7-1-58(第547話) 虹無対戦~無の国編その21~
「!?」
カラトムーガの言葉を理解した俺は驚きを隠すことが出来なかった。
「それってまさか・・・!?」
リーフはカラトムーガの言葉を聞き、事態のやばさに気づいてしまったのだろう。顔を青くさせていた。
「いや、大丈夫だ」
「「「!!!???」」」
俺の言葉にリーフ達だけでなく、カラトムーガ、ムーアも驚く。
「大丈夫だから、気にしなくていい。さぁ帰ろう」
そう言い、俺はリーフの背中を押す。
「で、ですが・・・、」
リーフは何か言いたいのだろう。視線を上に複数回おくる。
「大丈夫。あれは嘘だ」
「「「うそ???」」」
俺の嘘発言にリーフ達は疑問を隠すことが出来ない。
(無理もないか)
今の俺の発言に、根拠なんてものは一切ないのだから。
「だからこれからやるお疲れ会の為に、少し休んでいてくれ」
「いや、でも・・・、」
俺は無言で魔法を発動させる。魔法の効果は、対象を眠らせる魔法だ。その対象をリーフ達に設定する。
「いいから。後は全部、俺に任せてゆっくり休んでくれ」
「ですが・・・!?」
ここでリーフ達は自身の違和感に気づく。
何故急に眠気が襲いかかってきたのか。
そして、その原因が誰なのか。
何故、こんなことをするのか。
リーフ達は彩人を見る。
「駄目、アヤト・・・!」
ここでリーフはこと切れてしまう。
「あや、と・・・、」
「わたしたちも、いっしょに・・・、」
「おにいちゃ、ん・・・、」
「ごしゅじん、さ、ま・・・、」
「しょくぶつさんたち、おね、がい・・・、」
イブ、クリム、ルリ、クロミル、モミジもこときれていく。
「アルジン、まさか・・・!?」
「悪いな、レンカ」
どうやらレンカは察してしまったようだ。俺はレンカから魔力を抜き取る。
「そんな!?駄目です、アルジン!独りでは・・・!」
レンカから魔力を抜き取ることで、レンカはただの魔道具となった。これでレンカの意識は完全になくなっただろう。
「さて、」
俺は改めて黒い球体を見る。
「どんどん大きくなっているな」
「そう、だな」
「ところで、どうして私はあの者達みたいにしなかった?」
セントミアさんは俺に質問してくる。
「答えは簡単だ。俺の不意打ちが効かないと思ったからやらなかっただけさ」
「・・・そうか」
そう言い、セントミアさんも黒い球を見る。
「それで、これからどうするつもりだ?」
「無論、なんとかするさ。なんとかしてみせる」
そう言いながら俺はカラトムーガに近づく。
「おい、あの魔法をなんとか出来ないのか?」
さきほどの呟きは聞こえていたし、呟きの意味を理解出来ないほど鈍感ではない。
「・・・無理だ。我の制御下から外れたあの魔法を止めることはもう誰も出来ない」
「「「!!!???」」」
カラトムーガの発言に俺は驚きを隠すことは出来ない。
「・・・おい。あの魔法を止める方法を教えろ」
「だから先ほども言った通り、我の制御下から外れた【虚滅】を止めるなんて誰も出来ない。出来るはずがないのだ」
俺はカラトムーガの胸ぐらを掴む。
「分かった。言い方を変えよう。あの魔法はどんな魔法か教えろ」
「・・・あの魔法、【虚滅】は我の魔力を核とし、ありとあらゆる負の感情を吸収し、凝縮してぶつける魔法だ。あの魔法が暴走したとなれば、吸収、凝縮した負の感情が我々に襲い掛かり、死は免れないだろう」
更にカラトムーガは続ける。
「我々だけではない。この世界に住む人々にもこの負の感情が襲い掛かり、世界が負の感情に支配され、負の感情以外何も存在しない世界になるだろう」
「・・・」
カラトムーガの魔法、【虚滅】、だったか。とてつもない魔法だな。
(負の感情が世界を滅ぼすのかよ・・・)
