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25_おでかけ

「お嬢様、朝でございます」


 いつも通り起こされた。今日って休みの日じゃなかったのか。


 城で働いている人たちのシフトだがメイドのアニー曰く、特に何かなければ住み込みのメイドや厨房などは交代制で普通に週末も稼働しているらしい。ただし週休二日ではあるとのこと。一方で家の事業や資産管理などを行っている雇い人達は週末が休みの通常カレンダー勤務らしい。執事のラブロフもそうとのこと。というか、あいつ通い勤務だったらしい、夜遅くまで見た気がするぞ・・・


「というわけで、今日は特にやることがないらしいから街を見てきたいんだけど勝手にでていいのか?」

「私ではわかりません。執事長は週末で居ませんからメイド長の方に聞いてみます」

「それじゃ、私は朝ごはん食べにいくか、食堂は普通にやってるんだよね?」

「はい、厨房は普段通りですよ」


 メイド長って城で全然見てないけど、そっちは住み込みらしい。とりあえず食堂に行ってみたが、たしかにいつもとあまり変わらない。ちょっと人はすくないかな?


「マリィちゃん、おはよー」

「おはよー、シロッコも今日は休みか?」

「うん、成人までは見習いだし、平日は勉強もあるから週末休みなんだって」

「そっか、私も休みだから今日のとこは、とりま街を観光でもしようかと思ってたけど一緒にいくか?」

「うん、私もこっちの街はちゃんと見てみたい!」

「私は許可待ちだけど、シロッコは勝手に出ても大丈夫か?」

「住み込みで部屋を貰っているだけで、あとは自由っていう話だったよ」


 ご飯を食べているとアニーがやってきた。


「マリィお嬢様、こちらにいらっしゃいましたか。メイド長に聞いてきたのですが、特段指示はでていないそうです。ただ、流石にお一人で外出されるのはちょっとだめじゃないかとのことでした。先日いらっしゃったばかりで道もわからないでしょうし城でお過ごしになられた方がよいかと」

「確かに道もわからないしな。誰かが来てくれたらいいのか?」

「まあ、城の周りは治安もよいですし、大人がついていればよいのではないでしょうか」

「じゃあ、アニーがきてくれれば大丈夫か」

「え?私ですか?」

「専属ってことだったからいいんじゃないのか?」

「いいのかな?まあ散歩くらいならいいですかね」


 遠出するわけではないので別にいいだろうということでアニーは来てくれるらしい。少し待っていると私服に着替えたっぽいアニーがやってきて城の外に案内してくれた。城から出るまでも結構歩くので途中話しながら歩いたがアニーはロングサンドの生まれで去年、城に就職したばかりだとか。なので地元っ子だ。兄弟が多く実家を出たかったらしいので住み込みでやれる今の仕事に着けてラッキーだったとか。


「お金も預かってきましたのでお昼はどこかで食べましょう。とりあえずお二人はどこか行ってみたいところはありますか?」

「この辺のことは何もしらないから任せるよ。というかロングサンドの街について教えてくれ」

「かしこまりました。まずはここです!」


 そう言ってアニーは後ろを振り返った。


「ここ、金の城です! このお城は王国でも大きさは一番らしくて、首都の王城よりも大きいみたいです。ロングサンドのどこからでも見える名所ですよ。中はリフォームされていますが、外の姿は昔建てられた時の姿を維持しているそうです」

「そういえば、前にも誰か金の城って言ってたけど、何が金なんだ?別に金色の部分なんてないけど」

「それはお嬢様の髪の色ですよ。ウィンガーラの歴史は王国の中でも随一で昔からウィンガーラ家は珍しい金色の髪の方が多いみたいです。大陸の方には同じように金色の髪の方もいるらしいですけど、この国ではウィンガーラ家に所縁のある方しかいないと聞いたことがあります」


 その後は適当に近所を散策した。なんでも古い城下町なのが城周辺で城街(しろまち)と呼ばれていて、今ロングサンドで栄えているのは少し離れた州庁舎のあるカーサという地区らしい。いくつか歴史のありそうな建物をみていたらもうお昼の時間だ。


