さん
「ねぇ春ちゃん今日は尚ちゃん一緒じゃないのー?」
行きつけのバーに独りで行けばそんな風に聞かれた。
あいつと一緒にいることが、それくらい浸透してたんだって思うと、少し安心した。
「あら?春ちゃん尚ちゃんと喧嘩でもした?寝てないでしょ」
「うっさい」
「寝不足な人間に出すお酒はない」
「春ちゃん睡眠不足はお肌の大敵よー」
「もう本当黙ってお願い」
気晴らしに飲みに来たところで心配性なマスターはノンアルコールしか出してくれないし、外野はうるせーし。最悪なんだけどこれが安心する。
あいつが一緒じゃないことを聞かれて、でもそれだけ。それ以上は一切突っ込んでこない。それがとてもありがたい。
言わなくて済む。別れた、なんて言葉にしたら、また落ち込む。そんな自分が容易く想像できる。
ばからしい。
じゃあなんで別れたんだなんて聞かれてももっと困る。理由がない。周りが納得するような理由じゃない。
くだらねぇ。考えるだけで、どんどん堕ちていく。
「春ちゃん、どうしようもなくなったら、ちゃんと頼ってね?」
「いつでもいいから吐き出しに来い」
そう言葉をかけてくれるから、ここは本当に居心地いい。分かっているのに踏み込んでこない。
その優しさが、今はすごく嬉しい。
ちゃんと俺の中で区切りがついて、話せるようになったら良いと思う。
「もうちょい待って欲しい」
「話したくなったらいつでもおいでー」
こういう存在が俺の近くにいてくれて本当に良かったと思う。
話しに、来れるんだろうか?分からない。時間が経てば少しは寝れるようになるんだろうか。
尚がいないことが当たり前に、なっていくんだろうか。
お読み下さりありがとうございました。
多分あと話も書いたら満足して終わる気がします。