カラトムーガの説明のおかげで、あの黒い球体がどんなものか分かった。
「あの魔法はお前と同じ、独りだと攻撃が通らず、防御不能なのか?」
「・・・いや・・・だが・・・、」
「いやどっちだよ」
「・・・我と同じ力を持っている者なら、あの魔法に干渉出来る・・・と思う」
「なんとも歯切れの悪い言葉だな」
だが、この発言で分かったことがある。
それは、俺ならあの魔法を止める可能性がある、ということだ。
「少なくともお主ならあの魔法に干渉出来るぞ」
「それは、お前と同じ無魔法に適性があるからか?」
俺はカラトムーガと同じ、無魔法に適性がある。だからあの魔法、【虚滅】に干渉出来ると推測した。
その推測に対し、カラトムーガは首を横に振る。
「それもあるが、お主から神の力を感じる。それもあの魔法に干渉出来る理由の一つだと思う」
「俺から神の力を?どうして・・・?」
ここでカラトムーアと視線が合う。
(そうか)
カラトムーアが俺をこの世界に呼んだから、カラトムーアの力の一部が俺の中にあるのか。
(・・・いや、それだけじゃないな)
俺は自身の胸に手を当てる。
その手には、俺自身の力だけとは別の力を二種類感じた。
一つは、さきほどカラトムーガも言っていた神の力。
もう一つは、モミジと同じ力。
(俺の中には、俺自身の力、モミジの力、神の力がある)
「ならまずは、あの魔法に干渉出来るか試そうか」
俺は魔力の塊を【虚滅】に向けて放つ。
「・・・見事に吞まれたな」
「ああ」
あれじゃあ効いたのかどうなのか判断出来ないじゃないか。
「なら次は・・・、」
「おい!危ないぞ!!」
俺は次に、【虚滅】との距離を詰める。そして、思いっきり蹴りを加えた。
「これでどう・・・!!??」
蹴りを加えた直後、俺に大量の負の感情が流れてきた。
殺せ!
俺は、あいつのことが殺したくて殺したくてたまらない!
なんであいつ、死なねぇんだよ!ふざけんなよ!!
どうして私ばかりがひどい目に・・・。全員死ねばいいのに。
俺は慌てて【虚滅】から距離を取る。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・!?」
正直、やばかった。
(これが負の感情か・・・)
殺意、怒り、悲しみ、絶望・・・。確かにマイナスの感情ばかりだ。
「大丈夫・・・ではなさそうだな」
「ああ。あの魔法はやばい。やば過ぎる」
正直、殴ったり蹴ったりして遠くに飛ばす案も考えていたのだが、その案は無理だと一瞬で判断した。
そして、それ以上に違和感があった。
「それに、攻撃した感覚がなかった」
この感覚、俺が独りでカラトムーガに攻撃した感覚と似ていたな。
まさか・・・!?
「つまり、あの魔法も我同様、独りだと攻撃が通らず、防御も出来ないということか」
「・・・みたいだな」
本当、似てほしくないところは似るものだな。
「ならどうするつもりだ?」
「・・・なんとかする。してみせるさ」
俺はある魔法の準備をする。
(この魔法なら・・・!)
だが、俺独りだけだとあの【虚滅】に攻撃出来ないし、防御も出来ない。この状況であの魔法が効くとは限らない。
「使うしかない・・・使うしか、ねぇんだ!」
俺は準備した魔法を発動させる。
「【転移門・吸収】!!」
この魔法は相手の攻撃を吸収する魔法で、以前赤の国でも使用していた魔法でもある。
だが、赤の国で使った【転移門・吸収】とは少し効果が異なっている。
今回の【転移門・吸収】は相手の攻撃ではなく、対象のものを吸収する魔法に変えている。そして、俺はその対象を、【虚滅】そのものに設定している。
つまり、今俺が発動した【転移門・吸収】は【虚滅】を対象に吸収する魔法になっている、ということだ。
(これでどうだ!?)
