10、upside down
俺はシートを広げた上で弁当箱を広げて食べ始める。
すると結奈が「紗千さん」と言いながら俺を見てきた。
俺は「どうした?」と結奈に聞く。
「吉鶴先輩には申し訳ないです」
「?」
「ですが私はやはり貴方が好きなので。好き勝手にやらせて下さい」
「そうだな。お前の好きなようにやったら良いんじゃないか」
「ありがとうございます」
それから結奈はご飯を食べ始める。
俺はその様子を見ながら空を見上げてから同じ様にご飯を食べた。
正直、まだ小骨は喉に刺さったままだが。
いつか取れる日も来るだろう。
☆
それから俺達は弁当箱を端の方に片してから寝転がる。
そして空を見上げていると結奈が「思い出したくないですけど」と言った。
そうしてから「でも紗千さんに言っておきますね」と話す。
俺は「?」を浮かべてから結奈を見た。
「私、あの日の夜に病気で犬を亡くしてから町を彷徨い歩いていました」
「そうだったのか」
「はい。そして私は先輩が亡くなった事を知りました」
「成程な」
「そして私、自殺したんですけどその際に光が見えて」
「光?」
「ですね」
光の存在を言ってから結奈は少しだけ悲しげな顔をした。
それから俺を横になったまま見る。
そして「『私は先輩に会いたい』と光に言いました」と俺に赤くなる。
俺はその言葉に横に居る結奈を見た。
「そうだったんだな」
「ただ会いたかったんです。紗千さんに」
「結奈」
「?」
「俺は結奈に会えて良かった」
「え」
「俺は多分、お前に救われなかったらこの世界でも死んでいたよ」
それから俺は結奈を見る俺。
結奈は涙を浮かべてから「はい」と涙声で返事をした。
そして俺を見てから「ありがとうございます」と泣いた。
「好きとかそんなの抜きで。俺はお前に救われた。全てをな」
「!」
「俺は自殺しか目の前に無かった。例え生き返ったとしても死ぬつもりだった。だけどそんな中でお前の存在が全てを変えた」
「紗千さん」
俺に縋って来る結奈。
それから「気にしないで下さい。私も会いたかったです」と涙を流した。
俺はその胸に縋る顔に頭を撫でる。
そして「お前と付き合い始めたからにはお前しか見ないよ」と頭を撫でた。
☆
結奈は涙を流す中でハンカチで涙を拭っていた。
だがそれでも全然涙が止まらなかった。
俺は傍に居てやった。
それから時折、涙を拭ってあげた。
「紗千さんはなんで吉鶴先輩。彼女を選んだんですか?」
「彼女を選んだ理由は昨日不良に絡まれたろ?それからだ」
「それから発展して行ったって事ですね」
「そういうこった」
それから俺は結奈を見る。
俺達は屋上を後にしてから戻っている最中だ。
結奈は涙を拭いながら俺を見た。
「先輩がこの世界で生きていたから私は生きる意味がありました」
「それは同じだな」
「ですね。私は先輩が居たから生きていたんです」
「成程な」
そして結奈は「先輩が居ない世界なんて生きる価値はありません」と言った。
結奈の言葉に「ありがとうな」と返事をする。
すると陰から声がしてきた。
「あの」
「吉鶴?」
「あ、うん。ゴメン。職員室から帰って来る途中だったんだけど」
「何だ」
「頭痛がして。早退しようかって」
「そうなのか」
「その際に景色を見たんだ」
「景色?」
その言葉に困惑する吉鶴。
俺はもじもじして話をしない吉鶴に「何だよ」と言う。
すると吉鶴は「ありえないって思っているんだけど断片的に記憶がフラッシュバックしてさ。私達って前世が有るの?」と聞いてくる。
心臓の血流が。
逆向きになる感覚だった。
「どういう意味ですか?吉鶴先輩」
「私には前世が有るように思えるの」
「それ、は」
俺の言葉に少しだけ冷めた顔をしていた結奈が「ありません」と答えた。
その強い口調に吉鶴は「そ、そうだよね」と否定する。
結奈は「吉鶴先輩は夢でも見ているんじゃ?」と否定をする。
「昨日、絡まれてから頭痛がして」
「そうだったんですね。でもありえませんよ。前世なんて」
「だ、だよね。分かった」
それから吉鶴は頭を下げてから「じゃあ」とふらふらと去って行った。
俺は結奈を見る。
結奈は顎に手を添えながら「彼女は何か思い出している様ですね。断片的ですけど」と言う。
その言葉に「あれで良かったのか」と俺は結奈に問う。
すると結奈は「良かったです」と答えた。
それから結奈は「でもあのままでは多分マズいですけどね。何か思い出しそうですけど」と話した。
「そうだな。何か思い出すかもな。奴は」
「その場合には彼女には反省をしてもらいましょう。しかし反省するかどうかも分かりませんけど」
「だな。まあ冷たい反応かもな」
「ですね。でもいずれにせよ今回の全ての騒動の原因は彼女ですから。許しませんよ」
「まあそうだな」
そして結奈は「戻りましょうか」と言ってから俺の手を引いた。
しかしまさか奴まで前世の記憶を思い出しそうとはな。
だがだからといえ俺はもうアイツとは関わり合いは無い。
そして奴を許す気にはならない。
あくまでそうだな。
丁度結奈の言っている通りだが。




