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29_適性魔法

 なんとか母親の事情はわかったものの今どこに住んでるとかは結局教えてもらえなかった。絶対に会わせないという感じだなあ。というか村がやられた理由ってよく考えたら私の存在がバレたせいじゃん。村の人なんかごめん。


 母親はわかったものの父親の方は何にもだったな。うっすら覚えている感じだと母の尻に敷かれている雰囲気だったし昨日聞いた話の通り母親の方が出奔して父の方は無理やり連れていかれたのかも?いつか会ったら聞いてみよう。


 あとブロンドっていうやつには気を付けた方がよさそうだ。今日は、この後もいつも通りネス子とネイアと水月の訓練場にいくわけだし。


「おまえら、ブロンドってやつ知ってるか? 水月の騎士らしいけど」

「聞いたことがあるような」

「いやいやあんた、正規の騎士はそこまで多いわけじゃないんだから、さすがに名前くらいは覚えてなさいよ。確か2等騎士の貴族の方ですよね。一緒に仕事をしたことはないですけど」

「そいつについて何か知ってることはあるか? 私も見たことがあるわけじゃないけれど昨日おばあ様達が話していたから気になったんだ」

「見かけたことはあるのですが、一緒の任務になったこともないですし喋ったこともないのでなんとも。ネッシーも・・なさそうね」

「いや、特にないんだったらいいんだ」

「もしかして出世の話とかか?」

「むしろその逆かな? 過去の任務で無茶して失敗したとか」

「まあ誰でも大なり小なり失敗はありますからね。一応どんな人なのか気にかけておきますよ」

「頼む」


 話しているうちに訓練場についた。結局、教科書より魔法は実技だということで、お手本を見たいと話したところ普段の模擬戦の流れになった。


「そろそろパルーン以外の魔物をやってもいいんじゃないか? 今日はお前らの魔法のレベルも見せてもらいたいし」

「では、ビンゴでもだしますか」

「だせるのか!?」

「もちろん一般的な魔物ですから登録されていますよ」

「じゃあビンゴに操作しますね」

「ネス子、話した通り騎士のスキルで倒してくれ」


 既に周辺環境対策の防護壁はあがっていて、コントローラーをいじると人形が変化していく。


「あれ違くないか?」

「ビンゴですよ」

「ほら、もっとこうモフモフで奥にうるうるした目があったような」


 今出てきた魔物は以前にみたビンゴとは全然似てない。大きさも大型犬くらいあって毛が薄く地肌が見えてて前歯が牙のようにとがって外に飛び出ていて、こういっちゃなんだがブサイクだ。


「ああ、もしかしてお嬢が知ってるのって飼いビンゴですかね。あれは魔物の原種とはもはや完全に別物ですよ」

「モフれるって期待したのに! 飼いビンゴは出せないのか?」

「こいつで出せるのは原種の魔物だけなので無理ですね」


「では、始めます。スキルで倒しますよ」


 ネス子をよく見ると体全体に魔力を纏っているのがわかる、身体強化を強くして臨戦態勢になったみたいだ。ここまで魔力が動くとしっかり感知できるんだな。


「とおりゃー」


 何回かブサイクビンゴへ剣を打ち込んだあとに、一瞬のタメが入って剣に魔力が纏わりついたような感じがする。


「バッシュ!」


 剣の切込みと同時に強い衝撃が走りビンゴは元の機械の姿に戻っていった。


「どうですか、今のが剣士が使う打撃スキルです。基礎スキルなので、それなりの実力者は大抵使えます」

「さすがだな、一発で終わりか」

「まあ、所詮ビンゴなので。とはいっても訓練用ですから実践だと地形や個体差もありますし、魔物も考えて動きますからここまで簡単ではなく気を付ける必要がありますけどね」

「この魔道具で変化させた奴は考えなしなのか?」

「そうです、あくまで魔力で形を作っているだけなので作られたときにセットされた動きでの攻撃、魔法やスキルも素直に正面から使ってくるだけです」


「今のバッシュはスキルか、魔法とは違うんだな」

「魔力を使うという点では一緒ですね。魔力を直接使うか、武器や体に乗せるかの違いしかありません」


 今使っていたバッシュというスキルはゲームでもあった。スキルとか魔法みたいな分類はなかったけど。この部分はゲーム知識が使えるとすれば前衛の覚えることができるスキルとかは把握できているわけだ。あくまで攻略対象のパーティメンバーが使っていた範囲だけになるけれど。


「魔法の方は私がお見せしますね。私が得意なのは火魔法になりますけど」

「そうだ、せっかくだし他の魔物も見たいな」

「何がいいかな、ベビーボアとかか」

「そうだ、ゴブリンはだせるのか?」

「出せますけど、すばしっこいから嫌です」

「いいじゃないか、魔法を当てる訓練にちょうどいい、ゴブリンをだそう」


 今度はネス子がコントローラーを操作して再び人形が変化していく。


「きゃっきゃっ」


 これがゴブリンか。地味にゲームと完全一致は初めてだな。パルーンもビンゴもゲームだと多分スライムとかラビットみたいなやつだった。ビンゴはちょっと違うか? そして名前や特徴がゲームと一致しているゴブリンだが聞いていた通りだ。体は子供サイズだが腕や足はでかく筋肉質、大きくとがった耳と後頭部が円錐状になっていて小さいが角もあるようだ。目が大きく無表情、あまり恐ろしい感じの顔つきではなく怖くない。一応、念のためと言ってネス子がすぐ私の前にきた。見づらい。


