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色を司りし者  作者: 彩 豊
第7色 無の国 第一章 虹無対戦
548/550

7-1-58(第547話) 虹無対戦~無の国編その21~

「!?」

 カラトムーガの言葉を理解した俺は驚きを隠すことが出来なかった。

「それってまさか・・・!?」

 リーフはカラトムーガの言葉を聞き、事態のやばさに気づいてしまったのだろう。顔を青くさせていた。

「いや、大丈夫だ」

「「「!!!???」」」

 俺の言葉にリーフ達だけでなく、カラトムーガ、ムーアも驚く。

「大丈夫だから、気にしなくていい。さぁ帰ろう」

 そう言い、俺はリーフの背中を押す。

「で、ですが・・・、」

 リーフは何か言いたいのだろう。視線を上に複数回おくる。

「大丈夫。あれは嘘だ」

「「「うそ???」」」

 俺の嘘発言にリーフ達は疑問を隠すことが出来ない。

(無理もないか)

 今の俺の発言に、根拠なんてものは一切ないのだから。

「だからこれからやるお疲れ会の為に、少し休んでいてくれ」

「いや、でも・・・、」

 俺は無言で魔法を発動させる。魔法の効果は、対象を眠らせる魔法だ。その対象をリーフ達に設定する。

「いいから。後は全部、俺に任せてゆっくり休んでくれ」

「ですが・・・!?」

 ここでリーフ達は自身の違和感に気づく。

 何故急に眠気が襲いかかってきたのか。

 そして、その原因が誰なのか。

 何故、こんなことをするのか。

 リーフ達は彩人を見る。

「駄目、アヤト・・・!」

 ここでリーフはこと切れてしまう。

「あや、と・・・、」

「わたしたちも、いっしょに・・・、」

「おにいちゃ、ん・・・、」

「ごしゅじん、さ、ま・・・、」

「しょくぶつさんたち、おね、がい・・・、」

 イブ、クリム、ルリ、クロミル、モミジもこときれていく。

「アルジン、まさか・・・!?」

「悪いな、レンカ」

 どうやらレンカは察してしまったようだ。俺はレンカから魔力を抜き取る。

「そんな!?駄目です、アルジン!独りでは・・・!」

 レンカから魔力を抜き取ることで、レンカはただの魔道具となった。これでレンカの意識は完全になくなっただろう。

「さて、」

 俺は改めて黒い球体を見る。

「どんどん大きくなっているな」

「そう、だな」

「ところで、どうして私はあの者達みたいにしなかった?」

 セントミアさんは俺に質問してくる。

「答えは簡単だ。俺の不意打ちが効かないと思ったからやらなかっただけさ」

「・・・そうか」

 そう言い、セントミアさんも黒い球を見る。

「それで、これからどうするつもりだ?」

「無論、なんとかするさ。なんとかしてみせる」

 そう言いながら俺はカラトムーガに近づく。

「おい、あの魔法をなんとか出来ないのか?」

 さきほどの呟きは聞こえていたし、呟きの意味を理解出来ないほど鈍感ではない。

「・・・無理だ。我の制御下から外れたあの魔法を止めることはもう誰も出来ない」

「「「!!!???」」」

 カラトムーガの発言に俺は驚きを隠すことは出来ない。

「・・・おい。あの魔法を止める方法を教えろ」

「だから先ほども言った通り、我の制御下から外れた【虚滅】を止めるなんて誰も出来ない。出来るはずがないのだ」

 俺はカラトムーガの胸ぐらを掴む。

「分かった。言い方を変えよう。あの魔法はどんな魔法か教えろ」

「・・・あの魔法、【虚滅】は我の魔力を核とし、ありとあらゆる負の感情を吸収し、凝縮してぶつける魔法だ。あの魔法が暴走したとなれば、吸収、凝縮した負の感情が我々に襲い掛かり、死は免れないだろう」

 更にカラトムーガは続ける。

「我々だけではない。この世界に住む人々にもこの負の感情が襲い掛かり、世界が負の感情に支配され、負の感情以外何も存在しない世界になるだろう」

「・・・」

 カラトムーガの魔法、【虚滅】、だったか。とてつもない魔法だな。

(負の感情が世界を滅ぼすのかよ・・・)

