六・一 ◆
六
日の光を遮るほどに鬱蒼と生い茂る異世界の森。
明無多は息を殺し、ジメジメとした苔むす地面を這って進んでいた。
ここ数日の過酷な生活で分かったことだが、スライムの体は思いのほか回復が早い。ついこの前までは、慣れないスライム体で激しいシャドーボクシングなどのトレーニングをしたせいで酷い全身筋肉痛に襲われていたが、今はもうすっかり治っている。
しっかりと肉体が鍛えられていた証拠か、それともこの軟体特有の性質か、気持ちほんの少しだけ体に弾性が増し、動きにキレが出た気がする。
透明な体内には、移動の支障にならない程度のサイズと重さの岩をいくつか取り込んでいる。そしてもう一つ、丈夫な木の幹をくり抜いて作った自作の筒。その中には以前岩殻鼠から剥ぎ取って作った手製のナイフ、石晶刃を大切に収納している。これで、鋭利な刃物で自分の体内をうっかり切り裂いてしまうというマヌケな事故も防げる。
「おいナメクジ。この方向で合ってるのか?」
『うん、合ってるよ。このまま川沿いを真っ直ぐ進めば着くはずだから』
現在、明無多はアルナンタの故郷であるスライムの集落へと向かっていた。
正直なところ、ナメクジの群れがうじゃうじゃとうごめいている光景を想像するだけで悍ましく、絶対に行きたくないと強い嫌悪感を覚える。だが、このふざけた魂魄交替の儀という憑依術を解除するためには、少しでも情報を集めなければいけない。
アルナンタの拙い説明によると、隠れ家として使っている洞窟の近くにある川を、日の昇る方向に向かってそのまま真っ直ぐ進めばたどり着くらしい。
周囲への警戒を怠らずに進んでいると、アルナンタが不意に声を上げた。
『あっ、童佳、左! 魔物がいるっ!』
「おっと、そりゃまずいな」
明無多は咄嗟に体を限界まで薄く引き伸ばし、すぐ横を流れる川の浅瀬に身を浸した。
完全に無色透明なスライムの肉体は、透き通った川の水と瞬時に混ざり合い、完璧な擬態を果たした。体内に浮かぶふたつの目玉と岩や木の筒だけが水底の石のように見えるが、一見しただけでは生き物がいるとは到底思えない。
左方向へと視線を向けると、巨大な猪に鋭い角を生やしたような魔物が、木々の影からのっそりと姿を現していた。
魔物は鼻をフンフンと鳴らし、一度だけ明無多が潜む川の方向へ鋭い視線を向けた。だが、ただの水辺の景色としか認識しなかったのか、特に気付く様子もなくそのまま悠然と歩き去って行った。
『ふぅ……いなくなったっぽいね』
「セーフセーフ。思った以上にお前の体は、野生を生き抜くのに優れてるのかもしれん」
『ん? スライムの体がってこと?』
「それもそうだが、一番はお前のこの色だよ。よく考えてみりゃ、完全に透明ってだけで野生で生きてくにはすごいアドバンテージじゃないか」
『え? そうなの? ……というか、あどばんてーじ? ってなんなのさ。また英語ってやつ? わかんないよ、それ』
「こっちが圧倒的に有利ってこと」
『うーん、でも、わたしは他のみんなみたいに綺麗な色が良かったけどなぁ……透明なんてなんだか地味だし』
アルナンタが、不満げに納得出来ないという声を上げた。
現実世界時に色々と聞き出した話によると、スライムには個体によって赤、青、緑など色は様々らしい。アルナンタ本人は自分の無色透明な体を地味だと不満に思っているようだが、この体色は過酷な自然界を生き抜くにあたってとてつもなく大きな武器となる。
まず何より視認性が極めて悪い。体内の目玉や内包物までは無くすことは出来ないが、視力の悪い獣相手であれば、体を薄く伸ばして上手く景色に溶け込み、じっと動かずにいれば誤魔化すことが容易い。さらに今やったように水の中に身を潜めれば、もはや輪郭すら完全に消失し、ほぼ見つかることはない。