「あれがゴブリンです。一応出しましたが、こういう知能の高い系は模擬戦と実態が異なるのが多いですよ。ゴブリンも何度か実践で戦ったことがありますが、あれとは違って服も着ていますし顔も隠しています。それに使ってくる魔法なんかはかなり個体差がありますよ」


 あくまで模擬戦だということを強調して教えてくれる。いずれゴブリン退治をするときには、この経験をもとにすると確かに危ないだろうから、あくまで参考だな。そりゃあ人間だって個人で違うんだから魔物だって才能もそれぞれ違うわな。本物は服を着てるってことはっと思ってよく見ると確かにすっぽんぽんだ。何がとは言わないがあれはオスゴブリンのようだ。キャー。


「ではいきます! ファイアーボルト!」


 ネイアが炎の魔法を簡易詠唱すると魔力が空中で炎の鏃(やじり)の形をとった。一つ目の炎の鏃がゴブリンに向かって飛んでいくとゴブリンは素早い動きで避けようとする。しかし炎の方もスピードが速くかわし切れず肩にあたって鏃はそのまま突き進み消えた。間髪入れずに次の鏃がゴブリンのお腹に向かってあたる、そこからさらに3発、計5発の炎の鏃が連続でゴブリンにあたり光と共に人形に戻っていった。


「すげー!」


 これもゲームであった魔法と同じだが生で見ると迫力が違う。強そうな魔法は初めて見たがこれだけ威力があると世界が違うわけだ。


「どうですか、これが攻撃魔法です」

「見直したぞ! あれって何発もいけるのか?」

「基本の攻撃魔法ですからね、といっても私のように連発できる人はそこまでいないんですよ。私は連続だと10発までは連射できます」


 ネイアは得意げに言ってくる。一般人はおろか冒険者でも攻撃魔法が使える人は貴重だということだったしすごいのだろう。


「わたしもやってみたいぞ! どうやればいいんだ?」

「さすがにお嬢様の年齢で攻撃魔法は厳しいですね。もっと魔力が高くならないと訓練すら難しいですよ。私もきちんと出せるようになったのは大学に行って学んでからですし」

「お嬢は水魔法適性だったんじゃないか? このあいだの水魔法はもはや攻撃魔法だったぞ」

「そういえばそうでしたね。水魔法なら訓練を始めれるかもしれません」


「訓練ってどうやるのが普通なんだ? こないだのゴブわか本には具体的な使いかたは載ってなかったけど」

「あれは魔力知識の基礎ですからね。いわゆる基本属性であるエレメンタルの攻撃魔法だと生活魔法から入って魔力操作を訓練しつつ魔力をあげていきます。その後はお手本を見せてもらって魔力操作の訓練を続けるのが一般的でしょうか。私もそんな感じでしたね。実際に使えるようになってからは個人個人の形に使いながら最適化していくので例えばさっきのファイアーボルトでも炎の形とかは人によって結構ちがいますよ」

「結局、簡単に身につけれる方法はないのかあ」

「そもそも魔力も年齢と共にあがっていくからな。才能によって上がり幅に差はあるが子供の時にできることは限られる。冒険者なんてほとんど大人になってから攻撃魔法の訓練を始めるわけだしな」


「そういえばお嬢様はどうやって生活魔法を学んだのですか? お嬢様くらいの年齢だと普通は魔力量的にできないですし、もしかして貴族の特別な方法とかだったりします?」

「ああ、あれは訓練も何も使ってる人を見て真似したらできただけだ。その後は水を何回も出してるうちに細かい操作もできるようになったんだ。さっき言われたやり方と結局一緒だな」

「生まれつき魔力が高く才能があるのは遺伝だと思いますが、それでも魔力操作は最初に感じれるまで結構時間がかかるはずなんですけど・・・」


「あと別に水魔法以外もできるぞ ほら」

「「え!?」」


 ぼっ という音と共に一瞬だけ炎が揺らめいた。危ないからと思って全く練習していなかった生活魔法の火種を出すやつだ。


「お嬢は水の適性があるという話だったのでは?」

「適性でなんとか出せているのだと思いましたが、この年で複数扱えるなんてありえないですね。大学で一緒に学んだ貴族の方でも聞いたことがないですよ。このことは皆さん知っているんですか?」

「どうだっけ、喋ったかな」

「これがウィンガーラ本家だから成せる力なんでしょうか」

「そういえば身体強化も自然とできているようだったし、今の時点で才能のある大人すら超えているかもしれないぞ。適性の水魔法はどのくらいできるんだ?」


「こんな感じかな」


 そう言って両手から水をぴゅーっと勢いよく出してやった。さながら放水車だが、いかんせん攻撃力はなさそう。


「これ生活魔法なのか?」

「きちんと魔法修練の過程を経ていないので最適化できていないと思いますが、もう攻撃魔法と変わらないレベルの魔力量と魔力操作ですね。これが才のあるものの最大適性なんでしょうか」


「あ!」

「どうした?」

「適性で思い出した! 適性ってどうやってわかるんだ?」

「特別測定するとかはないですよ。色々やって相性のよいものを探す感じでしょうか。というか適性がないと魔法として発現も難しいので自然とわかると思います。あとは時間をかければ多くの魔法を修練することもできなくはないですね。長命種とかだと複数の魔法を会得して器用に使いこなす方もいるとかです」

「スキルも似たようなものだ。そっちは体格や装備の影響も大きいが」

「以前に水属性の適性だろうって言われたんだけど」

「それはそうでしょうね。その年齢でここまで扱えればドンピシャで水適性以外のなにものでもないですよ」

「いや、私は神聖属性の魔法が得意なはずなんだ!」

「神聖属性ですか?」



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