33_神聖魔法を求めて4
「よ、シスターバッキー、今日も暇そうだな」
「あの、私ってば責任者で忙しいんですけど」
「まあ、そういうなよ。同じ神聖魔法使い志望の仲じゃん」
「志望というか私は天才的な使い手で既に大成して今の位置にいるんですけど・・・で、今日はどうしたんですか? また私のすっごい魔法が見たくなっちゃいました?」
「そんなとこだ」
「いくらまで出せますか?」
ビックリするくらい真剣な表情で食い気味に速攻で問いかけてきたが、子供相手に言ってることとしては最低だ。
「いや、だから子供にせびるなよ・・・そうそう、ここって補助金で運営されてるんだよな?」
「ええ、私たちは公務員ではなく教会職員ですけど補助金にほとんど頼っているのは事実ですね」
「そっかそっか」
「なんで急にそんなこと聞いたんですか?」
「いやね、シスターバッキーの働きは“おばあさま”にも報告しなきゃなって思ってたところでさ」
「おばあさま・・・あ!」
どうやら意図は伝わったらしい。
「そうでした。そうでした。市民の皆様、そして州元首たる閣下のお陰で日々運営できていますからね。きっと子供にも優しいし素晴らしい運営をしていると清く正しい評価をいただけて給与にも反映していただけることでしょう」
「わかってくれるか。さすがはシスターバッキーだ」
「まあ、そうはいいつつも個人的な志とかあったり?」
「たくましすぎだろ、お前。そもそも私だって小遣いも貰ってないんだ。こっちが金稼ぎたいくらいだよ」
「というかあなた、先日の攻撃魔法のレベルからすると、神聖魔法だけだとしても十分強そうですけど。やりがいじゃなくてお金が必要なのであれば冒険者とかをされた方が儲かるのでは?」
ネイアが聞きたいことを聞いてくれた。たしかにあの魔法の威力だったら別にアンデッド相手じゃなくても十分通用するだろ。
「だって、ここの仕事って安全だし、微妙に出世してるから給料も同じくらいの年齢層にしては高くて、冒険者なんかより断然楽なんですもん。なにより実家からも近いですし。嫌な所は万年人手不足で雑用を未だにやらされるところと仕事中にお酒飲めないことくらいですから。まあ、たまにちょびっとサボって飲んだりしてるんですけどね。てへっ」
「こいつ・・・コンプライアンスという言葉を知らないのか」
そんな話をしながら前も案内された小部屋に行った。私とバッキーは横になって座り、反対側にネス子とネイアが座っている。魔力を流す修行をやってもらうためだ。
手をぷにぷにしてもらいながら魔力を流してもらっている。
「この魔力を流す修行って本来は毎日やるとか言ってたが一回あたりどれくらいやるのが普通なんだ?」
「だいたい15分から30分くらいですかね~」
う~ん、やっぱこの前やってもらったのと同じだなあ。確かにバッキーの魔力は感じれるのだが神聖属性?みたいなのは感じれない。白い色は目視で見えるのに。
「前にも言いましたがすぐに出来るようになるものではないですよ」
「そんなすぐに出来るようになるわけじゃないのに、どうやって才能があるかどうか探して修行すんだよ」
「ああ、これ自体は有望そうな子にはみんなやるんです。魔力検知の高い子ですね。例えば生活魔法を早く使えるようになった、みたいな有望な子です。仮に神聖属性の才能はなかったとしても長いことやっていると体の魔力自体が多少は神聖属性に染まるので教会業務はやりやすくなりますから損はないんですよ」
「ん?じゃあ私はシスターバッキーに染められてるってことか?」
「そう言えなくもないですかね。といっても微々たる変化ですよ」
なんか守銭奴になりそうでやだな。
「神聖魔法は使いたいけど、これを毎回やってもらうのは確かに面倒だな。特に私が使いたい神聖魔法は回復系や強化とかの補助系だし」
