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32_神聖魔法を求めて3

今回、マリィが初めて聞いたため、地名が多く出てきますが特に覚えていただく必要はありません。

 メタルパルーンで遊んだ日から三日後、いつも通り三角メガネババアの講義を受けて、午後は騎士団の訓練場へ。訓練場へ入るとローモンドのおっさんが待っていた。


「マリィお嬢様! お待ちしておりました!」

「おっさん、仕事はどうしたんだよ」

「いや~、何よりもお嬢様の要望を最優先にしようと思いやして情報集めをしてきたでやんすよ」

「お嬢、喋らなくていいぞ。既にわかっていると思うがこの男は大した仕事は任されることのない窓際のベテランだから暇なんだ。将来有望な我々とは交わることのない悲しい生き物なんだ」

「じゃあ訓練にいきましょう」


「ちょーっと待ったあ! あっしは有益な情報を見繕ってきたんですよ! 聞いて下さいお嬢様あ!」

「わかった、わかった、おっさん情報通なんだもんな」

「お嬢様!本当なんだよお! そんな噓つきを見る眼でみないでくれぇ」


 こんなでも三等騎士らしいのに。哀れだ。


「で、いいから教えてくれよ。神聖魔法に詳しいやつが見つかったのか?」

「あ、いや、その、直接的じゃないでやんすが色々な魔法に詳しそうな人物に心当たりがありまして」

「普通に大学だと詳しい方もいると思いますけど、それとは違うんですか?」

「そう!普通のじゃないんだ! なんと長命種の“エルフ”がこの州にいるらしいっていう話を聞いてきたんだよ」


「エルフ!! エルフってあのエルフか!? 耳が長くて美形で寿命の長い!」

「そうでやんす!」


 この国にもいたんだ。エルフ。

 大陸にしかいないって話だったし、バラ恋のゲームにもエルフのキャラは登場していなかった。ファンタジーの定番種族、そして美形っていうのが現実になると実際どのくらいかもめっちゃ気になるじゃん! テンションあがってきた。


「で、エルフは神聖魔法が得意なのか?」

「あ、いや、そういう話はきいたことないでやんす」

「じゃあ、なんなんだよ」

「お嬢様、エルフは長命で長い時間を使えることで総じて魔法のレベルも高いのです。特に高齢の方であれば知識量も凄いかと思います。まあ・・・「本当の話なら」ですけど」

「たしか前に、この国にエルフやドワーフはいないって聞いたことがあるな」

「そうだぞ、エルフは北連から出てくることはほとんどないと聞いている。大陸の国でもそうそういないはずだ」


「ホクレン? なんだそれは?」

「北方国家連合のことですよ。大陸の北側は人間が住むには少しきつい土地で小さな国や都市国家がいくつかあって、南側の大きい国と付き合うために連合として国家運営をしているんです」

「大陸の北って悪魔がいるんじゃなかったのか?」

「はい、北連のさらに北に行くと雪や氷河の土地になって悪魔が支配しているらしいです」


「ほうほう、で、なんで普通のエルフはその北連からでてこないんだ?」

「正確に言うと全部のエルフが北連にいるわけではなく、外交上付き合いがあるのが北連に加盟しているエルフの国というだけです。非加盟のエルフの国もあるらしいです。エルフは北連というか、自分たちの国から出てこないって習いました。私もなんでかまではわかりませんし、エルフ自体も見たことないですよ」


「まあ、それはいいとしてローモンドさん、本当なんですか?エルフがいるって。どこで聞いてきた情報なんですか?」

「情報源は、まあ、秘密だ」


 おお、情報屋っぽい顔になった。実際に魔法が得意かどうかは関係なく長命種で普通の人間より遥かに長生きしているとしたら色々情報を持っていて生き字引になっていてもおかしくはないしな。その中に神聖魔法に関する内容もあればいいけど。