 カラトムーガの説明のおかげで、あの黒い球体がどんなものか分かった。

「あの魔法はお前と同じ、独りだと攻撃が通らず、防御不能なのか?」

「・・・いや・・・だが・・・、」

「いやどっちだよ」

「・・・我と同じ力を持っている者なら、あの魔法に干渉出来る・・・と思う」

「なんとも歯切れの悪い言葉だな」

 だが、この発言で分かったことがある。

 それは、俺ならあの魔法を止める可能性がある、ということだ。

「少なくともお主ならあの魔法に干渉出来るぞ」

「それは、お前と同じ無魔法に適性があるからか?」

 俺はカラトムーガと同じ、無魔法に適性がある。だからあの魔法、【虚滅】に干渉出来ると推測した。

 その推測に対し、カラトムーガは首を横に振る。

「それもあるが、お主から神の力を感じる。それもあの魔法に干渉出来る理由の一つだと思う」

「俺から神の力を?どうして・・・?」

 ここでカラトムーアと視線が合う。

(そうか)

 カラトムーアが俺をこの世界に呼んだから、カラトムーアの力の一部が俺の中にあるのか。

(・・・いや、それだけじゃないな)

 俺は自身の胸に手を当てる。

 その手には、俺自身の力だけとは別の力を二種類感じた。

 一つは、さきほどカラトムーガも言っていた神の力。

 もう一つは、モミジと同じ力。

(俺の中には、俺自身の力、モミジの力、神の力がある)

「ならまずは、あの魔法に干渉出来るか試そうか」

 俺は魔力の塊を【虚滅】に向けて放つ。

「・・・見事に吞まれたな」

「ああ」

 あれじゃあ効いたのかどうなのか判断出来ないじゃないか。

「なら次は・・・、」

「おい!危ないぞ!!」

 俺は次に、【虚滅】との距離を詰める。そして、思いっきり蹴りを加えた。

「これでどう・・・!!??」

 蹴りを加えた直後、俺に大量の負の感情が流れてきた。

 殺せ!

 俺は、あいつのことが殺したくて殺したくてたまらない!

 なんであいつ、死なねぇんだよ!ふざけんなよ!!

 どうして私ばかりがひどい目に・・・。全員死ねばいいのに。

 俺は慌てて【虚滅】から距離を取る。

「はぁ、はぁ、はぁ・・・!?」

 正直、やばかった。

(これが負の感情か・・・)

 殺意、怒り、悲しみ、絶望・・・。確かにマイナスの感情ばかりだ。

「大丈夫・・・ではなさそうだな」

「ああ。あの魔法はやばい。やば過ぎる」

 正直、殴ったり蹴ったりして遠くに飛ばす案も考えていたのだが、その案は無理だと一瞬で判断した。

 そして、それ以上に違和感があった。

「それに、攻撃した感覚がなかった」

 この感覚、俺が独りでカラトムーガに攻撃した感覚と似ていたな。

 まさか・・・!?

「つまり、あの魔法も我同様、独りだと攻撃が通らず、防御も出来ないということか」

「・・・みたいだな」

 本当、似てほしくないところは似るものだな。

「ならどうするつもりだ?」

「・・・なんとかする。してみせるさ」

 俺はある魔法の準備をする。

(この魔法なら・・・!)

 だが、俺独りだけだとあの【虚滅】に攻撃出来ないし、防御も出来ない。この状況であの魔法が効くとは限らない。

「使うしかない・・・使うしか、ねぇんだ!」

 俺は準備した魔法を発動させる。

「【転移門・吸収】!!」

 この魔法は相手の攻撃を吸収する魔法で、以前赤の国でも使用していた魔法でもある。

 だが、赤の国で使った【転移門・吸収】とは少し効果が異なっている。

 今回の【転移門・吸収】は相手の攻撃ではなく、対象のものを吸収する魔法に変えている。そして、俺はその対象を、【虚滅】そのものに設定している。

 つまり、今俺が発動した【転移門・吸収】は【虚滅】を対象に吸収する魔法になっている、ということだ。

(これでどうだ!?)

