第15話 アラスカ遠征作戦
ある日のこと、長期偵察任務からヒュペリオン隊が帰還した。
彼らはフロリダ基地からの依頼で、敵部隊の偵察任務のみならず、基地の雑務の支援に参加したりと、何かと忙しかった。
「ラディエス、久しぶり」
「あっ、シュウじゃないか」
「偵察任務は疲れたよ……。まさか偵察以外の仕事で、あまり使ってない武器庫の清掃まで行うなんて……。しかもあそこはワシントンより暑くて……。何と言ったらいいか」
シュウですら音を上げており、ケビンとエルダに関してはソファーで寝転がっていた。
「どれだけ辛かったんだ?」
ラディエスは彼らの目線に合わせるため、しゃがんで話を聞こうとした。
「俺とエルダは交代制で基地の見張り番までさせられたんですよ。栄養ドリンク数本で耐えろとか言ってたけど、睡魔と戦うのが辛くて大変でしたよ」
「あの基地の上官って、人使い荒くて困りますよね。渡された食事も、基本的に品質の悪いレーションばかりで……」
「エルダは食事の度にため息ついてたよね……」
シュウは当時の状況に関して、苦笑いせざるを得なかった。
それを聞いたラディエスも、彼らが置かれたいたであろう環境を軽く思い浮かべて同情する。
「ひとまず、僕たちは暫く休みたいね」
「そりゃまあ……、聞いてる限りだと辛かったんだからそうだよな。とりあえず、ゆっくり休んで英気を養わないとな」
「気遣いありがとう、ラディエス。また後でね」
そのままラディエスは休憩室を後にした。
一方、ミュートロン軍の戦闘部隊は、地球侵攻作戦の標的として、アラスカ基地の方へと襲撃しようと試みていた。
現在、エスニア達が奇襲を仕掛けるべく着々と地球に接近しつつあったのだ。
「さてと……、いよいよだな」
「そうですね、エスニア少佐。ここを占領すれば、拠点代わりに出来るでしょう」
バーツェンはコントロールボードを用いて、立体地図を確認した。
「この基地は人間からすればただの寒冷地だが、俺達からすればどうってことないですからね」
ミュートロンは細胞が通常の人間より強靭な上、暑さや寒さにも強く出来ている。
彼らはその強靭的な力量をもって、アラスカ基地占領作戦を翌日に実行した。
その翌日、アラスカ基地の方へとミュートロン軍が接近。
地球政府軍も彼らに対抗すべく、戦闘部隊で攻撃を開始した。
「敵機が十二時の方向から急接近! 至急迎撃を!」
「了解! 対空ビーム砲、発射します」
凄まじい電撃が、ミュートロン軍を襲うも、彼らには脅威ですらなかった。
「ふん、こんな小細工が通用するとでも? 落ちろ!」
エスニアはいとも容易く基地の砲台を破壊した。
「このォッ! 俺達が容赦しないぜ!」
アラスカ政府軍の戦闘部隊は、ストリールで攻撃を仕掛けるものの、焼け石に水とでも言えるような状態であった。
「やれやれ、無駄なあがきを……。落ちろ!」
ロルフはビームライフルで敵機を撃墜。そこへと、もう一機の敵機も接近する。
「これくらい、何てことないぜ!」
素早く蹴りを入れてから、ロルフはビームソードで敵機を一刀両断した。
「しまった! ウワアァァッ!」
敵機はそのまま墜落し、爆発四散した。
「全員銃撃の手を休めるな! 全滅だけは回避せよ!」
アラスカ基地の戦闘部隊の健闘虚しく、ボナパルト隊の手によって落ちた。
しかし、数少ない生存者がいた。
「メーデー、メーデー、メーデー。こちらアラスカ基地……。戦闘部隊が全て壊滅し、残るは我々だけとなった。至急来てくれ……」
救難信号を送ったのはアロン・ゲイモスという兵士。
彼は、陥落を阻止するべく他の仲間数名と共に、敵の影に隠れて助けを求めたのだった。
一方、アラスカ基地の救難信号をワシントン基地がキャッチしたことを受け、ディノは至急自軍の戦闘部隊を輸送艦で現地に向かわせることにした。
プロメテウス隊もこの作戦に参加しており、ラディエスは必死に生存者の無事を祈った。
「ラディー、顔色が悪いわよ?」
ドリンクボトルをラディエスに渡すパティ。
「そりゃあ、味方が心配だからだよ。少しでも生き長らえていて欲しいけど……」
ラディエスは思わずゴクリと息を呑む。
「隊長さん、俺も流石に不安だぜ。あそこの基地は戦力が俺達の方と比べると人員が少ないみたいだしな。尚更だぜ」
ゼナードは基地のデータベースを確認し、不安そうな面持ちをする。
「俺達もこの救難信号の送り主には生きていて欲しいと思ってる……。それは当然のことだとは思うが」
「僕も同感です、ジュノー大尉」
シュウとゼナードは不安になりながらも、アラスカ基地周辺の立体地図を確認し、作戦内容を記録したデバイスの画面を見比べた。
そして数時間後、アラスカへと到着したワシントン基地のSERTの面々は、輸送艦から降下し、ミュートロン軍に対し攻撃を開始した。
“まずは僕たちが索敵を行います。オルフェウス隊の皆さんは先程の生存者の救出をお願いします!”
