7-1-57(第546話) 虹無対戦~無の国編その20~
「「「!!!???」」」
突如、声が聞こえた。この声に聞き覚えがあったが、誰の声かは分からない。
「ムーア!やはりそいつの中に隠れていたか!?」
「ムー、ア?」
どこかで聞いた・・・あ!?
(ムーアじゃなくて、カラトムーアか!!??)
ということはつまり、こいつは・・・!?
(カラトムーガの、兄弟・・・?)
そして、カラトムーガの発言から推測するに、こいつはずっと俺の中に隠れていたのだろう。
(ということは、この【超繋虹】に関するアドバイスをしたのもこいつ、ということか)
「もう辞めるのだ。お主も薄々気づいているのではないか?このようなことをしたところで・・・、」
「黙れ!!!貴様に何が分かる!?」
「!?」
俺はカラトムーガの怒気で怯んでしまう。
「貴様はいつも、周囲の人間に囲まれ、幸せに暮らしていた。それに対して我はどうだ!?どうだったか!!??言ってみろ!!!」
「それは・・・、」
「我はいつも、いつも独りだった!我が話しかけただけで周囲の人々は我を避け、魔法を見せただけで逃げられた!!」
・・・。
「それに対して貴様はなんだ!?村や町に入るだけで周囲の人々は貴様に近づき、一挙一動に拍手を送られていたな!それだけ称賛を受けてきた幸せ者が、笑顔を向けられた貴様に何が言える!!??」
・・・・・・。
「だからこそだ」
「なんだと!今まで幸せに生きてきた奴が、何も苦しんでいない奴が我に何を言うというのだ!!??」
「だからこそ、お主が抱いている感情を危惧していた。我が周囲の者達と話をする度、お主の感情の影が濃くなっていった。誰もがお主を怖がっていたから、我がお主と周囲の者達を繋げようとしていたのだ」
「嘘だ!そんなこと、我は一切知らぬぞ!」
「それはそうだろう。お主を驚かせたくて、内密に進めていたのだからな。もう少しで準備が終わろうとしていた時、お主が暴走し始めたのだから知らぬのも無理はないだろうがな」
「・・・信じぬ」
「・・・」
「そんなこと、我は信じぬぞ!何を今更そんなことを言っている!?遅い!何もかもが遅過ぎるのだ!!」
カラトムーガの掌に魔力が集中し始める。
(少しやばそうだ)
俺もカラトムーガ同様、掌に魔力を溜めようとした。だが、俺の肩に掌が置かれる。置いた者を見ようと、俺は後ろを見る。俺の肩に手を置いた者の正体は、リーフだった。
「あの魔力の方は、私達がなんとかします。だからアヤトは・・・、」
「分かった」
俺は、あのカラトムーガを直接叩いて止めるとしよう。
「・・・やはり、我に味方は誰一人いなかったのだ。ならば、こんな世界など、不要!不要だ!!」
そう言い、カラトムーガは掌を地面に向ける。
(まさか、あの魔力を地面に直接撃ちこむつもりか!?)
あの高密度の魔力の塊を地面にぶつけたら、絶対碌なことにならない!
(リーフ達は自分に任せろと言っていたが、一体何を・・・!?)
そう考えていた直後、俺の後ろから莫大な魔力を感じた。後ろを見てみると、クリム、イブ、リーフの三人が一か所に魔力を集中させていた。
「二人共、力の出し惜しみなんかしないでよ?」
「当然です!クリムこそ、手を抜いたら承知しませんよ?」
「・・・二人共、魔法に集中する」
(この魔力、何かやばそうなことが起きそうだな)
だが何故だろう?どこか見覚えがあるような、以前にも似たような光景を見たような、感じたような気が・・・!?
