着を着ているからか、伸び放題のモジャモジャヒゲのせいか、全体的にずんぐりむっくりに見える。髪もヒゲも濃い茶色だ。
「わしはれっきとしたエルフじゃぞ、耳を見てみない、長いじゃろ?」
たしかによく見ると長い耳がある、ぼさぼさの髪とヒゲにほぼ隠れてるけど。あとよく見ると目元は整ってるかな?
「客人よ。わしはラングイン=モリジローじゃ。ドルントがここまで来たのは初めてで困っておったところ助かった。礼を言う」
こちらも自己紹介し、そのまま家の中に案内され適当に座った。
「それで、わしに用とのことじゃったが国の騎士様方がどういうご用件かの」
「正確には国の騎士というわけではなくウィンガーラ家の騎士なのだが、まあそれはいい。こちらのお嬢様が色々エルフに聞きたいということでな」
「ああ、エルフ族は会ったことがないから会ってみたかったっていうのもあるんだけど、ラングインさんは魔法について詳しいか? 具体的には神聖魔法についてなんだけど」
「ふむ。おぬしら人族に比べると詳しいとは思うが、如何せん情報は古いかもしれぬ。わし自身は魔法が得意ということもないでの。国で学んだ時の知識であれば教えることもできるが、神聖魔法か。お嬢ちゃんは何が知りたいんじゃ?」
「習得方法だ。教会で聞いたときは神聖魔法が使える人から魔力を手に流して貰って自分の魔力を神聖属性にする感覚を習得していくっていうのを言われたんだが、それだとうまくできないから他の方法もあるんじゃないかって」
「わしも神聖魔法のプロというわけではないんじゃが、エルフの教会でやっていた方法も似たようなもんじゃったな。女神様の像と祭壇に祈りを捧げながら背中に対して神聖な魔力を流し込むことをしておったと記憶しておる」
「あんまし変わらないな。なにかこうヒントというかコツみたいなのは知らないのか? 魔力自体はこうやって集めれることはできるんだけど、これをこんな感じで白く変化させることができなくて」
「ふむ、できておるようじゃが?」
「ん?」
あれ?おかしい、できてる!?なんで!?
あれだけ、いくらやってもできなかったのに、どういうことだ。
「なんか、できちゃった」
「さすが、お嬢だな」
なんでお前が誇らしそうなんだよネス子。
「ふむ、子供ながらにできるとは。お嬢ちゃんはもしかして複数の生活魔法を使えたりするんじゃないか?」
「ああ、いくつか使えるぞ」
「ここに来る途中でドルントを倒してきたということじゃが、お嬢ちゃんも仕留めたのではないか?」
「たしかに一匹だけど自分で仕留めたよ」
「おそらくインドミナスロックだったのじゃろう」
「なんだそれ?」
「滅多にあることではないのじゃがな。普通は自身の魔力成長にあわせて修練を行って魔法を習得していく。じゃが、子供で極々まれにおるらしいんじゃ、才がありすぎるあまり魔力成長の方が追い付いていない場合に魔法そのものを習得はできても制御不能状態になり自分では使えるような気がするがロックされて発現しない。本来の自身が将来持つはずの基礎魔力量では足りているはずなのに子供時点の成長前の魔力量だと発動できなく違和感がでる。これがインドミナスロックという状態じゃ。一方で大人になると自分の魔力量のうち基礎魔力量の成長が終わる。その場合は同じように本来は習得できるくらいの力量になっても魔力が足りない場合は普通に足りていないだけじゃから違和感にはならないと言われておる。お嬢ちゃんはよほど才に恵まれておるし、基礎魔力量も高いのじゃろうな」
「ということは、さっきドルントを倒したことで魔力が強くなってロックが解除された?」
「そうじゃ、インドミナスロックの解除は自然と大人への成長を待つことか、魔物を倒して魔力をあげることじゃな。もちろん訓練に精を出して魔力を上げることもできるが、魔物を倒さない訓練では魔法習得や魔法最適化には非常に有効じゃが魔力は上がりにくいからな。ちなみに大人の場合はそれなりに才があるものが訓練だけを長年して魔力のほうがあまり強くならないが魔法自体は習得できたというようなケースが該当する。そちらはオルタロックと言って魔物を倒して自身の魔力をあげる必要がある。まあ冒険者だと、それだけ才があれば魔物も倒すしあまりこれに陥ることはないと思うぞ」