このクソが付くほど頭の悪い無力なスライムが、何故今までこんな凶悪な魔物が跋扈する森で生き延びてこられたのかずっと疑問だった。だが、この視認性の悪さという絶対的な隠密能力が理由のひとつに挙げられるだろう。
特に、視覚に頼る爬虫類や肉食獣に見つかりやすい青色や赤色だったと思うと、正直身が震える。
この世界の魔物がどこまでの視覚を持っているかは分からない。だが、スライム種が四色色覚という人間よりはるかに多彩な色を認識出来る性質上、自分の体が透明なのは擬態する上でかなり強い武器になる。
隠密特化の体色や、禁術を発動出来るレベルの膨大な魔力量。アルナンタ曰く、この世界で禁術と定義される魔法は、文字通り常軌を逸した魔力を必要とするらしい。つまり、アルナンタ・ド・ウジカというスライムの基礎スペックだけでいうなら、魔物としてかなり高い部類に入るようだ。
「ま、せっかくの基礎能力も中身がこんなアホなんじゃあな。豚に真珠ってやつか」
『だから、童佳が上手くわたしの体を使ってくれればいいんだよ。あー、それより早くみんなに会いたいなぁ! 元気にしてるかなー』
「楽観的だな、クソナメクジ。とっととこんな不便な肉体とはおさらばしてぇよ」
そうこう軽口を叩きつつ、二時間ほど森の奥へと進んだだろうか。
木々の隙間からようやく目的の場所らしきものが見え、アルナンタが歓喜の声をあげる。
『見えてきたよ、あれっ!』
「あそこがナメクジ村か」
明無多の視界に飛び込んできたのは、度肝を抜かれるほど巨大な樹木だった。現実世界で言うところのガジュマルの樹を、数十倍に巨大化させたような異様な存在感を放っている。
『……あ。でも、そういえばここに戻るの、もうどれくらいぶりだろう? ……みんな生きてるのかなぁ。すごい長い間、ずっと洞窟の中で憑依術の研究してたから、案外魔物に襲われてもう滅んじゃってたりして』
「おいおい。縁起でもねぇこと言うなよ。それなら情報も手に入らねぇし、完全な無駄足じゃねぇか」
アルナンタの不吉な推測が外れていることを祈りつつ、巨大な樹の近くへ歩を進めようとした。
その時。
「おまえ、もしかしてアルナンタ?」
不意に声がかけられた。
明無多は、少しばかり自分が声をかけられたとは思わず、反応が遅れた。そういえば、今の自分はこのナメクジ体の元の持ち主である、アルナンタという名前で呼ばれるのだった。
声のした方向へゆっくりと目玉を向けると、そこにはアルナンタの同種──つまりスライムが二体、道端の草むらから姿を現していた。
片方が派手な青色、もう片方が明るい水色をしている。
自分と同じく、半透明のゼリー状の体内にはふたつの目玉がぷかぷかと浮かんでいる。サイズは自分と同じくらいか、ほんの少し小さい程度だ。
「うわ……」
明無多は、思わず嫌悪感に満ちた声をこぼした。
自分の姿は川などの反射で何度も見てはいるが、いざこうして客観的に他のスライムを見ると、いかにもゲル状の巨大なナメクジと言った感じでひどく気色が悪い。色がカラフルな分、毒々しさすら感じて余計に気味が悪かった。
しかし、この集落のすぐ近くに自分を知っている同種がいるということは、村はちゃんと機能し、滅んではいないということになる。
「へぇー、生きてたんだ。突然いなくなったから、てっきりどんくさく魔物にでも食われて死んだと思ってた」
青色スライムが、体をぶるんと揺らして言った。
こちらを知っているようだが、心配するような口調では一切なく、明らかな嘲笑が含まれている。
「ね。なぁ、お間抜けアルナンタ。いままでどこでなにやってたのさ? 教えてよ」
水色スライムが、体内の目玉を細めて口をにやけさせた。
声色的に、どちらもメスの個体のようだ。
だが、問題はそこではない。二体の口ぶりと、見下すような態度。明らかに馬鹿にされている。
(……おい、こいつらはお前の知り合いか?)