俺は【転移門・吸収】を【虚滅】に向けて放つ。
【虚滅】は【転移門・吸収】をすり抜け、俺に直接接触してきた。
「!!??やば・・・!!!???」
そう言うが時既に遅く、様々な人の怒り、悲しみ、絶望、怒り等の負の感情が俺に流れ込んでくる。
ある人の何気ない行動がむかつく。
私の親切に気づいてもらえないで悲しい。
私だけいじめられて、もうこの人生が嫌。生きていたくない。
どうして私だけ・・・復讐してやる!
「!!!!????」
俺は【虚滅】から距離をとる。
(やっぱ、独りだけじゃあ無理なのか・・・、)
俺独りだけだと、あの魔法に対抗出来ないのか。
「私にも、手伝わせてもらえないか?」
俺が困っていたら、セントミアさんが俺に話しかけてきた。
「やめておいた方がいい。さっき言った通り、俺が独りで・・・、」
「どう見ても対処出来ていなかったではないか。私も協力すれば、あの魔法をなんとか出来るのではないかな?」
「それはない。あの精神攻撃を耐えられるような奴はいない」
あの精神攻撃は、強靭な精神を持っていたとしても厳しいだろう。覚悟を決めても自我を保つことが出来るかどうか・・・。
「だから、俺独りに任せて・・・、」
俺が言い終える前に、セントミアさんは俺の隣に来て、俺の【転移門・吸収】に手をかざす。
「私もやる。これならあの魔法に対抗出来る・・・!?」
どうやらセントミアさんにも【虚滅】による負の感情が流れ込んだようだ。顔を歪ませ、【転移門・吸収】から手を離す。
「やめておいた方がいい。この魔法に含まれている負の感情の一つ一つが濃密で、どれも生半可な覚悟で受け入れられないほど憎悪に満ちている」
地球よりも命が軽いこの世界だからこそ、憎悪が殺意に直結している。更に地球にはなかった魔法等の技術が、憎悪に拍車をかけていた。本当、嫌な相乗効果である。
「構う、ものか!」
セントミアさんは、【転移門・吸収】に手をかざす。そうすることで【虚滅】の負の感情がセントミアさんを襲う。
「やめろ!心が壊れるぞ!」
「貴様こそ、この負の感情に当てられ続けることで心を壊してしまうだろう!?なら、少しでも負担を軽くする為に、私も協力する!」
「無茶だ!そんなことをすれば・・・、」
セントミアさんの心が壊れてしまう!そう言い切る前にセントミアさんが言葉を発する。
「私は!このまま何もせずに死ぬなんて私自身が許さない!死ぬとしても、精一杯足掻いてから死ぬ!何もせずに死にたくない!」
「・・・そうか」
俺はそれ以降、何も言わなかった。ただ一言、
「ならお互い、生きなきゃな。生きて、この後のことを考えよう」
「・・・ああ。生きて、これからのことを考えよう」
俺の言葉にセントミアさんは応える。
「なら、我らも協力しないとな」
「・・・ああ。我の不始末だ。我自身が何もしないなんてあり得んな」
「!?おい、お前らもやめろ!」
俺はカラトムーア、ムーガに大きな声をだす。
「何故かね?」
「やめる理由などない」
そう言い、カラトムーアとムーガは【転移門・吸収】に触れる。
(!?馬鹿野郎が!!)
「「!!??」」
その直後、カラトムーガとムーアに負の感情が流れたからか、顔を苦痛に歪ませる。
「もうやめろ!後は俺に任せて・・・!?」
「やめるわけなどなかろう!!」
「!?」
カラトムーガの言葉が周囲に響く。
「これは、我々の罪だ!」
「ああ。アヤトこそ、ここは我々に任せて・・・、」
「それこそあり得ないな」
俺は【転移門・吸収】に手を固定する。
「俺は、反抗期で天邪鬼、なんでね」
手から流血し、血が飛び散る。
「やめろと言われてもやめないし、諦めろと言われても諦めねぇ!」
「何故だ!?今やめても、誰もお主に文句なんて言わぬ!それどころかお主を称賛して・・・、」
「俺自身が許さない!」
視界に赤がささり、見辛くなる。
「俺にはまだ、やりたいことがある!だから、諦めねぇ!それに、」
俺は地球にいる両親を思い出す。
「ここで逃げたら、誰が俺の尻を拭う?誰が、あの魔法を止める?」
歯にかかる力が強まる。
「逃げてもよかったのは、逃げても居場所があるからだ!」
地球での俺は、不登校になっても生活出来ていた。その理由は、学校という居場所がなくなっても、家という居場所が残っていたからだ。だから俺は今もこうして生きていることが出来るのだと思う。だって家にも居場所がなかったら、今頃俺はここにいなかったのだから。
「俺が、この世界に生きる奴らの、最後の砦なんだ!だから俺がここで諦めるには・・・、」
俺は一歩前進する。
「あきらめる、わけに、は・・・、」
俺の体が大きく下がる。
(もう、限界、なのか・・・?)
