今際の際
――それから、歳月は経て。
「……どう? 宵杜さん」
「……うん、大丈夫だよ。ありがとう、結月さん」
そう、柔らかな声音で尋ねてくれる清麗な女性。そんな彼女に、精一杯の笑顔で答える僕。……ちゃんと、笑えてるかな? ……うん、そうだといいんだけど。
あれから、およそ20年――もうとうに50を越えた僕は今、20年前と変わらぬこの小さな部屋で病床に伏していて。症状は、結核――現在の医療では手の施しようのない、いわゆる不治の病に侵されていて。
突如現れた不思議な少女、結月さんと出逢ってからおよそ20年――彼女は、ずっと支え続けてくれていた。雨の日も、風の日も、健やかなる日も病める日も、ずっとそばで支え続けてくれていた。……なのに、
「……ごめんね、結月さん」
「……へっ?」
「……どうしても、認めさせたかった。君のお陰で書けた作品を、どうしてもみんなに認めさせたかった。なのに、結局は誰にも……本当にごめんね、結月さん」
「……宵杜さん」
そう、どうにか声を絞り出し告げる。ずっと書き続けたけど……結局、誰にも評価してもらえなくて。ずっと応援してくれて、ずっと信じてくれて、ずっと支えてくれていていたのに……なのに、全ては僕の力不足で――
「……そんなこと、言わないでよ」
「……へっ?」
「……私は、大好きだから。例え、他の誰にも認められなくたって……私は、貴方のお話が大好きだから。だから……後は任せて、宵杜さん」
「……結月さん」
すると、そっと僕の手を取る結月さん。そして、少し怒ったように――それでも、ほどなく穏やかに微笑み告げる結月さん。そんな彼女に、僕も自然と微笑がこぼれる。そして――
「……うん、今まで本当にありがとう、結月さん。それから……僕は、君が――」