シュウの指示に頷くジュノー。
オルフェウス隊はそのまま施設が半壊した基地の方へと向かった。
「とりあえず俺達は索敵後に攻撃を仕掛けるって形でいいな?」
“よろしく頼むよ、ラディエス”
プロメテウス隊は艦内で暫く待機し、その後シュウ達から連絡が来た。
“ラディエス、敵部隊が十二時の方向から来たみたいだよ”
「分かった、至急出る」
こうして、プロメテウス隊も早々に出撃することになり、機銃を構えて攻撃態勢に入る。
“戦闘部隊接近! ドールクス四機!”
「了解! すぐ撃ち落とすぜ」
ラディエス達はビームライフルを構えて一斉掃射を行った。
放たれた光線が敵機を貫く。
「まだ前哨戦って感じだな。本隊はどこだ?」
“隊長さん、焦らない方が良いぜ”
「分かってるさ、ゼナード。それでもつい焦ってしまうのは俺の悪い癖だな。ん? レーダーに反応があるぞ! 今度はバーネイル一機、シグネスが四機、ドールクスは六機。計十一機か。さっきよりも激しい戦いになるぞこれは……」
“分かったわ、ラディー”
ラディエスは両腕のメガ・ビームソードを展開して、接近戦を仕掛けようと試みる。
「ここは俺が引き付ける。パティとゼナードは援護を頼む!」
“了解!”
パティとゼナードは空中で機銃を構えて、素早く銃撃を行う。
「ゼナード、避けられたわ!」
“よしッ! ならこれで!”
ゼナードはすぐさま後方に回り、ビームを放って敵機を仕留めた。
だが、さらに敵部隊は恐れずに接近。
「まだ来るぞ! ドールクスはこれで……、斬る!」
ラディエスは両腕のメガ・ビームソードで薙ぎ払って撃墜する。
「何ィッ!? ウワアッッ!」
一度にドールクス二機をまとめて倒した。
「このォッ!」
「出力を切り替えて、こうだ!」
さらに敵機の攻撃が来ても、すぐにビームシールドを展開して防いだ。
「まずい! 迂闊だったか」
「今だ!」
ラディエスの振るったソードは、敵機を一刀両断した。
やがてラディエスはバーネイルと交戦し、遠距離攻撃での戦闘を強いられることから、アクティブウインガーを呼び出し、即座に両腕のみストライクタイプに切り替えた。
「ふん、かかって来な」
しかし、そのバーネイルのパイロットは自信に満ちていた。
「これを喰らえ!」
ラディエスはすぐさまビームキャノンを使い光線を放つ。
「くっ、ちょこまかと!」
敵兵士はその攻撃を回避しつつも、必死にラディエスの影を追う。
「今だ! これでッ!」
「何ィッ! しまった……」
敵機は撃墜され、爆発四散した。
“ラディー、ここの敵部隊は殲滅したわ”
二人は既に敵機を全て仕留めていた。
ラディエスは安堵しつつも、念のためにレーダーを確認する。
「了解。助かるよ。しかしミュートロンの連中は何のためにアラスカを……」
そんな中、急に三人の方へとある人物から通信が入る。
“こちらジュノー! 聞こえるか?”
「ジュノー大尉、どうしました?」
ラディエスは少し驚く。
“アラスカ基地から救難信号を発信していた兵士が見つかった。今は他の部隊が匿っているが、こっちはヤバそうだ!”
「何ですと? では、至急地上区域へ向かいます。今いるエリアは?」
“ポイントCだ。頼む”
「了解」
こうして、プロメテウス隊は地上の方へと降下していった。
彼らが地上に着くとそこにはオルフェウス隊もおり、戦況としては厳しく、マグナイドが複数機おり、火力面ではこちらが劣っていた。
「クソォッ、深紅の狩人までいるなんて……」
ジュノーは思わずモニター越しにエスニアの機体を睨みつけた。なんとこのアラスカ基地は、ボナパルト隊が元いた兵士を殺害し、強引に占拠していたのだ。
果たして、ラディエスはアラスカ基地を取り戻すことは出来るか──




