第24話「書いた世界で、また書く」
原稿を、みんなに渡した。
レイアが一番先に読んだ。
次にヴィン。それからエドガー。ミアが最後だった。
誰も何も言わなかった。静かに読んだ。
レイアが読み終わって、少し黙った。
「マリア」
「はい」
「泣いていいか」
「どうぞ」
レイアが少し目を押さえた。
「一人で泣いていた夜のことも、ちゃんと書いてくれた」
「書きました」
「続きも書いてくれた」
「書きました」
「……ありがとう」
エドガーが言った。
「マリアさんが転生してきた話、初めて知りました」
「黙っていてごめんなさい」
「いいえ。でも一つだけ聞いてもいいですか」
「何ですか」
「来てくれて、よかったですか」
(よかったか)
私はしばらく考えた。
「よかったです」
「やったー」
(小さい声で言った)
(またかわいかった)
その夜、新しい紙を広げた。
一行書いた。
『この世界には、まだ書いていない物語がある』
(そうだ)
前世では書けなかったものがある。
知らなかった感情がある。会えなかった人たちの話がある。
ここで生きながら、ここで書く。
それが、マリア・ソレン──柊詩の、これからだ。
窓から外を見た。
星が出ていた。
私が作った世界の星だ。でもとっくに、みんなのものになっている。
(もう一度、書き始めよう)
ペンを持った。
◇
──柊詩の手記より、最終記録。
『物語を書いた。みんなに渡した。レイアが泣いた。エドガーが「やったー」と言った。ミアが「土壌改良に例えると、ここが一番よかったです」と言った(土の話になった)。ヴィンが「また書いてくれ」と言った。また書く。この世界で、ずっと書く』
──レイア・ヴォルンの日記より。
『マリアが物語を書いてくれた。私が一人だった夜も、ヴィンと笑った日も、全部書いてあった。全部、本当だった。マリアは書き続けると言った。私は隣にいる』
*完*




