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31_神聖魔法を求めて2

 神聖属性の魔力を流してくれと手を出したのだが。


「駄目ですよ。さすがにマリィちゃんくらいの子供だと怪我まではしないと思いますが魔力酔いします。魔力の修行ができるのは生活魔法が使える年齢くらいからですよ」

「生活魔法ならできるぞ、ほら」

「え、うそ、お貴族様やば」

「ということでほら!」


 そういって手を出すが、シスターバッキーはやはり子供はあぶないと思ったのか後ろの二人にほんとにやっていいの?というような感じを目で訴えかけている。しょうがないといった感じで後ろの二人は了承してくれた。


「ほんとに、ほんとにいいんですね? 責任とってくれるんですよね? 私は無実ですよね?」

「大丈夫大丈夫、貴族嘘つかない」

「こわ!チョー怖いですよ!」


 そう言いながらも結局少しだけ手に触れてくれて魔力が感じられる。こっちの体に魔力を流されているというより手のひらにうすーく流れてくるだけの感じ。きもち温かいくらいで特に不快感はない。


「もっと強くしていいぞ」

「魔力酔いしないでくださいね・・・」


 そういうと少し強くなった。手のひらから手の中に浸透してくる感覚だ。


「で、自分が使えるようになるにはどうするんだ?」

「魔力は感じられますか?普段の何もしていない自分の魔力の感じとの違いをイメージしていくんです。本来は外でやらずに教会の中で女神様にお祈りをしながら行うんですよ」


 そういうと手を離された。う~ん、あまりいつもの自分の魔力との違いがわからない。純粋に他人の魔力だなっていうのは何となくわかるんだが、魔力そのものの性質?みたいなものの違いはわからなかった。


「その顔だと悩んでますね。それはそうです。一朝一夕でできるものではありません。天才の私でさえ、この修行を1年もさせられたのですから! 色の変化が微妙にできるのでさえ3カ月以上かかっています。正式なシスターになる人は3年から5年くらい毎日かけて習得するのが普通ですよ」


 さっき流してもらった白い魔力をイメージして体の魔力を動かす。手のひらに自分の魔力を集めてイメージしたのだが残念ながら変化しなかった。水魔法の場合はイメージできたが、前世で神聖属性なんて曖昧なものは存在しなかったし物理学的なイメージができないからなのか?


「う~ん、すぐには使えなさそうだなあ」

「また魔力を流してほしければ有料で受けつけますよ」


 何かコツが掴めれば一気にできるようになりそうな気はするんだけど、それが何かわからない。まあ普通は年単位でやっていくものらしいし、今日いきなりというのは無理そうだな。


「お嬢、もう満足しましたか?」

「そろそろお墓参りの方にいきましょう。シスターバッキー、ウィンガーラ家のお墓に案内いただきたいのですけど」


 このままついでにシスターバッキーが案内してくれるらしい。というか既に見えているが、この広場の先はずらっと墓地が広がっている。墓石はそれぞれ決まった形をしているというわけではなさそうだが、どれも平べったい板状の墓石が刺さっていてそこに名前などが書かれているようだ。


「そういえば、アンデッド対策をしてるっていってたけど、墓地にはアンデッドが出るのか?」

「ええ、でますよ~。死者の魂が変異することがあるんですよね。特に魔力が濃いところでご遺体をそのままにしておくとゾンビとかの魔物になってしまうんですよ。まあここではご遺体は焼いていますのでゾンビとかの形がある魔物がでるケースはほぼないんですけどね」


 シスターバッキーはそう言いながら両手をだらーんとしてこっちに迫ってくる。子供扱いしやがって。


「それとは別に普通にアンデッドが自然発生する場所もあるがな」

「そうですね。私が以前に国をまわった時にランバーではかなり見ましたよ。あっちはスケルトン系の魔物に果てはリッチーのようなものまで出たりしますからね。依り代があるとそれを利用して出現しやすいというだけで魔物になってしまうと別に故人と同じ顔や形をしているというわけではないんですが人間の形に近いと戦いにくいことこの上ないですよ。あくまで魔物として生まれているので確実に人間ではないんですけど」

「じゃあ、ここだと幽霊のような形のない魔物がでるのか?」

「私たちが仕事をさぼっちゃうと、ですけどね。魂霊(ウィスプ)だったり低級のレイスだったりは出ることがあります。物体がなくても魂に寄生するやつですね。どうしてもお墓は魂が集まりますから」


 奥の方までいくと少し大きめの墓が5つあった。ここが私のご先祖様の墓らしい。あんなでかい城を建てた割に確かに墓はちょっとでかいだけだった。大きな墓石の周りにもいくつか墓石があり、恐らく親戚とかなのかな。まだあまり歴史は学んでいないから墓を見てもどれがどの時代の人なのかまではわからない。


