第26話 高速機動艦隊の脅威(後編)
プロメテウス隊は数十機からなるダルク隊と近接戦闘を繰り広げるも、高速機動艦隊が接近。
この窮地をどう脱するか?
「ラディエス隊長! 無茶です……。ここは離れないと……」
アリカは必死になってラディエスを引き留めようとする。
「分かった……。流石に戦艦とMUじゃ分が悪すぎるからな……」
ラディエス達は一旦この戦いをアストライオス艦隊に任せ、どうにか敵艦隊が来ないようなエリアへとダルク隊を誘導する。
レーダーマップの座標システムを確認し、アステロイドベルト周辺で少しでも時間稼ぎが出来るであろうエリアを探る。
「ビームライフルを撃ちながら上手く引き付けるぞ」
“分かった、隊長さん”
ラディエス達はアステロイドベルトの物陰に隠れ始め、そこからダルク隊に対し銃撃戦を繰り広げる。
「ふん、無駄なあがきね……。タニア、メルーサ、部下を率いて集中砲火を浴びせなさい!」
“了解!”
機銃を撃ちながら素早く立ち回るマリエル達。
あまりの素早さに苦戦するも、どうにか自分達も追いつこうと試みる。
「ラディー、ここは私が!」
“頼むぜ、パティ。よし、アクティブウインガーを呼ぶか”
ラディエスはすぐにアクティブウインガーを呼び出し、武装を換装して両腕、両足をストライクタイプに切り替える。
さらにそこへと、加勢する者も現れる。
「ラディエス、ここは俺達が……」
“ジュノー、助かったぜ! よし、このままやってやる!”
そして、オルフェウス隊が一斉掃射を開始し、総攻撃を仕掛ける。
ジュノーはバーストキャノンを速射し、一気に畳みかけて行く。
「この調子でいけば、隊長機も倒せるはず……」
“ジュノー大尉、指揮官機とその側近の機体二機が素早いものでして”
マリエルとタニア、メルーサの対処に追われるアンディ。
そこで彼は、ビームバズーカに持ち替えて一撃確殺を狙う。
「さてと……。こいつらはこれでやるしかないな」
アンディはモニター越しに漆黒の宙を見渡し、コントロールシステムを操作。その上で敵機が射程範囲内に入った瞬間、光線を一発放つ。
「喰らえェッ!」
この攻撃は、タニアの機体肩部に直撃した。これにより、彼女は迂闊に攻撃が出来ないと察知し、すぐさま戦線離脱した。
マリエルはこの状況に危機感を抱いていた。
何しろ普段から信頼していたタニアですらあっさりと戦闘不能に陥れられたからである。
「ジュノー大尉! 敵機が背後から急速接近しています! 至急回避を!」
アンディがジュノーに合図を送ったおかげで、すぐさまジュノーはメルーサの攻撃を回避できた。
「なんてやつなの……?」
メルーサは冷静さをキープしつつ、ビームライフルの砲身にロングレンジモード用のアタッチメントを取り付ける。
「マリエル・フォルテシア大尉、ただただ翻弄されるだけでは……」
“分かっているわ、それくらいのこと……”
機銃を撃ち続けながら、素早く攻撃を躱すマリエル。
彼女の握るビームライフルの砲口は、止むことなく火を吹く。
「もしこのまま高速機動艦隊がアストライオス艦を沈めたら恐ろしいことになる……。アンディ、カール、ブルーノ、俺達はクレイオス隊の方へと合流するぞ!」
“ただ、プロメテウス隊は……”
カールは不安そうな表情をモニター画面越しに見せる。
「奴らはこいつら如きに、やられるほど甘ったれてはいない! 行こう」
“そう……、ですよね。一度ここは彼らに任せましょう”
そして、その後はプロメテウス隊のみでラディエス達に挑むこととなった。
一方、オルフェウス隊とクレイオス隊は、高速機動艦隊をアストライオス艦隊と共に迎え撃っており、戦闘は思いの外激化。
漆黒の宇宙に、光線が無数に飛び交う。
それは最早、流星群にも形容できるほどである。
