30_神聖魔法を求めて1
何だかんだでずっと先送りにしていたがゲームでは神聖属性の魔法が使えていた。悪魔対策としても習得しておきたい。
「ということで、さっさと神聖魔法を覚えたいんだけど」
「何がということなんだ? というかお嬢は何で神聖魔法を得意だと思ったんだ?」
「えっと・・・」
さすがに転生の話はできないし、何かごまかさないと。
「あれだ、あれ、神のお告げ的な?」
めっちゃ怪しまれてる。
「そんな突拍子もない話きいたこともないですけど」
「いやいや神様とか信じてるから! それで夢の中で言われた!気がする・・・」
「もしかすると本とかで読んで憧れからそういう夢をみちゃったのかもですね」
なんとかごまかせたな。
「それで神聖魔法を習いたいんだけど、どうすればいいんだ? 教会へ行けばいいのか?」
「神聖魔法は珍しいですからよくわかりませんね。大学だったら専攻している人もいるかもしれませんが」
「確かに教会で神聖魔法は使っているはずだが、わざわざ行っても大した魔法は使ってないと思うぞ」
そういえばこっちの世界の宗教観はわからないな、ローズガーデン孤児院に教会から来てたタニアは普通の事務方でシスターじゃないということだったし。そもそも同じ国でもウィンガーラではまた違う価値観だったりするかもしれない。というか何教とか宗派とかわかれてたりするのかな。
「神聖属性魔法が役に立つとすればアンデッド相手だが、そうそう出るものではないからな、特にこの辺の教会にいるようなやつがどこまで魔法を使えるか」
「教会って大きい勢力じゃないのか? 色々やってると思ったけど」
「教会の仕事は葬式と墓地の管理くらいだぞ」
「え、結婚式とか礼拝とか説法とか、というかどういう教えなんだ?」
「正直あまり関わったことないのでよくわからないですね。ネッシーの言う通りお葬式とお墓の管理だけだと思います」
「教え、っというか宗派みたいなのっていくつかあったりする?」
「宗派とは何だ? 教会は女神教しかないだろ?」
宗教はあまり根付いてないのかな? 日本の宗教観と違うからなかなか嚙み合わないな。
「その女神教がこの国の宗教?正式名称?」
「女神教は女神教です。この国というか教会なら世界中にありますよ。ただ国ごとでかなり温度差はあるみたいですけど。熱心な国はお祈りとかもしていると思います」
その後も聞きだした感じだと二人とも教会については全く詳しくなかった。一般常識の範囲での答えだと世界中で信仰はされており女神教が正式名称。やっていることは主にアンデッド系の魔物の対抗組織としての役割が大きいが国や場所によって組織の実行範囲や形態は大きく異なるんだとか。そして宗派もなければ、そもそも競合する宗教などない、なぜならアンデッド対策をする組織だから別の流派など存在できないのだ。
神への信仰みたいなものは地域ごとに土着の小さな宗教的な形で色々あるようで、そっちの方が日本の宗教観には近そう。こっちでいう女神教そして教会は専門組織の色が強い。この辺りではアンデッドもでないし、要は墓守的な仕事だから成り手も少ないんだとか。なお結婚も管轄外らしく結婚式は教会ではなく専門の式場があってそこであげるのが普通らしい。
「とは言っても神聖魔法自体は使っているんだろ?」
「南だとアンデッドが出るから、そっちの教会だったら色々魔法を使えるかもしれないかもだが、ここらの教会職員は墓掃除とアンデッド化しないための清めくらいだろう」
「とりあえず近くの所に一回連れてってくれよ。直接聞いてみたい」
「社会見学ですね! それでは、来週にでも行ってみましょうか。他には回ってみたいところありますか?」
「それなら州軍の訓練とかもどうだろう! お嬢はいずれ上に立って貰うのだしいいんじゃないか」
キャッキャと色んな仕事も見に行こうと話しているが完全に仕事がサボれる遠足感覚だな。こいつら。
翌週、今日は魔法訓練なしで午後から教会にいく。
「アポはとっているんだろうな?」
「アポ・・ですか?」
「やっぱ取ってなかったか。いきなり職場見学!ってわけにはいかないだろ」
「まあ、我々は水月所属で騎士団自体は広く認知されていますから、なんとかなるんじゃないですかね。いざとなればお嬢の素性を明かせばいいですし」
「適当すぎるだろ。まあ次からちゃんとやれよ」
とりあえず城から馬車に乗って向かう。
「教会ってロングサンドにも何か所もあるのか?」