(・・・そうか。あの三人はあの魔法を使うのか)
なら大丈夫だ。俺は三人に背を任せる。
「・・・私も、やろう」
「!?」
ここでさきほどまで俺と戦っていたセントミアさんが出てくる。
(さっきまでボロボロだった・・・ああ、そういうことか)
時間経過により魔力が回復し、回復した魔力で体力を回復させたのか。
(正直、戦力としては嬉しい。嬉しいのだが・・・、)
セントミアさんの言葉をそのまま信じていいのか分からない。俺だったら、こう言って相手を信じ込ませた後で不意打ちを食らわせて・・・と、そんな可能性を考えていたからである。
だが、そんな不安を吹っ切らせてくれる者がいた。
「いいんじゃない?」
「!?」
その者はルリだった。
「その人から悪意?なんか悪いものを感じないし、協力してもらおうよ。ね、クロミルお姉ちゃん?」
ルリがクロミルに話を振るや否や、クロミルはセントミアさんに白魔法をかけ始める。
「ご主人様のこと、お願いいたします」
「・・・ああ」
そして、モミジは俺達に近づく。
「私が植物さん達の力を借りて、近くまで送ります。どうかご無事で」
俺はモミジの言葉に頷く。セントミアさんも俺と同じように頷く。
「それじゃあ行きます。ルリさん、手伝ってくれますか?」
「もちろんだよ、モミジお姉ちゃん!」
そう言い、ルリもモミジみたいに、地面に手を置く。
「それでは、二人共お願いします」
モミジがそう言った後、地面に違和感を覚える。地面が突如盛り上がり始める。
(植物が俺達を押し上げているのか)
後でここの植物達にもお礼を言わないとな。
俺は神色剣を強く握り締め、【超繋虹】を発動させる。
「!!??」
七種類の【色気】と七種類の【色装】を同時発動しているからか、【六色気】を使用している時以上に重い負担だ。
(正直、連続使用は控えたいところだな)
そんなことを脳の隅で考えつつ、カラトムーガとの距離は近くなっていく。
「!?あの魔力・・・いいだろう。まずは貴様らからだ!」
カラトムーガは三人の膨大な魔力に気づき、視線を三人に向ける。
(注意がリーフ達に向けられたな。今の内に近づけられるな)
あの魔力は三人に任せて、俺はセントミアさんと共にカラトムーガを叩く!
「貴様らが死ぬことで、あ奴の絶望した顔を拝んでやろう」
「私達が死ぬ、ですって?」
カラトムーガの言葉に、リーフは笑みをこぼす。
「・・・何がおかしい?」
リーフの笑みに、カラトムーガの機嫌が悪くなる。
「だってあなた、私達が死ぬ、なんてありえないことを言ってきたのですからね。つい、」
リーフの言葉に、クリムとイブも笑みを表情に浮かべる。
「そうね。私達が死ぬなんてありえないわ」
「・・・ん、激しく同意」
「私達はこの魔法で、あなたを倒すのだから!」
リーフ、クリム、イブは以前放った魔法、【殲滅熱光線嵐】をカラトムーガに向けて放つ。
そして、カラトムーガの魔法と三人の魔法が激突する。周囲に大きな衝撃波が起こり、常人なら立っていられないほどの強風がリーフ達を襲う。
(これほどの魔法をあの三人が・・・!?)
リーフ達、凄いな。
(俺も、やらないと)
その一方で、
(互角、ですか・・・)
リーフは現状に内心焦っていた。
(出来ればこの魔法で倒したかったのですが、難しそうですね)
「・・・大丈夫」
「!?」
イブはリーフの様子に気づき、声をかける。
「そうです!私達なら、いけます!」
リーフはイブとクリムの言葉に安心する。
「ありがとう」
そして、感謝の意志を伝える。【殲滅熱光線嵐】の威力が更に強まる。
「・・・まさか?いやあり得ん!」
カラトムーガは自身の魔法の威力を強めたが、少しずつ、少しずつ押されていることに怒りを覚える。
「我は神なのだぞ!神ゆえに最強!!誰にも負けないのだ!!!」
「それは違います」
カラトムーガの言葉を、リーフは即座に否定する。
「独りだと、どうしても限界が来てしまいます。独りだったら、限界が来たら終わりですが、仲間がいたら違います。仲間がいれば・・・、」
リーフ、クリム、イブ。それぞれの体から血が流れ始め、苦痛の色が顔に出始める。
「・・・」
「・・・」
「・・・」
互いが互いを見る。その後、三人は同じ笑顔を顔に浮かべ、再びカラトムーガを見る。
「イブ?まさかこの程度で根をあげる、なんて馬鹿な事は言わないでしょうね!」
「・・・そっちこそ、魔力が弱まっているのでは?もしかして、怖気ついた?」
互いの言葉に怒りを覚えた二人は、
「「絶対、こいつには負けない!!」」
自身の力を更に強める。
「この我が、押されているというのか・・・、」
カラトムーガは、三人の魔法より自身の魔法の方が劣勢なのだと自覚し始める。
