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第93話 王都脱出

「そうだったね。思い出したの。私の記憶」

「私の記憶?どういう意味?」

 カレンデユラは首をかしげた。

「王都の左右、東西の塔。黒い魔女と白い魔女が何者かって話よ」

「全然見えてこないんだけど」


「黒い魔女はね、白い魔女が魔法で作った人工生命体なのよ。白い魔女は第二のワルプスギスになろうとした。いや、ワルプルギスを超えようとした。魔人の生みの親、ワルプルギスを。でも出来上がったのは自我を持たない失敗作だった。でも白い魔女はその人工物である黒い魔女の利用法を思い付いた。実験と研究を続けるに当たり、黒い魔女に悪事の全ての責任を押し付け、自分は善人を装った。例えば、範囲治癒魔法を使用したときに想定外に病気の原因まで元気になった。それで疫病が増え、そういう時に黒い魔女の仕業にしたんだよ」


「なるほど。白い魔女は、そうやって人魔融合や魔法の研究を続け、そのせいで王妃や姉という被害者がでたわけだ。で、それが?」


「黒い魔女はその過程で自我に目覚めた。そして白い魔女を殺した」

 黒い魔女にはそれ以前に感情が無かった。敵を前にその貧弱な戦力を嘲笑ったり、廷臣たちの中でその無能を哄笑したのもすべて事前に白い魔女が組み込んだ、そういう反射動作に過ぎなかったのだ。


 だが彼女は自我に目覚めた。

 最初の自律的行動は、生みの親とも言える白い魔女を殺すことだった。


「ええ。でもジゼルの記憶に、そこはないんでしょ?」

「そう。黒い魔女は白い魔女の死後、寿命を迎える瞬間、若返りの奇跡の魔法を使い、記憶を失うのと引き換えに若返ったのよ。見た目15歳くらいに。髪の色は戻らなかったけど」


「……」

 カレンデユラはただじっとモルガナを見た。

「そして自分が何者か、ジゼルの記憶を受け取ったことをきっかけに思い出した。魔女どころか、人間ですらなかった。そしてその時もう一つ思い出した。魔法で若返ったと思い込んでいたけど、それも事実じゃなかったってこと」


「聞きたくなくなってきたけど、最後まで聞いてあげる。言って」

 語尾がかすかに涙に揺れる。


 翌朝、王都の一角が騎士団によって包囲された。その中心、リゼの店にはモルガナ、カレンデュラ、エミリオそしてラフカの4人。

「王妃に関する情報漏洩で王宮の司祭数人が即日処刑された。キミたちもすぐに逃げるんだ」

 それをラフカは伝えに来たのだ。王国の宰相グランニグスが直接指揮を執っているという。


 だが遅かった。店は100人を超える騎士団の包囲を受けた。

「ボクが血路を開く。キミたちは逃げてくれ」

 ラフカは騎士団と戦い、モルガナ達を逃がす決意を固めていた。

「必ず逃げろ」

 剣を携え出て行こうとするその背中にモルガナが雷撃を放った。ドアの前で気を失うラフカ。


 そしてモルガナはエミリオに頼んだ。

「エミリオ。この位の人数なら死者を出さずに無力化できる。ラフカとカレンを連れて逃げて」

「キミは……」

 無力化?戦うというのか。しかし今見た魔法は、熟練の魔法使いのそれだ。

「早くしないとベリアスが来ちゃう。あいつは、怪我人を出さない判断が出来ない!」

 100人皆殺しの可能性があるのだ。


 一旦王都を脱出。そしてオズワルド公爵経由で申し開きをする。リーヴにも協力を要請する。これだ。

 助かる可能性はこれしかない。ラフカの物言いから、今投降すれば有無を言わさず殺害される。裁判を経由せず、発言の機会を与えず、迅速かつ永久的に口を閉じさせるのだ。


「エミリオ、頼んだよ。カレン、頑張って」

 モルガナはドア付近を魔法で派手に吹っ飛ばし、騎士団の手の届かない位置、つまり空中に飛んでそこで静止した。

「無体な振る舞い。それでも誇りある王国騎士団か!」

 空中に制止した少女の叱責が響く。よく通る声だ。騎士団の視線は斜め上。


 エミリオがその視線の向きが作った死角を巧みに利用し、包囲の輪を抜けていく。

「愚か者ども!天の逆鱗に触れた報い、その身で知るがいい!」

 魔法の詠唱に弓兵への攻撃許可が下りた。その矢は下から上に向けて飛来するが、如何せん重力に逆らう分だけ威力が足りない。


 モルガナの物理レジストに簡単に弾かれる。その間にも詠唱が完了。雷撃が騎士団たちをバリバリと舐めまわした。

 文字通りの瞬殺。


 瞬殺と言っても殺したのではなく、意識を失わせただけだが、それはさておき100人を一瞬で片づけ、包囲を無効化したモルガナ達は合流して門に向かう。

 一方、塔の上からその様子を見ていた宰相グランニグスは慌てて王国騎士団長に騎兵団の出撃を行うよう命じた。


 騎士団長は何の騒ぎかと呆れたが、確かに中心部の広場付近で落雷があったのを見た。進軍ラッパが吹かれ、常備兵が五か所ある警備詰所から次々と出撃する。


 ようやく門まで辿り着いたモルガナたち。そこに馬が用意されていた。その傍らにアベルとカーター。

「何があったか知らんが気を付けていけ」

 笑顔で馬を貸してくれる2人。門でモルガナ達を妨げるものはいなかった。多分後で門兵たちは捕縛されるだろう。反逆罪が適用されるかもしれない。重い罪だ。


 処分が下される前に間に合わすしかない。公爵の元に行って彼の力を借りるのだ。エミリオ達の退路の安全さえ確保すれば、あとは飛行魔法を使って一人で行けばいい。なら間に合う。


「エミリオ、急いで!カレン、こっちの手綱をお願い」

 馬は二頭。エミリオは気絶しているラフカを乗せて。カレンデュラはモルガナと共に。聖騎士カレンデュラは馬の騎乗も巧みだ。


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