そうだったのか。ゲーム的に言うと訓練などで魔法の習得条件は満たしていたがレベルアップしていないのでスキルポイントが足りていなくて習得できてなかったということかな、で経験値を獲得してレベルアップできたからスキルポイントを振って習得できた。みたいなイメージだな。無駄に鑑定魔法とか習得したせいで使えなかったのか。
あと、私が使える感じがするのに使えなかったのは子供特有だったようだ。多分このまま待っていても年齢的な成長によってどこかのタイミングでは使えるようになっていたんだろう。
となるとゲームで使えていた魔法をさっさと使えるようにするには純粋にレベルアップの必要がありそうだ。
「さすがエルフですね。大学でもそのような話はでたことがなかったです」
「それはそうじゃろう。子供で魔法が使えるものなどそうそう居るものではないうえ、実際にインドルミナスロックになっておるものなどわしも初めてみたぞ。知っておいてもあまり意味のない知識じゃ。わしらエルフは教育の期間も長いからそのような素晴らしきムダ知識も広く教え込まれておる」
「なあ、大人もロックになるって言ってたけど、魔物を倒せばいくらでも強くなれるのか?」
「いや、基礎魔力量以外に魔物を倒しての伸びしろも限界値がある。限界がなければわしらエルフ族のような長命種は遥かに強くなっておるわい。わしだって無敵になりたいもん。じゃが、実際わしはあまり才能がなかったようで大した魔法は使えんし、魔物も倒せん。ただまあ個人差はあるが基礎量が多いものは伸びる分も多いぞ、冒険者ギルドでいうところの高レベルっていうやつはこの才能と運に恵まれてうまいこと魔物狩りを乗り越えてきた連中じゃ。お嬢ちゃんは人族だと10歳くらいか? その時点で魔法を覚えておるし、インドミナスロックまでかかったとなると、かなり見込みがあると思うぞ」
そうか、だいたいわかってきたぞ。
模擬戦とかの訓練をすることで習得した魔法の最適化とさらに次のステップに進むための修練をして、次の魔法を覚えれる習熟度になったら魔物を倒して魔力をあげでレベルアップする。これを繰り返すことで魔法やスキルは色々会得ができそうだ。才能があったらだけど。
少なくともわたしにはゲームで使えていた魔法を習得する分の才能は確実にあるんじゃないかと思う。
「結果的にに会いに来てよかった、ありがとよ、ラングインさん」
「役に立ててなによりじゃ」
ドルント達と戦ったのと、その後片づけもあったので既に結構時間がたっていたため、今日はこのログハウスに泊めてもらうことになった。
アニーには元々1日で終わらなかった場合はネードに泊まると言って出てきたので大丈夫だろうとのことだ。その後、コリーヌ達はドルントを再度掘り起こしてログハウスまで持ってくる作業をしていた。あとで時間をかけて、ここで解体して街にもっていくらしい。
夕食はその辺で狩ったらしいボアの肉に裏の畑で取れた野菜など、十分に豪華だった。備蓄食料の分もあったらしいが、ラングインさんも明日、私たちと一緒に街に行って買い物をして、そのままコリーヌ達に運んで貰うらしい。
「ラングインさんって何歳なんだ?」
「何歳じゃったかな。正確な数字は覚えておらんが330歳くらいのはずじゃ」
「それって爺さんなのか?」
「いやいや、まだわしなんぞ若造じゃよ。本国だと1000歳とかもおるぞ」
その後も珍しかったし質問をさせてもらった。他のみんなも興味津々で聞いていたけれどエルフについて色々分かった。
寿命はだいたい人間の10倍くらいはあって、成人するのが100歳らしい。