「お主、もう意地を張るのはやめようではないか?一緒に我も謝ろう。だから・・・、」
「うるさいと言っておろうが!!!」
カラトムーアの言葉をかき消すように、カラトムーガの魔法の威力を強める。
「我には誰もいなかった!貴様のように、常に誰かが一緒にいた、幸せ者には分かるまい!」
「・・・我は、お主が思っていたほど幸せではなかったぞ?それに・・・、」
「だから何度もうるさいと言っておろうが!!!」
カラトムーガの言葉の強さとは対照的に、カラトムーガの魔法は三人の魔法に押されていく。
「あり得ない!この我が、何も残っていないこの我が負けるなど、絶対にあり得ない!!」
「いえ、あなたの負けです!」
三人の魔法は、徐々にカラトムーガに近づく。
「やめろ。くるな、くるなーーー!!!」
カラトムーガに三人の魔法が激突する。
「ふぅ」
「やった、わ・・・、」
「・・・もう、無理・・・、」
リーフ、クリム、イブの三人は力を出し切ったからか、その場にへたりこむ。
「・・・だ」
「?」
「まだだ!」
「「「!!!???」」」
土煙の中、カラトムーガは三人に向けて直進し始める。
「貴様らを殺して・・・!?」
ここでカラトムーガはあることに気づく。
(あ奴は!?アヤトはどこにいる!!??)
彩人の存在である。カラトムーガは彩人を探そうと、周囲を見渡し始める。その様子に、
「もう遅いですよ」
リーフは口角を上げて答える。
「!?まさ・・・!!??」
カラトムーガの死角から、彩人とセントミアが現れる。
「やられ・・・!?」
「今です!」
リーフは誰かに声をかける。
「な!!!???」
ここでカラトムーガは何者かに行動を阻害される。
(この氷・・・あの人化した魔獣か!)
その者の正体はルリだった。
(だが、我が氷だけで行動を止められるとは・・・!?)
その氷には、植物が一部骨組みとして使われていた。
(まさかあの植物・・・!?)
カラトムーガはモミジを見る。モミジは懸命に植物達に魔力を送り、力を借りている。
「小癪な・・・!」
カラトムーガは攻撃しようと、なんとかルリとモミジの拘束を外そうと奮闘する。
「!?」
ここで更に拘束が強まる。
「【牛封・牛麟結界】です。そして、」
クロミルはカラトムーガを指さす。だが、指をさしていたのはカラトムーガではない。カラトムーガの近くにいたある者をさしていた。
「今です、アルジン!」
今の今まで身を潜め、時期を窺っていたレンカが行動に移す。その行動が、カラトムーガの行動を妨害する。
「貴様・・・まさか魔道具か!!??」
カラトムーガはいきなりのレンカの登場に驚き、心を揺らす。その揺らぎが大きな隙を作ってしまう。
(ありがとうな)
俺はクロミル、レンカだけでなく、リーフ、クリム、イブ、ルリ、モミジに感謝する。
(これで・・・決める!)
俺は全身全霊でカラトムーガに攻撃する。
「!?」
セントミアさんは俺に合わせて同じタイミングで攻撃してくれた。そのことはいいのだが、俺がカラトムーガに攻撃を当てる直前、何者かが俺とカラトムーガの間に割って入ってきた。
(・・・恨むなよ、カラトムーア)
俺は乱入してきた者、カラトムーアの存在に気づいたものの、剣の勢いを殺すことが出来ず、カラトムーアごとカラトムーガを切ってしまう。
「ど、どうし、て・・・?」
俺以上にカラトムーガが驚いていた。それはそうかもしれない。
なにせ、さっきまで敵だと思っていた奴がいきなり庇ったわけだからな。
「・・・我は、お主を独りにしたくない。ただ、それだけのことだ・・・、」
そう言いながら、カラトムーアは地面に膝をつく。
(そういえばこの剣、霊体にも攻撃出来たんだな)
今更だが、さっきまでカラトムーガを説得していたカラトムーアに実体はなかった。つまり、幽霊みたいな状態ということだ。そんな状態のカラトムーアにダメージを与えられたということは、この剣にはまだ俺が知らない効果を秘めている、ということなのだろう。前にこの剣を視たと思うのだが、この剣にはまだまだ秘密がありそうだ。
「言っておくが、俺を恨むなよ?」
俺はカラトムーアを切りたくて切ったわけじゃない。いきなり俺とカラトムーガの間に割って入ってきたため、剣の勢いを殺すことが出来ず、カラトムーガと共に切ってしまったのだ。
「分かっておる。この傷は、我の身勝手な行動でつけたものだ。決して、お主を恨みはしない」
「そうか」
ならいいか。
「お前、どうして・・・?」
そして、カラトムーガは未だにカラトムーアの行動に驚いているようだ。このカラトムーアの行動の理由、流石の俺でも分かる。
(どうして分からないのだろうか?)
