エルvsクリフ
それから延々とエルの話は続いていった。フォレスティアさんの話をするエルは、まるで恋する乙女のようだった。エルの中で竜殺しは、憧れであり目指すべき頂であったのだとアルさんが教えてくれた。やっとのことでエルの独演会から解放された僕は、遅めの夕食を摂り、ぶっ倒れるかのように眠りについたのだった。
翌朝、着替えと食事を済ましていると、なにやら外で言い争う声が聞こえてきた。
「だから、アオイは今日からあの人の下で修行するって言ってんだろうが。ちっとは融通きかせろや。」
「こちらも譲れないのである。自分も沈黙女王殿にはあこがれてはいるが、これとこれとは話が別なのである。」
どうやらエルとクリフさんが言い合っているみたいだ。そういえば朝はクリフさんのところで基礎体力作りとか言ってたような…。
「朝に体をほぐし、適度な負荷をかけることによる筋肉の育成が最も効果的なのである。よって、彼女は自分が連れて行くのである。」
クリフさんは頑として譲らない。
「あー、もう。この筋肉馬鹿はどうしてこんなに頑固なんだ?体の筋肉と同じで、頭まで硬い筋肉でできてやがんのかよ…。クリフ、本当に譲る気はねぇんだな?」
エルの問いかけに頷くクリフさん。どちらも僕の為みたいなのだが、なんかエゴ対エゴのぶつかり合いな気もする。かたや自分の理想の筋肉を作り上げたい。かたや憧れの人の役に立ちたい。僕個人の意見はその間には存在しないらしい。
中から外の様子を伺っていると、あまりの言い合いに業を煮やしたのかアルさんが外に出て行った。
「クリフ、愚妹、そろそろいい加減にしなさい。朝から大声での言い合いは迷惑ですわ。」
アルさんが注意すると二人ともおとなしくなる。が、なにやらクリフさんだけが様子がおかしい。
「いえ、その、じ、自分は、あの、なんといいましょうか、その、本日もお日柄もよく…。」
いつもの口調ではなく、支離滅裂な上しどろもどろなおかしな口調になっていた。さらに顔は真っ赤になり目が泳いでいた。どうやらアルさんの顔を直視できないみたいだ。
「クリフ、言いたいことがあるなら、顔をきちんと見て言いなさい。失礼ですわよ。」
クリフさんの態度にアルさんが注意する。その隙を突いてエルは中に入り僕を見つけると、何時ぞやの様に肩に担いで裏口から抜け出したのだった。
「クリフの奴は姉貴が近くにいると、ああなるのがわかっていたからな。表で大声だしてりゃ姉貴がでてくる、そうすりゃああなる。クリフを出し抜くなんて姉貴がいればチョロイもんだぜ。」
あの言い合いはどうやら計算ずくだったようだ。そして僕はエルによってフォレスティアさんの家に宅配されるのだった。




