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第十二章•原点

………ここは………


白い光が満ちた世界にーー紅は立っていた。

暑くも、寒くもなくーー静謐な世界。


………〈夢〉だ………


そうーー前にも見た〈夢〉ーーその〈夢〉のなかで、〈パドール〉とマル花王の声を聞きーー真白な濃霧に包まれたような、森厳なる光の世界にーー〈金色のシルエット〉が、現れたのだ。


けれどーーー


紅の瞳が、足下を見るーー


「前とちがう……」


踏みしめた、独特にやわらかな感触ーーまるで清澄な朝露を抱いたような、深緑の苔の絨毯が、映るのだった。

とーー視線が、美しい緑に縁取られた、白い長靴にとまるーー

見覚えがあった……一体、どこで見たのだろう………

刹那、紅の瞳がはっと見開く!

「なんでっ!……」

身に纏っている〈衣装〉の存在が、手がかりの印を押したように、目に飛び込んでくるのだった。


鮮やかな赤の生地に、赫々たる宝石たちーーごく薄く、透けて見える、絹の長く雅びな袖が映えた上衣には、〈神恵ノ国の紋章〉と〈火の模様〉の金糸の縫い取りが、きらきらと光り輝いていた。


感じた気配に、紅の顔が前へ向くーー


………っっ!………


息を凝らした視線の先ーー白い光のなかから、美しい〈鹿〉のすがたが、現れたーーー

艶やかな赤毛に、立派な枝角をした雄鹿ーーだが、その角は金色に輝いてはおらず、瑠璃色の目の縁取りも見えず、からだの大きさも、あの〈夢〉のなかで見た〈パドール〉のシルエットより、小さく感じるのだった。


「〈サウ•ゴーン〉……」


対していた〈神獣〉が、ゆっくりと向きを変えるーーー

どこまでも神聖にーー深く澄んだ静寂と、厳かな空気ーー感ずる匂いはなく、真白の光に満ちた世界ーーー

それは不思議な光景に、やわらかな苔の絨毯の上を進んでいく〈サウ•ゴーン〉のあとに、紅は静かについていったーーー

古からの息吹を孕んだ苔たちを、長靴に傷つけ潰してしまうのではないかーーという不安は、ためらいながらも足を進めてみて、その繊細な見た目に反し、まったく変化がないことに、紅はたとえ〈夢〉のなかといえども、心の内ほっと安堵するのだった。


どれくらい、歩いたのかーーやがて〈神獣〉が、ゆっくりと止まる。


そして、再び、向かい合うのだった。

周りを包んでいた光が、どこからか吹いてきた、清しい風に、溶け流れていくーーー

だんだんとーー開けてきた視界にーー紅は、息をのむ……!

顔を右へ向ければーーそこに、同じく美しい赤毛の鹿を前にして、渦ーー青ーー鼓ーー宿ーーのすがたが、あったのだ。

端にいる、宿だけは枝角のない雌鹿に、あとの三人は、紅と同じ、雄鹿であった。

やはりみな、それぞれの〈衣装〉を、身に纏っていた。

「えっ! なにこれっ! 全員集合じゃん!」

聞き慣れた、興奮した渦の声が響き渡る!