歯を食いしばろうにも、くいしばる力も、腕を上げる力も尽きてしまったようだ。俺はここで最期を悟り、目を瞑る。
「俺が、じゃいやよ!私達全員で最後の砦になろうじゃない!ねぇ、ルリちゃん?」
「うん!」
「!?」
俺の腕が何者かに支えられた。その何者かとは、クリムとルリだった。
クリムとルリは二人で俺の腕を支えながら、俺の【転移門・吸収】に手を伸ばす。
「まったく。どうしてアヤトはいつも独りでなんとかしようとするのですか?もっと私達に頼ってくれていいのに。ねぇ、クロミルちゃん?」
「その通りです。なんの為に私がいると思っているのですか?」
リーフとクロミルは、俺の体を両側から支えてくれつつ、【転移門・吸収】に触れる。
「リーフにクロミル・・・。どうしてみんな・・・?」
「私が植物さん達にお願いしていたのですよ。何かあったら起こしてくださいって。まさかこんなことになるとは思っていませんでしたが・・・、」
「・・・本当、アヤトには迷惑をかけられる」
「モミジにイブまで・・・、」
モミジとイブは、俺を背中から支えつつ、【転移門・吸収】に触れる。
「それではここにいる全員で、あの魔法をなんとかしましょう」
「レンカまで・・・。一体どうやって・・・?」
「リーフ殿達に魔力を分けてもらって、今ここにいます」
「そう、か」
結局、全員起きてしまったか。
(本当は、全員が寝ている間にあの【虚滅】をなんとかしたかったんだけどな)
俺は、諦めることにした。
(独りで【虚滅】をなんとかするんじゃない)
俺はリーフ達を見る。
(ここにいる全員で、あの【虚滅】を・・・倒す!)
「それじゃあ・・・力を貸してくれるか?」
「「「もちろん!!!」」」
俺が質問したら、返事が即かえってきた。
「それじゃあ、行くぞ!」
俺のこの声の直後、みんなの胸元が光り始める。そして、その光源は姿を現す。
(あれは・・・魔石か?)
その魔石はこの後、俺が驚く行動をとる。
その行動とは、魔石が【虚滅】の負の感情を吸収し始めたのである。
(どうしてあんなことが出来る・・・?)
魔石からある魔力を感じ、俺は少し納得した。
(そうか・・・あいつらも、協力してくれているのか)
ある魔力というのは、スレッド、ラピス、カーナ、ヤヤ、ジャルベ、ゾルゲム達の魔力で、今も各国で戦っている者達の魔力だ。
(支えてくれるから・・・協力、してくれるから!)
各国で出会ったあいつらも協力してくれるから、俺はもっと頑張れる!
