やられた
「行く前に、着替えがしたんだけど。」
僕がそう言うと、リンは部屋を見渡しクローゼットらしき扉を見つけた。おもむろに扉を開けると、中を見てからなぜかすぐに扉を閉じてしまった。
「なんかあった?」
「・・・、ここには、おそらく葵が求めているような服装の類はない。ここにあるのはアルの趣味の服だけだ。」
このまま行くしかないのか・・・。
「あきらめろ、さっき下に行った時は、アルとエルの姉妹のみだったからいいだろう。どうせさっき見られているんだ。」
躊躇している僕に、お腹の虫が「くぅー」と抗議の声を上げる。
「ほら、可愛い腹の虫も行きたいといってるんだ。さっさといくぞ。っと、その前に靴を履かせないと。」
僕は靴を履かされ、無理やりリンに部屋から連れて出されてしまった。足がスースーするのは服の裾がみじかいからか・・・。
「リン、やっぱり部屋で食事を取ることは・・・?」
「あきらめろ。これ以上駄々を捏ねるとアル(あれ)のおもちゃにされるぞ。」
「下にいきます。」
これ以上、おもちゃにされてはかなわない。
「階段を降りれば、食堂になっている。」
なんかいい匂いがする。またも「くぅー」と鳴る。どんだけ腹ペコな体なんだよ。
「くっ・・・、ははは・・・。葵、その女の体になって面白い奴になったな。それはそうと忠告だが、その裾を引き下げようとするのはやめておけ。引っ張られて胸が強調されているぞ。下もだが、むしろそっちにも視線がいって逆に注視されると思う。堂々としていたほうが、変な目でみられなくなるはずだ。」
「この格好にされて、恥ずかしいんだから仕方ないじゃないか。いっそ、リンもこの格好をすれば僕の気持ちも分かるさ。」
「生憎、私はそのような格好をする予定はないのでな。そのような気持ちもわからんさ。そしてそのような駄肉を持つ気持ちもな。いっそ、私の気持ちが分かるように、ちょっとその駄肉の量を減らしてみるか?」
だめだ、黒いリンがにじみ出てきてる。あの目は本気でやろうとおもっていそうな目だ。
「謹んで減らすのは遠慮します。」
僕は、あわてて両の手で胸を隠し階段を下りていった。あのリンはマジで怖い。振り返ると、上でリンがニヤニヤと笑みを浮かべている。とりあえず、黒いリンの状態でなくなっている。が、何か悪巧みをして成功させたような感じの笑みだね。まぁ、あの恐怖を味わわなくて本当によかった。
安堵のため息をもらし、僕は階段を下りていく・・・。
「え?」
僕の視界には、食堂に集まったたくさんの人たちの視線があった。