「すごい……みんなきれい……」

宿がまるい目をぱちぱちと、漏らすのだった。

「感心してる場合」

青が冷たく放つ。

「どうしてサイズが……ぴったりなんだろう……」

戸惑い、半ば怯えたように、鼓がつぶやく……。

「私さ、肩幅けっこうあるんだけど、これ測ったようにばっちしだわ!」

渦が親指を立てて言う。

「二度目に言うけど、他に考えることがあるでしょ」

冷ややかな声が通る。

「そりゃ、そうだけど……」

渦の目が、対する〈神獣〉を見る。

それはなかなかに、異様な光景ーーそれぞれの前に向き合う、気高き〈神獣たち〉は、まるで微動だにせず、静謐に黙して、5人のやりとりを見守っていた。

「じゃあさ、ひとまず、青が今考えてることを言ってみてよ」

視線を落ち着き払った少女へもどし、渦が興味を滲ませた笑みに聞く。

短い沈黙が流れたーー

「王妃の部屋にあった〈衣装〉と〈長靴〉は、それぞれサイズが違った」

静かな声が響く。

「たしかに……紅ちゃんと青ちゃんは背が高くて、渦ちゃんは中ぐらいで……私と鼓ちゃんは低いのに、みんな袖も裾もピッタリ……」

宿が改めて、一人ずつ確かめるように見ていき、恐る恐る言葉にする……。

強張った紅の顔も、頷くのだった……。

「青の抜かりのなさ、やっぱさすがだわ。ーーってことは、ありえないようなありえる話に、例の〈夢〉のなかで着てたときに、サイズを合わせた?……とか?……」

考えているときの癖に、渦は腕組みをして、握った拳を顎にぽんぽんとあてながら、言うのだった。

「でも……そんなことって……これを実際に作ったのは、魔法じゃなくて人でしょ……」

紅が焦るように言う。

「なに慌ててるの。 〈衣装〉のサイズがひとりでに変わろうが、いい加減驚かずに認めたら」

青の鋭い目と声が、突き刺すのだった。

「だって……」

「確かに、作ったのは人だろうけど、前の王様も誰も、一人ずつの細かなサイズまではわかるはずもないから、すべて同じサイズで作ったんだと思う。ーーで、その〈衣装〉のサイズが、こうしてぴったり合うように、魔法の力で変わった」

「こっちは真剣なんだから、どうせ論破するなら、人をからかわずに真面目に答えてよ」

「そっちこそ、至極丁寧に説明してあげたのに、また自意識過剰ってわけ」

「ちがっ……」

「まあまあ、二人とも落ち着いて」

険悪な空気にーー睨み合う紅と青の間に立つ渦が、苦笑いに声を放つ。

「驚いたり驚かなかったり、信じたり信じられなかったりは、人それぞれだよ。 だって、これだけ顔も、身体のサイズも、みんなバラバラなんだから、当たり前じゃん。 どっちが悪いわけでも、良いわけでもない。 だからさ、大切なことは、そもそも違う相手への尊重と、理解しようとする気持ちだね」

渦の明るい声が消えーー満たした静寂に、ぱちぱち……と、見れば鼓が、その瞳を潤ませ拍手していた。

「ありがとう、ありがとう」

渦が満面の笑みに、両手をあげて応える。

「調子に乗らないで」

二人の間に立つ青が、刺すように相手を見るのだった。

そのときーーー

「みんなっ! 左見てっ!」

響き渡った宿の声に、みなの視線が、伸ばされた少女の指先を辿るーー

反対側の端にいる、紅を中心とした、その左側ーー枝角のない、雌の〈サウ•ゴーン〉を前にして、ナリ花王とサザのすがたが、現れるのだった。

王とその第二側近は、この摩訶不思議に、夢幻の場へたどり着いたことを、畏れと信じられぬ面持ちにーーさらに、先代の王の思いが宿る、〈特別な衣装〉を身に纏った、神々しい〈5の守護神〉のすがたに、さらなる驚きをもって、瞳を大きく……息をのんでいた……。

「あれ! 部屋の外を見張ってるんじゃなかったの!」

すかさず渦が、嬉しそうな声を放つ。

ごくりっ……と、生唾を飲み下したサザが、失った声をとりもどすように、乾いた唇を湿らし、口を開いた。

「……はい、もちろんでございます。 交代で見張りについておりました。 今はハスギとツサギが、みなさまのお部屋の外におります。 わたくしとセオギは、仮眠をもらったところでして……」