「わざわざ教えにきたってことは、そのエルフはすっげー長生きしているとかなのか?」

「そこはわからないでやんす。ただ、この国にいる時点でかなり長生きしているのは間違いないかと」

「なんでそんなことわかるんだ?」

「エルフは成人するまででもかなり長い時間がかかると聞いております。エルフの国を出ている時点で成人していると思いやすから、それなりに歳はとっているかと」

「ふむ。で、具体的にどこにいるんだ?」


「ドーモレネの森に隠居しているとか」

「ドーモレネか、少し遠いな。で、森のどこだ?」

「さすがに詳しいことはわからなかった」


 悔しそうな表情をしているローモンド、こいつ、そこまでマジで頑張って情報を探ってきてくれたのか・・・


「おっさん、ほんとに頑張って探してくれたんだな。ありがとう」

「お、おう」


 私が感動して真剣な眼差しで礼を言うと少し戸惑った表情になった。


「まさか危険な橋を渡ってまで探ってきてくれたのか!? もしかして何か裏取引とかさせられたとか!?」

「いや、昨日たまたま飲み屋で聞いただけでやんす・・・」

「急に信ぴょう性なくなりましたね」


 最初内緒にしてた理由はこれかよ。結局いたたまれなくてゲロりやがった。特に探してたわけじゃなく、ちょうど噂を聞いたから思い出して今日来てくれたらしい。


「その情報主は信用できるんですか?」

「たまたま隣の席で飲んでた冒険者に聞いただけだからなんとも・・・」


「まあ噂になっているくらいだから可能性はなくはないか。で、行ってみるとしてドーモレネの森って危険な場所か?」

「たいして危険ではないと思うが、隠居しているくらいだから奥地に住んでいるとすると魔物が少しはでるだろうな」

「もしかしてダンジョンってやつか?」

「いや、ダンジョンではない。と言ってもダンジョンの定義なんて曖昧だからな。魔物が多いところを総じてダンジョンと呼んでいるだけだし」

「森自体も結構広いですから、さすがにそんな曖昧な情報で探せませんよ。エルフの方の住所はわからないんですか?」

「すまん、さすがに噂で聞いただけだからわからん。住所なんて個人情報だし・・・冒険者だったら森で狩りする奴もいるだろうから知ってるかもとは思うが」

「探すとしても冒険者経由しかなさそうだな」


 城に戻ってネス子たちと別れた後、とりあえず地図で場所を調べることにした。


「あら、夜なのにお勉強ですか?マリィ」

「少し地図を見たくて探しに来ましたの。ウィンガーラの地図はありますか?」

「地図ならありますけど、ここは古いものしかないわよ。何が知りたいザマスか?」


 相変わらず三角メガネババアは図書室にいること多いな。

 まあ、今日は純粋に調べに来ただけだから叱られる要素はないし大丈夫だろう。ドーモレネの場所が知りたいというと、昔からある地名だから問題ないらしく少し古そうな地図が出てきた。


「ドーモレネ、ドーモレネ、ここか」


 ドーモレネはウィンガーラの中でも南西側でウカトリ州との州境に近い場所のようだ。恐らくここロングサンドからだと直線距離でも150kmくらいありそう。なかなか遠い。ウィンガーラは地味に広いんだよな。なんでも昔はもっと州が少なかったが結構分裂したんだとか。そんな中でもウィンガーラはそのまま分割がなく今に至るんだと。


 ウィントール王国自体は島国だがそれなりの大きさがある。日本を全部足したくらいはありそうな面積で、ほぼ縦型の長方形だが中心より少し南が若干へこんでいて軽くひょうたん型に近いような形の島だ。その島の北東部一帯がウィンガーラ州になっている。


 王都トールランドは島の真ん中の西側で巨大な湾の内側にある。わたしがいた孤児院のトラクーンはウィンクーン州の中にあって王都とは反対に島の真ん中に近い位置だが東側だ。ここウィンガーラのロングサンドから孤児院のあったトラクーンはかなり遠かったと思ったが実際地図で見ると相当だ。東京―大阪間くらいあるかなといった感じ。500km近くはあるんじゃないか。じじいの馬車は高級でやたら速いと思ったけど、やっぱり自動車くらいの速度が普通にでてるな。


