第17話 キュロス隊の逆襲
ラディエス達は数週間にもわたったアラスカ基地の復旧作業を終え、ワシントン基地へと帰還。
疲労が蓄積しているためか、各々でゆっくりと休んでいた。
「アラスカの方は何とか終わったな。やっぱり助け合いっていいもんだが、流石にヘトヘトだ……。ゆっくり休もう」
毛布を掛けてベッドで眠るラディエス。
その後彼は、すんなりと睡眠できたという。
一方、ゴウト率いるキュロス隊はドレイクを失い、隊の全滅を危惧していた。
「ウィル、どうする……。以前のMk-Ⅲとの戦闘では痛手を負ったわけだ。今後はワシントン基地を襲撃する際に、奴を警戒せねばならん」
「そうですね、ゴウト大佐。このままでは我がキュロス隊も完全に殲滅させられかねませんね……」
今の状況下に、息を呑むウィル。
顔の下で手を組んだ状態で、彼は考え込んだ。
「せっかく新型機を賜ったのにこの体たらくでは、いかんな……。俺自身が慢心していたというのもあるが……」
「自分も今まで勝っていたから勝てる……、それで調子に乗っていたのかと」
「とはいえ、今のうちに作戦を立て、奴らを倒さねばならん。ウィル、現段階では我が部隊も四名のみとなった。以前は二十名もいたのに……」
悔しさを噛み締めて、机の陰で拳を握り締めるゴウト。
「それしかないですね。ひとまず作戦の方を……」
「そうだな」
こうして、キュロス隊はワシントン基地侵攻作戦に向けて作戦会議を行った。
「今回の作戦では、急降下爆撃作戦を行う。本作戦では無人MU・ドールクスの強襲攻撃型に改良したものを使う。これで爆撃をある程度行ってから、すぐさま彼らの弱った隙に、集中砲火を仕掛ける」
「ゴウト少佐……」
「どうした、ロブス」
部下の一人である、ロブス・ケイソンが挙手をした。
「当作戦ではどのような陣形を取るおつもりで?」
「まずはV字陣形の状態で突撃し、その後から徐々に敵を包囲し始めていき、そこから集中砲火して殲滅……、といった流れだ」
「そうですか。了解です」
ゴウトの発言内容を小型端末に記録するロブス。
端末を操作する機械的な音が会議室の中に響く。
「で、この作戦ではロードブレイダーMk-Ⅲへの対策も行う予定だ。様々な武装バリエーションがある以上、近距離用、中距離用、遠距離用の武装はバランス良く装備せねばならん……。そこがまた難しい所だ。本作戦では、ドールクスに急降下爆撃用の武器のみならず、遠距離支援攻撃用のビームブラスターを装備させる予定だ。我々はその間に近距離、中距離用の武器で敵勢と戦うことになる」
「了解です」
ウィルは落ち着いた表情で、軽く頷いた。
「近距離・中距離用の武装はナパームバズーカ、ビームライフル、グレネードボムも確保している。これで対策は万全だ」
「はっ、ゴウト少佐」
彼に対し敬礼をするウィル達三人。
こうして、その後作戦遂行に向けて着々と準備は進む。
そして四日後、作戦は遂行されることになった。
キュロス隊が大気圏へと突入しようとする中、ワシントン基地の戦闘部隊は出撃を開始した。
「よし、コントロールシステム・オールグリーン。ウェポンパックシステム・オールグリーン。ロードブレイダーMk-Ⅲ、ラディエス出るぞ!」
Mk-IIIはディフェンスタイプの武装で出撃し、それに遅れてゼナードとパティの駆るストライルも格納庫から出てくる。
今回の作戦で、プロメテウス隊はオルフェウス隊と共に地上防衛作戦を行う事にし、その代わりに、ヒュペリオン隊が空中から偵察及び支援攻撃を行うことになった。
“ラディエス、僕たちが守りに就くよ”
「分かった。頼んだぜ、シュウ」
ここでシュウ率いるヒュペリオン隊が、敵艦から出撃するキュロス隊を攻撃しようと試みる。
「よし……。エルダ、ケビン、準備は良いな?」
“はい、ひとまず照準の調整を行いましょう”
コントロールパネルを素早く操作し、照準の設定を行うシュウ。
エルダとケビンも設定を行い、彼らの間に緊迫した空気が張り詰めた。
ロングレンジブラスターを構えて待つヒュペリオン隊。
しかし、彼らの動向にキュロス隊のゴウトが気付く。
「敵機の影をキャッチした! ドールクスを出撃させるぞ」
ドールクス六機は、音を立てる事無くブラスターを構えて攻撃。
「まずい! 遠距離から仕掛けてきた! こっちも対抗するぞ」
“はい、シュウ隊長”
ケビンはすぐさまブラスターから光線を放つも、すぐに躱されてしまう。
“しまった!”