「ツサギさん……」

宿がつぶやき……紅たちの視線が向くと、耳を赤くし、さっと俯くのだった。

「……みんなは……本当に……みんななのかな……」

鼓が、まだ信じられぬように漏らす……。

「あー……なるほどね。 本人じゃなくて、自分の〈夢〉のなかでの、相手なのかなってことだよね」

渦の言葉に、鼓が頷く……。

「それは〈夢〉から覚めなきゃ、確かめられないでしょ」

青の冷ややかな声が通る。

「もし本人たちであるとすれば、考えられることは、全員が寝たところで、全員の〈夢〉が、〈神獣〉の導きに、こうして一つに繋がった。ーー誰かさんは、ずいぶん遅くまで、起きてたみたいだけど」

紅の瞳がはっと、少女を見るーー

「なんだ! 青も起きてたんだね! 盗み聞きしてないで、こっちに来ればよかったのに!」

渦が陽気に言う。

「興味ないし、眠りの邪魔だっただけ」

青が前を向いたまま、冷淡に返す。

「全然気づかなかった……」

「私も……」

鼓と宿が、そろってつぶやく……。

「いびきをかいて、よく寝てたからね」

青の細い目が、隣に立つ少女へ向けられるーー鼓は白い顔を、耳まで真っ赤にするのだった。

「こらこら、青さんよー。 どうしてそうすぐに、イジメるかね。 鼓、私だっていびきをかくし、なんなら歯ぎしりもするし、全然気にならなかったから、大丈夫だよ」

呆れたように相手を見た渦が、すぐさまあたたかな笑みに、落ち込んだ少女を励ますのだった。

訪れたしじまにーー不思議とそうなることが、決まっていたかのように、みなの目が再び、自分の前に対する、美しい〈サウ•ゴーン〉を見つめた。


「……〈神獣〉って、はじめて見た……」


宿が、しみじみとつぶやく……。


「そりゃそうでしょ」


渦が笑って返す。


〈神獣たち〉は、相変わらずぴくりとも動かず、紅はいつの間にか、精緻な剥製にでもなってしまったのではないかと、落ち着かぬ気持ちに、不安を抱くのだった。


「ここは……どこなのでしょうか……」


サザの緊張した声をーー王の声が引き取るーー


「〈サウ•ゴーン〉の住みかでありーー〈ラームの樹〉がある場所ーー」


響き渡った、王の言葉にーー残っていた最後の光が吹き払われーー並んだみなの前方に、〈神秘的な一本の樹〉と、その横に〈金色の枝角を輝かせた大鹿〉が、光芒に照らされ、現れるのだった。

