第21話「ミアが、春に帰ってきた」
春になって、ミアが帰ってきた。
農業研究会の前に、荷物を持って立っていた。
エドガーがそれを見つけた瞬間、廊下を走った。
「走らないでください、殿下」
「やったー!」
(止まらなかった)
「エドガー様」ミアが少し驚いた顔をした。「来てくださったんですか」
「来ました! 花壇の土、ちゃんとしてます。確認しました」
「ありがとうございます、殿下」
「あと手紙、全部読みました。二十回」
「二十回」
「二十二回かもしれません」
(二十二回)
(エドガー殿下、告白より先に枚数を言ってしまった)
私は少し離れたところから見ていた。
レイアが隣に来た。
「見ている?」
「見ています」
「書く気?」
「書きます」
「エドガー、どうすると思う」
「たぶん、また農業の話をします」
「…賭けてもいいの?」
「負けますよ、レイア」
エドガーとミアは農業研究会の前で一時間話した。
全部、土の話だった。
でも最後に、エドガーが言った。
「ミアさん、また手紙を送ってもいいですか」
「……もちろんです」
「帰らないとき、にも」
「帰らないとき、とは」
「学院にいるとき、にも、という意味で」
ミアが少し考えた。それから笑った。
「送ってください。土の話でも、そうじゃない話でも」
◇
──柊詩の手記より。
『エドガーが「帰らないときにも手紙を」と言った。これは準告白だ。ミアも笑った。あと一話で行けると思う』
次話:「エドガーが、ついに言った」




