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第14話 火星SERT支部

 火星付近の宙域にて、ミュートロン軍は地球への資源供給網を断つため、火星などの惑星から来る輸送船団を殲滅し、強引にでも供給網を掌握するために、戦闘部隊で葬り去ろうとした。

 バーネイルやシグネスを主体とした宙域戦闘部隊は、早速輸送船団の護衛を行う火星政府軍へと攻撃を仕掛けた。


「敵部隊接近! 全員戦闘態勢に入れ!」

“了解”


 敵部隊に対し、厳戒態勢を敷く火星政府軍の護衛部隊。

 重武装型ストリールで戦闘に挑む。


「よし、このまま陣形をX字状にして……、包囲陣を組め!」

“はい、マーティー大佐”


 火星政府軍SERTのクレイオス隊・隊長のマーティー・クエインは、部下や傘下の部隊と共に敵勢を囲んだ。


「何ィッ!? 迂闊だったか!」

“これでは奴らの思う壺だ……。くっ!”


 ミュートロン軍の兵士達は、圧倒的物量攻撃に思わず怯みそうになる。


「ひたすら撃て! くれぐれも手を休めるな!」

“分かりました”


 クレイオス隊の放つ無数の光線は、ミュートロン軍の戦闘部隊を一瞬で殲滅させた。


「さてと……。なんとか仕留めたが、この宙域では、今まで比較的ミュートロンの連中の攻撃が激しくなかっただけに、いかに守っていくかが今後の課題になりそうだな」


 マーティーはパックに入ったビタミンゼリーを片手に、今にも唸りそうな表情をして見せた。


「マーティー大佐、今回の戦闘データから得られたものとして、バーネイルの機体性能を底上げした改良型が使われていたようで……」


 クレイオス隊の副官であるドニー・タイソンは、小型端末を用いて先程の戦闘で交戦したバーネイルの機体映像を確認した。


「なるほど。恐らく、これをベースに更なる新型を造るのは間違いなかろう。戦闘データの詳細は、後で俺の端末にも送っておいてくれ」

「はい」



 時を同じくして、プロメテウス隊は整備兵の手伝いを行っていたが、これには理由があった。

 この日はたまたまベンやマルクなどの一部の整備兵が別の部署へと部品を届けているために不在であり、ラディエス達は定期整備を自分たちで行わざるを得なくなった。


「さてと、隊長さんよ! とりあえずこの機体の整備もしっかりしておいたぜ」

「そうか。それにしてもマルクが不在となっちゃ、仕方ないよな」


 ラディエスは、装甲板を専用器具で補強している。また、普段はオペレーターのアリカも今回は動員され、異例の事態となっていた。


「それにしても、修理してからもダブルチェックした上で、再度破損部分が無いか確認しないといけないのが、非常に苦労しますよね」

「まぁ、そうだよな。これをベンやマルク達のような整備班は毎日やってるからな」

「ですよね……」


 アリカはラディエスの返答に頷きつつ、ハンカチをポケットから出してそれで汗を拭う。


「ラディー、自分の機体の整備が終わったから、手伝ってもいいかしら?」

「あぁ、頼むよ」


 ラディエスはパティにアクティブウインガーの整備を任せる事にした。

 その後も人員不足の整備兵の手伝いは二時間ほど続き、ラディエス達は疲労困憊状態。

 彼らは休憩室に行って、ゆっくり休むことに。


「何……? 火星政府軍のSERTが輸送船団から守り抜いたと。流石だな……」


 ラディエスは自身のタブレットでこのニュースを目にして驚いた。

 火星政府軍のSERTは、戦闘部隊の実力は、地球政府軍以上に優れているという者もいるほどである。


「おい、どうした? ラディエス」

「ジュノー大尉、これちょっと見てくださいよ」


 彼はジュノーにそのネットニュース記事を見せた。


「ふぅん……。火星の方でも頑張ってるんだな、あいつら」

「あいつらって……、ジュノー大尉の知り合いなんですか?」

「まぁ、そんな所だな」


 ジュノーは指で軽く鼻をこすり、得意気な顔をする。


「いつからの仲なんです?」

「幼馴染でな。これで相手が女だったらどれだけ良かったことか……、なんていうのもアレだが、マーティーはいわゆる文武両道の優等生。対して俺はイマイチからっきしな劣等生。対照的だったがアイツとは馬が合ってな」


 マーティーと話していた時の事を思い出してか、自然と笑顔になるジュノー。


「でも、仲いいならいいじゃないですか。今でも連絡は取ってるんですか?」

「たまにだな。ごくたまに……。お互い電波の状況が良くなくて、映像が乱れるのはしょっちゅうよ。元気かとか、お互い死なないように頑張ろうなとか、いろいろ話すぜ」

「あぁ、そうなんですね」


 その後も彼らの安息の時は続くかに見えたが、突如敵襲警報が鳴った。

 彼らは至急攻撃態勢に入る。



 敵戦闘部隊は、ラディエス達が出撃する頃には基地の方へと肉薄していた。

 そのため、決して油断できない状況下にあったのだ。


「アクティブウインガーにはストライクタイプのバックパックを付けて戦闘に参加させるように! アリカ、準備は出来てるか?」

“はい。出撃スタンバイ完了です! 遠隔操作システムも異常なしです”

「なら良し! 出撃準備も整った事だし急いで出るぞ!」

“了解!”


 こうして、彼らは基地上空での激しい防衛線を繰り広げることになった。

 ラディエスはバックパックをブーストタイプ、両肩・両腕をストライクタイプ、両足はディフェンスのものを取り付けて戦闘に挑んだ。


“ジュノー大尉、万が一基地にまで敵機が来たら頼みます!”

「任せな、ラディエス。俺が簡単に沈めてやるさ」


 ジュノーは意気揚々とした表情で操縦桿を握る。


“隊長さんよ、とりあえず指揮を”

「ひとまず俺は上空で先制攻撃を仕掛ける。パティとゼナードは後衛を頼む」

“分かった”


 そして、ラディエスは自機の装備している銃火器で敵部隊を殲滅しようと試みる。


「よし、どこからでもかかって来い!」


 両肩と両腕のミサイルポッドやキャノン砲がけたたましく唸る。


「何ィッ……、グハァッ!」


 敵部隊はあっという間に撃墜されていくが、撃ち漏らしがあった。


「まずい! このままだと基地が……」

“ラディエス! 俺達に任せな!”


 ジュノーの勇猛果敢な声が通信ウィンドウ越しに響く。


「ジュノー大尉! 任せます!」


 ジュノーは助走をつけて宙へ跳び、バーストナックルで機体を一機屠った。


「アンディ! もう一機は任せる!」

“了解!”


 さらに部下のアンディがビームライフルで敵機を狙い撃ち、撃墜。

 戦闘はあっという間に終息した。



 戦いが終わったものの、ラディエスの胸の中では、何とも形容しがたい暗い霧が渦巻いていた。


「この不安は一体なんだ……。なんだっていうんだ?」


 ラディエスのその不安とは──

 それは自身にも分からぬものであった。


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