第18話 サテライトベースへ向かえ
ラディエスは数々の戦闘を経て、プロメテウス隊の隊長としての立場が板についてきたこともあり、他の基地の部隊にもその戦果が知れ渡る。
特にアラスカ基地の奪還作戦及び機能復旧に関しては、かなり功績が大きかったこともあり、プロメテウス隊の四人を昇級させることとなった。
「プロメテウス隊の諸君は、今日付けで全員一階級昇級となる。おめでとう」
「はっ、ありがとうございます」
こうして、何よりも強い自信が身に付いた四人を見送るディノ。
その最中で、彼の元に一通の連絡が入る。
「ん? 任務依頼の通信か?」
その一通の連絡項目には、このように書かれていた。
──────◇──────
アメリカ・ワシントン基地司令官、ディノ・フラスト司令官へ
ワシントン基地のSERTに我がサテライトベースの防衛援助依頼をお願い申したい
現在当システムは人員不足が原因により、防衛が万全でなくなっている。
他の部署の戦闘部隊にも依頼をしたものの、いずれも現在の持ち場で手いっぱいであり、あともう少し期間があれば行ける部署もあった。
そのため、残すところすぐに依頼を行えそうなのはワシントン基地のSERTのみになってしまった。
この忙しい中、申し訳ないがお願いしたい。
地球政府軍サテライトシステム防衛部隊・指揮官
ロウリー・ガーベンより
──────◇──────
「なるほど……、こうなってしまったからには仕方あるまい……。彼らに頼むしかあるまい」
その後、PCですぐに返事を行い、翌日プロメテウス隊を呼び出した。
「ディノ司令官、話というのは……」
「今回君達には、サテライトベースの護衛を短期間ながらお願いしたい。君達は宙域圏での訓練も過去に行っているから、やっていただけるだろうか……」
ラディエス達は思わずこの場で困惑する。
突然の出来事にただただ焦燥に駆られた。
「サテライトベースって、火星政府軍の軍港としても使われてるところですよね」
冷静な表情のアリカ。
彼女は混沌とした雰囲気の中、自分なりに冷静さを取り繕う。
「あぁ、実はそこの守りが脆弱になっているとのことだ。頼む、やってくれるか? 今回の作戦では戦艦を一隻用意する」
「ははぁ……。ただ、今回は今までと違って宇宙空間での戦闘を行うわけですから、一筋縄ではいかなそうな気がします」
ゼナードは少々困りながらも、ディノに軽く訴えかける。
「だが、この任務は他の部隊から断られ続けてきた……。そこで君達に依頼したいんだ」
「そこまで言われたら、仕方ないですね……。我々がやりましょう」
ここでラディエスは、渋々この任務を受託することになった。
「ラディー、大丈夫なの? 本当に引き受けて……」
「あぁ、いいんだパティ。今回ばかりは仕方ないからな」
突然の任務を引き受けたとは思えないような、優しい微笑みを見せるラディエス。
彼は心の奥底では、今すぐにでも現地へ向かって助けたい──
そう思っていた。
それから三日後のこと、宙域戦用小型輸送艦・アルファスティンガーはラディエス達を乗せて飛び立った。
この作戦では、オルフェウス隊やヒュペリオン隊も支援のため参加することになり、彼らにとっても急な話ではあったものの、その状況をどうにか飲み込もうとしていた。
「いくらなんでも、急な話だよな……」
ジュノーは端末に送られた地球防衛宙域圏のマップを確認した。
「でも、それに許可出したってのも、あの人らしいですよね」
そう言いつつ眼鏡を直すアンディ。今回の宙域圏での防衛に向け、彼は戦略案を練りに練って来た。
「そうだな。あいつもとうとう俺と同じラインに立ったとはいえ、少々強気すぎないかとは思うがな」
「それは関係ないと思いますよ?」
アンディは軽く笑みを浮かべる。
「あぁ……、言われてみれば」
「おい、アンディ」
カールは手を振って彼に話を持ち掛ける。
「どうしたんだよ、カール、それにブルーノまで」
「お前、地球で初めて地上戦をした時の後から、重力慣れしてなかったせいで体調崩してたよな。それで戦線からも外れてたし」
心配そうな目で話しかけるカール。
「あぁ、そうだけど」
その時のアンディは気楽そうな表情であった。
「ブランクは無いのかよ」
ブルーノもまた、彼のコンディションに関して不安視している。
「ははっ、そんなのないよ。俺は体調が悪くても自分なりに頑張って来たんだから。それに今回は久々の宇宙での戦闘と来た。復帰戦には十分さ」
「ならいいけどよ。あっ、ジュノー大尉も来たぞ」
「アンディ、受け取れよ」
ジュノーは久しぶりの戦闘に参加するアンディを労うかのように、ボトルに入ったドリンクを渡す。
「あっ、これ俺の好きな奴だ。隊長が持って来てくれてたのか……」
アンディはそう言った後、そのビタミンドリンクをゴクゴクと飲んだ。
一方、アルファスティンガーの艦長はサテライトベースにもうすぐ到着することもあり、入港準備を済ませていた。
“こちら地球政府軍ワシントン基地のAS-1の艦長、クラッセル・ヴィーモスだ。今軍港に入る”
「了解。来てくれて助かったぞ。至急入ってくれ」
“分かった”
こうして、ラディエス達はサテライトベースの内部へと入っていった。