・・・もしかして、第三者目線じゃないと伝わらないのだろうか。俺は我慢出来ずに伝える。
「さっきもこいつが言っていたじゃねぇか。こいつは、お前を独りにしたくない、それが理由なんだよ」
「な!?う、嘘だ!!」
カラトムーガは自身の体をおさえながらも、俺の言葉を即座に否定する。
「真偽なんか本人に聞け。だが、自分がやられると分かっていても俺の剣をその身に受け、お前を庇った。その事実は真摯に受け止めとけ」
俺は警戒しつつ、神色剣をしまう。こいつにはもう戦闘する気はないだろう。
「・・・」
カラトムーガは無言でカラトムーアを見つめる。カラトムーアはその視線に気づいたのか、無言でカラトムーガを見た後に近づく。
「どれほど愚かなことをしていても、お主は我にとってたった一人の弟だからな。見捨てることなど出来ん」
カラトムーガは悲しげな笑みをカラトムーアに向ける。
「そんな・・・まさか我は、本当に・・・?」
この言葉を聞き、ようやくカラトムーガが止まったのだと安堵する。
「セントミアさん、ありがとう。おかげで助かった」
俺はセントミアさんにお礼の言葉を贈る。感謝の気持ちはしっかり伝えないとな。そんな俺の言葉を無視しているのか、セントミアさんは上を向いていた。
「いや、なに上を向いて・・・、」
俺もセントミアさんと同じように上を向いたら、上空に何か黒い球が浮かんでいた。
「なんだよ、あれ・・・、」
どうみても嫌な予感しかしなかった。
「・・・まさか、お前の仕業か?」
俺はカラトムーガに視線を向ける。
「あ?・・・あ、ああ。あれは我の魔法だ」
カラトムーガは俺の質問に対し、なんの抑揚もなく返答する。
「なら消してくれよ。あんな魔法、いつまでも残しておくなよ」
「うむ」
そう言い、カラトムーガは黒い球に向けて手を伸ばし、何かし始めた。
・・・。
(あれ?)
あの黒い球を消す為にしているはずなのに、なにか大きくなっていないか?
(というかあの黒い球、カラトムーガは制御出来ているのか?)
そう考えていたら、
「お兄ちゃん、あれ、なんだか凄く嫌な感じがする」
ルリが俺に話しかけてくる。
「ああ、俺もだ」
ルリの感想に俺は同意する。
「アヤト!あの黒い球って・・・!」
「やばそうな予感がしているけど、大丈夫なの?」
「・・・なんとかなる?」
リーフ、クリム、イブが俺の元へ近づき、それぞれ自身の感想を述べる。
「アヤトさん、あの黒い球から凄く嫌な感じがします。大丈夫ですか?」
「ご主人様、私に何か出来ることはあるでしょうか?」
「アルジン・・・、」
モミジ、クロミル、レンカもリーフ達同様、俺の元へ近づいてくる。
「あれ?」
そして、カラトムーガの方から不穏な言葉が聞こえてくる。
「・・・どうして消えない?我の魔法だぞ?」
「?どうした?まさか、なにかあったのか?」
「・・・我の魔法が、我の制御から外れた」
次回予告
『7-1-58(第547話) 虹無対戦~無の国編その21~』
カラトムーガの魔法が、カラトムーガの制御下から外れてしまい、暴走を始めてしまう。暴走し始めるカラトムーガの魔法を止める為、彩人はある魔法を発動させる。
こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。
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