「補助の魔法は取得する人がほとんどいないですよ。それより直接攻撃した方がてっとりばやいですからね。南のランバーでは習得している人も見ましたけど」
「あ!それだそれ! そのことを聞こうと思ってきたんだったんだ。国を一周して修行したって言ってただろ? 南だと聖職者は多いってことだけど、そっちに行った方が学びやすかったりするのか?」
「お勧めしませんよ。確かにあっちはアンデッドの出るダンジョン認定されている区域とかもあって魔物狩りという意味で修行はできますけど、それはイコール魔物の脅威にさらされている場所でもあるのです。教会の仕事が多くて人手も必要で大変です。あとそもそも裕福なこっちの人は歓迎されないですからね」
「そうですよ、お嬢様。コッコ山の向こうは危険な地ですからね。わざわざあちらに行かなくても、いずれ王大で勉強すればいいと思いますよ」
「実際、私も修行の旅の途中で向こうの修道院に2週間くらい滞在したことがありましたけど、かなりハードでした。二度と行かないですよ。あんなところ。食事も質素だわ、お酒も禁止されるわで散々でした。あれは絶対北部人だからっていうのと、私のあまりある才能への嫉妬で嫌がらせされてましたね」
バッキーは思い出したのかお怒りだが、多分この調子だと向こうは真面目に修行している中で荒らしただけだろうな。こいつ。
それはそうと、南には修道院とかもあり修行自体はやれる環境みたいだ。でもネイアも一般常識的に危険だって言ってるし行くのは、なしだな。
「そもそも修行中なら酒飲まないのは普通だろ・・・向こうには行かないにしても聖職者が多いってことは特別な修行法とかあったりしなかったか? 私は速く覚えたいんだよ。コツとかないのか?」
「向こうは日常生活での必要に駆られて教会に就職されている方が多いだけで、実際やっていることは同じでしたよ。アンデッドとの実戦が伴うかというところくらいしか違いがないです。たしかに実戦で魔物を倒した方が魔力のあがりはいいと思いますけど・・・」
「流石に危険か。模擬戦だったらどうなんだ? あれでも一応修練になるんだろ? あれでアンデッドの魔物ってだせるのか?」
「ああ、アンデッドの魔物も登録されているからだせるぞ」
「そんな高級な模擬戦用魔道具をお持ちなんですか!?」
「4体あるぞ」
「さすがは騎士団ですね・・その分、こっちにも補助金を・・っね?」
「で、どうなんだ? 模擬戦でも成長できるって話だったけど」
「魔力の上昇という点では模擬戦は微妙ですね。どちらかというと経験を積んで相手に慣れるという意味合いが大きいです。全く意味がないというわけではありませんけど」
「アンデッド系の魔物を出せるのであれば一度、神聖魔法を覚えた後にそれを使っての模擬戦というのが魔法最適化の訓練という点ではいいかもですね。私も全然使ってないのでぶっちゃけ腕がなまってるんですよ」
「まずは使えるようになることが課題だなあ。じゃあ、今日の魔力流し訓練はこのくらいでいいや、またくるから」
「まあ、時間があるときはやってあげてもいいですけど、教会のシスターが運営に困っていて具体的には給与が2倍!・・・までは難しいかもなので1.5倍くらいになるような補助金があると運営が大変助かるって伝えてくださいね。あ、お酒券の現物支給でも可です」
「ああ、教会が人手不足だから、まずは孤児院の支援を厚くするために、そっちに補助金を回して今の酒代じゃなくて将来の子供に投資するように伝えておくよ。未来を案じる優しいシスターだったって」
「そんな~~~」
ということで教会からは引き上げて戻ってきた。
「う~ん、手詰まりだなあ」
