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リンの覚悟

 リンに連れられて鍛冶屋に行った結果。


 留守でした・・・まる。


 どうやらレッドボアという高級素材に触発されて、負けていられんと鉱石を採掘しにいったらしい。とは、鍛冶屋の向かいの革製品を扱うお店の人の談。こっちは逆にレッドボアの皮の処理で忙しいっぽい。リンがお店の人に僕の事情を言うと、お店の人は皮鎧一式を持ってきてくれた。皮鎧一式を袋に入れ、リンにわたすとまた忙しそうに作業場にもどっていってしまった。


「これ、調整とかどうするの?」


 見た目、絶対に胸がやばいことになる・・・。ぎゅっと無理やり押さえつけて着るとか、息ができなくなりそう。


「大丈夫だ、問題ない。」


 問題ありそうだから聞いてんだけどね。と、思いつつ自分の胸をポンとさわった。やはりその鎧の胸の部分は無理だよ。


「・・・邪魔なら削げばいい。」


 だから怖いって。


「というのは冗談だ。アルに頼めば問題ない。」


 そう言って鎧の入った袋を渡してくる。


「アオイのだからアオイが持て。」


 ほーい。僕は、受け取った袋を担いだ。そんなに重くないね。


「アルのところに戻るか。」


 そうだね、このまま持ち歩くのもあれだし。


「では行こう。」


 こうして鎧を手に入れた僕たちはアルさんの下に戻るのだった。






「ねぇ、リン。」


 道すがら、アオイが私に話しかけてきた。


「なんだ?」


「僕たちって、元の世界に戻れるのかな?」


 不安そうな口調で問いかけてくる。実際、不安なのだろう。アオイはまだ2日目だ。私たちのように、何も進展がなく2年も経つと一種のあきらめを覚えるのだがな。


「絶対に戻れる、とは言えないな。私は2年もここにいるのだ。戻れないかもしれないという覚悟だけはしておいたほうがいい。」


 最初のころは、『ゲームの世界かも』『異世界を楽しむ』といった楽観的な人々も、時が経つにつれて『戻れないかも』という不安が心を蝕んでいった。『死ねばもどれるかも』という誘惑に駆られ、自ら命を絶った者や魔獣に無謀にも挑み命を散らした者もいた。もっとも、骸をさらしただけに過ぎなかったが。いま、この世界にいる異邦人プレイヤーは意思が強かったか、若しくは順応力が高かったというところだろうか。


 私の言葉に青ざめるアオイ。脅しすぎたか。だが、いつかは覚悟しなければならないときが来る。


「大丈夫だ、ここには私がいる。アオイは一人じゃないんだ。共に生きよう。そして帰ろう。」


 そう言って、私は青ざめ不安で震えるアオイを抱きしめ、そうささやいたのだった。

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