 俺は【転移門・吸収】を【虚滅】に向けて放つ。

 【虚滅】は【転移門・吸収】をすり抜け、俺に直接接触してきた。

「!!??やば・・・!!!???」

 そう言うが時既に遅く、様々な人の怒り、悲しみ、絶望、怒り等の負の感情が俺に流れ込んでくる。

 ある人の何気ない行動がむかつく。

 私の親切に気づいてもらえないで悲しい。

 私だけいじめられて、もうこの人生が嫌。生きていたくない。

 どうして私だけ・・・復讐してやる!

「!!!!????」

 俺は【虚滅】から距離をとる。

(やっぱ、独りだけじゃあ無理なのか・・・、)

 俺独りだけだと、あの魔法に対抗出来ないのか。

「私にも、手伝わせてもらえないか?」

 俺が困っていたら、セントミアさんが俺に話しかけてきた。

「やめておいた方がいい。さっき言った通り、俺が独りで・・・、」

「どう見ても対処出来ていなかったではないか。私も協力すれば、あの魔法をなんとか出来るのではないかな?」

「それはない。あの精神攻撃を耐えられるような奴はいない」

 あの精神攻撃は、強靭な精神を持っていたとしても厳しいだろう。覚悟を決めても自我を保つことが出来るかどうか・・・。

「だから、俺独りに任せて・・・、」

 俺が言い終える前に、セントミアさんは俺の隣に来て、俺の【転移門・吸収】に手をかざす。

「私もやる。これならあの魔法に対抗出来る・・・!?」

 どうやらセントミアさんにも【虚滅】による負の感情が流れ込んだようだ。顔を歪ませ、【転移門・吸収】から手を離す。

「やめておいた方がいい。この魔法に含まれている負の感情の一つ一つが濃密で、どれも生半可な覚悟で受け入れられないほど憎悪に満ちている」

 地球よりも命が軽いこの世界だからこそ、憎悪が殺意に直結している。更に地球にはなかった魔法等の技術が、憎悪に拍車をかけていた。本当、嫌な相乗効果である。

「構う、ものか!」

 セントミアさんは、【転移門・吸収】に手をかざす。そうすることで【虚滅】の負の感情がセントミアさんを襲う。

「やめろ!心が壊れるぞ!」

「貴様こそ、この負の感情に当てられ続けることで心を壊してしまうだろう!?なら、少しでも負担を軽くする為に、私も協力する!」

「無茶だ!そんなことをすれば・・・、」

 セントミアさんの心が壊れてしまう!そう言い切る前にセントミアさんが言葉を発する。

「私は!このまま何もせずに死ぬなんて私自身が許さない!死ぬとしても、精一杯足掻いてから死ぬ!何もせずに死にたくない!」

「・・・そうか」

 俺はそれ以降、何も言わなかった。ただ一言、

「ならお互い、生きなきゃな。生きて、この後のことを考えよう」

「・・・ああ。生きて、これからのことを考えよう」

 俺の言葉にセントミアさんは応える。

「なら、我らも協力しないとな」

「・・・ああ。我の不始末だ。我自身が何もしないなんてあり得んな」

「!?おい、お前らもやめろ!」

 俺はカラトムーア、ムーガに大きな声をだす。

「何故かね?」

「やめる理由などない」

 そう言い、カラトムーアとムーガは【転移門・吸収】に触れる。

(!?馬鹿野郎が!!)

「「!!??」」

 その直後、カラトムーガとムーアに負の感情が流れたからか、顔を苦痛に歪ませる。

「もうやめろ!後は俺に任せて・・・!?」

「やめるわけなどなかろう!!」

「!?」

 カラトムーガの言葉が周囲に響く。

「これは、我々の罪だ!」

「ああ。アヤトこそ、ここは我々に任せて・・・、」

「それこそあり得ないな」

 俺は【転移門・吸収】に手を固定する。

「俺は、反抗期で天邪鬼、なんでね」

 手から流血し、血が飛び散る。

「やめろと言われてもやめないし、諦めろと言われても諦めねぇ!」

「何故だ!?今やめても、誰もお主に文句なんて言わぬ!それどころかお主を称賛して・・・、」

「俺自身が許さない!」

 視界に赤がささり、見辛くなる。

「俺にはまだ、やりたいことがある!だから、諦めねぇ!それに、」

 俺は地球にいる両親を思い出す。

「ここで逃げたら、誰が俺の尻を拭う?誰が、あの魔法を止める?」

 歯にかかる力が強まる。

「逃げてもよかったのは、逃げても居場所があるからだ!」

 地球での俺は、不登校になっても生活出来ていた。その理由は、学校という居場所がなくなっても、家という居場所が残っていたからだ。だから俺は今もこうして生きていることが出来るのだと思う。だって家にも居場所がなかったら、今頃俺はここにいなかったのだから。