ここにはサテライトベースのクルーが数名おり、その中でも管理者のロウリー・ガーベンは彼らを見た途端に安堵した。
「おお、歓迎するよ。プロメテウス隊のみならず、他のSERTの面々もいるとは。何と心強い」
「ロウリー指揮官、今回はよろしくお願いします」
ラディエスは前に立ち、それに応じてロウリーは彼と握手をする。
お互いにこやかな表情であった。
「我々サテライトベースの戦闘部隊は、度重なる戦闘の末に隊員の数は四名のみとなってしまった……。このままではいけないと思い、君達に依頼を行ったんだ」
「はい。その旨は聞いております」
ラディエスは真摯な態度で頷いた。
「そうか。それならいい。この宙域付近は、ミュートロン軍の攻撃が激しくてな……。そこで君達に護衛支援をしてもらいたいというわけなんだ。地球での期間で言えば二週間ほどここにいて欲しい。二週間経てばここに別の戦闘部隊も合流するとのことだ。頼む」
「了解、ロウリー指揮官」
こうして、ラディエスは護衛任務を遂行した。
彼らの守るサテライトベースの付近にはアステロイドベルトがあり、そこの鉱産資源を狙いにミュートロン軍が侵攻することもあるため、地球以上に戦禍が激しい。
それを承知の上で、ラディエス達はこの任務を受けたのだ。
「ヒュペリオン隊が偵察任務として先行して、宙域圏をパトロールしているけども、何事もなけりゃいいんだけどな」
不安な表情で通信機器を握るゼナード。
するとアリカがその異常を察知する。
「ラディエス大尉、大変です! シュウ中尉が護衛範囲内に敵機が接近しているとのことです! 至急出動をお願いします!」
「分かった、アリカ! 行くしかないな」
プロメテウス隊とオルフェウス隊はこの事態に合わせて、至急出動することとなった。
ラディエスはブーストタイプの武装で出撃し、ジュノーの駆るバーストブレイダーには宇宙戦用フライトブースターユニットが装備されており、ひとまず万全な状態である。
「アリカ、適宜報告頼む! パティとゼナードは護衛横陣形で戦闘に!」
“了解!”
すると、アリカは早速レーダーシステムの反応を確認した。
そこにいたのは交戦中のヒュペリオン隊であり、ラディエス達は真っ先に加勢。
“ラディエス……、いや、ラディエス大尉、至急援護の方を!”
「任せてくれ! ひとまず一斉掃射で敵部隊を殲滅するぞ」
モニター越しに映るソニックブレイダーMk-Ⅱの方へと加勢するプロメテウス隊とオルフェウス隊。
「ラディエス、ここは俺達がやる!」
“ジュノー大尉、頼みます”
「今は同じ階級だから、そんなかしこまるなよ」
“あぁ、じゃあ分かったよジュノー……”
こうして、ラディエスはビームライフルを、ジュノーはバーストキャノンを構え、シュウに接近して襲い掛かっていた敵量産機のシグネスを撃墜。
「ゼナード、パティ、そっちはどうだ?」
“エルダとケビンは無事よ! こっちは指揮官機を牽制している所ね”
「了解! このままのペースで行こう」
そして、コントロールパネルを操作し、通信を切ってからより戦闘に集中し、指揮官機のバーネイルに挑む。
「来たな! このまま押し切ってやる……」
「なんだ? あれが噂のMk-Ⅲか!」
ラディエスはすぐさま両腕のメガ・ビームソードを展開し、その状態で素早く刃を振り回して敵機の片翼を切断した。
「何をォッ!」
必死になって機銃を撃ちながらもがく敵軍兵士。そこへとゼナードとパティが援護射撃に入る。
「行くぞ、パティ!」
“OK! ゼナード”
二人は操縦桿を力強く握り、機銃を撃つ。
「ウオォォッ!! だがまだ……」
さらに敵機に追い打ちをかけるように、ラディエスが勢いに身を任せて素早く敵機に斬りかかる。
「これで……、斬ってやる!」
「何ィッ! ウワアァッ!」
敵機は一刀両断され、機体はそのまま鉄屑と化した。
一方、オルフェウス隊はシグネス六機とバーネイル一機を相手に戦闘を繰り広げていた。
まだかまだかと隙を突こうと、戦いながら様子を窺うジュノー。
バーストブレイダーは、遠距離攻撃でじわじわと攻めていった。
「落ちろッ!」
“今だ!”
ジュノーはバーストキャノンを素早く連射し、迫り来るシグネス二機をあっという間に撃墜。
「こいつめ! お前らの好き勝手にさせてたまるか!」
さらにアンディがカールやブルーノと共にビームライフルで一斉に光線を乱れ撃つ。
彗星の如く煌めいた光線は、取り囲もうとしていたシグネス四機に直撃した。
これにより残すところはバーネイル一機となった。
「こうなったら、これで……」
ジュノーはバーストナックルを展開し、疾風の如き凄まじいスピードで敵機に接近し、勢いよく殴りかかる。
「コイツを喰らえェッ!」
バーストナックルが直撃した敵機は破片が粉々になる程に飛び散り、その後爆発四散した。
”ラディエス! 部下の機体も全滅させたぞ!”
「ありがとう、ジュノー。助かるぜ」
”いいってことよ”
すると、アリカから通信が入る。
”この宙域には、もう敵部隊はいないようです。戦闘の方お疲れさまでした”
「今戻るぜ、アリカ。帰投するぞ」
”了解!”
今回の戦闘は意外にも早く終わった。
しかし、まだ来てから一日も経っていない。油断は出来ないのがここの恐ろしい所でもあった。果たして?




