56 おもわぬ手がかり
今日から更新を再開します。
長らくお待たせしました。
地に臥したオーガたちは体が崩れ始め、黒い靄となって吹き抜けた風に飛ばされていく。
オーガたちに近づきもしなければ触れることもなく、たった一言でゲーデは自身の持つ右眼の魔眼で倒してしまった。言葉を受けてオーガたちは眼から黒い炎を上げていた。眼を見ることが条件なのだろうか?
「あの魔眼は眼を見ることが条件なの?」
「少し違う。"ゲーデの右眼が見た対象"の命を奪う。相手が格上だろうと格下だろうと関係なくな」
「さっきオーガたちの眼から黒い炎が上がっていたけれど、あれは?」
「…俺たちには炎は見えていない。お前にだけ見えるのかもしれん」
これも聖女の力によるものだろうか。
眼から出ていた黒い炎らしいものは本当の炎ではないのだろう。瘴気や生命力といったものが、内から放たれたのかもしれない。
そう考えると少し怖くなってきたので考えるのをやめた。
「まだゲーデが城に来た頃は"人間の子どもでも強い方"くらいの実力だったのだけれどね。魔眼の性能を調べるために魔物相手に試したことがあるんだよ。スライムからデュラハンまでみーんな魔眼で瞬殺だった。凄い強力な力で戦いに便利だけれど、僕たちもゲーデの魔眼の視界に入らないように気をつけないとサクッとやられてしまうかもね〜 はははっ」
「ははは… 気をつけます」
うっかり味方が視界に入ってしまったら本人の意志でも止められないそうだ。魔眼は強力すぎて諸刃の剣のようだ。
「父親のゲーデの方はさらに凄くてーーーあ」
ヴラドがなおも話を続けようとするも途中でやめてしまう。視線の先には無表情にこちらを見つめるゲーデの姿があった。ゲーデに父親の話を聴かせるのは辛いかと配慮したようだ。
「オレは気にしない。続けて」
なんでもなさそうな表情で首を横に振りながら話の続きを促した。見た感じは大丈夫そうだけれどこちらに気を遣って平気なフリをしているのかもしれないし……付き合いの浅過ぎるわたしには判断できない。
「いいのかい? …なら」
「待て」
「うん? なにかな陛下。ゲーデがいいといっているしこのまま話しても」
「そちらの話は後回しだ。全員オーガどものいた場所を見てみろ」
オーガが倒れていた場所からはもうほとんど黒い靄が立ち上らなくなっていて、遺体が完全に消滅するところだった。その少ない靄の間から何か太陽光で光るものが見えた。距離があるのではっきりわからないので近寄ろとしたら一番近くにいたゲーデが眉を顰めてその正体を言葉にした。
「これは昌石? オーガのすべてから昌石が残されてる」
「なんだって?」
「!」
昌石がオーガの遺体のあった場所にあったということは体内にあったものだろう。昌石、魔物、これに思い当たるのはこの場にいる全員同じだった。
メデューサの少女。瘴気を封じた昌石を自ら体内に入れて魔物化した少女。あの子は聖教会本部の地下の隠し通路の洞窟で襲いかかってきた刺客で、邪神信仰者の一人だった。
「思いの外早く鬱陶しい連中の尻尾を掴めそうだ。行くぞ」
オーガたちが向かってきた方角の森の奥をわたしたちは見つめると、その森へと踏み込んだ。
森の中は魔物が全くいなかった。
オーガがいたというのに、あるいはオーガがいたために、か。
他の弱い魔物はオーガに淘汰されてしまったのかいなかった。それどころか動物もいない。
オーガしかいないこの森は食物連鎖の形態が壊れている。不自然な世界がここにはあった。
あのオーガたちは、恐らく元人間。
なら、どこから来たのか痕跡を辿りたい。
わたしたちは無言で森の中を進んだ。
20分は歩いたと思う。
ゲーデ、魔王、わたし、ヴラドの順で一列になって道なき道を進んでいた中、ゲーデが右手を上げてみんなを静止した。
「深い…」
視界には大きな穴。地下深く掘り下げられた地下鉱山からは大量の瘴気が溢れ出ていた。
「行くぞ。内部を探る」
わたしたちは地下鉱山へと降りて調べることにした。
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