第9話「全員集合、続きを決める会議」
レイアが段取りをつけてくれた。
「みんなで話し合いましょう。マリアが書いた続きを、一緒に決めるために」
「全員ですか」
「全員。ヴィンは知ってる。エドガーとミアにも話す」
「え、エドガー殿下にも……」
「いいじゃない。あの人、こういう話、好きそうだし」
(好きそうという理由で王子に話すのか)
翌日の放課後、中庭の隅に五人が集まった。
エドガーが来た瞬間、「なになに、なんの集まり?」と言った。設定通りではないが、エドガーらしかった。
ミアが来た瞬間、全員の顔を確認して「出席確認できました」と言った。ヒロインではなく委員長だった。
「では」レイアが仕切った。「マリアから説明してもらいます」
五人の視線が集まった。
私は少し深呼吸した。
「皆さん、この世界が誰かに書かれたものだという話を、信じますか」
「信じる」ヴィンが即答した。
「信じます」ミアも即答した。「なんとなく、そういう感じがしていたので」
「信じるよ」エドガーが言った。「夢で別の場所の記憶が出てくることがあって、気になってた」
(エドガーも断片的な記憶がある)
「私が書きました」
全員が黙った。
「この世界の物語を、前世で書いていました。三話だけ書いて、止めていました。そして転生して、マリア・ソレンとしてここにいます」
「……そうか」ヴィンが言った。
「そうかー」エドガーが言った。
「なるほど」ミアが言った。
「知ってた」レイアが言った。
「え、レイア様は昨日聞いたばかりでは」
「でも言いたかった」
(このキャラ、かわいい)
「で」エドガーが前のめりになった。「俺たちの続き、どうなるの? 俺、誰かと結ばれる?」
「……書いていないので、決まっていません」
「じゃあ決めよう!」
エドガーが楽しそうに言った。
「決めるって……私が書くものですから」
「でも決まってないんでしょ? だったら俺たちにも意見あっていいじゃない」
(確かに)
「ミアちゃんはどうしたい?」エドガーが聞いた。
「私は、自分で選んだ人と一緒にいられれば」ミアが落ち着いて言った。「誰かに決めてもらいたくはないです」
(しっかりしてる)
「ヴィンは?」
「……レイアが笑っていられれば、それでいい」
全員がヴィンを見た。
ヴィンが少し顔を赤くした。
「余計なことを言った」
「言っちゃったね」エドガーが笑った。
「レイアは?」レイアに視線が集まった。
「私は……」レイアが少し考えた。「マリアに近くにいてほしい。それが一番」
「……私ですか」
「あなたがいてくれたから、今の私がいるから。それは変わらない」
(モブキャラの私が、悪役令嬢の一番大事な人になっていた)
「では」ミアが手帳を取り出した。「みんなの希望をまとめます。エドガー殿下は?」
「俺は……迷子にならないようになりたい」
「それは物語の希望ではないですよね」
「あと、好きな人ができたらちゃんと告白したい」
「それでいいですか?」ミアがこちらを見た。
「……書きます。全員の希望を踏まえて、続きを書きます」
五人が顔を見合わせた。
「よろしく、マリア」レイアが笑った。
「よろしく」とエドガーが言った。
「お願いします」とミアが言った。
「頼む」とヴィンが言った。
私は少し笑った。
(書かなきゃいけない)
(でも、書きたい)
初めて、そう思った。
◇
──柊詩の手記より。
『全員に話した。全員が聞いてくれた。希望を教えてくれた。ヴィンがレイアへの気持ちをうっかり言ってしまった。エドガーは迷子にならないことが第一希望だった。書かなきゃいけない。書きたい』
次話:「私が、この世界の神として向き合う」




