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第25話 高速機動艦隊の脅威(前編)

 アストライオス艦隊は、華々しい初陣を終えてからアステロイドベルトのサテライトベースに停泊していた。

 この状況を受けて、ついにミュートロン軍は高速機動艦隊を出撃させることとなった。

 高速機動艦隊とは、機動性に優れたミュートロン軍の戦艦ルナブレード、巡洋艦スキッドスピアで構成された艦隊の事を指す。

さらに本艦隊には、ダルク隊を筆頭とするMU(メタルユニット)戦闘部隊も参加しており、強力な布陣となっていた。


「以前は一度あいつらに負けたけど……。今度は全滅させて見せるわ……。太陽系政府連合も、所詮はSERT頼り……。まずはSERTではない部隊を狙うわ」

「とすると……」


 タニアは彼女の考えをすぐに読んだ。


「そう、アステロイドベルトと木星の間にあるサテライトベース”AJ-7”を狙うのよ。ここは丁度守りが脆弱。今のうちに部隊を殲滅して、そこを占拠するの。高速機動艦隊がここを陣取っていれば、例の艦隊もすぐに落ちるはずよ」


 ニヤリと笑みを浮かべ、人差し指を手前に向けるマリエル。


「とはいっても、どちらにせよSERTの連中と戦うのは目に見えていますが……」

「そうね。そこは少々懸念すべきところね。でも、現時点で私のスパルタロスは強化されて、通常の機動性、出力共に50パーセント程度上昇しているから、迂闊に近付こうものなら……。フフッ」


 彼女は機体のデータが記録されたデバイスのデータを見て、自信満々の表情を見せていた。

 こうしてダルク隊を筆頭とする戦闘部隊を乗せた高速機動艦隊は、AJ-7へと接近。

 ついに戦闘の火蓋が切られる。


「ルナブレード1番艦、主砲発射!」


 凄まじい威力を持った光が、サテライトベースを襲う。


「敵部隊が襲撃して来たぞ! 迎え撃て」

“了解!”


 宙域圏仕様のストライルが出撃し、銃撃戦を行うも多勢に無勢。

 サテライトベースにいた兵士達は次々に倒されていき、最早成す術はなかった。


「なんて速さだ! とてもじゃないが攻撃が当たらん!」


 アステロイドベルトの駐在部隊は、艦隊の攻撃のみならず、スパルタロスの驚異的な攻撃にも苦戦。

 駐在部隊の陣営の勢力が少なかったこともあり、残り僅かの部隊は白旗を上げようとした。その矢先のこと。


「このまま投降するか……。ウワアァッ!」

「ふん、中途半端に敵を残しはしないわ!」


 マリエルは残っていた機体も全てビームライフルで素早く撃墜し、完全に占拠することに成功。

 こうして、AJ-7はミュートロン軍の手中に上手く収まる。



 一方、クラッセル達は火星政府軍から通信を行っており、アステロイドベルトのAJ-7から連絡が途絶えたことを聞き、至急現地へと向かうこととなった。

 その情報を聞いたラディエス達は気を引き締め、そのまま戦闘態勢に入る。

 カタパルトユニットが展開、そこから先行してシュウの駆るソニックブレイダーMk-Ⅱが出撃し、偵察用システムを射出して敵勢の状況を確認。


「ここを敵部隊が攻撃したのか……。入口は破壊されているな」


 既に破壊されていた入口を見て、状況を察したシュウ。

 その後、エルダとケビンにもこの事を伝え、この現状は只事でないと分かった。

 シュウは唇を固く引き締めながら、モニターをじっと凝視する。


「ラディエス大尉、ここは僕たちが先に攻撃を仕掛ける」

“分かった。ひとまず俺達は、シュウ達の後を追って攻撃する”

「了解」


 こうして、ラディエス率いるプロメテウス隊、ジュノー率いるオルフェウス隊が出撃態勢に入ることとなった。


“ラディエス、頼むぜ”