「俺が、この世界に生きる奴らの、最後の砦なんだ!だから俺がここで諦めるには・・・、」

 俺は一歩前進する。

「あきらめる、わけに、は・・・、」

 俺の体が大きく下がる。

(もう、限界、なのか・・・?)

 歯を食いしばろうにも、くいしばる力も、腕を上げる力も尽きてしまったようだ。俺はここで最期を悟り、目を瞑る。

「俺が、じゃいやよ!私達全員で最後の砦になろうじゃない!ねぇ、ルリちゃん?」

「うん!」

「!?」

 俺の腕が何者かに支えられた。その何者かとは、クリムとルリだった。

 クリムとルリは二人で俺の腕を支えながら、俺の【転移門・吸収】に手を伸ばす。

「まったく。どうしてアヤトはいつも独りでなんとかしようとするのですか?もっと私達に頼ってくれていいのに。ねぇ、クロミルちゃん?」

「その通りです。なんの為に私がいると思っているのですか?」

 リーフとクロミルは、俺の体を両側から支えてくれつつ、【転移門・吸収】に触れる。

「リーフにクロミル・・・。どうしてみんな・・・?」

「私が植物さん達にお願いしていたのですよ。何かあったら起こしてくださいって。まさかこんなことになるとは思っていませんでしたが・・・、」

「・・・本当、アヤトには迷惑をかけられる」

「モミジにイブまで・・・、」

 モミジとイブは、俺を背中から支えつつ、【転移門・吸収】に触れる。

「それではここにいる全員で、あの魔法をなんとかしましょう」

「レンカまで・・・。一体どうやって・・・?」

「リーフ殿達に魔力を分けてもらって、今ここにいます」

「そう、か」

 結局、全員起きてしまったか。

(本当は、全員が寝ている間にあの【虚滅】をなんとかしたかったんだけどな)

 俺は、諦めることにした。

(独りで【虚滅】をなんとかするんじゃない)

 俺はリーフ達を見る。

(ここにいる全員で、あの【虚滅】を・・・倒す!)

「それじゃあ・・・力を貸してくれるか?」

「「「もちろん!!!」」」

 俺が質問したら、返事が即かえってきた。

「それじゃあ、行くぞ!」

 俺のこの声の直後、みんなの胸元が光り始める。そして、その光源は姿を現す。

(あれは・・・魔石か?)

 その魔石はこの後、俺が驚く行動をとる。

 その行動とは、魔石が【虚滅】の負の感情を吸収し始めたのである。

(どうしてあんなことが出来る・・・?)

 魔石からある魔力を感じ、俺は少し納得した。

(そうか・・・あいつらも、協力してくれているのか)

 ある魔力というのは、スレッド、ラピス、カーナ、ヤヤ、ジャルベ、ゾルゲム達の魔力で、今も各国で戦っている者達の魔力だ。

(支えてくれるから・・・協力、してくれるから!)

 各国で出会ったあいつらも協力してくれるから、俺はもっと頑張れる!