背後には、断崖がそびえ、その下に、洞窟のような穴があいていた。

対していた〈サウ•ゴーンたち〉が、ゆっくりと動き出し、長の傍へと退くーーー


「〈パドール〉……」


ナリ花王の声にーー鮮やかな瑠璃色に縁取られた、太古を宿す圧倒的な黒い瞳が、ゆっくりと瞬かれたーーー


「……《タルフヒアの王》……」


紅の震えた声がーー深く余韻を残し……消えていく………


「〈大きな輪〉のなかの……〈特別な芯〉……」


やっと出会えた……溢れる思いに、気づけば涙を流しながら、宿がつぶやくのだった……。


••••••これは〈夢〉であり、真である••••••


心の内にこだました、幽玄な声ーーー


サザは生まれて初めての感覚に、全身の肌が粟立ち……息をするのを忘れた……。


〈パドール〉のかおが、紅たちへ向くーーー


••••••〈5の守護神〉よ、よくぞ参られた••••••


5人の少女たちの額にーー〈火〉、〈風〉、〈水〉、〈雷〉、〈土〉ーー〈5の印〉が、それぞれ一瞬感、強く輝き、浮かび上がるのだった。


美しい瑠璃色に縁取られた、一種の恐ろしさを抱かせるーーそれは奥深く、己の〈魂〉までも見透されてしまいそうな、黒く大きな瞳が、ナリ花王を見据えるーーー


••••••まもなく、〈結界〉が破られるだろう••••••決着をつけるときが、やってきたのだ••••••


「それって、あの〈夢〉で見続けてきた光景が、現実になるってことだよね」


渦の真剣な声に、〈パドール〉が例の幻想的な瞬きで、答えるのだった。


「……〈夢〉を……」


響いた、紅の声に、みなの目が向くーー

紅は、震えた手を握り……強張る喉をごくりっ……と、今にも消えてしまいそうな、淡い勇気をかき集めるように、深く息を吸う……。

意を決して……《タルフヒアの王》を見つめた。


「〈夢〉を見せてたのがあなたなら……その結末を……知っているのではないですか……」


鳥のさえずりひとつなく、どこまでも深々とした、無音の時が流れるーーー


••••••予知は、極めて難しい••••••真っすぐに正確であり••••••揺れ動き不確かでもある••••••〈夢〉の先、その結末をわたしは知らない••••••そして、たとえ知っていたとしても、それを伝えることはできない••••••


「そんな……どうしてっ……」


必死に、掠れた声が消える……。

紅がぱっと見れば、横に立つ渦の手が、腕を掴んでいた。

少女の強い眼差しは、真っすぐに、〈パドール〉へ向けられていた。


再び沈黙が、流れるのだったーーー


「……戦うほか……道はないのか……」


静寂を破った、ナリ花王の声は、痛みをこらえるような苦悶の表情と共に、掠れ震えていた。


威風堂々たる《タルフヒアの王》は、微塵も変化を、見せなかった。


••••••禍根を断つか、累々たる死屍に、闇黒の世界と果てるか••••••


「殺すか、殺されるかーー」


抑揚のない青の声が、ひんやりと響くーー

「辛いだろうけど、弟はもういないと、思ったほうがいいよ」

5人のなかで弟がいる身に、同情と悲しみを浮かべた渦が、静かに言うのだった。

「……本当に、ダイ……〈大冷〉を倒せば……」

ぎゅっと拳を握りしめた紅が、向けられた視線と己に負けぬように、一度途切れた声を、もう一度発するーー

「すべてが終わるんですか……」

「それ、どういう意味?」

渦の静かな声が、先を促す。

紅は、心臓が激しく打つなか、浅く速くなった息を、深くゆっくりと吸う……。そして、口を開いた。

「ナリ花王の話では、ルイ花王子が〈大冷〉になる前から……ずっと前から……〈湖〉の対岸には、不吉な〈オンギ(黒気)〉があったって……〈スーレン族〉は、それを恐れてたって……」

「たしかに……」

宿が、怯えた声につぶやく……。

「推測するにーー」

青の声が通るーー

「その〈オンギ(黒気)〉が、どういうかたちだかは知らないけど、ルイ花王子と一つになって、〈外邪ノ国の王〉ーー〈大冷〉として、存在していると考えられる」

「そして、〈オンギ(黒気)〉の正体を、ここにいる〈パドール〉は知っているーー」

渦の声が引き取り、強い眼差しと共に、締めくくるのだった。

みなの瞳が、目の前にいる、崇高な〈神獣〉のすがたを見つめる………

息を詰めた先ーー〈パドール〉の瞳が、重厚に瞬かれたーーー


••••••上古の世、《タルフヒア》の玉座は、三つあった••••••〈山〉を統べるわたし••••••〈湖〉を統べる〈シル•カイア〉••••••そして、〈岩〉を統べる〈ハバ•マッオ〉••••••


