第八話『始めに言葉があった』
『『我が名は神! そして鈴木由佳! 全てを討ち払う聖なる威光とならん!!』』
全身から溢れ出る黄金のオーラ。
あたしの身体と股間の神様(CV杉田)の精神が100%完全に噛み合ったその瞬間、あたしの意識はどこまでも澄み渡り、同時に過去最大級の快感と恥ずかしさが全身の神経を駆け抜けていた。
ブッッッブッッッッブブブブブブブブブブッッ!!!!!!
「ひぅあぁぁぁぁぁぁっ♡♡♡♡♡! なんかもう……凄すぎて……逆に心地よくなってきちゃったんだけどぉぉっ♡♡♡♡♡♡!」
「由佳!?」
ヘタリ込んだミリが目を見開いて叫び、マリアが「これぞ完全なる神聖降臨……!」と涙を流してひれ伏している。
目の前の大悪魔が、あたしの股間から放たれる圧倒的な神気に恐れをなし、ズザザザと後退りしながら無数の触手を一斉に繰り出してきた。黒い触手が矛のようにしなり、あたしの心臓を穿とうと迫る。
だが——遅い。止まって見える。
「遅いんだよバカぁぁぁっ♡♡♡!」
あたしはガクガクと震える脚で力強く踏み込んだ。
疾風のようなスピードで触手の群れをすり抜け、あたしは大悪魔の巨体の真っ只中、その懐へと一瞬で飛び込んだ。
『キ、キシャァァァァッ!?』
「覚悟しなさい悪魔! あたしのキラキラ(予定だった)高校生活を邪魔した罪は重いんだからねっ♡♡♡!」
あたしは涙目になりながら、股間を、そして全身の威光を大悪魔の核に向かって突き出した。あたしの意志と神様の声が、旧校舎の空間全体を震わせるように力強く共鳴する。
『『聖書にも書いてあるだろう!? 【始めに言葉があった】とな!!』』
(だから格言の使いどころが相変わらずおかしいんだよバカぁぁぁっ♡♡♡! でも喰らいなさぁぁぁぁいっ♡♡♡♡♡!)
『『神言解放——ッ!!』』
ビカァァァァァァァァァァァンッ!!!!!!!!
あたしの股間から放たれたのは、先ほどのビームすら過去のものとする、超巨大な黄金の太陽だった。
目もくらむような神聖な極光が大悪魔の巨体を内側から完全に包み込み、呑み込んでいく。
『ギニャァァァァァァァァァァァァッッ……!?!?』
大悪魔は断末魔の叫びを上げる間すら与えられず、神聖すぎる股間光線の前に一瞬で消滅。旧校舎を覆っていた不気味な黒い霧も、怨念も、全てが綺麗さっぱり浄化され、後には静寂と黄金色の光の粒子だけが残された。
「……勝った……の……?」
ミリが呆然と呟く。
光の粒子が舞い散る中、旧校舎の女子トイレの最奥……崩れ落ちた壁の隙間から、ひっそりと安置されていた『聖なる壺』が光を放ち始めた。
その中から溢れ出たのは、最後のパーツ——【神力の源泉・聖水】。
『聖水』は光の帯となって空中を走り、一直線にあたしの股間へと吸い込まれていった。
シュゥゥゥゥゥ……ッ!
「ん……っ♡……あ……あれ……?」
最後のパーツを取り込んだ瞬間、あたしの身体を包んでいた激しい振動が、すーっと潮が引くように収まっていく。
股間に感じていた、あの「あからさまな突起」の違和感が、嘘みたいに消えていくのが分かった。あたしの身体が、本来の「鈴木由佳(女子高生)」へと戻っていく感覚。
だが、それは同時に——。
『……ふむ。どうやら、全てのパーツが揃い、元通り回収されたようだな』
脳内に響く神様の声が、どこか遠く、優しく澄んだトーンへと変化していた。
「神様……? 股間の違和感が……なくなってる……?」
あたしが呆然と下着の上から触れると、そこには何の突起も、何のバイブレーションも存在しなかった。あたしの身体は完全に元の女の子に戻っていたのだ。
『当然だ。俺様の肉体と神力は完全に修復された。これで俺様はお前の股間から離脱し、本来の神の座へと還ることができる』
あたしの目の前の空間がぐにゃりと歪み、光の粒子が集まって、一人の威厳に満ちた男のシルえっとが浮かび上がった。
「え……じゃあ、神様……行っちゃうの……?」
急に寂しさがこみ上げてきた。
毎日のように股間で暴れ回り、変な格言を連発してあたしを悶絶させてきた最悪の居候。でも、あたしがピンチの時はいつだって(変な方法だけど)助けてくれた。
『フッ……なんだその顔は。元通りになりたがっていたのはお前だろう? 鈴木由佳……短い間だったが、お前との股間共同生活、案外悪くなかったぞ』
「神様……バカ……っ! 最後の最後まで『股間共同生活』とかデリカシーなさすぎるんだよバカぁぁぁっ!」
あたしが涙を拭うと、神様のシルエットは爽やかに微笑み、黄金の光となって夜空へと昇っていった。
『さらばだ、由佳。お前のこれからの高校生活に、神の祝福があらんことを——』
静まり返る旧校舎。
あとに残されたのは、抱き合って涙を流すあたしとマリア、そして「何だったの今の……!?」と混乱するミリの姿だけだった。
こうして、あたしの命がけで恥ずかしさ限界突破の『股間の神様討還劇』は、幕を閉じたのだった。