 【虚滅】から放たれる無量の負の感情が俺達に吸収され、どんどん小さくなっていく。

「アヤト!大きさが最大時の半分くらいになったぞ!今ならいけるのではないか?」

「ああ!」

 俺はある魔法の準備を始める。

「これから【転移門・解放】を発動する。衝撃が来るから、支えてほしい」

 その直後、俺を支えてくれる力が強まる。

(これが答えか。ありがとう)

 俺はリーフ達の決意を感じる。

「行くぞ!」

 俺の腕に入る力が強まる。

「【転移門・解放】!」

 瞬間、【転移門・吸収】とは別のゲートが開かれる。そして、そのゲート内から巨大な魔力を感じる。

「これで・・・吹っ飛べ!」

 【転移門・解放】から無量の魔力が放出され、【虚滅】と激突する。【虚滅】とぶつかった衝撃もすごいが、【転移門・解放】から放たれた衝撃も凄まじい。

(俺独りだけだったら、この衝撃を受け止め切ることは出来なかっただろうな)

 ここにいるルリ達が俺を支えてくれるから、【転移門・解放】を発動することが出来たのだろう。

「い・・・け!」

 俺は一歩歩みを進める。俺の歩みに合わせてくれたのか、ルリ達も一歩歩みを進めてくれる。

「おせぇーーー!!!」

「「「いけえええぇぇぇーーー!!!」」」

 俺達の【転移門・解放】が少しずつ、少しずつ【虚滅】を押していく。

「ありがとう」

 ここで何故か俺はモミジ達にお礼の言葉を口からこぼす。

 そして、

「もう少しだ!」

「おう!」

 カラトムーアの助言に俺は反応し、より踏ん張る。

 【転移門・解放】から放たれる魔力の塊が【虚滅】を押し続け、どんどん【虚滅】が小さくなっているように見え始める。

(もっと・・・もっとだ!)

 【虚滅】が遠近法で小さく見え、更に物理的にも小さくなっていく。

(あの魔石が、【虚滅】から何かを吸収しているのか?)

 リーフ達が持っていた魔石も、俺が使っていた魔法、【転移門・吸収】のように吸収している。そのおかげか、俺の想定以上に【虚滅】の脅威が小さくなっていた。

 そんな外的要因がいい意味で影響する。

「・・・」

「・・・」

「・・・やった・・・のか?」

 ついに、【虚滅】を押している感覚が完全になくなった。視界からも【虚滅】はなくなる。本当に、あの【虚滅】をなんとか出来たのだろうか?俺は不安になり、何度も周囲を見渡す。【魔力感知】を発動し、周囲に俺たち以外の不穏な魔力を感じることは出来ない。

 ということは・・・つまり・・・?