そこから無機質な動作で撃つドールクス。
「まずいッ! ウワアッ!」
とっさに左腕のビームシールドで防御したものの、防ぎきれず機体左腕部は破損。
「ケビン、ここは私が……」
エルダはケビンを庇いながら、敵機に向けて攻撃を行い、機体を撃破した。
だが、彼女を不意打ちする形で、後方に回るもう一機のドールクス。
「あっ! そんな……」
隙を突かれる前に敵機が光線を発射した。
この光線を喰らい、エルダの機体の制御システムが破損し、姿勢を維持するのが難しくなる。その後彼女は地上へと戻り、残すはシュウ一人となる。
「こうなったら僕がやるしかない……」
ブラスターを構えて照準調整を行い、即座にビームを発射するシュウ。
一機撃墜するも、キュロス隊本隊や残ったドールクスは逃してしまった。
ここでシュウは、ラディエス達に連絡を行う。
“ラディエス、済まない……。僕がついていながら……”
「大丈夫だ。俺達がお前達のフォローをするから」
ラディエスはディフェンスタイプのウェポンパックを装備したMk-Ⅲで出撃しており、ビットマルチガンナーで攻撃し、ドールクス二機を撃墜した。
しかし、残った二機は基地への爆撃を開始し、そこでラディエスは、ビットシールドを飛ばして展開し、可能な限り施設に被害が及ばないように何とか防ごうとする。
「これでなんとか……。パティ、ゼナード、頼むぜ!」
“分かったわ、ラディー”
“任せてくれ、隊長さん!”
パティとゼナードはビームライフルを素早く速射し、爆撃用ナパーム弾やビームブラスターを放ってくる敵機をすぐに片付ける。
一方、地上にてゴウトの率いるキュロス隊と戦闘を繰り広げるオルフェウス隊。
ほぼ互角の戦いぶりであった。
「くっ……、随分と強いじゃねぇか。これじゃ泥仕合待ったなしだな……」
“ジュノー大尉、これでは消耗戦は回避できないですね……”
カールはビームソードを取り出して、接近戦に持ち込もうとする。
「このォォッ!」
「しまったッ! ウワアッッ!」
すぐさまカールは自身のソードで斬りかかり、敵の駆るシグネスを一機撃墜した。
「まずい! オービスがやられた!」
グレネードボムを投擲するロブス。カールの視野を一時的に遮る。
「よしッ、今だ!」
ロブスはカールに対し、ビームライフルで攻撃を仕掛け、攻撃不能にまで陥れる。
「ジュノー隊長! 至急援護を!」
“カール、大丈夫か!”
ジュノーとブルーノは、すぐに自らの機銃で反撃を行う。
「カール、お前は至急逃げろ!」
“了解!”
