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第67話 回廊の謎かけ

「あ、あの、ラフカ様」

「ラフカと呼んで。キミならいずれ、いや近いうちにボクより上の立場になる。王妃様候補とかね。せめて今だけは対等な口を聞いていたい。わがままかな?」

 イケメンはいう事がわがままだ。そしてそのわがままな所作もまたイケメン。王妃様候補だと?何を根拠にそんなことを……。テキトーか?でも嬉しいこと言うじゃないか。


「わかりました、ラフカ。でもあなた、前から宮廷にいたのですか?」

「はは、近衛騎士は暇だから、結構休みがもらえる。どこかで会ったかな?」

「い、いえ、そうじゃないけど……」

「ボクは冒険者もやっているんだ」

「え、そんなこと、できるの?」

「まあ、今のところ、出来てる」

 なにしろロイヤルガードは暇だ。というより……。

「もしかして近衛騎士以外の任務を持っている?」


 モルガナのその言葉に一瞬ラフカの顔色が変わるがすぐに平静を取り戻す。だがモルガナは見逃していない。黒い魔女として彼女は知っている。いや思い出した。

 王室直属の隠密部隊ロイヤルイクリプス。そのメンバーはロイヤルガードを兼ねると聞いた。


「リーヴさんはさすがに面白い娘を連れて来るなあ。今年の筆頭はキミかな。ボクはキミに賭けることにした。協力を惜しまない理由がそれだ。だから何でも遠慮なく言って」

 賭けの対象かよ……。

 それでも味方のようにふるまう存在がいるのは心強い。


「アガサ様、あの娘、本当に何者ですか?リーヴ様に続き、もうロイヤルガードを味方にしたみたいですが」

 その様子を見ていた侍女のカイがアガサに言った。アガサの右腕シュリーと共に宮廷を支えおり、将来の侍女頭候補がこのカイだ。

「よくわからないけど、なかなかいい娘ね。直感的にそう思うわ」

 アガサの言葉隣のシュリーも頷いた。さらに少し離れたところで面白くなさそうなレベッカの視線。

 試験開始前にすでにモルガナは注目の的になっていた。


「ラフカは冒険者もしているのかあ。エミリオに聞いてみようかな。エミリオなら知っているでしょ」

 次の休みには、もうラフカのことを聞いてみようと思っているモルガナだ。エミリオはモルガナから見ても何でも知っている。


 王室には伝説がある。

 王朝創立の初代は配下に星の騎士と呼ばれる戦士を持っていた。今も王室の宝として星降剣という銘刀が残っており、星は王国の象徴でもある。そして庭園では、その星の色である青がいたるところで目に付く。プレセペの星々の青だ。


 しかし今、星の騎士の話を知る者は少ない。過去、星の騎士の子孫を騙る者が現れ、反乱の火種となったことがあり、彼らの存在は歴史から消されていったのだ。

 僭称する者が二度とあらわれぬよう。


 10人の令嬢たちに課せられたのは、試験というより教育だ。歴史も王室にとって不都合な部分を省かれて教育される。

 モルガナはもちろん、レベッカでさえもへとへとだ。

「もう大変だよね。どこが試験だよって」


 そう言ってモルガナに話しかけてくるのは男爵家出身のアン。彼女は家柄が低く、レベッカたちに引け目を感じていたのだが、モルガナが平民と知って少し安堵していた。だからよくモルガナに話しかけてくる。

「そうだよね~」

 ダルそうに返事をするモルガナの様子が本当にダルそうだ。

「モルガナさん。休み時間でも気を抜かないで。きっとそういうところも見られているよ」

 そう言うのがレベッカだ。意外と彼女はまっとうなアドバイスをくれる。身だしなみよ、とアクセサリーを貸してくれたり、思ったよりずっと親切だった。


 そんな中、やがて次の科目が始まる。

「みなさん。廊下に出てください」

 彼女たち10人をシュリーが引率して向かった先は、ホールから晩餐会場へと続く回廊だった。そこにアガサとカイがいた。回廊は左右に絵画が飾られ、高そうな壺だか花瓶だかが、並べられている。


 アガサが一同に聞く。

「この回廊は来賓をお迎えする歴史ある回廊です。どうですか?感想を言ってみて。まずあなた」

 いきなり指名されたのはモルガナだ。

「げ……。は、はい。歴史の重みが芳醇な香りとなって空間を幾層にも厚く支配しており……」

「もう結構。次」

 深いことを言おうと試みたが、あっさりとその浅さを見抜かれた。


 しかもその先を見ると、晩餐会場の警備をしているのかラフカがこっちをみて笑っている。

 く……!

 恥ずかしさに赤面するモルガナだ。


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