 ウィンガーラの周りは5つの州で囲まれていて北西がウェルマニ州、南西がウカトリ州、南南西がウィンナシ州、南がウキシン州、南南東がウェズソーン州らしい。来るときに通ってきたのはウェズソーン州だ。


「ドーモレネは果樹園が多く果物の栽培、果実酒の製造が盛んな場所ザマスよ」


 色々うんちくが挟まっていたが周辺の地図についてローレッタは色々教えてくれた。


「それで、急にドーモレネの場所が知りたいなんてどうしたのかしら」

「実はエルフが暮らしていらっしゃると耳にしたのです。長命とお聞きしていますから長い経験から稀有なお話が聞けるかもしれないと」

「ほう、エルフですか。珍しいですね。この国にいたとは知りませんでしたね」

「とはいっても、あくまで噂ですから本当かどうかはわかりませんわ。ですが、少し気になっていたので調べておりましたの。ローレッタ様はエルフ族とはお会いになったことはありますの?」

「ありますよ。昔、大陸に行ったときに。少し喋った程度しかありませんけど、確かに長命で知識も深い方が多いのは事実ザマスね。ただ、彼らは他の国いくというのは滅多にしないので、所詮は噂かもしれませんね」


「なんで彼らは国の外にいかないのですか?」

「郷土愛が深いのかしら。まあ、そもそもエルフ同士でなければ子を授かれないのですから、わざわざ同族のいない土地に赴く酔狂な方は少ないのでしょう」

「え?ハーフエルフとかいないの!?」

「マリィ!言葉が乱れていますよ!いつでも淑女を心掛けなさい!」


 ビシッっと持っていた扇子っぽいので叩かれた。痛くはないけど、いい音がする。私もちょっと欲しい。


「ハーフエルフはいないわけではないけれど、滅多に生まれることはないらしいですね。私もハーフエルフは会ったこともありません」

「そうなのですね」


「わざわざエルフに会って聞きたいことは何なのかしら?」

「魔法のことを知りたいのです。神聖魔法について学びたいのですけれど、通常の教会の魔法とは違う魔法も知りたいと思いまして」


 ローレッタが怪訝な目で見てくる。何か変なこと言ったか!? 

 確かこの三角メガネババアは文学が専門で魔法は詳しくないという話だった。なので魔法に関することを話したのは初めてなんだけど。


「まさか、誰かに吹き込まれでもしてはいないでしょうね。わざわざ神聖魔法を知りたがるなんて」

「えっと、純粋に興味です! 色々知りたいという探求心からですわ」

「本当に魔法が好きなだけザマスか。それならよいですけど。あなたはウィンガーラ本家の立場なのですから周りの大人の思惑には気を付けるのよ。わかったわね」

「は、はい」


「南の策略かと思いましたが、そもそも行動範囲が狭いですから杞憂でしょうね」


 ひとまずドーモレネ地方の場所はわかったので図書室から自室へ引き上げた。

 そういえば、以前にも南側の方が教会の勢力が強いとか聞いたな。もしかするとそっちに留学したりした方が早く習得できるのかな。国中まわって修行したとか言っていたシスターバッキーにもう一度聞きにいくか。ついでにあの魔力訓練みたいなのも一応やってもらおう。


 ドーモレネ、流石に遠いなあ。行ったとしても森もどうせ広いんだろうし気軽に遠足気分で行くのは無理だな。ローレッタに聞いた感じでもエルフがこの国に入ってくること自体が普通はないみたいだし、そもそも情報源が飲んだくれだからな・・・


 一応、護衛騎士の二人には行けないか聞いてみるけど無理だろうなあ。つーか絶対半日じゃいけないし、そしたら三角メガネババアの授業も休まなきゃだし。


 でもエルフは一回見てみたいよな!



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