「カーサの方には百貨店や専門店、レストランもいっぱいあるんですけど、こちらは観光と住宅地が多いのでそんなにないんですよね。と言ってもご飯を食べれるところは結構あるのですが、お昼は何か希望ありますか?」

「まあ、なんでもいいんだけど、せっかくだからここの特産とかロングサンド料理ってある?」

「正直、あまりこの料理が有名っていうのはないですね。芋が特産でしょうか?ありきたりですし、適当に入ってしまいましょう」


 近くのレストランに入ってテーブル席に着き、メニューを見る。貴族っぽい高級店とかにはない普通の店だ。


「よく食べてたマグロ料理ないね」

「そういえば、お二人はトラクーンからいらっしゃったんでしたか、あの辺りはマグロが有名ですからね」


 やたら出てきてたマグロってあそこの特産だったのかよ。そう言われてみるとメニューは魚が全然ない。とりあえず日替わりの定食にした。


「そういえば、全然私たちくらいの子供みてないね」

「そういえばそうだな?城の周辺だからいないのか?でも結構住宅もあったよな」

「ああ、ウィンガーラは空曜日も午前は学校をやっているところが多いんですよ。数年後には休みになる教育改革が進んでいるってききましたよ」


 なんでも教育カリキュラムとか体制とか州ごとで結構違うらしい。州って日本でいう都道府県だと思っていたのだが、それよりも自治がかなり強いっぽいな。


 そもそもこの国では義務教育というのはないが国営学校は設置が州に義務付けられている。義務教育ではないとは名ばかりで普通は全員が学校に通うらしい。孤児院は人数が多いから学校にいかせず、院内でカリキュラムをこなしていたのだろう。


「学校はそんな感じですね。義務ではありませんから、これからもお二人は家庭教師の教育を受けていくので大学以外は通うことはないのかと思います。シロッコさんは途中から編入かもですけど」

「大学もみんな行くものなのか?」

「大学はほとんど行きませんよ。私もこのとおり大学は行かずに就職していますし、非常に狭き門です。家柄がエリート以外に大学へ行くのは凄い成績優秀者だけです。本当に狭き門なので才能がないとまず行けません。将来有望だと判断されて奨学金が出るので、それで行く感じですね。庶民から大学に行く方はだいたい凄い職業に就くか、お金を貯めてから魔法を学びに行く高位の冒険者とかでしょうか」


 庶民から大学へ行けるのは才能がある選ばれしものだけなのか。


 ん?頭にポンコツ女騎士二人が浮かんだが気のせいだろう。


「おいこら、こんなんで商売していいと思ってるのか~!?」


 食後にまったりしていたら、奥で何か揉めているようだ。

「何か揉めていそうですね。さっさと出ちゃいましょう」


「なんだったんだろうなあ?」

「最近、飲食店にいちゃもんをつける不良グループみたいなのがいるって噂をきいたことがあります。あれがそうだったんでしょうか」


 お昼を食べた後も散策をした。公園とか名所的な所が割と歩いていける範囲にあり、歴女ではない私はそれほど興味をそそられるわけでもなく微妙だった。それよりも歩きながらアニーに色々地元の話を聞きたほうがおもしろかったくらいだ。やっぱり遊べるところとかにいきたいなー。


「ちょっと早いですが、そろそろ城に帰りましょうか。遅くなると怒られます」

「今日はわざわざありがとな。アニー」

「いえ、仕事ですから! これでお給料が出ると思うと、この仕事に就いて正解でした!」

「そ、そっか・・」


 満面の笑顔で言われたからちょっと引いた。


「次は繁華街にいきたいなあ」

「それだと流石に馬車ですね」

「城の馬車って簡単に使えるのか?」

「はい、城は専用の馬車が結構な数ありますから大抵いつでも使えますよ。予定がわかっていれば予約もできます。ただ、私だけでは出せません」

「アニーじゃ許可でないのか?」

「いえ、免許がまだ取れてないので・・・馬車教習学校にまだ行けていないんです」

「免許がないと馬車って駄目なの!?」

「当たり前だよ?」


 シロッコでも知っていたらしい。そりゃそうか、交通ルールを守れないと危険だし結構な数の馬車が走り回っているから規制は必要だよな。もっと自由だと思ってたけど、科学が発展してないだけで、こういうところは無駄にしっかり制度化されている。


