第16話 荒れ果てたこの地で
ラディエス達は施設が半壊したアラスカ基地にて交戦する中、深紅の狩人と恐れられるエスニアが指揮を執っているボナパルト隊に遭遇する。
“隊長さんよォ、どうする?”
いつもと違い、心底焦っているラディエスとゼナード。何しろ深紅の狩人のエスニアが駆る指揮官用MUのヘルセイドや、一般兵士向けに改良された火力特化型の機体であるマグナイド・カスタムがいるため、間違いなく苦戦は強いられると思ったからだ。
「大丈夫。アクティブウインガーで再度武装を交換する。その間は持ち堪えてくれ」
“ちょっと無茶じゃないか? まぁやってやるがな”
ラディエスの無茶ぶりに苦笑いを浮かべながらも、ゼナードは操縦桿を素早く動かし、コントロールパネルで照準調整をし、マグナイド・カスタムに狙いを定めてビームライフルを両手で構えて撃つ。
「何ィィッ!?」
ゼナードの放った光線が、彼の狙い通りに胸部に直撃し、煙を噴き上げながら倒れ込む敵機。その後爆発し、ただの鉄屑と化した。
一方、ラディエスは機体のウェポンパックの換装を終え、既に戦闘に合流していた。
機体の装備である右肩の二連ビーム砲、左肩の六連装ミサイルポッド、両腕のビームキャノン砲が放つ攻撃が、迫り来るマグナイド・Cをいとも容易く破壊していく。
「なんちゅう火力だ……! グハァッ……」
敵機のパイロットは血を吐き、どんどん意識が薄れていきその後死亡した。
“ラディエス隊長、敵機が後方から接近しています!”
「アリカ、任せな!」
素早く立ち回り、右腕のビームキャノンを構えて敵機を撃墜するラディエス。
「危ない所だったな。アリカ、助かったよ」
“いえ、礼には及びませんよ……”
その後の彼の戦いぶりも、今までの苦戦が嘘のようだと思えるほどの快進撃であった。
この状況を不安視し、エスニアが動く。
「来たな、Mk-Ⅲ! 今度こそは……」
エスニアはコントロールパネルを使いながら照準合わせを行い、操縦桿をグッと握る。
彼の駆るヘルセイドがビームライフルを右手で構えて、空中からラディエスの駆るロードブレイダーMk-Ⅲを狙い撃つ。
「落ちろォッ!」
“何をォォッ!”
咄嗟の判断で機体のスラスターを吹かし、エスニアの繰り出した攻撃を回避したラディエス。だが、今のエスニアの攻撃は、ほんの小手調べに過ぎなかった。
「今度こそ……!」
ヘルセイド背面に備わったビームキャノン砲が光線を放つ。
「こんな攻撃打ち消せばいい!」
ラディエスはヘルセイドを睨みつけながら、機体の操縦桿を素早く動かし、ビームキャノン砲で光線を放ち、エスニアの攻撃を打ち消した。
そのままラディエスの駆るMk-Ⅲが脚部のスラスターを吹かして滑空し、上空から光線を撃ち続けてくるエスニアに対し、機体背面に備わった大型粒子砲を使い、両手で構えて光線を発射。
「無駄に光線を撃って、すぐに後悔するぞ……。フフッ」
軽やかにラディエスの攻撃をすんなりと回避したエスニアは、いつになく闘争本能をくすぐられ、ニヤリと笑う。その笑みは最早狂気的ともいえるだろう。
しかしこの場に、ラディエスの方へ加勢する者もいた。
電光石火の如く敵部隊を撃墜し終えたシュウ率いるヒュペリオン隊である。
“ラディエス! 僕らが援護する!”