『うん! 二人ともわたしの友達だよっ! 名前は……ええと、なんだったかな。忘れちゃったけど』
頭の中で問いかけると、アルナンタは相変わらずの調子で楽観的に答えた。
「おい、なんで無視してんの? なんか言いなよ」
「なに? もしかして怒った? お間抜けアルナンタのくせに生意気じゃない?」
二体が、じりじりと距離を詰めながら続ける。
友達……とはとても言い難い、棘のある態度。現実世界の学校でもありがちな、いかにもな性悪のいじめっ子と言った印象を強く受ける。女の陰湿なグループというのは、異世界だろうが、敷衍してスライムという種族だろうが変わらないらしい。
(ボロクソに言われてるぞ、アホナメクジ)
『あはは、まぁ、お間抜けってのは否定できないなぁ。わたし、なにやってもドジだし、失敗ばっかりしてたから』
アルナンタに問いかけてみるが、どこ吹く風でヘラっと笑っている。
高校の頃、そういえばこんな感じのやつがクラスにいた。他者からあからさまに馬鹿にされ見下されているのに、それを深刻に受け止めず、ヘラヘラ笑っているタイプのやつ。アルナンタの絶望的な頭の悪さは嫌という程分かっていたが、推測するに典型的なイジられタイプのようだ。
こういう輩のやりとりは、見ているだけで無性に腹が立つので明無多は嫌いだった。
「いや、悪いな。少しぼーっとしてた。なにせ、久しぶりに戻って来たからな」
すぐにでも触手を素早く伸ばし、この気色の悪いカラフルナメクジ共を容赦なくしばき倒したい衝動に駆られるが、明無多はぐっと堪えた。これから未知の集落へ足を踏み入れるのだ。こんな入り口で無意味な揉め事を起こし、こいつらに手を出して集落全体と敵対する事態は絶対に避けたい。
それに、異世界では初めて遭遇する意思疎通の取れる相手だ。まずは、しっかりと情報を集めなければならない。
「なぁ、感動の再会はもう済んだと思うし、いくつかお前らに訊きたいことが──」
「はぁ? おまえさ、誰に向かって口聞いてんの?」
「ほんとそれ。しばらく見ない間に雰囲気も変わっちゃってさ。なに? 体の中にそんな汚い石なんて持ち歩いて。それで強くなったつもり? 笑えるんだけど」
二体のスライムは、体を大きく波打たせて下品に嘲笑した。
明無多は、内心で深くため息を吐いた。
高校の時にいた、数でしか粋がれない馬鹿な不良女共と全く同類だ。
言葉は通じるが、対等な意思疎通は不可能らしい。
『ほら、童佳がそんな怖い態度取るからだよ。ふたりとも怒らせちゃったじゃん。ちゃんとごめんねって謝らないとダメだよ』
(……お前なぁ)
アルナンタが心底的外れな事を言っている。
ここまで楽観的だと、ある意味幸せな脳みそをしているのかもしれない。
明無多は、このアホナメクジの言うことは完全に無視する事に決めた。
「あー、すまんすまん。……ええと、青水色さん。で、どうやら私に用はないんだろ? 急ぎの用事があるんでこれで失礼するわ」
これ以上、こんな底辺のカラフルナメクジの相手をする気にもなれない。適当にあしらい、そのまま背を向けて村へ向かおうとしたものの、
「おっと? 逃がさないよ」
背後から風を切る音がし、青色の触手が鋭く振るわれた。明無多は咄嗟に体を沈み込ませて伏せ、間一髪で躱す。
「てめぇえ~アホナンタ。避けんなよっ」
「どうやら、久しぶりにあたしたちの〈教育〉が必要なようだな」
(あー、またこの面倒なパターンかよ。異世界の魔物っつっても、現実で絡んでくるヤンキー共とほとんど変わんねぇな)
二体のスライムは、先程のこちらを見下す態度から一変し、明確な敵意と害意を向けている。先程の言動から察するに、言葉での侮蔑だけでなく、物理的な暴力も日常的に振るうタイプの輩の様だ。