「はじめて聞く話だ……」


ナリ花王が、強張る声を漏らす。


••••••未だかつて、話したことはない••••••


「……恐れながら、〈ハバ•マッオ〉とは、もしや〈神鳥〉のことでしょうか……」


恐る恐る、サザが口を開く。


「〈外邪ノ国〉がある、〈岩山〉には、かつて多くの鳥たちがいたと……」


緊張が滲み、微かに震えた声に、第二側近が言うのだった。


••••••その通りだ•••••かつては、まこと鮮やかな青と緑に輝いた、偉大なる翼をもった、美しい鳥のすがたをしていた••••••


水底のようなーー深淵の時が包むーー一陣の風が、〈ラームの樹〉を揺らしーー煌めく光の泡粒たちが、舞い上がっていったーーー


••••••今は、〈闇〉こそが、やつのすがたであり、《ザロンゴルの王》として、《マグーン》と名乗っている••••••


「《マグーン》……」


つぶやいた紅は、身体の底から這い上がってきた寒気に、肌が粟立ち……思わず両腕を、強く掴みさすった……。


「一体なにが、あったのだ……」


ナリ花王の、緊張した声が響くーー


••••••悪に陥り、愚行に身を落とした••••••欲という毒に蝕まれ、恐ろしき力を得て、《タルフヒア》のすべてを••••••〈山〉と〈湖〉までも、己の支配下にしようとした••••••そのためにやつは、掌る〈岩〉の地にいた、多くの鳥たちを食い、その聖なる翼を取り込み、呪われた身となった••••••


満たす空気が、確かに重く、冷たくなったーーー

〈パドール〉も、他の〈サウ•ゴーンたち〉も、まるで壮麗な絵画のごとく、じっと動かなかったーーー


••••••わたしと〈シル•カイア〉は、禁忌を犯したやつを、玉座から追放し、闇黒の地と化した〈岩山〉へ、永久に縛りつけた••••••しかし、呪いと引きかえに得た力に、消し去ることまでは、できなかった••••••


「……ルイ花が……その結び目を解いた……」


額に脂汗を浮かばせ、血の気のない顔に、ナリ花王が言う……。


「それが……〈オンギ(黒気)〉の正体……」


紅が、掠れた声につぶやいた……。


「そして、たちの悪い説があっていれば、《マグーン》とルイ花王子が見事合体して、〈外邪ノ国の王〉ーー〈大冷〉ってわけだ。 狙いはひとつになったけど、その分力は増すだろうし、いいかどうかは、微妙ってところだね……」


渦の低い声が響くーー

「そっちにできなかったことを、私たちができるとは限らない」

青が冷然と言い、鋭い目に〈パドール〉を見据える。

《タルフヒアの王》も、古を宿す深い眼に、〈水の守護神〉を見据えたーーー

青の瞳が、すっと離れる。ーー乱れた息に、苛立ちを滲ませ、短く息を吐くのだった。

満たす空気が変わりーーどこか重苦しく、見える景色も、ぼやけはじめていた。


••••••〈5の力〉に、〈白の剣〉を合わせれば、《ザロンゴル》を打ち砕くことができる••••••


ナリ花王の瞳が、はっと見開く……。


「〈白の剣〉とは、〈スーザラン〉のことかっ!……でもあれは、〈湖〉の底に……」


ピンっと立った、〈パドール〉の耳が動くーーー


••••••終わりがきたようだ••••••


ぼうっとしていたサザの表情が、はっとする……。

「ハスギ師……」

「待ってくれっ! 具体的にはどうすればよいのだっ! なにをすれば……教えてくれ……」

ナリ花王の、必死の声が飛ぶ……!

その間にも、みるみるうちにーーはじめと同じ、真白な濃霧のような、森厳なる光が、辺りの景色を包み込んでいくのだったーーー


••••••〈火〉こそが、〈闇〉を払う〈核〉になる••••••


眩く崇高な光に包み込まれる寸前、〈パドール〉の瞳が、〈火の守護神〉を射貫くーーー

紅の心臓がーー〈魂〉の奥深くに、下ろし閉ざした〈籠〉がーー大きな音を立てて、打ち揺れるのだったーーー

紅の手が、ぎゅっと胸を掴む………


「……やめて……できない!……」


紅の苦しげな叫びと共に、白い夢幻の世界がーー遠のいていくのだった………

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