【虚滅】から放たれる無量の負の感情が俺達に吸収され、どんどん小さくなっていく。
「アヤト!大きさが最大時の半分くらいになったぞ!今ならいけるのではないか?」
「ああ!」
俺はある魔法の準備を始める。
「これから【転移門・解放】を発動する。衝撃が来るから、支えてほしい」
その直後、俺を支えてくれる力が強まる。
(これが答えか。ありがとう)
俺はリーフ達の決意を感じる。
「行くぞ!」
俺の腕に入る力が強まる。
「【転移門・解放】!」
瞬間、【転移門・吸収】とは別のゲートが開かれる。そして、そのゲート内から巨大な魔力を感じる。
「これで・・・吹っ飛べ!」
【転移門・解放】から無量の魔力が放出され、【虚滅】と激突する。【虚滅】とぶつかった衝撃もすごいが、【転移門・解放】から放たれた衝撃も凄まじい。
(俺独りだけだったら、この衝撃を受け止め切ることは出来なかっただろうな)
ここにいるルリ達が俺を支えてくれるから、【転移門・解放】を発動することが出来たのだろう。
「い・・・け!」
俺は一歩歩みを進める。俺の歩みに合わせてくれたのか、ルリ達も一歩歩みを進めてくれる。
「おせぇーーー!!!」
「「「いけえええぇぇぇーーー!!!」」」
俺達の【転移門・解放】が少しずつ、少しずつ【虚滅】を押していく。
「ありがとう」
ここで何故か俺はモミジ達にお礼の言葉を口からこぼす。
そして、
「もう少しだ!」
「おう!」
カラトムーアの助言に俺は反応し、より踏ん張る。
【転移門・解放】から放たれる魔力の塊が【虚滅】を押し続け、どんどん【虚滅】が小さくなっているように見え始める。
(もっと・・・もっとだ!)
【虚滅】が遠近法で小さく見え、更に物理的にも小さくなっていく。
(あの魔石が、【虚滅】から何かを吸収しているのか?)
リーフ達が持っていた魔石も、俺が使っていた魔法、【転移門・吸収】のように吸収している。そのおかげか、俺の想定以上に【虚滅】の脅威が小さくなっていた。
そんな外的要因がいい意味で影響する。
「・・・」
「・・・」
「・・・やった・・・のか?」
ついに、【虚滅】を押している感覚が完全になくなった。視界からも【虚滅】はなくなる。本当に、あの【虚滅】をなんとか出来たのだろうか?俺は不安になり、何度も周囲を見渡す。【魔力感知】を発動し、周囲に俺たち以外の不穏な魔力を感じることは出来ない。
ということは・・・つまり・・・?
「・・・綺麗だな」
「・・・ああ。これで、」
「終わったのか。全部」
ようやく、【虚滅】による脅威が消えた。
「後はお前達なわけだが・・・やるか?」
俺は一応、臨戦態勢に入る。と言っても、ほとんど力なんて残っていないのだがな。これで敵対して暴れ始めたら、今の俺では対処出来ないぞ。
「いや、もういい」
「我のことは、煮るなり焼くなり好きにしてくれ」
どうやら、カラトムーア、ムーガは俺達と敵対するつもりはないらしい。これで後は・・・。次に俺はセントミアさんを見る。
「・・・私も、もういい。いっそこのまま殺してほしい」
セントミアさんもカラトムーア、ムーガ同様戦意はないようだ。
「・・・殺してほしい、か」
俺はセントミアさんの言葉を聞き、手をさしのばす。
「それは駄目だ。生きて・・・生きるんだ」
「生きる、だと?この私が?人殺しの私が?」
「・・・俺さ、周囲の人達全員が、俺を殺してくる、そう思っていた時期があったんだ」
俺は、地球にいた時の思い出を話し始める。
「それでも懸命に、俺に話しかけてくれたもの好きが二人いた。誰だと思う?」
「・・・そこにいる者達の誰か、か?」
「違う。俺の両親だ。俺の両親だけは、俺がどんなに嫌っても、殺意を向けても、物を投げても見捨てなかった。必死に、俺に話しかけてくれた」
俺に寄り添ってくれたあの二人の存在を、俺は生涯忘れないだろう。
「何もかも敵に見えていた俺の、最後の居場所となってくれたんだ。だから・・・、」
俺はもう一度、セントミアさんに手を伸ばす。
「今度は、俺が助ける番だ。俺が、セントミアさんの最後の居場所になる」
セントミアさんの目が光る。
「・・・いいのか?また世界を敵にまわすかもしれないのだぞ?」
