お宅訪問
「緊張するぜ…。」
エルが柄にもなく緊張している。道中に少し聞いたんだけど、同じ村にいながら滅多に会えないらしい。ほとんど家から出てこない。留守にしていても、出歩いている姿を見たことがない。超低確率でしか会えないとか、どんなレアキャラなんだろうか…。憧れの英雄と対面できるのだから緊張もするってことかな。
僕とエルは、フォレスティアさんの家の玄関前に立ちドアを叩く。
「朝からすいません。フォレスティアさん、いますかー。」
緊張しっぱなしのエルに代わり呼びかけてみたが、中からの返事がない。再度ドアを叩き呼びかけると、ドアをすり抜けて何かが出てきた。ふわふわと漂い、僕の手の上にぽてっと落ちた。手の上に乗っかってたのはフィーだった。
「あさはやくからうるさいのです。フィーのあんみんをぼうがいするとはいいどきょうなのです。」
寝ぼけ眼で僕を見て悪態をつく。朝早くって別に早朝じゃないし、普通に人が出歩く時間でしょうが。
『んー。どこかでみたようなきがするにんげんなのです。』
じーっと僕を見つめ、なにやら思い出したのか僕の頭の上に飛んできた。
『おお、おもいだしたのです。』
どうやら昨日、出会ったことを思い出したみたいだ。
『このあじはおいしいごはんなのです。ごはんがあさからやってきたのです。もーにんぐというやつなのです。こーひーいっぱいのねだんで、ゆでたまごとおぐらとーすとがついてくるのです。ゆうがたまでもーにんぐをしているおみせもあるのです。』
…日本文化に汚染されすぎだろう。ってか、なんでそんなことを知ってるんだ?それに僕のことは、ごはんで覚えてるのか?
『…はっ、どこからかでんぱがとんできたのです。』
電波って、その頭にあるアホ毛は受信アンテナなのか?どこかの妖怪さんのアンテナみたいに精霊アンテナとでも言うのか?
「なあ、その頭の上にいるぼやっとしたものはひょっとして精霊か?」
ああ、エルにははっきりとは見えなかっただったね。そしてこの会話も聞こえないんだ。
「ええ、精霊のフィーがいます。」
僕がそう答えると、エルは僕の頭の上にいるフィー(ただしぼやっとしか見えていない)をみつめる。
「やっぱ、ぼやっとしか見えん。こう、何ていっていいのか、光でできた毛玉?みてぇにみえるんだがなぁ。」
エルの目には光の毛玉に見えるらしい。なんか、ケサランパサランみたいだねぇ。
『こっちのにんげんもフィーのとこがすこしみえるみたいなのです。ひょっとしてこのにんげんもごはんみたいにおいしいかもなのです?』
僕の頭の上からエルの頭の上に移ったフィーは、すぐさま僕の頭の上に帰ってきた。
『こっちのにんげんはごはんじゃないのです。』
そろそろ人のことをご飯扱いするのをやめてくれませんかねぇ?
『それで、ごはんのあおいはあさからなんのようじなのです?』
…ごはんがとれない。まぁ話がすすまないからとりあえずそこは放置しとこう。
えっと、フォレスティアさんに会いに来たんだけど、いまはご在宅なのかな?
『てぃあはなかにいるのです。おいしいごはんをくれたので、なかにいれてやってもいいのです。』
いや、勝手に入るのもどうかと…。
『えんりょはするなです。せいれいのこういはうけるのはせいれいじゅつしとしてあたりまえなのです。』
行為なのか好意なのか判らないけど、どうやら中に入るしかなさそうだ。
『そっちのにんげんもごはんのあおいが、せきにんをもつならいっしょにはいっていいのです。』
ふむ。
「フィーが中に入っていいって言ってるんだけどどうします?ただし、おとなしくしていてもらいますけど。」
「入る。ぜってぇ、おとなしくしとくから入れてくれ。折角、会える機会ができたんだ。これを逃す気はねぇ。」
…だ、そうです。
『なんだかえらいこうふんしているのです。だいじょうぶなのです?』
この人、フォレスティアさんに憧れているらしいよ。
『まぁ、いいです。さっさと中に入るです。』
こうして僕たちは、フォレスティアさんお家へと足を踏み入れたのだった。




