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第69話 似ている

「あ~ん、これどうしよう」

 もうかなり遅い時間だが、晩餐会後の後片付けをしているのが見習いの10人だ。誤って赤ワインをスカートに付けてしまった見習いが嘆いている。

 するとモルガナが赤ワインのシミの箇所を白ワインを浸した布で覆い始めた。

「ちょ、ちょっと、モルガナ!」

「ああ、大丈夫よ。こうするとシミが落ちやすくなるんだよ。あと、厨房行って塩をもらってその塩で水分を吸って。それで結構落ちるよ」


 なら厨房までボクが案内しましょうと寄ってきたのがラフカだ。厨房までの案内など彼女たちには不要だ。しかし、モルガナへの興味がもう抑えられなくなっているカラフは隙を見つけてはこうして寄ってくるのだ。

 アガサが赤ワインのシミの処理の仕方を見て頷いているが、誰もそのことには気づいていない。


 翌日、モルガナへの興味を抑えられないカラフは、モルガナが働いていたという王都の一角、そのカフェを訪ねてみた。

「リゼの店。ここだな」

 ドアを開けると明るい声が出迎える。

「いらっしゃいませえ」

 ゆるふわひっつめ髪の細身の美女店員と目があった。


「ゼ、ジゼル……!」

「ラフカさん、あなたこういうところにも来るんですね。どうぞお掛け下さい」

 席へと案内されるが、通り過ぎる際にそこに座る客とも目があった。

「ア、アガニケまで」


 アガニケは見知らぬ少女と一緒だ。椅子に座って感じる視線の方を見やる。厨房から顔を覗かせている店員も見覚えがある。エミリオだ。

「な、なんだ、この店……」

 S級パーティの面々がズラリ。


 置かれた水盤の上に手を差し出す。そこにジゼルが水差しで指に水を掛けてくれる。モルガナが店で働くようになってから彼女が設けたシステムだ。この店ではスプーンの他にアイスピックを平たく潰したような刺突用とでも言うべき細いナイフが提供される。手を汚すケースを極力減らすためだ。それでもゼロにはなっていない。


 そこで考案された水差しだ。花びらを浸しているのか。その清い水からは、花の香りがする。女性にも好評で、デートにも利用できるスマートな店なのだ。


「へえ~。みなさん、同じパーティなんですか」

 アガニケの向かいに座る少女はリゼの店の常連客だ。

 浅黒い肌にブロンド、そして白い歯が眩しい。

 同じく常連客のアガニケとはよく顔を合わせるので、少女の方から話しかけ、いつしか仲良くなったのだという。

 ジゼルはモルガナの代わりだ。モルガナに頼まれ引きうけたのだ。


「にしても奇遇というか……。結構ボク達ってレアキャラだと思うんだけどなあ」

 ぼやきながら焼いたチーズケーキを持ってきたエミリオ。

「そうだよね。マグダ・レガリナのうちリーダーを除く4人が揃うなんてね」

 アガニケも相槌を打つ。

 前衛から後衛まで全ての位置を取れるユーティリティのエミリオ、プリーステスのジゼル、ウィザード、アガニケ。そして前衛のラフカ・パドーム。彼らが王国唯一のSクラスパーティだ。


「すごい。本物のマグダ・レガリナ」

 アガニケと同じテーブルの少女が瞳をキラキラさせていた。

「ちょっとお、私だって本物のマグダ・レガリナですけど」

 アガニケがそういうので店内が笑い声に包まれた。

 にしても、だ。ラフカは次々と客が入ってくる様子に、この店の人気を知った。

「ラフカさん、アガニケさんと相席いいかしら?」

「え?私には聞かないの?」

 ジゼルが勝手にラフカと話を進めようとするので、アガニケが不満そうに言った。


「え、えー……」

 ジゼルはそう言われてもあっちこっちの客から声をかけられ、てんこまいだ。

 料理やスイーツの美味しさに加え、ジゼルの美貌、人気が客を呼んでいる。ラフカにもそれは分かった。

「エミリオは確かに前から料理の仕事をしたいと言ってたけど、ジゼルはどうして?」

 アガニケの隣に移動したラフカが聞いた。

「モルガナの代わりよ。赤煌のヴェロニカに何か頼まれて、王宮に行ってるらしいけど、知ってる?」

「もちろんだよ。何度か話した。それでここを見に来たんだ」


「あんたもモルガナ繋がりかあ」

「まあ、そうだけど、モルガナは赤煌とも人脈があるのか……」

 そんなアガニケとラフカの会話に少女が割り込む。

「モルガナさんの料理、美味しいもんね」

「カレンデュラ、モルガナは料理しに行ってるんじゃなくて、侍女の試験を受けているんだよ」

 アガニケが説明した。


 少女の名はカレンデュラと言うらしい。モルガナと同じくらいの年に見えた。

「似てるな」

 カレンデュラが手洗いに立つと、ラフカがそう呟いた。

「誰に?」

「そうか、キミとジゼルは知らないか」


 エミリオは気づいているだろう。彼女は似ている。

 マグダ・レガリナの前身、そのパーティのリーダーに。

「言いたいことは分かるよ。パーティ加入前にレガリナさんとは話したことがあるから」

 アガニケがそう返した。


 片目を前髪で覆った隻眼の女冒険者。当時の最強。そしてその時はまだ別々のパーティ。だが彼女にマグダ・レガリナ加入を誘われたことのあるアガニケもそう思う。ラフカの言うことはよく分る。

 似ている。


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