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36_神聖魔法を求めて7

 そうだ、確かバッキーのとこで墓参りした大きい5つの墓の一つがマセリカンナだったはずだ。多分、それなりに功績を残した人物だったんだろうな。


「この話は有名ですね。ウィンガーラの人は誰でも知っていますよ。突撃姫マセリカンナ様」


 自分の先祖なんだが、その愛称だと、どう考えても脳筋だったんだろうな。


「受付も済んだことだし、さっさと行きましょ、帰りの時間もあるからね」


 シャチに急かされて外に出る。ここに来るまで1時間ちょいくらいだった。日帰りでって考えると今日は騎士寮にも寄ったしあまり時間がない。滞在時間としては多分1時間かそこらで終わりだ。

 さっそく森へ向かう。明らかに開けた広い林道のような感じのところからスタートだ。入り口だけあって人通りもそれなりにある。みんな冒険者だと思われる格好をしていて、ほとんどが出てくる人だ。まあもう午後だから、今から森で狩りにいくなんてやつはいないんだろう。拡張バッグっぽいものを持っている人やコンテナを積んだ台車を引いている人もいる。


「じゃあ、森に入る前にフォーメーションを最終確認するわね」

「私が前を歩いて、お嬢をガードすればいいんじゃないか」

「相変わらずネッシーは馬鹿ね、スカウトの私が先行するに決まってるでしょ」

「す、すいません」

「こんな近場の森でしかも浅いところにいる魔物なんて素早くもないから、とりあえず前方を私が先行して、後ろにマリィちゃん、左右をネッシーとネイアで囲む形ね」

「前と後ろは大丈夫なのか?」

「ここの魔物くらいなら、私が見逃すことはまずないわ。あと一度通った後に後ろから突然出てくるということもないから大丈夫。特に冒険者が帰る時間だから後ろで何かあっても気づくわ」


 シャチは割とちゃんと考えてるんだな。こないだまで魔物の生態調査をしていたってことだったし、そういう面で優秀なんだな。


「今日はあくまで護衛付きで歩く訓練だからちょっと入って歩いたら帰るわよ」

「だとすると魔物も見えないかもしれないな」

「一匹くらい倒すとこ見たいぞ!」

「安全第一だからね、それに明日以降もここに来るわけだから少しずつ慣れて奥にいけば確実に見れるから今日は我慢よ」

「はーい」


 帰っていく冒険者を横目に見ながら前に進む。ここら辺の木は日本で見る普通の木より一回りくらいでかいかな? 周りも草が生えているが草の方は短くあまり育っていないようだ。

 その後もまっすぐ森を歩く、道は舗装こそされていないが、しっかり道になっていて幅も台車が通れるくらい広い、台車がすれ違いすることも可能だ。


 1kmくらい歩いたところで少し広い場所に出た。


「ここで少し休憩したら帰るわよ。ここからはまたフォーメーションを変えるわ。前がネッシー、後ろがネイア、横が私よ」

「えー、まだ魔物一匹も見てないぞ」

「明日もありますから」

「お嬢、あそこ」


 ネス子が指をさした方を見ると、冒険者の引いている台車の上のコンテナからひょこっとデカいキノコの頭が見える。


「倒したアルキダケですね。ほら魔物見れましたよ」

「生きてるやつが見たいんだよ!」


 結局、安全第一ということで、その日はそのまま帰った。


 翌日も同じくオーガ跡へ、昨日よりはだいぶ早く着いてそのままサクサク昨日と同じ広場まで到着した。


「今日こそ魔物をみるぞ」

「危険だからあまり奥には行きたくないんだけど」


 広場からさらに奥に喋りながら進む。


「そういえば、あのよくわからん昔話に気を取られて、この場所の情報あんまし聞いてなかったけど、この先にはなにがあるんだ? ネイアは前にも来たことがあるんだろ?」

「この先も森が続いているだけですよ。森自体は大地の魔力が強い場所なので開拓はできないですから、手付かずです。オーガがなんで出たのかはわかりませんが、オーガの集落があったところには記念碑がありますね」

