57 鉱山跡の探索
地下鉱山は森を進むと突如として開けた場所にあった。その大きな縦穴は直径100メートルくらいだろうか。テレビやゲームのダンジョンで見たことがある気がする。わたしが勝手にイメージとして持っている鉱山よりは小規模だと思った。
穴は螺旋状に掘り下げられて通路状になっていて歩いて降りられそうだ。
「リンカ、お前にはここの瘴気はどう見える?」
穴を覗き込める淵の側にわたしたちは立っている。ここからは底の方は光が届かなくて普通に見ることはできない。けれど聖女の力によるわたしの視界にはずっと深い場所に濃い瘴気が沈澱した澱のように見えている。
「穴の底、瘴気がとても濃いよ。…まるで魔王城の謁見の間みたいに」
「なかなかのものじゃないか」
「あんなに? それは胸焼けするね〜」
「ほう? 俺の本体の眠る部屋を胸焼けすると思っていたのか」
「いやですね。邪神の瘴気に胸焼けするのであって陛下を悪く言ってなんていませんよ?」
「アレの瘴気は俺の本体から出ているから同じことだが?」
「瘴気で胸焼け…?」
胸焼けなんて表現はじめて聞いた。
「そんないい方ははじめて聞いた」
と思ったのはゲーデも一緒だったようでちらりとそちらを見ると向こうもわたしを見たようで目が合った。けれど直ぐに勢いよく逸らされてしまった。ちょっと傷つく。そんなに勢いよくすぐ逸らさなくても…
地味に凹んでいる横では魔王とヴラドが相談していた。
「人の気配はないな。閉山し放棄された鉱山跡か」
「そんな感じだね〜 でも昌石もちのオーガたちがいて、瘴気溜め込んでる妙な鉱山跡がある。関係ありそうだ。調べてみません?」
「ああ、そのつもりだ。何かしら発見があるかもしれん」
魔王はわたしたちを見回すと指示を出した。
「螺旋状の道を歩きながら穴を降りていく。周囲に注意を向け何か情報がないか目を凝らせ。最終目的地は穴の最新部だ。魔物がいる可能性もある。戦闘になる心構えをしておけ」
「はいっ」
「「御意」」
戦闘については手練れの四天王の二人は遅れを取ることはまずない。あれはわたしに対しての注意喚起だろう。わたしは魔導書から清浄の杖を取り出すと気を引き締めた。
螺旋状の通路を進みながらわたしたちは周囲を見回した。しかし通路上も壁面に当たる箇所もなんの変哲もない剥き出しの岩肌で変わったところは見当たらない。
「待て。そこの壁面を見ろ」
魔王が立ち止まったので、その視線の先の壁面を見るもののなにも変わり映えのしない岩肌がある。
「あ、扉だ。隠蔽の魔法がかけられていたんだね」
ヴラドには扉が見えているらしく、ゲーデもうなずいているあたり見えているのだろう。
残念ながらわたしにはまったくわからない。
「ねぇ、そこに扉があるの?」
「ん? お前は見えていないのか。そういえば聖女は対瘴気の能力であり、魔導士や神官などの魔法には弱いのだったな。それで見えていないのだろう」
はい、なにせ従属の術なんて魔導士の魔法にかかってしまったことがある程度には弱いです。
よくある異世界召喚ものの定番の魔法全属性Sランクみたいなチートと違って、わたしは対瘴気専用の能力しかないのでその他の魔法系統にはからきしなので。ここでもその能力が遺憾なく発揮されているようだ。
「見えるようにしてやろう」
魔王がさっき言っていた壁面に目を向けて少し自身の魔力を動かした。すると壁面が揺らいで、所々錆びついた青銅色の金属扉が姿を現した。
ゲーデが静かに近寄り、両開きの扉の前に立つと剣に手をかけた。もしかして扉の前にかかっている扉と同じ素材だろう青銅色の金属のかんぬきを斬るつもりだろうか。
「っ」
ゲーデが抜刀したけど当然わたしの目には追えずどこを斬ったのかは見えなかった。
しかしその答えはすぐに分かった。
両開きの青銅色の扉が左下から右上に大きく切り裂かれて大きな音を立て砂埃を撒き散らして地に崩れ落ちた。
「よし、中に入る。遅れるなよリンカ」
「はい…」
わたしは金属扉を紙切れのように簡単に切ったことや、中に何があるかわからないのだから静かに扉の向こうに入ると思っていたのに豪快すぎる入室の仕方とか、平然としている魔王一派との感覚のズレを感じたけれど、つっこむのは諦めて素直についていった。
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