 馬車だが思ったより安価で運用できるみたいで、かなり普及している。そもそも馬じゃなくて魔物で走らせているから維持費も安く手入れも楽らしい。とはいえ一家に一台というわけではなく、カーシェアのような形でご近所に1か所はレンタル所があるという感じが普通らしい。城はかなりの数が常備されていて予約しなくても余り気味に運用されているから便利なんだとか。



 翌日、今日も休みなのだが

「お嬢様。朝でございます」

「むにゃむにゃ、今日は起こさなくていいって言ったはずだけど」


 明日は起こさなくていいってアニーに言っておいたはずなんだけど、デイジーが起こしに来た。あれか、「今日は清掃不要です」の札を作ってノブにかけておいた方がいいのか。


「お嬢様、タカダーイア様がいらっしゃるとのことで起こしに参りました。ご支度お願いします」


 そっちかー、週末だし来そうな気はしてたんだよな。



「マリィ~! おじいちゃんがきたぞ~」

「きちゃったか」

「きちゃったぞ! 昨日も貯まっていた仕事をさせられていたが、さすがに今日は休みじゃ!かわいい孫が心配で心配で」

「元気だから帰って休んでいいぞ」

「城での暮らしは不自由ないかの? 本当は毎日でもきたいところなんじゃが、寂しい思いをさせてすまんのう。今日は一日一緒におれるからな!」

「こいつ、孫可愛さに聴力を無くしてやがる・・・」


「一緒に行きたいところはあるかの?」

「昨日、城の周りは見て回ったから特にないよ。お疲れ」


 結局、普段使う服とかを買ってくれるらしく連行された。百貨店に行くらしい。部屋の調度品とか家具は直接発注しているらしく選べるわけではないが服については選ばせてくれるそうだ。外商とかは特にないらしく馬車で店舗に向かっている。


「そういえば、おばあさまとは今後も滅多にあえないのか?」

「マリアンヌと会いたいのか?わしじゃだめか?」

「めんどくせぇ~、一応聞いてみただけだよ」

「マリアンヌは公務でずっと予定が詰まっておるからな。それでも月に数回くらいは時間を取れると思うぞ。一応、城で暮らしておるわけじゃし」

「城で会ったことないぞ、ということはおじい様も城で暮らしているのか?」

「いや、わしは入り婿なんで別に自宅があるんじゃ、一応、城にも部屋あるがほとんど使っておらん。職場からも遠いしな。でも、これからはわしも城で暮らした方がいいか?そうか、そうじゃな、そうしよう!」

「仕事優先でどうぞ、じゃあ、おばあ様は城住まいか?」

「うむ、マリアンヌは城の主じゃからな。とはいえ、あやつも毎日は戻っておらんはずじゃ、基本は職場の総合庁舎1号館におるからの」


 マリアンヌのことをもう少し詳しく聞いてみたが城に戻るとしても自室直行で寝に戻るだけらしい。というか結婚時からずっと別居なんだとか。こっちの常識はよくわからんな。


 そうこうしているうちに交通量の多い大きい道路にでた。ロングサンドに来た時は城に直行だったから、この辺の中心街は通ってないんだよな。近くで見るとやはりでかいビル群だ。城ほどの大きさはないが、トラクーンでは見なかった高層ビルが並んでいる。高層といっても日本にあるタワマンのような50階とかそんなやつではなく上はせいぜい10階そこらだと思うが1階の高さと1軒当たりの面積は圧倒的にこっちがでかい。切り出したと思われるかなり大きな石造りだ。どうやって運んでるんだろ、ピラミッドみたいなもんなのか?