「冒険者はどこで狩りをしているんだ?」

「ここから先は結構魔物がでますから、そこら辺で適当に森の中に入って狩っています。ただ、倒した魔物を持って帰るのが大変なので、この道沿いに近いところで狩ってるみたいですね。このまま林道を進むと記念碑に着きますけど、かなり歩きますよ。奥の方が魔物は出ますから野営して狩りをする人もいますね」


「そっか、じゃあ適当に道から外れて入るか」

「ダメに決まってるでしょう。そのまま道を歩きますよ」

「魔物を狩りに来ているわけじゃなくて、護衛訓練なんだからマリィちゃんも守ってもらうよう意識しないとだめよ」

「そうは言ってもハイキングしてるだけじゃねーか、さすがにこんなんじゃ緊張感でないぞ。それこそ危険度があがる魔物と対峙して実戦経験を積んだ方がいいと思う!そうしよう!」

「それはマリィちゃんが水月に入ったらね」


 シャチに一蹴された。まあ、流石にちょっとでも危険になりそうなことはできないか。

 ウィンガーラ家に生まれたものは否応なく水月にはいるらしいんだけど、それって実質的に就職だから大学を出てからの話らしい、つまりそれまでは訓練だなんだと言っているが家庭教師の延長なのだ。

 ある程度、自由にできるとすれば今度の遠出の時だな。とはいってもやらかすと視察禁止とか普通に言われそうだし、そういえば視察はこの3人以外にだれか来るのかな。こいつらだけだったらなんとでもやり込めそうな気もするけど。


「今日はこんなところかしら、時間的にはまだ余裕があるけれど、もう少し奥に行くのは明日にしましょう」


 そう言われて引き返そうとした時だった。


 ガサガサ


「ペ、ペェー」


 木の間から一匹の魔物が飛び出してきた。これが噂の森ペンギンだろう。眼光が鋭く目の上に平べったいが数方向に尖った緑色の角が生えている。前に水族館でみたイワトビペンギンの黄色い部分が大きい角に変わった感じだ。見た目でいうとそんな感じで角だけちょっと異質だがペンギンなので全然怖くない。大きさも目の前のやつはそれほど大きくなく全長80cmくらいかな。

 向こうも驚いたのかこっちを見ている。


「お嬢、後ろへ! すぐ倒します!」


 まあまあかわいいけど、魔物だから一応すぐ後ろにさがったのだが、今度は後ろから人の声がした。


「森ペンの大群です! 騎士様、お力をお貸しください!」

「まさか、あなた達、巣を荒らしたのですか?」

「ネイアはマリィちゃんの横へ、ネッシーは前で数を減らしなさい!」


 そう言うとシャチは素早い動きで木の上に登っていく、これがスカウトの動きか、すごいな。


「右奥から10体以上、左からも20体は来ているわ!」


 ドドドド


 ここからは見えないけど、多分、森ペンギンが押し寄せてきているのだろう、音がする。

 冒険者は4人組の若者だ。男二人に女二人、男の一人が台車と引いている。多分成人前後くらいだ。新米っぽいな。


 最初の一匹が足に力を貯めると、そのまま尖った嘴(くちばし)を前にして凄い勢いでジャンプ頭突きをしてきた。

 ペンギンがどうやって襲うんだと思ってたけど、嘴アタックか。一応、襲ってきたということで私も手元に剣を出して臨戦態勢で構える。


「ハァー!」


 向かってきたペンギンの嘴はネス子の大剣で完全に防がれた。さすがに弱い魔物らしいし剣を壊すような威力はないようだ。


「ふんっ」


 最初の一匹はそのままネス子に蹴り飛ばされた。


 ドドドド


 そして出てきた森ペンギンの大群。


「うわ、色んな色の奴がいるんだな」


 眼の上についている平べったい角は必ず緑というわけではないらしく、出てきたペンギンたちは色とりどりだ。大きさは若干の差はあれど最初見たやつとほとんど変わらない、


「ぺ、ぺ、ペ」

「ペェペェ」


 前はネス子一人、後ろは冒険者4人、シャチはまだ木の上、ペンギンたちも森から道にでてきた私たちを囲んできた。


「私は冒険者の援護をするわ! ネイアはそのままよ!」


 ペンギンの数で言うと前のネス子の方が数は多そうだけど。

 そう思っていたらネス子が魔力を上げ始めた。身体強化かな?