『あ、これ、童佳に教えてもらったデジャヴってやつだよね! 日本であの麻鳴って人らと同じような状況があったね!』
アルナンタが感心したように言うが、そののんびりした口調から危機感は完全に欠如している。
明無多はゆっくりと振り向いて、冷たい視線を向けた。
「なんだよ、まだなんか用か。怪我したくなかったら失せろ」
低くドスを効かせて発すると同時に、二体は怒りが頂点に達したのか、左右から飛びかかってきた。
こうなればもう仕方がない、きっちりと相手をするしかない。一方的に黙ってやられる、というのは明無多のプライドが許さない。
それに、この数日せっかくスライムの体を鍛えたのだ。ならば、これを丁度いい実戦と考えれば良い。
いじめの一種なので、流石に向こうも本気で殺す気ではないだろう。それに同じスライム相手なら、得体の知れない他の魔物とは違い、ある程度の強さや攻撃パターンも予想できる。
この流動的な体を実戦で慣らす為の、模擬戦と考えれば良い。
スライム村での立場が危うくなるかもしれないが、そこまで複雑で面倒なことは考えるのをやめる事にした。
(ちょうどいい。試してやる)
まず、肉体を流動化させての回避練習をこいつらで実践してみよう、と明無多は思考を切り替えた。
二体が短くも太いゲル状の触手を作り出し、力任せに殴りかかってくる。
だが明無多。
体全体を動かさない。
攻撃が当たる部分の肉体。
そこだけ瞬時に凹ませ、変形させて躱した。
「あ……?」
確実に当てたつもりが避けられた怒りか、二体はさらに激しく、連続して触手を振るう。右からの横薙ぎ、左からの突き。明無多はそれに合わせて、体の一部を波打たせるように変形させて全てを避ける。人間のように全身の重心を移動させ動く回避より、このスライム特有の部分変化は遥かに速く、スタミナの消費も少ない。この方法は、どうやら実戦でかなり有効そうだ。
だが。
(……遅ぇな。スローモーションかよ)
スライムの高い動体視力の恩恵もあるが、それを抜きにしてもこいつらの攻撃のモーションは驚くほどに遅すぎる。大振りで隙だらけだ。最早丁寧に形を変えて避けるのが馬鹿らしくなってくるほどだ。
「このクソナンタ、ちょこまかとっ!」
二体は激昂し、触手の数を増やして乱れ打ちのように襲いかかってくる。それでも動きはテレフォンパンチも良いところで、現実世界で絡んできた麻鳴らと比べても天と地の差がある。あんな三下の雑魚どもでも、伊達に格闘技に精通してないんだな、と今更ながら少し見直した。
『なんかすごいじゃれてきてるね? 久しぶりだから遊びたいのかな、二人とも』
(いや、違うだろ。お前、完全に襲われてんの。日本でのデジャヴってお前自分で言ってただろ)
明らかな敵意を持って襲われているというのに、アルナンタは未だに危機感がゼロだ。さすがの能天気なアルナンタでも、物理的に襲われれば危機感を感じるはずだが……どうやら、日本で高度な格闘技の試合や、明無多の圧倒的な戦闘を見たせいか、これ程度の攻撃では危機とも思えないほど感覚が麻痺しているらしい。
それ以前に、このナメクジの発言や思考はコロコロと定まらず変わるので、恐らく何も深く考えていないというのもあるだろう。
「逃げ足だけはいっちょう前だな、ビビりがっ!」
水色のスライムが苛立ち任せに叫ぶ。
流石の明無多も、この二匹の態度には苛立ちを覚えた。回避のテストは十分だ。そろそろ反撃を試してみよう。
ぬるり、と地面を滑るように素早く移動した。
まず手近な水色スライムの懐へと一瞬で近寄る。
全身のバネと体重を乗せる。
力む。
硬度を高めた触手。