「その時は全力で止めるさ。だよな?」
俺がルリ達に話をふると、ルリが近づいてきた。
「ずっと独りは嫌だよ。ねぇ、セントミアお姉ちゃん?」
「!?」
ルリの言葉に、セントミアさんの目の光が強まる。
「そう、だな。独りでい続ける事は辛いな。もう独りは、嫌だな」
「そうです。私達が一緒です」
「一緒に筋肉を鍛えましょう!筋肉は全てを解決しますよ♪」
「・・・ふ。筋肉は全てを解決する?何を馬鹿なことを」
「な!?それじゃあイブは一体、何が全てを解決すると思うのです!?」
「・・・美味しい食べ物。ホットケーキこそ、全てを解決する至高の一品」
「・・・ふ。そうやって自分を醜くするのですね、全身胃袋お化けが」
「・・・筋トレしか考えていない馬鹿が何か言っている、全身筋肉お化けが」
「「・・・あ??」」
「お、おい・・・、」
俺が声をかけるより早く声をかけた者がいた。
「まったく。二人ともそのようなことで喧嘩しないでくださいよ。子供ですねぇ」
「「だまれ。惰眠しかしない全身おっぱいお化けが」」
「・・・ほぉ?」
クリムとイブの発言内容に、リーフは筋を浮きだたせた。
(あーあ・・・)
俺はもう諦めた。これから起きる痴話喧嘩を止めることは出来ないと。
だが、痴話喧嘩は起きなかった。
「あ、あれ?」
「もう、動け・・・、」
「・・・げん、かい・・・、」
?どうしたのだろうか?何故急にへたり込んで・・・あ。
「あ、あれ?」
「えへへ。もう、立てない、や・・・」
「申し訳ありません、ご主人様。もう・・・、」
「アルジン、私の魔力残量がもう・・・、」
全員、限界を超えた戦いで疲労が蓄積していたのだろう。その蓄積された疲労は、まともに立つことも出来ないほどだった、ということか。
(正直、俺も今すぐ座りたい)
なんなら、目を瞑り眠りたいくらいだ。それでも今倒れちゃだめだ。確認しなくてはならないことがまだあるからな。
「それで、カラトムーアにカラトムーガ、お前らはまだ俺と、俺達と戦う気なのか?」
俺は今持てる力で精一杯のはったりをかます。これで、おう、お前を殺す!と戦闘を始めてきたら即死する自信がある!
「・・・いや、もう戦う気など起きん・・・、」
「こ奴もこう言っておるし、我もいる。だから安心して気を休めるとよい」
「そう、か・・・、」
どうやらカラトムーガは、俺が限界を超えていることに気づいているらしい。なら、俺が無理をしてはったりをかましたのは無駄だったな。
「それじゃあ俺は少しやす、む。あと・・・む・・・」
俺は自身の言葉を最後まで言い終えることなく、強制的に目を瞑る。
彩人が倒れるように眠った直後。
「・・・私は、これからどうすればいいのだろうか?」
セントミアは独り、今の感情を吐露する。
吐露した感情は行き場を無くして彷徨い、ある人外の存在へたどり着く。
「悩んでいるのなら、一つ、提案がある」
セントミアの独り言に反応した者は、カラトムーガ、神だった。
「提案?」
「うむ。そ奴と共に行動していけばいいのではないかね」
「そ奴・・・もしかして、アヤトと一緒に行動すればいい、そう言っているのか?」
「うむ。そ奴はこれまで旅をしてきた。彼の行動全てが善い行動をした、などと言うつもりはないが、間違いはないだろう」
「・・・」
カラトムーガの提案に、セントミアは黙る。
「なに。今すぐ決める必要はない。ゆっくり悩み、悩んだ末に行動すればよい。我らもこれからどのように行動すべきか、具体的に話し合う必要があるだろう。だよな?」
「・・・ああ」
そのような話をした後、セントミアはゆっくり目を瞑る。瞑った眼は、これまで以上に穏やかで、笑みを露出させていた。
次回予告
『7-1-59(第548話) 虹無対戦~その後~』
彩人達とカラトムーガとの戦いは遂に終わる。だが、まだ各国の重鎮への報告が残っていて、その報告に関する準備を始める。
こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。
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