「極大斬(オーバースラッシュ)」


 魔力を帯びた大剣が横なぎに振るわれると剣本体の外側も魔力の拡張で一気にたくさんの森ペンギンたちが吹き飛んだ。

 後ろもシャチが次々に両手のナイフで仕留めていっている。


「あ!、あれは!」

「お嬢様!?」



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 さすがは3等といっても名高い水月の騎士様だ。冒険者とは強さの次元が違う。


 まだ名前も決めていない冒険者パーティのリーダーであるパーターはこの日、判断を誤った。

 冒険者ギルドで組んだ同い年の4人パーティ、全員がFランクに昇格してすぐだったので比較的弱い魔物を狩ろうという話になった。Fランクからは魔物が狩れる。そうなれば収入も大きくあがる。だから絶対に魔物狩りが良いということで話はついた。

 とはいえ、Fランクになったばかりで大した装備など全員もっていない、そんな状態では当然ギルドから依頼として出されるような魔物狩りは危険なので純粋に狩れば狩るだけ買取をしてもらえる弱い魔物を多く狩ろうと拡張コンテナを持ち込んでオーガ跡にやってきたのだった。

 最初は何も問題がなかった。出てくる魔物はアルキダケと森ペンギンだけで、どちらも買取対象の魔物だ。4人で来た以上、稼ぐのならそれなりに数をこなさいといけない。そんな焦りから道を外れた少し奥まで入っていった。

 さすがに道から離れすぎると倒した魔物の素材や肉をはぎ取っても置いている台車まで持っていくのが大変だ。だから奥まで行くのはやめようと最初に決めていたはずだったのに思ったよりペースが悪かったせいでそのまま入ってしまったのだ。なんせ昨日は野営までしている、できれば今日には帰路に着きたいが手元のコンテナはかなり余裕があった。


 何匹か森ペンギンを倒して肉と角をその場で解体した。あと2匹か3匹分くらいだったら持てるか?

 森ペンギンが奥に逃げるのが見えた。それを追ってしまったのだ。森ペンギンは基本的にそのまま襲ってくるのに、そいつらは逃げたのだ。なのに何も気にせず、あと数匹分だと追ってしまった。


 その先は森ペンギンの巣だった。元々群れやすい魔物だが、それでもここら辺のやつは2匹か3匹くらいで動いているのが多い、それが目の前には30匹ほどはいそうな群れが現れた。


「やべぇ!、さすがに無理だ!逃げるぞ!」


 とは言っても既に狩り終えている成果は置いていけない。林道までは戻れたので台車は自分で引くことにして他の3人が周りを囲んで石を投げながら逃げる。

 森の魔物は一定以上の範囲から外まではおってこないのが普通だ。なので逃げ切れるだろうと思ったのだが、意外に台車が重い。さすがに二日分だ。はぁはぁ、このままだと追いつかれそう。


 ここは森の中でも浅い場所だ。この時間なら既に帰り間際の他の冒険者もいるかもしれない。そうすれば助けを求められる。仮に追いつかれても森ペンギンでぐらいで死ぬようなことはないだろうとは思うが助けが来るまでに、それなりの怪我は確実にしてしまうだろう。誰か通りかかってくれ!


 本気でやばそうと思っていたら目の前に三人の騎士がいた。服を見ればすぐわかる。ロングサンドでは誰でも知っている水月の騎士服だ。なぜ、こんな初級冒険者の狩場に水月の騎士様がいるんだ?っと不思議には思ったが間違いなく俺たちよりは遥かに強いはずだ。