「お嬢、そう焦らなくてもゆっくり強くなればいいんじゃないか? そのために我々もついて日々特訓をしているのだし。そもそもお嬢の年齢からすると魔法も身体能力も学力も全て信じられないくらいだぞ」
「まあ、お前に学力で勝っている自信はあるが、神聖魔法はどうしても早く習得したいんだよ。欲を言えば習得だけじゃなくて魔物を倒せるレベルにしたい」
「神聖魔法のプロのシスターがああ言っていた以上厳しいのでは? 他の当ては・・・」
「ああ、飲んだくれの話だな。そういう意味ではシスターバッキーの話も飲んだくれの話で同じレベルなのかもだけど」
「やっぱり遠出の許可が出るかどうかはわからないけれどエルフを探そう。普通にエルフも会ってみたいし。冒険者ギルドで話でも聞いてみるか」
「難しいと思いますよ。ウィンガーラの冒険者ギルドは騎士団や軍に才能のある人が流れやすいので他に比べると繁盛度は下がるのですが、これだけの街ですからそれでも人数はかなり多いですし聞き込みするというのはちょっと・・・」
「ドーモレネまで行って、現地の冒険者に依頼として出すくらいしないと難しいかと」
如何せん自由にできる金もない状況だし厳しい。そうなるとやれることは一つだ。金のある奴に頼もう。
「おじい様、マリィお願いがありますの(うるうる)」
「マリィや! ど、どうしたんじゃ! なんでもおじいちゃんに言って、て、・・・何笑っておるんじゃ?」
「わ、笑ってなど・・あまりにおじいさまの反応が予想通りすぎて・・じゃなかった。もう大丈夫ですわ。それで、おじい様、聞いてくださる? 実は・・」
「ふむ、そういうことか。わしも昔、エルフには会ったことがあるが確かに博識なものが多かった。まあ、ウィンガーラの色々な地を視察するというのは大変よい経験じゃからな。護衛をしっかりつけて1週間くらい行ってくるのはよいのではないか」
「そ、そう!視察です! わたし、ウィンガーラのことをもっと学びたいのです! 授業だけではなく、自分の目でしっかりと見て回りたいのです!」
「先日、ドーモレネについて調べていましたし、言っていることは、わからなくありませんが、あなた授業を受けたくなくて適当なことを言ってるわけじゃないでしょうね?」
「ももももちろんです! 戻ったらしっかり勉強します!」
「いや、戻る前にしてもらいましょう。来週は2倍の速度で勉強して黒曜日にテストするザマスよ」
勉強速度2倍とか早口の動画視聴じゃないんだから無理だと思ったが、一応許可してくれる雰囲気だったので、なくなく条件を飲んだ。
「そうすると視察用の服や装備もあった方がよいじゃろう。わしは詳しくないし、今日はラブロフもおらんからな。誰に頼むか」
確かに買ってもらった服は明らかに高いやつだから普段使いでも少し気後れするし、動きやすいからといっても訓練服でいくのもなあ。とにかく買ってもらえるのなら、じじいに買ってもらおう。
「もしかしたら魔物も出るかもしれませんし、きちんと戦えるような装備が欲しいところですわ」
「さすがに護衛がおるから大丈夫じゃろ」
「万が一のことがありますわ!」
「ふふ、タカダーイア、よいじゃありませんか、背伸びしたい年頃なのでしょうし、将来的に騎士になるとして早いうちから周りの騎士と馴染みを合わせておくのもよいでしょう。たいした出費ではないのだし」
「それもそうじゃな。すぐ成長してしまうと思うが一式揃えてもらうかの」
さすが金持ちの貴族ども。こいつらから金の話で余裕のないことを聞いたことがない。どこかの破戒僧とは大違いだ。私は庶民として中間くらいを目指そう。
結局、買い物は明日いくことになったのと、この年齢でいきなりの遠出はちょっと、ということで護衛訓練も兼ねて来週は午前は2倍授業、午後はいつもの訓練ではなく、移動と護衛の訓練をすることになった。