「はい、数か所ありますし教会の管理という意味では郊外の墓地も合わせると結構あるんじゃないでしょうか。今日向かうところはお嬢様のご先祖のお墓もありますから手を合わせにいきましょう」
事前に聞いていたがウィンガーラ家は質実剛健ということで別にでかい墓を建てたりはしていないらしく、墓そのものは庶民よりちょっと大きいくらいだそうだ。そうこうしているうちに教会についた。場所はそんなに遠くないが市街地より南に行ったところにあった。大きさこそかなり大きいが色とりどりというより白を基調とした教会だ。ステンドグラスのようなものが見えるが白と透明の2色構成みたいでカラフルな感じはない。あと全体的に古そうな感じに見えるし鐘のある塔のようなものもここにはない。
馬車を停めた後、3人で一番大きそうな建物にいくと白と一部黒の修道服っぽい服をきたシスターと思われる人がドドドっと埃を立てながら走ってこっちへ来た。この世界では珍しい綺麗な黒髪黒目に何となく日本人として親近感が沸く。
「さっき見えた高そうな馬車の方! 今日はどのような御用でしょうか! お布施ですか! ご寄進ですか! それともご寄付でしょうか!」
「どんだけがめついんだよ! 全部金せびってるだけじゃねーか! 親近感ふっとんだわ!」
「あら、高そうなドレスを着たお嬢さんですね。何せ収入源があまりないのでお金はいつでも歓迎です!」
「すまない、今日は教会のことをお嬢が知りたいというので見学に来ただけなんだ。誰か話せる管理者の人はいるか?」
「え! よくみたら騎士団の人じゃないですか!? やましいことはないですよ!」
「だから、さっきから言っている通りちょっとした見学にきただけだ。落ち着きがないやつだな。管理者はいないのか?」
「それなら騎士様は私が対応しますよ! 暇ですし。あと私が管理者です!」
「お姉さんが?」
「はい、私はマリー=バッキーと申します。ここロングサンドの教会では正式な修道女なんですよ!えっへん!」
「ややこしいな」
「何がですか?」
「ああ、私もマリィっていう名前なんだ。微妙に発音違うけど」
「そうなんですか! なんか親近感わいちゃいます! まあ、そこまで多くもないですけどいるにはいる名前ですからね」
「こっちはさっきから親近感が消えて行っているんだが・・・で、シスターバッキー」
「みんなからはシスターマリーって呼ばれてるんですけど」
「めんどくせぇ!」
「えっと、なんでしたっけ、そちらのお嬢さんの見学でしたっけ。とはいっても今日はお葬式の予定は入っていませんよ。お墓参りだけしていきます?」
「墓参りは後でするとして神聖属性の魔法について知りたいんだ」
「もしかして就職希望ですか!? やったー!」
「いや、就職する気はないけど」
「すまないが落ち着いて話せる場所はないか?」
本当に暇らしく教会の中に案内してもらう。大きい建物の中は古くはあるが立派そうで礼拝堂と呼ぶにふさわしい感じだ。葬式用なのだろう。普段からお祈りに来ている人のようなものは周りを見てもいなく閑散としている。そのまま横の小さい客室みたいな部屋に案内された。
「粗茶ですが」
「ちょっと話を聞きにきただけなのでそこまでしていただかなくても」
「いやいや! もしかしたらマリィちゃんは将来の同僚かもしれませんので! 話をきけば考え直して就職したくなるかもしれませんし!」
ネイアがそういうとシスターバッキーは目をバキバキにして勧誘してくる。女神教って怪しい宗教なんじゃないかと思えてきた。なんで勧誘にこんな必死なんだよ。
「ぜひ!うちに就職しましょう!そうしましょう! 実は去年、長年勤めてくれた方が定年されまして補充もないんです。どうしても雑務が多くて雇いたいのですが、孤児院からも来てくれなくて私の仕事量ばっかり増えるんですよね。本来の仕事もあって忙しいのに。なんせほら正規のシスターですから!」
「暇そうじゃないか」
「今日はたまたまですよ! お葬式の日とかは大変なんです!」
「まあいいや、就職する気はないし。私はさっきも言ったけどマリィだ。で、後ろの二人はネイアとネス子」
「ネッシーです・・・」
「騎士団の方が引率ですか? どういう状況でしょうか」
「ああ、お嬢はマリアンヌ様の子供なのだ。私たちは護衛をしている」
「え! マリアンヌ様にこんな小さいお子様がいたんですか」
「いや、孫なんだが・・・ネス子はなんか勘違いしてないか」
「ということはお貴族様じゃないですか! 今日は相談料が期待できそうですね!」