「それでは、ついでに清めの魔法も見せましょう」


 そういうとシスターバッキーはどこからか持ってきた大きめのバケツにおもむろに手を突っ込んでぐるぐる回しだした。


「浄化(ピュリフィケーション)! 聖なる白よ、その辺で汲んできたこの水に光を与えたまえ、聖水生成(クリエイトホーリー)」


「聖水って、そんなバケツで雑に作るようなものなのかよ! 入口に結構よさそうな瓶で売ってたの見たぞ」

「あれ、瓶代が高くて困ってるんですよね。いい瓶じゃないと使用期限が短くなっちゃって」


 できた聖水をどうするのかと見ていたら、今度は白い柄杓(ひしゃく)を取り出してバケツの水を汲むと。


「そりゃ! 荒ぶる魂たちよ!静まりたまえ~」


「打ち水じゃねーか!」

「これが一番効率いいんですよね~」


 そんなこんなで教会を後にした。あんな雑な感じだったが、ここ数年、この教会と墓地ではアンデッドはでていないらしい。


「アンデッドが出た時は水月が動員されることもあるな」

「それなりに強いのが出た時だけですけどね。アンデッドに限らず街の近くで魔物が出た場合は先に冒険者に依頼がでるか州軍がでるかっていう感じです。精鋭じゃなきゃ厳しそうなときだけですよ」

「お前たちも動員されるのか?」

「どうでしょう、私たちはお嬢様専任とのことですから、声がかからない可能性が高いと思います」

「そ、そうだったのか!? たまには討伐にいかないと腕が鈍ってしまうじゃないか!」

「いつ討伐にいくつもりだったのよ。模擬戦もしてるしいいじゃない」

「実践で学ぶことも多いし・・・お嬢、なんとかならないか」

「子供の私に何を期待してるんだよ。休みの日にでも副業で冒険者をすればいいんじゃないか」

「休みは休みたいし・・・」

「まあそうだよな。社畜はよくない」



 その後、城に帰り自室に戻って復習タイムだ。水魔法が簡単にできたからきっと神聖魔法もサクッとできるようになる。何となくそう思っていたのだが。


「う~ん」


 魔力は感じられる。集中すればシスターバッキーがやっていたように手のひらにも集められる。ただその後も魔力は変化しない。水にすることはできるのに何故かあの白い聖属性の魔力には変化をしてくれない。


 やはり経験の差なのか? シスターバッキーが手のひらに収束させていた魔力は自分の今の手のひらにあるものよりかなり大きかった気がする。そして意外と疲れる。何回かやっていたら少し疲労感が出てきた。その後も何度かやったが結局できずに寝た。もしかして才能がないのか!?


 翌日も模擬戦で水月の訓練場にやってきた。相変わらず誰もいないなここ。


「お嬢、何やってるんだ?」

「昨日のやつだよ。神聖魔法の白い魔力にするのを試してんだ」

「あれ、まだ諦めてなかったんですか」


「絶対才能あるはずなんだよなあ。ネイアは魔法得意だろ、アドバイスないのか」

「難しいですね。普通のエレメンタル系の魔法であれば学校の経験を補足できますけど」


「そうだ! そもそも水月の騎士団は強いやつがいっぱいいるんだろ? その中に神聖属性の魔法が得意とか魔法の知識に詳しい賢者的な人もいるんじゃないのか?」

「どうでしょうか、そもそも自分が使える魔法というのはあまり手の内を見せたがらないのが普通ですし、確かに強い一等騎士の方々は特殊な魔法を使える人も多いですけど、それが神聖魔法に近いものなのかはわからないです」

「というか私たちだと、一等騎士とはほぼ面識がないからな」

「どのみち本格的な修練となると昨日やっていたあのやり方しかなさそうですけど」


 あのやり方というのは実際に魔力を感じさせて女神さまにお祈りするっていうあれか。


「毎日あのシスターの所に通うというわけにもいかないだろうしな」

「そうですね。さすがに教会の職員でもないですし。あの方はお金を出したら喜んでやってくれそうな雰囲気はありましたけど・・・」


 確かに、普通に金を渡せばやってくれそうだけど、できるかどうかもわからないのに毎日修行っていうのはなあ。あと、なんとなくあのやり方じゃなくてもいいのではというのは感じている。そもそも水魔法は簡単にできたし、特殊魔法の鑑定も簡単に会得できた。なのにあれができないのは何か事情がありそうだし、シスターバッキーの話だとお祈りや信仰度みたいなのも重要じゃなさそうなんだよな。あいつ破戒僧だったし。


「一応祈りながらやってみるか」


 やっぱり変わらなかった。



「お! お前ら今日も精が出るなあ」

「あ、ローモンドのおっさん」

「お嬢様、何か御用ですかい!」


 これ幸いとおっさんがゴマすりしながら近寄ってきた。


「魔法に詳しいやつを知っていたりしないか?」

「お嬢様、ローモンドさんに話しかけてはだめですよ」

「この男は先日も借金取りに追われていてな。大変危ないので無視してください」


「そこまで言わなくてもいいじゃないか! たしかに借金が増えてるっていうのは事実だし、昨日も昼から酔っぱらってちょっと騒いじゃったのはそうだけどさ! そうそう、お前らこそ、俺にその美味しい仕事変わってくれよ!」