「・・・綺麗だな」

「・・・ああ。これで、」

「終わったのか。全部」

 ようやく、【虚滅】による脅威が消えた。

「後はお前達なわけだが・・・やるか?」

 俺は一応、臨戦態勢に入る。と言っても、ほとんど力なんて残っていないのだがな。これで敵対して暴れ始めたら、今の俺では対処出来ないぞ。

「いや、もういい」

「我のことは、煮るなり焼くなり好きにしてくれ」

 どうやら、カラトムーア、ムーガは俺達と敵対するつもりはないらしい。これで後は・・・。次に俺はセントミアさんを見る。

「・・・私も、もういい。いっそこのまま殺してほしい」

 セントミアさんもカラトムーア、ムーガ同様戦意はないようだ。

「・・・殺してほしい、か」

 俺はセントミアさんの言葉を聞き、手をさしのばす。

「それは駄目だ。生きて・・・生きるんだ」

「生きる、だと?この私が?人殺しの私が?」

「・・・俺さ、周囲の人達全員が、俺を殺してくる、そう思っていた時期があったんだ」

 俺は、地球にいた時の思い出を話し始める。

「それでも懸命に、俺に話しかけてくれたもの好きが二人いた。誰だと思う?」

「・・・そこにいる者達の誰か、か?」

「違う。俺の両親だ。俺の両親だけは、俺がどんなに嫌っても、殺意を向けても、物を投げても見捨てなかった。必死に、俺に話しかけてくれた」

 俺に寄り添ってくれたあの二人の存在を、俺は生涯忘れないだろう。

「何もかも敵に見えていた俺の、最後の居場所となってくれたんだ。だから・・・、」

 俺はもう一度、セントミアさんに手を伸ばす。

「今度は、俺が助ける番だ。俺が、セントミアさんの最後の居場所になる」

 セントミアさんの目が光る。

「・・・いいのか?また世界を敵にまわすかもしれないのだぞ?」

「その時は全力で止めるさ。だよな?」

 俺がルリ達に話をふると、ルリが近づいてきた。

「ずっと独りは嫌だよ。ねぇ、セントミアお姉ちゃん?」

「!?」

 ルリの言葉に、セントミアさんの目の光が強まる。

「そう、だな。独りでい続ける事は辛いな。もう独りは、嫌だな」

「そうです。私達が一緒です」

「一緒に筋肉を鍛えましょう!筋肉は全てを解決しますよ♪」

「・・・ふ。筋肉は全てを解決する?何を馬鹿なことを」

「な!?それじゃあイブは一体、何が全てを解決すると思うのです!?」

「・・・美味しい食べ物。ホットケーキこそ、全てを解決する至高の一品」

「・・・ふ。そうやって自分を醜くするのですね、全身胃袋お化けが」

「・・・筋トレしか考えていない馬鹿が何か言っている、全身筋肉お化けが」

「「・・・あ??」」

「お、おい・・・、」

 俺が声をかけるより早く声をかけた者がいた。

「まったく。二人ともそのようなことで喧嘩しないでくださいよ。子供ですねぇ」

「「だまれ。惰眠しかしない全身おっぱいお化けが」」

「・・・ほぉ?」

 クリムとイブの発言内容に、リーフは筋を浮きだたせた。

(あーあ・・・)

 俺はもう諦めた。これから起きる痴話喧嘩を止めることは出来ないと。

 だが、痴話喧嘩は起きなかった。

「あ、あれ?」

「もう、動け・・・、」

「・・・げん、かい・・・、」

 ?どうしたのだろうか?何故急にへたり込んで・・・あ。

「あ、あれ?」

「えへへ。もう、立てない、や・・・」

「申し訳ありません、ご主人様。もう・・・、」

「アルジン、私の魔力残量がもう・・・、」

 全員、限界を超えた戦いで疲労が蓄積していたのだろう。その蓄積された疲労は、まともに立つことも出来ないほどだった、ということか。

(正直、俺も今すぐ座りたい)

 なんなら、目を瞑り眠りたいくらいだ。それでも今倒れちゃだめだ。確認しなくてはならないことがまだあるからな。

「それで、カラトムーアにカラトムーガ、お前らはまだ俺と、俺達と戦う気なのか?」

 俺は今持てる力で精一杯のはったりをかます。これで、おう、お前を殺す!と戦闘を始めてきたら即死する自信がある!

「・・・いや、もう戦う気など起きん・・・、」

「こ奴もこう言っておるし、我もいる。だから安心して気を休めるとよい」

「そう、か・・・、」

 どうやらカラトムーガは、俺が限界を超えていることに気づいているらしい。なら、俺が無理をしてはったりをかましたのは無駄だったな。

「それじゃあ俺は少しやす、む。あと・・・む・・・」

 俺は自身の言葉を最後まで言い終えることなく、強制的に目を瞑る。


 彩人が倒れるように眠った直後。

「・・・私は、これからどうすればいいのだろうか?」

 セントミアは独り、今の感情を吐露する。

 吐露した感情は行き場を無くして彷徨い、ある人外の存在へたどり着く。

「悩んでいるのなら、一つ、提案がある」

 セントミアの独り言に反応した者は、カラトムーガ、神だった。

「提案?」

「うむ。そ奴と共に行動していけばいいのではないかね」

「そ奴・・・もしかして、アヤトと一緒に行動すればいい、そう言っているのか?」

「うむ。そ奴はこれまで旅をしてきた。彼の行動全てが善い行動をした、などと言うつもりはないが、間違いはないだろう」

「・・・」

 カラトムーガの提案に、セントミアは黙る。

「なに。今すぐ決める必要はない。ゆっくり悩み、悩んだ末に行動すればよい。我らもこれからどのように行動すべきか、具体的に話し合う必要があるだろう。だよな?」

「・・・ああ」

 そのような話をした後、セントミアはゆっくり目を瞑る。瞑った眼は、これまで以上に穏やかで、笑みを露出させていた。

次回予告

『7-1-59(第548話) 虹無対戦~その後~』

 彩人達とカラトムーガとの戦いは遂に終わる。だが、まだ各国の重鎮への報告が残っていて、その報告に関する準備を始める。


 こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。

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