55 死をもたらす瞳
昨日からずれて一日遅れで投稿しました。
待っていてくださった方、お待たせしてしまいごめんなさい。
わたしたちは徒歩で王都まで移動をはじめた。
いや、徒歩というかダッシュで。
「王都にはどのくらいで着くの!?」
馬車でも徒歩でもちんたら移動するのはかったるいとのことで、魔王を先頭にヴラドとゲーデが左右後方に位置取り三角形のフォーメーションで風の如く旧街道を走っている。新しい現在の街道ができてからはこの旧街道を使うものは滅多にいなくなっているために人通りがなく、それこそ人外な俊足を発揮しても目撃されることはない。わたしは魔王の背中におんぶされて、肩にしがみついている。風が顔に当たって目が乾く。
おんぶすると言われ体の密着度的に恥ずかしいため「無理」と最初は拒否した。しかし「なら横抱きが希望か?」と選択を迫られおんぶを選んだ。この男、わたしの反応で遊んでいるに違いない。ヴラドはまたもニヤニヤして眺めていて、ゲーデは驚いたように目を心持ち見開いていた。
「大声を出さなくとも聞こえている。順調にいけば正午までには着くだろう」
「それはフラグのような気がする…」
「旗がどうした?」
「リンカちゃん、白旗を揚げたの? 陛下の背中は引き締まった筋肉で硬くて痛いんじゃない? 僕の背中の方が乗り心地いいと思うんだ。おんぶを交代ーーー」
「寝言は寝て言え色情魔。それと貴様、いつからこいつを名前呼びにした」
「………」
「けっこうです…」
凍てつくように冷たい視線を二人分と、引いたわたしの視線をくらっても彼はにこにこと楽しそうにしている。メンタルおばけなのだろうか。
「ね、ねえ、荒れ果てているけどこの道ってなんで使わなくなったのかな?」
わたしは冷えた場の雰囲気を変えようと話題を振った。旧街道は放置されて長いらしく、古くから踏み固められていただろう土の地面からは草が生えてもはや草原のような生い茂り方。木を伐採して切り開いたであろう空間があるから道だとわかるけれど、標識や案内板は朽ちてしまったのか見当たらない。
「新街道ができたからじゃないかなぁ?」
「なんで新街道を作ったのかな?」
「不便だったからではないか?」
「不便て具体的には?」
「山道を通るとか川に橋がかかってないとか?」
「遠回りだったりな」
「確かにそれは使わなくなるね」
「あとは、危険だとか」
あ。この会話は危険な気がする。
「あの、この話…」
「土砂崩れとか、火山噴火とか」
「治安の悪化、つまりは盗賊団が幅を効かせ商隊が襲われるため」
「さすが陛下。そういう連中を狩る側だっただけあって生息してそうな場所がわかるんだね〜」
「ふん、100は潰したからな。おおよそ見当はつく」
「あれ、冗談だったのだけれど本当に?」
「事実喧嘩や絡んできた癇に障った奴らの根城に乗り込んだのは数限りなくある」
「やんちゃすぎません?」
「たわいないお遊びだろう」
魔王はやっぱり人間時代はかなりやんちゃな感じだったようだ。そんな人怖くて当時に出会ったら目を合わせないようにしていたことだろう。その後に親友のアーサーが矯正して現在の落ち着いた感じになったのだろうか。さすが勇者。
「あるいは、魔物か。こういう森の中を切り開いた街道は、えてして魔物が出現しやすい」
…これはフラグがたってしまったのでは?
なんだか横に広がる繁った森から複数の瘴気の気配が寄って来るのだけれど…
「みんなさがって。オレがやる」
瘴気、つまりは魔物の気配を当然ながら察知したわたしたちはその場に立ち止まり、わたしは地面に降ろされた。そしてゲーデが一人突出して森の方を向き右手を右眼の眼帯に伸ばした。
「いい機会だ。見ておけ、これからゲーデが魔眼を使う」
「! 魔眼…」
ゲーデが保有する右眼の魔眼は彼の父親と同じく死を司る。
森の中から聞こえていた複数の足音の正体である魔物の集団が木々の間から姿を現した。
「オーガか。集団で行動するとは珍しい」
「盗賊団の成れの果て、だったりして」
頭部に角を生やした二足歩行の鬼系の魔物、オーガたちだ。六体いる。小さい個体で3メートル、大きな個体はその頭二つは飛び出ている。大きな身体は筋肉に覆われていて圧迫感が強く、全員気が立っているようだ。鼻息が荒い。うちの一体が近くに生えていた木の幹に手を伸ばすと指をめり込ませて鷲掴みにして地面から引き抜いた。
「うそでしょっ!」
そしてその木をこちらへ投げつけてきた。
その時、ゲーデが腰に履いていた剣を鞘から素早く抜いて横に振り抜いた。あれは剣というより刀のようだ。鞘の中で刀の刃を走らせて高速で対象を切る抜刀術という技だろう。
木は真っ二つに割れてわたしたちの両脇をすり抜けて後方の木々を薙ぎ倒す轟音が響いた。
「もっと静かに品よく倒してくれない? 埃が舞ってせっかくの卸たての服が汚れてしまうよ」
「オレに品を求めるな。倒せば文句はないだろう」
「君のお父君は静かに目標を沈黙させる凄腕の剣士だったのになぁ」
「…なるべく気をつける。それに」
ゲーデは父親の話を出されると弱いようで聞き分けが良くなるみたいだ。お父さんを好きな想いが察せられる。
「つぎで静かになる」
ゲーデは右眼の眼帯を外した。
彼は背中を向けているので目の状態は見られないけれど、右眼に強く魔力が集中されているのが分かる。そして彼は一言口にした。
「死ね」
六体のオーガは急に動きを止めると、二つの眼から黒い炎を噴き出しその場に倒れ二度と起き上がらなかった。
「あれがゲーデが父親から血で受け継いだ力。その右眼を『絶死の魔眼』と呼んでいる」
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