「何て攻撃だ! こうなったら、こっちもスラスターを全開にして機動性を高めるしかない!」
ジュノーはなんとか機動性を担保しつつ、バーストキャノンを連射して光線を放った。
敵艦の副砲をも破壊する、彼の繰り出す激しい攻撃。
さらにアストライオス艦隊の集中砲撃が、スキッドスピアを一隻撃墜。
「何ィッ!? スキッドスピアが一隻撃沈!? このままじゃまずい! アストライオス艦の方へとサーチビーム砲を撃て!」
「了解!」
ルナブレード艦の主砲から、ゼウスの雷の如き光線が放たれる。
凄まじい威力故に、アストライオス艦のバリアーの守備力を弱めた。
「このままでは危ないぞ! 主砲、副砲撃てェーッ!」
アストライオス艦は全門発射を行い、この強靭的な光線が前衛にいたルナブレード艦を一隻沈めたのだった。
「マーティー大佐、このまま敵艦隊の方へと突撃しましょう!」
“分かった。至急向かおう、ドニー”
クレイオス隊が先行して高速機動艦隊へと攻撃を仕掛けていく。
彼らの駆るストライルの握る機銃から、光線が放たれていくが、スキッドスピアはすぐさま回避し、そこから主砲で反撃を行う。
「させるかッ!」
宇宙空間にも関わらず、ほとばしる熱を感じたマーティー。
彼は操縦桿をしっかりと握った状態で、機体のスラスターを吹かせる。
素早く攻撃を躱してから、スキッドスピアの主砲に光線を一発撃つ。
「落ちろォッ!!」
「何ィィっ!」
その攻撃はスキッドスピア1番艦の攻撃手段を失わせて、そこからさらに艦体の方へとマーティーは光線をもう一発発射。
この攻撃により、またしてもスキッドスピアは一隻撃沈する。
時を同じくして、プロメテウス隊はダルク隊と引き続き戦闘を繰り広げていたが、長引いたこともあり消耗戦に陥っていた。
この状況に呼吸を激しく繰り返すラディエス。
戦いの中でアクティブウインガーを用いて、両腕パーツをストライクタイプに換えた状態で光線を連射した。
「こうなったら……、インパクトブラスター発射!」
ロードブレイダーMk-Ⅲの機体左腕部のインパクトブラスターの砲口から、怒涛の光線が放たれていく。
この攻撃は、メルーサがビームシールドで何とか防いだものの、防御手段はなくなり後がない状態になった。
「よし……、このまま突撃するぞ! パティ、ゼナード!」
“了解!”
三機のMUがビームライフルを撃っていき、次第に沈着冷静なマリエルやメルーサ達を追い詰めていく。
「うぅっ……、私が旧人類如きに……? 迂闊にやられるような私ではないのよ!」
メルーサはそこからビームライフルを素早く速射して、ゼナードの機体腕部に光線を直撃させる。
「しまった! 右腕が上手く動かない……。どうすれば……」
しかし、その時であった──
一筋の光線がメルーサに直撃したのは。
「遠方から光線が!? 避けられない……、キャアアッ!」
メルーサの機体右腕部は原型を留めないほど損壊した。
その攻撃を行ったのは、シュウとエルダの二人。
「まずいわ……。このままでは貴方が危ないわ! メルーサ!」
“分かりました、マリエル・フォルテシア大尉”
こうして、ダルク隊の指揮役は戦闘が困難になったこともあり、高速機動艦隊共々撤収することとなった。
戦闘は終わったものの、アステロイドベルト基地は荒れ果てており、機体の残骸が横たわっている。
「そんな……。生存者がいないなんて……」
パティはモニター越しからこの状況を見ていつになく胸を締め付けられそうになる。
辛さのあまり、彼女は思わず泣きそうになるが、そこへとハンカチを渡すラディエス。
「ほら」
「ありがとう、ラディー。うぅっ……」
パティはハンカチで涙を拭う。
あと一歩速く来ていたらと思うと、本当に居た堪れないと考えたラディエス達。
宇宙に浮かぶ星々が、アストライオス艦隊を微かに照らす。




