表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
3/14

第3話 孤高のシュナちゃん


「満。学校はどうだ。友達はできたか?」

「父さん、まだ二日目」

「うん。そうだな。そうかそうか」


 父さんは「じゃ」と軽く手を上げて家を出てった。

 母さんが、「お父さん、ずっと心配してるのよ」とキッチンから顔を覗かせる。


「満は外部生だから、馴染(なじ)めないんじゃないかって……」

「大丈夫だよ、学年の半分は外部生らしいし」

「そう?」

「それに……友達になれそうな奴もいたし」


 母さんの表情がぱっと明るくなった。


「じゃ、いってきまーす」

「いってらっしゃい!」

「ワン!」


 柴犬のペロを撫でて、朝日に目を細めた。

 父さんも母さんも、それなりに不安だったんだな。初日からズボンにコーヒーをこぼして帰ったら、いらぬ心配をかけるところだった。ミアにはそこだけ感謝だ。

 ……さっさと俺も力をつけないと。

 丸腰でまたあんな獣と戦えなんて、命がいくつあっても足りないぞ。




 *




「カザミ殿! おはよう!」

「おはよ~」


 昨日の大冒険で、謎の連帯感が生まれた俺とタクオ。教室で話すのは今日が初めてというのも、妙な感覚だ。


「せっかくだし、メアド交換しようぜ」

「そうでござるな!」

「俺は高校からなんだけど、タクオは?」

「拙者も外部生でござるよ! 前は東中学校で」

「へー、俺は潮原中!」


 新学期が始まったばかり、ぎこちない雰囲気の教室の中で、早速仲良さげな俺とタクオは、それなりに目立った。周りのヒソヒソ声が聞こえてくる。


「え、コーヒー野郎ってオタクと仲良いんだ」

「てかオタクの名前タクオらしいよ」

「まんまじゃん!」

「間違って呼んじゃいそう」


 コーヒー臭の発生源が俺だってバレてるし、変なあだ名ついてるし。別にどう言われようが構わないが、臭かったのは本当に申し訳ない。


 ある女子生徒が教室に現れると、コソコソ話は別の話題になった。


「あ、木蓮さん来たよ」

「今日もめっちゃ真顔……」

「内部生なんだって。高校から射撃部に入ったらしいよ」

「射撃とかかっこいい~」


 女子だけでなく、男子も視線を送る。


「おいお前、守名ちゃんのこと気になってんだろ? 話しかけてみろって」

「無理無理、撃たれたらどうすんの」

「確かにお前はブサイクすぎるもんな」


 木蓮(モクレン) 守名(シュナ)、という名前らしい。音楽室のカーテンみたいな、濃い赤色の髪が目立つので、俺も席は離れているが自然と目で追っていた。




 放課後、学園のコンビニでタクオと一緒に肉まんを食らう。


「今日、どうするでござるか?」

「どうしようかねぇ」


 話はもちろん、部活に行くかどうか。

 部活登録は『読書部』で提出してしまったし、ミアの様子からして入部も認められただろう。俺たちはすでに立派な部活の一員だ。


「カザミ殿が冒険に行くなら、お供するでござるよ?」

「いやいや俺こそ、タクオの力がないとエネルギー見つけられないし」

「では、二人でチームを組みましょうぞ!」


 チーム、なんだかいいな。

 今んとこ俺が足引っ張ってるけど、冒険に行かなきゃ開花もしないしな。

 冒険自体は嫌じゃない。俺は、”爆裂先生を異世界から呼び戻して、グレイトハンターの連載を再開させる”という使命を背負ってもいるんだ。さっさとミアを元の世界に帰すため、頑張らないといけない。


 部活棟へ行き、”読書中”のプレートがかかった扉に手をかける。このプレート、常にかけてるんじゃなかろうか。


「お疲れ様で……え!?」


 俺が思わず固まったのは、建付けの悪い引き戸に手こずったからではない。


「あら、ちょうどよかった。カザミ、タクオ」

「ミア、その人……」

「この子、1年7組ですって。あなたたちのクラスメイトじゃない?」


 その女子生徒は、肩につく長さの赤髪を揺らして振り返った。


「木蓮さん!?」

「あ……えっと、コーヒーの人?」


 そして俺は、ただ名前を知らないだけよりも、最悪の覚えられ方をしていた。




 *




「ふむふむ、なるほど。射撃部が入部早々廃部になってしまったとは。災難でしたなぁ」


 タクオが頷く。


「それで、射撃部以外はどれもピンとこないから、もう何でもいいやと読書部(ここ)を選んだと」

「あ、いや、決して読書を馬鹿にしているわけでは……」

「お気になさらず! 読書なんかまったくやる気のない男が、ここに一人おりますゆえ!」


 おうおう、なんだよ。

 全員の視線が一気に俺に集まった。


 孤高で不思議な美少女、木蓮さんが読書部に来たのは、おおむねタクオの言った通りだ。射撃はなんと小学生の頃からやっており、大会でも上位入賞するほどの実力者で、高校でもぜひ射撃を続けたいと思った中での廃部だった。クールな表情には変わりないが、今の彼女はどこか元気がない。


「練習は家でもできるから、すごく困るってことはないんだけど」

「そうなんだ。すごい家だな」

「家族全員、スポーツ射撃をやってるの」


 おお、まさにサラブレッド。


 俺にはやりたいことなんて無かったが、こうして目的を持ってこの学園に来た生徒もいるんだ。それで急な廃部はいたたまれないだろう。

 タクオと一緒にしんみりと話を聞いて、ぱっと目を開けると、そこには異世界が広がっていた。


「はあぁぁ!?」

「相変わらず急すぎますぞミア殿~!?」


《事情は何でもいいんだけど、とにかくクエストができなきゃ、読書部の入部は認めないわ》


 木蓮さんは「え? ここは? なんか声が……」と当然の反応だ。


《あなたたちの冒険は《クエスト》。エネルギーには《アーティファクト》という名前がついているの。今日からはそう呼ぶわよ》

「お、おう」

《今回は、昨日みたいに正確な場所は分からないわ。二年のクロエが大体の目途はつけたけど、細かいところはタクオの力で探索してちょうだい》


 二年のクロエ?

 そうか、当たり前だが他にも部員がいるんだよな。

 クロエ先輩とやらの情報によると、この先の渓谷付近でアーティファクトの反応があったらしい。


《どう、シュナ。できる?》


 ミアの奴、まだ彼女には何にも説明してないのに……。

 俺に対しても大概だったが、あれでも親切な方だったんだな。


「木蓮さん無理しないで。俺たちは二回目だし、やることは分かってるからさ。上手くいくかは置いといて」

「そうでござる、ここで待っていてくだされ。無事に戻ってくるとは限らぬが」


 木蓮さんは、「よく分からないけど私もついていく」と即答した。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