すぐさまカールは踵を返した。そこでジュノーとブルーノが先陣を切って横陣形で機銃を撃っていく。
「このまま敵を落とすぞ! 早くしないとワシントン基地までやられるぞ!」
“自分が敵部隊に切り込もうと思います。お任せを”
ビームシールドを展開しながら、ブルーノはビームライフルを連射して突撃。
「何をッ! 俺達がこれくらいで!」
すぐに攻撃を回避し、ビームを撃ち返したロブス。
「このォォッ! 落ちろ!」
ブルーノはビームライフルで光線を撃ち、ロブスの駆るシグネスを撃墜した。
「ロブス! クソォォッ、このままじゃ殲滅からは逃れられん! ウィル、行くぞ!」
残り二人となったキュロス隊は、自分たちが持つ限りの武装をフルに使う。
ナパームバズーカを使って攻撃し、迂闊に敵が近づけないように、弾の爆風で妨害を行った。
「こりゃあ近づけないな。プロメテウス隊は至急援護頼む!」
“分かった、ジュノー大尉”
こうして、プロメテウス隊はキュロス隊に攻撃を仕掛ける。
「よし、この場合はビットマルチガンナーを飛ばすか……」
コントロールパネルを操作するラディエス。遠隔攻撃システムであるビットマルチガンナーを巧みに使って攻撃を仕掛ける。
「ここに敵機がいるのか! よし、そこだ!」
ビットマルチガンナーからブルーノの方へ目掛けて光線が発射される。攻撃を喰らったブルーノは、すぐさまラディエスの方へとナパーム弾を発射する。
「まずいッ!」
“ラディエス、ここは俺が!”
ゼナードはすぐさま放たれたナパーム弾を、着弾前にビームで破壊し、即座に援護に回った。
“大丈夫か……、隊長さん”
「あぁ、何とか助かったぜ」
“ナパーム弾の処理は俺とパティがやるから、そのうちに……”
「分かった。任せとけ」
ラディエスはバックパックに装備されたディフェンスタイプの装備の一つ、サブアーム・ブレードを展開し、実質四本腕となった機体で突撃を行う。
「このォッ!」
素早くビームソードでウィルに斬りかかったラディエス。
それをウィルは素早く躱すが、矢継ぎ早にサブアーム・ブレードの斬撃を喰らう。
「うおォッ! 油断したか……、何ィッ!?」
ウィルは断末魔を上げる暇もなく撃墜された。
ラディエスはそのまま残った隊長のゴウトのいる方へと向かう。
「これで残り一人だ……。これ以上好き勝手に暴れさせてたまるか!」
ビットマルチガンナーで攻撃を行うが、その動きを見切ったゴウトは素早くビームライフルを撃ち、正確な射撃で撃墜する。
「フフッ、攻撃をビット如きに任せるとは馬鹿な奴め……、死ねぇッ!」
ラディエスはビットシールドを使い防御するが、そこで彼に手を貸す者がいた。
「でやあッ!」
「何ィッ!? 後ろからッ……」
手を貸したのはジュノー達率いるオルフェウス隊であった。
“今だ、ラディエス!”
「分かったぜ、ジュノー大尉!」
ラディエスはすぐさま突撃し、ビットシールドを破壊させらながらもゴウトの駆るヘルセイドに肉薄。
「このまま、斬る!」
通常の腕二本とサブアーム二本の計四本の腕で繰り出した斬撃を喰らったヘルセイドは腕を斬り裂かれた上に、胴部も切断される。
「おのれェェッ……!」
ぶつけようのない怒りを叫ぶ中、機体の爆発に巻き込まれ散っていったゴウト。
これが、キュロス隊のあまりにも呆気ない最期である。
こうして戦闘も終わり、基地の被害は最小限で済んだものの、ディフェンスタイプのビットシステムが大破した様子を見かねたベンやマルク達整備班は、困り果てる事しか出来ずにいた。
「おいおい、ラディエス……。いくら何でも今回ばかりは無茶し過ぎだぜ」
「すみません、ベンさん……。それに、マルク達まで……」
「本当に無理し過ぎですって! 俺達整備班でも流石にこれは時間かかりますよ」
タオルで汗を拭いながら、回収して来た各ビットシステムの残骸を見るマルク。
手を打つとしたら、まずはどう直すか考え込む。
ラディエス達の戦いは一旦終わったものの、整備班たちの戦いは今始まったばかりであった──