「渋滞か、日曜はいつもこうじゃな」

「こんなに人がいるんだな。馬車も凄い走ってるし」

「そりゃそうじゃ、ここは王都に次いで栄えていると言ってもよい大都会じゃからな」

「たしかに、建物もすごいな。城もだけど、こんなでかい建物どうやって建てたんだろ」

「ウィンガーラは職人もいっぱいいるからの、ほら、あそこは工事中じゃ、大きいシアターが作られる計画だそうじゃぞ」


 魔道具っぽい重機が動いていて建材を積んでいるのが見えた。人は乗っているわけではなく横から操作しているっぽい。そうか、魔法のある世界だから、こういった建築物は魔法という動力源がある分、地球より簡単に建設できるのか。テクノロジーが発展していなくても自由度の高い建物が建つわけだ。


 王都はもっと栄えているらしいし、どうせ魔法学院でいくから楽しみだな。


 そうこうしているうちに百貨店に到着、馬車は駐車場に止めて中に行くと色々な店がはいっていて、普通にデパートという感じ、客も金持ちだけしかいないくて空いているかというと、そんなこともなく普通の人っぽいのがいっぱいいるので貴族御用達というわけではないっぽい。そもそも城に住んでわかったが、割と近代化?しているので物語のガッチガチの貴族がいて横暴しているっていう感じは全くなく、金を持っているだけで庶民とそこまで大きくは変わらないのかな。王様くらいになると違うのかも? ゲームと一緒で王様はいるし、王子様もいるらしいし。


「そろそろお昼じゃから、買い物の前にどこかでお昼ご飯を食べよう、食べたいものはあるか?」

「ウィンガーラの有名な料理とかが食べてみたいかな」


 昨日、アニーにも同じことを言ったが金持ちだと違うのか試しに言ってみた。


「そうじゃな、なんでもうまいが肉が多いかの」

「魔物の肉じゃないだろうな」

「ウィンガーラは畜産業も割と多いぞ、品種改良した魔物もおるが牛、豚、鳥、狼、だいたいのものが揃っておる」

「その並びに狼が入るのかよ!」

「では、ステーキとかがいいかの」


 百貨店の上階まではエスカレーターが動いていて、それで上がりレストランフロアの中でも高級そうなお店に入った。お昼時だが明らかに高級店でそこまで人はいなく個室に案内された。お供として付いてこさせられているメイドのデイジーも一緒だ。


「私もよろしかったのですか、タカダーイア様」

「よいよい、マリィも好きなものを頼むんじゃ」


 さて、何にするか、といってもステーキ店なのでメニューはほぼステーキ。どれがいいかなんてわからないので、タカダーイアと同じウィンガーラ牛のステーキにした。


「お待たせしました」


 見た目は普通のステーキだ。隣のデイジーは「こんな高いお肉初めて食べます!」っといってもう食べている。あ、そうだ、まさかと思うが牛っていうはミノタウロスとかじゃないだろうな。変なもの食わされたくないから念のために鑑定してみるか。ステーキに向かって鑑定魔法を放った。


 頭の中に「うしっ!」と浮かんできた。よかった。普通に食える。


 食後はお店に行くのかと思いきやその辺の店舗を素通りしVIPルーム的な所に通される。


「タカダーイア様がいらっしゃるのは珍しいですね」

「孫娘に似合う服を頼むぞ」


 そこからはもう着せ替え人形だ。


 店員は次々に服を持ってくるし、じじいはマジで金は持っているらしく何を着ても、かわいい!買った!しか言わないし、あと付いてきたデイジーもこういうの初めてらしく興奮しているのか、やたら勧めてくるし。疲れた・・・


 結局かなりの数の服を買って帰宅、服自体は後で城に送ってもらうらしく特に荷物をいっぱい持って帰るわけではなく手ぶらだ。


「来週は一緒にどこにいこうかの~」

「げ、来週も来る気かよ」

「毎週来るぞ~、行きたいところがあったら遠慮なくいうんじゃぞ」


 行きたいところか。まあ足代わりにはなるし色々調べて見ようかな。城には図書室もあったし地図もあるだろう。


「そういえば、明日からローレッタがくるんじゃったな。しかり勉強するんじゃぞ」

「なにそれ?」

「前にも言ったじゃろ、マリィの家庭教師じゃ」



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