「森ペンの大群です! 騎士様、お力をお貸しください!」


 そこからは騎士様の無双だった。恐ろしい剣技であっという間に森ペンギンの群れは倒されていく。

 その時だった。


「あ!、あれは!」


 騎士様たちの中心にいた10歳かそこらだと思われる女の子が飛び出した。

 あぶない!と思ったがその女の子はあっという間にすり抜けて一匹の森ペンギンを両手で捕まえていた。


 既に全ての森ペンは倒されて残すは女の子が捕まえている一匹だけだ。


「お嬢、そいつも倒さないと」

「駄目だ! このトビーはうちで飼おう!」

「トビーってなんですか、もう名前つけちゃったんですか」

「こいつだけ、角が黄色でイワトビペンギンなんだ。だからトビーだ。トビーお前からも言ってやれ」

「ペ、ペェェエ」


 女の子に羽交い絞めにされて森ペンギンが苦しそうに鳴いている。子供なのに凄い力だ。あのまま絞め殺せそう。


「イワトビ?なんですかそれは? というかそいつも嫌がってませんか?」

「そんなわけない、ほら、こいつの目を見ろ、他の眼光が鋭かった奴と違ってうるうるしてるぞ! 私に助けを求めてるんだ」


 森ペンギンも苦しいと涙を流すんだろうか。


「いくらなんでも無理ですよ。ペット用の魔物は何代にもわたって品種改良されているんです。野生のは危険なんですよ。ほら、倒させてください」

「わかった! 家には連れて帰らないが見逃してやってくれないか。トビー、お前はどうなんだ?それでもいいか?」

「ペー」

「まあ、森ペンギンなんていくらでもいるから一匹逃がしたところで別に大丈夫だけど、多分離したら襲ってくるんじゃないかしら。仲間たちの仇だし」

「トビー! お前はそんなことしないよな?」


 ほらよっと、と言って女の子は黄色角の森ペンギンを離した。

 間違いなく襲ってくると思ったのだが、なんとその森ペンギンは話が通じたのか、トボトボと森の方へ歩き出した。


「トビー! やはりわかってくれたか、また逢う日まで強く生きるんだぞ!」

「ペッ」


 森ペンギンは一瞬振り向くと、地面につばを吐いてさっさと立ち去って行った。


「態度悪いなあいつ。やっぱ追いかけて締めるか」

「それより片づけをしないと、冒険者のみなさんも手伝ってくれるわよね」


 そう言われてすぐにその場で解体する。魔力の高い森の地面に置いておくと魔物の死体など数日もあれば吸収されるので置いたままにしておいてもいいが、さすがに多くの冒険者が通る道に置きっぱなしはよくない。4人で急いで分解する。


「なあ、ネス子、この森ペンギンの肉ってうまいのか?」

「高級食材ですよ。城ででてくる鶏肉は森ペンギンの日もあったと思うが」

「知らないうちに食ってたのかよ」


 騎士様達が雑談をしている間に4人で解体を終えて、残った部位は森の中に適当にばらまく。本当は土の下に埋めるところだが、騎士様から「この辺の生態だと肉食の魔物はいないから、さっさとしなさい」と言われそうした。魔物の死体をそのままにすると、それに強い魔物がおびき寄せられたりしてあまりよくない行為ではあるが騎士様に意見することなどできないし、こちらより遥かに情報ももっているだろうから本当に大丈夫なのだろう。


「それでは本当にこれほど取り分を貰ってもよいのですか?」

「別に私たちは魔物狩りに来たわけではないから必要ないわ。市民を守るのも仕事の一環だしね」


 一応、記念だとか言って騎士様は緑の角だけ持っていき、他は我々が貰ってもいいとのことだった。


「まあ、初心者にはよくあることね。ここだと死ぬことはないでしょうから、何回か痛い目にあいながら学びなさい」


 駐車場まで同行してもらい、騎士様達は靭馬が引く高級な馬車でさっさと引き上げていった。そういえば、そもそもなぜ騎士様があんな場所にいたのか聞いていなかった。


「なんだったんだろうね。騎士様と一緒に子供がこんな場所に」

「まあ、俺らにはわからん何かがあるんだろう。それにしても騎士様は強かったな」


 他の仲間も同じ疑問をもっているようだ。取り分を換金するため受付所のある建物に入る。台車は既に裏の倉庫に持って行っているので、買取所に話をして待っているが査定の時間は暇だ。

 ふと横を見ると、この地の名前の由来になったオーガの話が描かれた壁が目に入った。

 金色の髪のマセリカンナ姫が突撃している絵だ。


 ん?なにか既視感がある。

 そうだ!あの子供の髪って金色じゃなかったか!?


 俺、何かやばいことやらかしてたりしないよな・・・


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