「そういやエルフは北連ってとこから出てくることがないって聞いたんだけど、ラングインさんはなんでここに住んでるんだ?」
「・・・・それには深い事情がある」
やば、地雷踏んじまったか。
「もしかして、追放・・・とかなのか?」
「いや、観光じゃ」
「ざけんなよ、なにが深い事情だよ」
「まあまあ、お嬢さんぷりぷりしなさんな。あれはいつだったかの80年くらい前かの。当時から観光でも国の外にでるような奴は珍しかったんじゃ。わしらはエルフの中でも変わり者、というかやんちゃ者でな、外も見てみたいと思う珍しい部類じゃった。そこで観光でも行くかということでこの国にたどり着いたんじゃ」
「わしらってことは一人じゃなかったのか?」
「おお、そうじゃ、夫婦できたんじゃ、当時わしの妻のメンエレラナがここのワインをえらく気に入ってな。しばらくここで楽しみましょうというので留まっておったんじゃ。じゃがある日・・・」
「今は一人ってことは、何があったんだ?」
「路銀が尽きたんじゃ、ずっと飲んで遊んでおったからな」
「心配して損したじゃねーか」
「そこでわしらは何かで金を稼ぐかと考えたんじゃ、ちょうどその時にこの森を見つけてな。ここの魔力は少し特殊な感じで流れておる。それに目をつけてここで黒ハーブを育てたらみるみる育ってな。あまりに儲かりすぎたからわざわざ家まで建てて大量栽培することにしたんじゃ。裏の畑はほとんど黒ハーブじゃ」
「それで住民登録もせず住み着いたと」
「まあ、本当はすぐに北連に戻るつもりだったんじゃけど、それがほれ、黒ハーブがあまりに儲かるものだから辞められず作っては街に持っていき需要の高い北連に卸して家族にも仕送りすることになった。そんなある日のことじゃ。妻が・・・」
「今度こそ何かあったのか!?病気とかか!?」
「他の所のワインも飲みたいから国内だけでも回って遊んでくると言い出したんじゃ」
「結局観光じゃねーか!」
「とはいえ、わしはこんな儲かる商売をやめる気になれんくてな。妻は稼いだ金をもって遊びにいってから帰ってきておらん。まあほんの30年くらい前じゃが」
「それ大丈夫か、離婚されてねーか?」
「国から出るときは一緒にと言っておったから大丈夫じゃろ、今もこの島のどこかにおるはずじゃ、いずれは戻って豪遊しながら子供も育てたいしな。わしらはまだ子なしじゃからの。子育てが始まると、まず国からは出れんしな」
なんでもエルフは子育てがかなり大変らしい。
寿命が人間の10倍なんだが成長速度も同じように遅いらしく成人とされる100歳まではずっと親がついて子育てらしい。赤ちゃんの期間だけでも10年以上あるとかやばいだろそれ。
そんな感じでエルフの国では子供向けの政策も他の国とは全く違う形でとられているから、外の国でまともに子育てするのは厳しいらしく、それもあり国から出る人は殆どいないんだと。エルフ以外と結婚しても子供もほぼできないみたいだし。
その後、神聖魔法についても聞いたが、別に教会に深く関わったことはないらしく、どんな魔法があるとかは教えてくれたが、具体的な話はでてこなかった。
・・・・・・・・・・・
深夜、ほとんどの者が既に就寝したが、シャチはまだ起きていて装備の整備をしているところだった。
「少しよいか」
「あら、ラングインさん。どうかしましたか?」
「あの元気な小娘のことじゃ、おぬしが保護者か?」
「いや、私は護衛としてついているだけで保護者ではないわ」
「そうか」
「なにかあるの?」
「いや、よもすると番人ではないかと思ってな」
「そんなわけないでしょ」
「わしが長年見てきた中でも、なんというか少し普通の魔力とは違う気がするんじゃ」
「それはそうでしょう、あなたも長年ウィンガーラに住んでいるのだから知っていると思うけれど、あの子はウィンガーラ本家のお嬢様だもの」
「そんなもんかの」
「そうよ、マリアンヌ様もそうだけどウィンガーラ本家っていうのはそれだけの家柄よ」
夜は更けていく。