ボディブローの形で深く叩きつけた。
バシッという、大量の水が弾けるような鈍い音と共に、水色スライムはくの字にひしゃげ、後方へ勢いよく吹き飛んだ。
次。
そのまま横で反応出来ずにいる青色スライムへ向き直る。
今度は上に高く伸ばした触手を、鞭のようにしならせる。
勢いをつける。
鋭く振り下ろす。
叩きつけた。
メチャッという音と共に、青色スライムの体は真ん中が大きく凹み、地面に張り付くようにして完全に動きを停止した。
「……死んでねぇよな?」
二体とも、地面に倒れ伏したままぴくぴくと小刻みに痙攣している。
アルナンタ曰く、スライムは絶命すると全身の水分を維持できなくなり、漏れ出てただの水溜まりの様になってしまうらしい。二体とも体も体内の目玉も萎んではいないし、どうやら死んではいないようだ。
流石に同族を殺してしまっては村との敵対は不可避だろうから、ホッと安心して息を吐いた。
『おー、すごいすごい! かんたんにやっつけちゃった。これも筋トレの成果かな?』
「んな数日で、すぐ筋肉なんてつくわけねぇよ。にしても、拍子抜けだな」
スライムの体×現代格闘技とはいえ、一応はこの二体は過酷な異世界での暮らしを日々しているはずだ。それに比べてアルナンタのボディは、長期間洞窟に引きこもり続けていた為になまりきっていたはずだが、まさかたった一撃で両方とも倒し勝利してしまうとは。
先程殴った時の感触も、明らかに自分の方が体の密度が高く、弾性があった印象を受けた。
「なぁ、お前、実は結構基礎能力高いんじゃねぇか? 隠密特化の体色といい、膨大な魔力量といい、この体といい」
『ん? もしかしてわたしのこと褒めてる? あの性格の悪い童佳がっ!?』
アルナンタが、驚愕と喜びの混じった声を出した。
「……まぁ一応な。クソみてぇな憑依術使って私を巻き込んだせいで、プラマイゼロどころか大幅にマイナスだけどな」
『がーん!! ……それ、全然褒めてないじゃん! マイナスってつまりダメってことだよねっ!?』
今度はひどくがっかりしたような声。
現実世界で多少は横文字も覚えてきたせいか、少しづつだが現代日本人特有の横文字のニュアンスも通用し始めて来ている。
「おーい、口聞けるか?」
明無多は、一応情報を聞き出せないか、痙攣している二体のスライムを小突いて話しかけて見るが、反応はない。完全にノビている。
『うーん、これは気絶だね。ほっといても死んじゃったりはしないから安心していいよ』
「あそう。ま、なら用済みだ。じゃあさっさとナメクジ村へ向かうとするか」
『だからナメクジ村じゃないよぉ……ひどいなぁ』
倒れた二体を放置し、踵を返してそのまま巨大樹の根元にあるスライム村へ向かうことにした。
「にしてもさ」
『ん? なに?』
「やっぱりお前、他のスライム共にすら相当小馬鹿にされてきたんだな。お前が自信満々に言ってた、魔法の書物が地面から勝手に生えてくるっていうスライムの常識ってやつも、あいつらみたいな性格の悪いやつらに嘘を吹き込まれてたんじゃないのか?」
『そ、そうかなぁ……。みんな友達だし、根はいい人だと思うんだけど……? あ、でも友達ならさっきみたいにいきなり襲いかかってこないよね? うーん、どうなんだろう?』
「だとしたら、これから相当面倒くさいことになるなぁ。流石に私は、お前みたいなヘラヘラしたアホの振りするのは絶対無理だし」
もし村全体から、あの二体のように間抜け呼ばわりされ、見下されているのだとしたら、とてもじゃないがまともな情報収集など出来そうにない。明無多はこれからの集落での対応を考え、重い気分になりながら鬱蒼とした森を進んだ。




