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覚悟からの暴走

 覚悟・・・。


 僕は、この世界にきてから、真剣に戻れないかもということを考えていなかったのかもしれない。リンに、覚悟しておけと言われ不安で泣きそうになる。実際、その時の僕は泣いていたのかもしれない。『戻れない』『家族や猫たちに会えない』『友人たちにも会えない』そんな言葉が頭の中でぐるぐると回る。不安で体が震える。


 そんな僕を、リンは優しく抱きしめてくれた。そして励ますように、安心させるように、力づけるように言ってくれた。


「大丈夫だ、ここには私がいる。アオイは一人じゃないんだ。共に生きよう。そして帰ろう。」


 と。


 深呼吸をして心を落ち着けよう。すーはー、すーはー、すーはー…。


 なんか冷静になってみると、さっきのリンの台詞って、一種のプロポーズみたいじゃないか?リンとの生活・・・、だめだ、主夫になっている僕しか思いつかない。って、今は女性だから主婦でいいのか・・・。男装しているリンといまの僕。やばい、似合いすぎている気がする。ってちょっと待て、僕はいったい何を考えているんだよ。せめて僕が男装でリンが・・・。違う、違うんだよ、そういうことじゃないんだよ。どっちが男役とかじゃないんだ。決してリンのほうが、胸がないから似合っているとかでもないんだよ。だ、か、ら、おかしなことを考えてるんじゃない。とにかく落ち着け、落ち着け。


 どんどん、深みにはまっているような気がしてきた。考えれば考えるほど、おかしな方向に思考が向いていく。とりあえず、今の状況をなんとかしないとね。


「リン。」


「なんだ?」


 声をかけた僕に、熱を帯びた視線を向けてくるリン。なにやらイケナイ雰囲気になってきてるような・・・。


「ありがとう、そう言ってもらえて僕も嬉しいよ。」


 あれ、なんか微妙なニュアンスなことを言ったような。


「ああ、アオイ。私と共に生きていこう。」


 リンは目を瞑り顔を寄せてくる。リンの反応に思わず固まってしまう僕。そしてリンの唇が近づいてくる。このままキスしてしまうのか・・・。そして唇が重なろうと言う時。


「おめーら、天下の往来でなにやってんだよ・・・。ラブシーンなら、人のいないところでやってくれねーか?それともおめーらは、人に見られて燃えるって性癖の持ち主なのか?」


 僕らのキスシーンを止めたのは、無事に復活したらしいエルだった。

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