「金取るのかよ」
純粋に神聖属性の魔法や教会について知りたいから来ただけなことを伝えると無料相談でいいとのことになった。
「そうでしたか、だとすると就職は無理そうですね。というか恐れ多すぎます。折角指示だけだして楽できる環境に戻れると思ったのに。しょぼん」
「そんなことよりシスターバッキーは神聖魔法を使えるのか? 私も使えるようになりたいんだ」
「ええ、もちろん使えますよ。主にお清めの魔法ですけど、私くらいになると万が一アンデッドが出た時も戦えちゃうやつだってあります!」
シスターバッキーから聞いた話としてはやはりアンデッド向けの魔法ということだ。私がゲームで覚えていた魔法もあったが逆にアンデッドと関係のない祝福系の魔法は全然でてこない。
「どれも初歩から中級くらいの魔法だなあ」
「いやいや ターンアンデッドの魔法まで使えるのは本当に凄いんですよ! なんせ私はこのシスターという職に人生の全てを捧げてここまで成り上がったのですから。ああ女神様、適正な給与をお願いします」
「お嬢様、実際に使えるのならターンアンデッドまでできるのは確かに凄いですよ。私も詳しくはないですが恐らく退魔に関する魔法としては一流かと」
「そこまで言うならターンアンデッドを実際に見せてくれよ」
「アンデッドはそうそう出ることはないので・・・というか出ないように私たちの鎮魂の魔法で清めたり、お墓を管理したりする仕事があるんですから」
「じゃあホーリーレイでいいや」
「見学料はいくらまで出せますか!?」
「どんだけ金欲しいんだ」
「うう、補助金の支給日前でお酒も我慢してるんですよ」
「お前、煩悩しかないのかよ・・・」
その後、外に出た。教会の後ろから墓までの間には大きい広場があり、そこでデモンストレーションしてくれるらしい。
「よ~し、やっちゃいますよ! 聖なる白よ、ここに我が祈りを紡ぎ敵を撃て!聖光射!」
シスターバッキーが右手を上にあげると彼女の体から魔力が引き出されていき掌の先に白い魔力が収束していく、そしてそのままビームのように真っ白な魔力流が空に放たれた。
「なかなか威力があるな」
「これならアンデッド相手にも戦力になるっていうのは納得ですね」
感心していると横の方から人が走ってきた。
「なんですか今の音は! シスターマリー! もうとっくに休憩時間はおわってますよ!」
「わ、私はお客様対応をしていただけです! いつもみたいにサボっていたわけじゃないですよ!」
「え?騎士団の方!? 大丈夫ですか? シスターマリーが何かやらかしてしまったでしょうか」
なんか普段の行いってこういうところで出るんだな。どうやら教会の職員さんだったらしい。この大きな教会でシスター一人が管理しているわけないわな。ただ責任者っていうのは本当だった。正式なシスターと認められているのは一人だけで、もう一人神父がいるがそれは少し遠い別の教会にいるらしい。
「わかってもらえてよかったです。これでも国を一周、修行の旅までやりましたからね
」
「それで、神聖魔法って結局どうやれば習得できるんだ?」
「まずはこれですね」
そういうとシスターバッキーは右手を出してそこに先ほどホーリーレイを放った時と同じように魔力を収束させていく。集まった魔力は濃い白色の形で視認できるほどになった。
「これは魔力を神聖属性に変化させているんです。真に神聖魔法を使える人はこの属性変化ができて、そこから魔法に変換するのですよ。一般的な魔法はそのまま魔力を魔法にしますが少し特殊なのです。初歩の浄化魔法なんかはここまでする必要はなくて呪文や魔道具の補助で魔法の才がほとんどない職員の人でもできますけどね」
「このようなやり方でできるのですね。私も知りませんでした」
「で、その魔力変化はどうやればいいんだ?」
「これは一朝一夕じゃできません。まずもって神聖属性は相性が他の魔法より重要なんです。単純に魔法の才能や魔力の量というより、この神聖属性そのものの才能のようなものかな? それがある前提で女神さまにお祈りを捧げながら他の人に魔力を流してもらって感覚を覚えていくんです。そうすると徐々にコツがわかってできるようになるっといった感じでしょうか。まあ私は神聖魔法においては天才だったということですね。なんといっても大して祈らずできるようになりましたから!」
「なんか最後に誇っちゃいけないことが聞こえた気がしたが。まあいいや、多分私も天才だからそれ流してくれ」




