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27_魔法学 基礎編

「まありいい、まあた逃げようとしたザマスね」


 結局ローレッタのババアがきてから教育が恐ろしい勢いで加速している。頼みの綱だったシロッコとの一緒にやる予定だった午前の勉強時間だったが二日目にしてローレッタの教育計画(帝王)とやらで取り下げられてしまい、週の後半にはシロッコの転校手続きがされた。城街にも当然学校はいくつもあり、城から歩いて通えるところもあったらしい。というかそれなら最初から私もそっちの学校に入れておいてくれればこうならなかったのでは? ちなみに昨日シロッコに会ったときは平和そうに「もう友達できたよ~」とか言っていた・・・私もそっちに行きたいんだけど。


 で、最初は色んな言い訳をして、せめて貴族教育という名のマナー講師時間を減らせるように普通の勉強時間を増やそうとしたのだが全然通じない。そんなわけでいよいよ耐えられず強硬手段で逃げようとしたのだが。


「さっさと捕まえるザマス!」

「すまんな、お嬢」

「裏切者!!お前ら護衛騎士なんだろ!そっちのババアから私を守れよ!」

「そうは言ってもウィンガーラ家に雇われている水月の身としては逆らえないんだ」

「私だって本家筋だぞ!」

「いやまあ・・お嬢は子供だし・・・」


「ふふふ、早く慣れることザマスね」


 ようやく昼ご飯が終わった。これで一息つける。


「あ~今日も疲れた」

「お嬢様、午前の勉強で半分終わっただけなのでこれから訓練ですよ?」

「本はまだ届かないのか?」

「じゃ~ん、昨日届きました! これです!」


 結構分厚い本をネイアから渡された。

 ゴブリンでもわかるシリーズ 魔法学 基礎編 著:リターシア=モリゾー


「私も学生の頃に使っていたゴブわかですよ~、懐かしいなあ」

「有名な本なのか?」

「はい、色んなシリーズが出ていて世界的ベストセラーなんですよ。値段はかなり高いんで庶民は買えないんですけど、普通に大学の教科書としても使っているレベルです」


 ふ~んと言いながらパラパラとページをめくる。魔力の扱いや魔法の原理みたいなものが色々と書いてあるようだ。


「というかゴブリンとかやっぱいるんだな、この辺でも出たりするのか?」

「ゴブリンはウィンガーラだと出ないな、そこそこ強敵だし森の深いところであればいるかもだが」

「ゴブリンって強敵なのか? 雑魚なんじゃ?」

「ゴブリンはこの国の魔物の中だとかなり強いほうですよ」


 ゲームでも確かゴブリンは出てきてたな。そんなに強くなかった気がするけど。今後もし魔物を倒したりするときにその辺の知識にミスがあると危ないし、ちょっと確認するか。


「ゴブリンってどんな魔物なんだ?」

「ゴブリンは子供くらいのサイズの魔物で人にかなり近いですね。この国や北大陸にいる種類は肌の色も私たちに近いですし」

「人と違って腕や足は結構太いぞ、あと顔を隠すのが習性か? 賢いやつは言葉も喋れるものもいるらしいぞ。知能は幼児くらいしかないらしいがな」

「それで、ゴブリンでもわかるっていうことだったのか、強いっていうのはどうれくらいだ?」

「本能だけで動いている魔物と違って小さいとて人型で知能が多少あるからな、だいたいは集落を形成しているし簡単な武器を使う場合もある。集団でくるとさすがに強い、腕や足が太く筋力もあってすばしっこいし」

「とはいっても出会うことはほとんどないと思いますよ。わざわざ魔物の生息域なんていきませんしね」

「ゴブリンなんてほっておいたら危険じゃないのか? 冒険者が倒しているのか? 人だって攫ったりとか」

「どうでしょうか、被害があれば騎士団や冒険者がでますけど、知能も魔物にしては高いので人の生息域にはほぼこないと思いますよ。人を攫うっていうのは聞いたことないですね」


 その後も色々聞いたが、定番の女性を攫うとかはしなくて、あっても食料を求めて生息域から人里に降りてくるくらいだとか。というか魔物は世界に漂う魔力から生まれることがほとんどだそうだ。魔物同士の交配でも生まれるが、そうなると魔力が薄くなって弱いんだと。その結果がスライム乳や馬車を引っ張ってる家畜化された魔物らしい。もはやそいつらは魔物というより、ただの動物扱いという方が近い。魔物と動物の違いはぶっちゃけ厳密にはなくて、体内に魔石があって魔力による活動が主なものが魔物らしい。ゲームではただ倒していただけだから生態までは初めて知った。


「なので、この周辺でそこまで魔物被害が深刻っていうのはないですね、冒険者も間引きしてますし」

「いざとなれば我々のような騎士団や軍もいる、ランバーの方はそうでもないかもしれないが」

「ランバーって南の方だよな? 何かあるのか?」


 ゲームでは全く出てこなかった地名だ。こっちにきて国の地図とかも見せてもらったのだが、ゲームで聞いたことがある地名や各キャラの出身地とかはすべて北側だった。さらにこの国って島国だったらしく、島の向こうに大陸がありそっちの方が発展しているとか。なんかゲーム設定を拡張したってレベルじゃないよな。むしろこっちの世界が先にあってゲームの舞台として使ったっていうほうがしっくりくる。