「分かった、ジュノー。どうやら、このサテライトベースはミュートロン軍に占拠されているようだな。何とかして解放しないと」


 そして、カタパルトが開いてロードブレイダーMk-Ⅲ、バーストブレイダーの二機、五機のストライルが出撃。

 これから襲い掛かるであろう敵勢のことを考え、思わず目を荒鷲のように鋭くするラディエス。

 彼はビームライフルを構えて、武器系統のコントロールシステムを再度調整した。

 こうして、戦いの幕は開かれた。



 敵勢が接近していることを察知したミュートロン軍は、即座に攻撃態勢に入り、アストライオス艦隊を全滅させるために動き出す。

 マリエルはタニアと共に敵勢へと突撃。

まず対峙したのはヒュペリオン隊の三人。

ビームライフルを構えて攻撃を盛んに仕掛けていくシュウ達。しかし、彼女たちはこの攻撃に怖気付く事無く、こちらも負けてはいられないと言わんばかりに反撃に出る。


「私たちがこれくらいで……! タニア、メルーサを呼んで頂戴」

“了解です”


 タニアに次ぐマリエルの部下の一人、メルーサ・テリアが出撃する。


“マリエル・フォルテシア大尉、お呼びでしょうか?”

“相変わらずフルネーム呼びなのね、メルーサは”


 薄っすらと余裕を保ちながら微笑むタニア。


“タニア・サンディス、言ったでしょ。私はなんでも完璧主義だって”

「メルーサ、とにかくここは貴方がいないと厳しいわ。頼んだわよ」

“分かりました。では……”


 メルーサは素早くビームライフルを構えて的確に敵機に命中させようと試みる。


「今ね!」


 その時、ケビンの駆るストライルの肩部に、彼女の放った光線が直撃。

 爆発の反動で機体が後方へと弾かれる。

 ケビンは機体の戦闘システムが破損していたため、とても戦えそうにないと判断し、一旦ここから離れることにした。


“ケビン!”

「俺は大丈夫だよ。ひとまずここは引き下がるよ」

“ここからはエルダと二人で行く!”

「分かりました」


 ケビンは前線を離れ、そのままヒュペリオン隊は追い詰められていく。

 ここでシュウが、目つきを荒鷲のように鋭くしてコントロールシステムを調整する。


「こうなれば……。ターゲットシステム、照準OK! 発射!」


 距離を取ってロングレンジブラスターを発射したシュウだったが、彼の放った光線は避けられてしまい、そこからブースターを吹かせながら、冷静な表情で素早く接近するメルーサ。


「案外避けられるものね」


 この状況の中、プロメテウス隊が合流。

 ラディエスは現状を見て焦燥に駆られる。何しろ、まだ道半ばでこのような不測の事態に出くわしたからである。

自身の体が震えそうになるものの、何とかこらえた。


「どこからでも来い! パティは援護を、ゼナードは前衛攻撃を頼む」

“了解!”


 パティとゼナードは、素早い動きで身をかわすダルク隊の兵士が駆る機体を上手く狙い撃とうと試みる。

特にゼナードに関しては、コントロールシステムを最大限に使ってまで攻撃を仕掛けようとしていた。


「攻撃が早すぎる! でもまだまだ……、よし、今だァッ!」


 素早い攻撃を躱しつつたのちに、ビームライフルで光線を一発撃ったゼナード。

 この攻撃は、ダルク隊の兵士の駆る機体を一機撃墜することに成功する。


「そんな! この私がァッ!」


 機体の爆風を突き抜けながら、ゼナードは先程まで握っていたライフルをすぐにソードに持ち替え、ダルク隊の戦闘部隊に対し、接近戦へと持ち込もうとする。


“ゼナード、気を付けろ! 敵勢は只者じゃない”

「はっ、隊長殿」

“そんなかしこまるなよ。俺達もお前の方へ合流する”


 ラディエスとパティもまた、勇猛果敢にも敵勢の方へと近づき、ビームシールドで敵の放つ光線を防いでいった。


「このままメガ・ビームソードで……、やるしかないな」


 しかし、彼らが攻撃に出ようとした時であった。

 敵勢の高速機動艦隊が前衛へと出始める。


「我がミュートロン軍を舐めるなよ! 全艦、交戦中の機動部隊に攻撃を仕掛けるぞ」

“分かりました、艦長”


 なんと、ラディエス達が戦っている宙域へと、高速機動艦隊が急速に接近し始めたのだ。

 果たして、彼らはこの迫り来る軍勢に打ち勝つことが出来るのか?


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