「シュウ、済まねえ……。俺が不甲斐ないばっかりに」
謝罪するラディエスだが、今はそれどころではなかった。
「落ちろMk-Ⅲ!」
エスニアはロルフやバーツェンをすぐさま呼び、ビームライフルを使って集中砲火を仕掛けるも、シュウ達が防御する。
ボナパルト隊が油断した隙に、ラディエスが先程不発に終わった大型粒子砲を構えて待つ。
「これで決めるぜ!」
「しまったッ!」
死を覚悟したエスニア。だが彼をバーツェンが庇った。
「バーツェン!」
“ふぅ……。機体が何とか持ったから良かったものの……、コレじゃ戦えませんね”
幸い、バーツェンの駆るマグナイド・Cは機体左腕部が吹き飛ぶ程度で済んだ。
しかし、これでは戦闘が出来る状況ではないのは確か。
ここで彼は艦に戻り、代わりにロルフやその他の敵機が守りに入った。
ビームライフルをスッと構え、より自身の神経を研ぎ澄まして、機体モニターを確認するエスニア。その傍ら、彼を必死に守ろうとするロルフ。
「ボナパルト隊がこの程度で滅ぶとでも?」
エスニアは操縦桿を力強く動かして、ヘルセイドの握るライフルのトリガーを引いた。
「何をッ! こっちだって負けちゃあいない!」
先程放たれた光線をすぐに躱し、目を荒鷲の如く尖らせるラディエス。
彼の駆る機体両腕のキャノン砲が激しく火を吹く。
「何ォッ! 少佐をやらせるものか!」
ロルフは機体肩部に付いたビーム砲で、ラディエスに対抗しようとするものの、それは焼け石に水──
ラディエスの後方から様子を窺っていたシュウが、ロングレンジブラスターで隙を突いて、彼の機体に追撃したのだ。
「まずいッ! 脱出しないと!」
爆発寸前の機体から勢いよく飛び出すロルフが乗る脱出ポッド。
それをすぐにエスニアは自らの機体でキャッチし、息を呑む。
「シュウ、助かったぜ! まだ奴らは攻撃してくるか……?」
ラディエスはホッとしつつも、油断せず操縦桿をグッと握り続ける。
“いえいえ、これくらい何てことないよ”
薄っすらと笑みを浮かべるシュウ。この戦闘で確固たる自信がついたかのようにも見えた。
「くっ……、大事な部下をこれ以上殺されんためにもここは引くか……」
ロルフの乗るポッドを持った状態で、他の部下を率いて母艦へと戻るエスニア。
その後ミュートロン軍の戦闘母艦はアラスカ基地から撤退し、ラディエス達は当基地奪還に成功した。
戦闘には勝ったものの、そのことを一概に喜ぶには厳しい状況でもあった。
アラスカ基地の生き残りは、僅か六名ほどしかいなかったため、とてもではないがこの状況下で基地復旧作業をするのは非常に困難。そのように見えた。
「我々だけで、これからどうすれば……」
生存者の一人であるアロンは、真っ青な表情で打ちひしがれる。
仲間がいるだけ有情と思う一方で、自分達だけで何が出来るのかと思っていた。
「アロン中尉、何言ってんだ。俺達がいるだろ?」
ラディエスはにこやかな表情でアロンに対し手を差し伸べる。
「俺達も力を貸すぜ、ショウ、お前はどうよ」
「僕も同感です。今は助け合いが大事ですからね」
ジュノーとショウも同意見であり、その場にいた彼らの部下頷く。
「隊長さん、やっぱお前はお人好しだな」
「でもそこがラディーのいい所でしょ」
「まぁ合ってるな。よし、今のうちにワシントン基地から支援依頼が貰えるかどうか、連絡を取っておくか」
すぐさま通信機器を取り出して、ワシントン基地の方へと連絡を取るプロメテウス隊の三人。アロン達は、彼らの優しさに涙した。
「ありがとうございます……。本当に助かります。マイケル、瓦礫撤去の方はいけるか?」
「はい、今ある残り少ない作業用MUを使えば、動かせるかと。少し壊れてはいますが、作業をする分には問題ありません」
アロンと同じく生き残りの一人であるマイケル・ハーヴィアは他の生き残りと共に、地球政府軍の作業用MU・《リビルス》に乗り込み、瓦礫の撤去作業に赴く。
「俺達もこの機体で瓦礫の撤去でもするか。行くぞ、カール、ブルーノ」
「了解!」
その様子を見て、すぐにオルフェウス隊もいざ行かんと言わんばかりに動いた。
「エルダ、ケビン、僕たちは設備の工事のために、ワシントン以外の基地からも支援を募ろう」
「分かりました」
シュウ達は通信機を取り出し、他の基地とのコンタクトを図る。
こうして、ラディエスの一言をきっかけに、アラスカ基地の復旧作業が着々と進んだのだった。
数日では到底終わらない作業だが、急遽ラディエス達は機材や作業用MUの調達を開始し、司令官のディノにもアラスカから報告を行い、復旧作業を行うことの許可をもらう。
荒れ果てたこの地で、彼らは暗闇の中から垣間見える僅かな光に希望を見出したのだった。