「南は発展していないですからね」

「アンデッドも多く出ると聞くな」


「アンデッドがいるって言うことは悪魔もいるんだよな」


 私の第一目標についてぽろっと喋ると二人が驚いた眼で見てきた。


「悪魔なんてここにはいないですよ!」

「悪魔がいたら大騒ぎだからな。悪魔もどきと呼ばれる低級の弱い魔物なら稀にいるが、本物の悪魔は北の方にしかいないんだ、見たことはないがすごく強いらしい」

「この国に悪魔が出たらどうなるんだ?」


「悪魔の強さにもよるが、それなりに上位の奴が出た場合は相当な被害になるな。水月が総出でやっても死人はでるだろう」

「そんなになんだ」

「悪魔は世界の敵と呼ばれていますからね、もし出現があれば何としても倒さなくてはいけないんですけど・・・まあ、そんなことは起きないので大丈夫です!」

「悪魔って人間を襲うんじゃないの?」

「人間を襲うこともあるらしいんですけど、知能が非常に高くて、すっごい臆病だそうです。なので北の果てから降りてこないんですよ」

「少なくとも、この国で悪魔が出たことはないから安心して大丈夫だぞ」


 ドッペルゲンガーを倒すために聞こうと思ったが気軽に言っていい話じゃなさそうだ。ゲームの設定でもドッペルゲンガーは上位悪魔ってことだったはずだし。これは想像以上にハードモードなのかもしれない。


「それより、魔法学の授業を始めましょう。教科書に沿って説明していきますね」


 ふむふむ。確かに、この本は凄くわかりやすいな。今まで謎だった魔法関係のことがかなりわかったぞ。結局、二人が帰った後も夜通し読んでいてもう日が昇りそうな時間だ。が、今日は空曜日の休みで予定なんてないしいいだろう。


 ゴブわかの解説によると魔力は誰でも持っているが量や特性は才能にかなり左右されるし、遺伝しやすいとか。貴族が戦力として重宝されるわけだ。魔力はあらゆるものを代替して形どることもできれば純粋なエネルギーとしても機能するようだ。それで、誰もが自然に身体強化は使っているらしい。意識したことなかったけれど、多少寒くてもみんな薄着で問題ないことや病気になりにくいのもそのせいか。あと私がやたら力持ちだったり足が速かったりしたのも魔力が強くて自然に使いこなしていたんだな。そして魔物を倒したり鍛錬したりで自身の魔力が強化されていくことがレベルアップということか。


 ギルドでレベルが厳密に数値として測れるわけじゃないっていってた意味もわかった。あの装置は結局、魔力の強さを見てただけってことだな。ゲームみたいにステータス画面とかはもちろんでてこないし。ステータス画面?


「ステータスオープン!」


 叫んでみたが何もでなかった。やっぱそうだよね。


 あと、魔法にも色々あることがわかった。今更だけど。普通に想像する火とか水の魔法、身体強化や回復みたいな魔法、それ以外にスキルと呼ばれるようなものもあるみたい。いわゆる技に魔法を載せたのが体系化された形のようだ。ただ、スキルに関しては別の本らしくほぼわからなかった。多分騎士団はそういうの得意だろうから次の模擬戦で見せてもらおう。


 それから、やっぱり神聖属性魔法について、みたいな個別の詳細はこの初級本ではわからなかった。まあ、初級本で学べたら大学の意味ないしな。


 とはいっても、悪魔はどうするかな。ゲームの魔物知識がどこまで役に立つのかも怪しいし。といってもゲームの知識として苦手属性や使ってくる魔法、単純にどのくらいの適正レベル(強いか弱いか)とかは覚えてる。戦闘パートってどっちかっていうとおまけ要素だったはずなんだけど、その割にすごい作りこまれてたんだよなあ・・・やっぱこっちの世界が先に存在してそれをトレースした説が正解か?


 知識的な対策でいえば悪魔は神聖属性魔法が苦手という設定だったから、尚のこと早く覚えておきたい。


 ネス子とネイアは悪魔なんて出ることはないとか言っていたけど・・出るんだよなあ。ゲーム通りだと。まさにこの国に。どうにかして悪魔の情報も探っていかないといけないか。


 戦力的には水月の上位陣がどのくらい強いかどうかか?ゲームのまま進めると魔法学園に入って王子達とパーティを組んでレベル上げてって時間がかかりすぎるし。とはいってもどうにもならなそうだったらゲーム通り進めて確実に倒すっていうルートの方がいいのかな。う~ん。


 色々考えていたら寝落ちしてたようだ。気づくと完全に日が昇っていたが、今日は作っておいた「起こさないでいいよ」の札を部屋のドアノブにかけておいたので大丈夫だろう。夜更かしして本読んじゃったし二度寝するか。


 ドンドン

「マリィ~、おじいちゃんがきたぞ~」

「うるせぇ~~~!!」


 煩いのでとりあえずドアを開けた。

「おやすみ」

 バタンッ!

 一言いってドアを再度閉めた。


「まありいいい」


 やべ、別の声もした。


 ガチャ


「あらら、おはようございます。今日はお休みの日でメイドが起こしに来るのを忘れていたようですわ。おほほ」

「あら、そうだったザマスか。とおこおろおで、このドアノブについている札は何かしら」

「ホテルで見るとっても便利な札ですね。裏返すのを忘れていましたわ」

「朝から口はよくまわるザマスね。まあわかりました。とりあえず昼食と夕食は淑女教育の練習をしますことよ」

「休みの日だぞ!」

「淑女に休みはありません! そして言葉遣いが乱れてますわ! 明日までに最低限出来ないとだめですのに」

「明日? 何かあるんでしょうか?」

「そうじゃった、明日の夕食は家族団欒の時間取れる予定になったぞ。マリアンヌもこれるそうじゃ」


 ようやくマリアンヌと話せるチャンスがきたか。とはいえ、どこまで踏み込んでいいか悩むな。両親のことは聞きにくいし、悪魔については何も情報がないし。


「ということでテーブルマナーの集中訓練ザマスよ!」


 まずは明日会うババアより目の前のババアをなんとかしないとかあ。



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