ずるい
「おかげで、その時に身に着けていた装備以外、すべて取り出せなくなっている。」
「ひょっとして、装備していたものだけは大丈夫だったの?」
「ああ、着用していたものだけはな。」
なにそれずっこい。僕なんて初期装備だけだったのに。
「葵は今、ずるいとか羨ましいとか思ってないか?」
思ってるよ。他の人は装備があるなんて・・・。そりゃそう思っても仕方ないじゃないか。
「ところが、そんな単純な状況じゃないんだ。まずは、装備の条件を思い出してみろ。」
「装備の条件?たしか、装備各種は設定された能力値を上回らないと着用できないんだったよね。」
リンは頷く。
「そのとおり。設定以上の能力値さえあればなんでも着れるし使える。まぁ、スキルの制約はあるが、概ねそんなところだ。で、ここで問題になるのは、システムが死んでいてもその装備が使えるかどうかだ。この意味が分かるか?」
「使えるんじゃないの?」
「結論から言うと着るだけなら着れる。システムが死んでいることによって、能力制限もなくなっているからな。ただし重量も素材相当分の重さがある。そして問題は私たちの体のほうだ。さっき言ったのを覚えているか?」
「生理があるから妊娠もする?」
「・・・その前だ。」
「現実肉体の肉体への置換?」
「それだ。つまりゲームアバターの容姿どころか、ステータスパラメータまでが現実と同じなのだよ。とりあえず戦士系装備で例を挙げるが、葵は現実でプレートアーマーを着て動けるか?30キロ超えるんだぞ。私には無理だ。鍛えてない人間が、いきなりそんな重いものを着て動けるはずもない。フルプレ着てた奴はこけたまま動けなくなってたぞ。武器だってそうだ。ゲームみたいにぶんぶん振り回すなんて幻想だぞ。鍛えて使いこなせるまで置物になるのが関の山だ。もっとも置物にすらならなかったが。」
これはつらい。せっかくの装備がつかえないのは泣きたくなるよ。
「とりあえず、大抵の人の金属鎧全般がだめになった。レザー系の装備の人間はましだったな。」
リンはまたも水を煽る。そしてどこか遠い目をしてぽつりと言った。
「ちなみに魔法も使えないぞ。」
魔法が使えないの?僕が不思議そうな顔をしていると、リンは魔法が使えない理由を説明してきた。
「当たり前だろう。私たちには魔力がないのだぞ。葵は現実で魔法が使えたか?」
使えるわけないよね。てか、これ詰んでね?