 もうここの訓練場も何回も通っているが未だにこのおっさん以外は3人しか見ていない。人材難なのか? でもこれまでの話からすると、こいつら三等騎士の上に二等騎士、一等騎士とそれなりの数が揃ってて強いやつもいるはずなんだよな。このおっさん、経歴は長いみたいだし知り合いとかいないのかと思って声をかけてみたのだ。


「で、借金に追われてる“ローン”モンドのおっさん。どうなんだ? 魔法に詳しい知り合いとか水月にいないか? 具体的には神聖魔法を使えるように勉強したいんだけど」

「借金はすぐ返すので、その名前はやめてくだせぇ。そしてあっしはこれでも情報通のローモンドって言われてるんでさぁ、ちょっと時間をいただければお調べして参ります!」

「情報通?初めて聞きましたけど・・・」

「ということで、お嬢様! いい情報を持ってきたら買取か、そいつらみたいに養ってくだせぇ!なにとぞ!」


 そういうとローモンドはさっそく街の方に走って行った。一応、動いたってことは何かあてがあるのかな。


「あー、いっちゃいましたね」

「お嬢、断るときはしっかり断らないとだめですよ。ああいう輩はすぐ調子にのるものです」

「とはいえ、ああいう出世してないおじさんキャラはだいたい情報通なイメージがあるからな。もし本当にうまくやってきたら二人のどっちかと交代してもらうか」


「「え!?」」

「その、冗談・・ですよね?」

「お嬢! 横暴では!?」

「貴族って横暴だしな。しょうがないよ。ローモンドのおっさんもあれだけやる気だしてくれてるんだし」


「ま、まあローモンドさんだし、大丈夫よね?」

「ああ、どうせ大した情報などもってこれないだろう」


 うん、こいつらはもうちょっと緊張感をもって仕事に臨んでもらった方がいいな。


「他にも通りかかるやつがいたら聞いてみるか」

「おじょー!」


「そういうことではあるけども、ここ訓練場の割に全然、団員っぽいのが通りかからないじゃないか。あのでっかい騎士団の寮にはほんとにいっぱい団員がいるのか?」

「いや、寮には実際そこまで多くないですよ。30人もいないんじゃないでしょうか。だいたい小規模任務や中規模任務、あと州内の近場の任務を受けることが多い若手が入ってますからね」

「それなりに稼ぎもあるから、割と早いうちに寮からは出て家を買うのが普通だな。水月だとローンも組みやすいし、結婚も考えると大きい家の方がいいだろう。なのでローモンドさんのような人は特殊な例なのだ。あと、我々はいつも午後にきているが、本当に近場に派遣されるような、その日のうちに完了する任務であっても通常は午前中から対応をするので午後のこの時間は人がこない」

「さらに言えば寮にいるような若手は小規模任務の方が数は圧倒的に多いですから。なのでよく外にでているんです。それに上級の方々や貴族の方は水月以外に兼任で州軍とか色々肩書をもっている人も多くて、そもそも訓練場なんて来ないと思います。本部の方であれば見かけるかもですけど」


「本部! そういえば行ったことなかったな!」

「連れて行きませんよ」

「なんでだよ。そういえば団長とかとも話したことなかったし、いつもお世話になってるお礼ということで」

「さすがに団長とかは雲の上の人すぎて、私たちじゃどうにもならん。実際、数えるほどしか喋ったことないもないし。ということで諦めてレアなパルーンでも出して遊びましょう」

「わーい!って子供扱いするんじゃねーぞ! 遊びに来ているわけじゃないんだぞ」


 その後でてきたのは少し大きめのパルーンだが色が違った。ここらで一般的なピンクや青のパルーンではなく、鈍い銀色をしたパルーンだ。


「これは、この機種RX-04であらたに追加されたメタルパルーンです! 滅多に見られる魔物ではないので、要望がすごかったみたいですよ」


 いわゆるメタルか、バラ恋のゲームでもスライムはでてきていたが確かメタルはいなかったと思う。ほんとにレアなやつなんだろう。


「こいつは経験値が多かったりするのか?」

「経験値ってなんでしょうか?」

「魔物を倒せば倒すほど自分の魔力が強くなるやつだよ。こいつを倒すと一気に強くなれたりするのか?」

「魔物を倒して強くなる魔力の大きさはどれだけきつい戦いをしたかで変わると言われている。メタルパルーンだけ特別ということはないと思うぞ」


 そうなのか、経験値豊富というイメージだったが、そう甘くはないようだ。


「それよりも叩いてみてください」

「おりゃ」


 ガキンッ


 木剣で叩くとメチャクチャ不思議な感触だ。普段のパルーンはハードグミをさらにハードにした感じのを叩いている感覚だが、こいつはそれとは違う。普通に金属を叩いたような音がするし、伝わる感覚も金属なのだが、それに混じってぐにゃっという感じもする。実際にメタルパルーンは弾力性のあるゴムのような感じで反発している。ゴムの性質を持った金属?


 なんだろう、前世を含めても完全に初めての感触だ。


「な、おもしろいだろう。本物であれば魔道具の材料として高く売れるんだがな」


 その後も結構おもしろくて何度もたたいて遊んで今日は満足した。




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