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58 鉱山の隠し部屋

今回残酷な表現があります。

ご注意ください。

立ち込める砂埃を魔王が風の魔法で飛ばすと奥に空間があるのがわかった。日の光が入らないため中は薄暗い。



「あ…」



ゲーデ、ヴラドが気にせずずかずかと入っていく。いきなり入って大丈夫なのだろうか?

中はどうなっているのだろう?

彼らは危険はないと判断したから遠慮がないのか、危険だろうとどうってことないと踏んで遠慮がないのか。

後者だった場合、彼ら基準での''どうってことない"はわたしはまず危険だろう。



「大丈夫だ。来い、リンカ」



するとそんなわたしの不安を察したように魔王が声をかけてくる。

ほんと見た目は唯我独尊タイプなのに気配りできて面倒見がいい魔王様だ。

地に落ちた金属扉を避けながらわたしは魔王の背を追って中に入った。


魔王が灯りとして"ライト"の魔法を使い宙に浮かばせ視界が明るくなった。

そこは学校の教室一部屋程度の広さの空間ができていて、四角い部屋の壁に沿って戸棚が幾つも並んでいる。突き当たりの壁には大きな布地に丸をひし形で囲った邪神信仰者たちの紋章が描かれていた。

間違いなく彼らと関連した場所だ。

ただしこの部屋に人の気配はない。

そしてほこりとかび臭い。紋章入りの布地も黒ずみ劣化している。

ここは誰も訪れなくなって長いようだ。



「狂った神を崇めてなんになる」



魔王が紋章を見ながらこぼした。

狂う前の邪神こと創造神ゲオルギウスが世界中で信仰されていた時代を知る彼には、この紋章は過ぎ去った時代の残滓に見えるのだろう。そしてそれを信仰する、世界の変貌を受け入れなかった人々もまた。



「熱狂的、盲目的に信じてる人がいて、ほかに頭で分かっててもすがらないと生きられないって人もいるんじゃないかな。神様が狂ったことを受け入れられるほどみんながみんな強くなくて… よそ者のわたしに何がわかるって思うかも知れないけど」

「受け入れるには強さが必要、か。俺にはない発想だ」

「…あなたは強いに決まってるもんね」

「当然だ。そもそも神なんぞ信仰していなかったから衝撃を受けたりもせずありのまま現実を受け入れたが」

「なんか想像できる」



わたしなりのつたない解釈に魔王は反論や否定をすることもなく耳を傾けてくれた。



「戸棚には物がないね。もうここは引き払った跡かな」

「あるのはぼろぼろの記録紙がいくつか」

「なにが書かれている?」

「うーんとね。紙が保存状態が悪くてあまり読み取れないのをあらかじめ伝えておくよ。『ベック 27歳 男 商人 口から瘴気石を接種 グール化のため失敗』『バート 50歳 男 剣士 外科手術により瘴気石を埋め込み オーガ種に変化』ーーー」

「まさか…」



わたしは息を飲み、思わず声をもらした。



「どうも、実験データをとっていたようだね。恐らくは人間の魔物化の、ね」

「ここは、邪神信仰者どもの瘴気石を利用した魔物化の実験場だったということか」

「…人間。これだから」



わたしは頭がくらっとした。

なんて恐ろしい場所なのだろう。

それと引っかかったことが剣士、商人、という職業。



「他にも何人も、個人の特徴・瘴気石の接種方法・結果がずらっと並んでいるよ。まったくもって不快だね。やっぱり連中はみなーーー始末してしまおうか」

「ーーーねえ、旧道を使わなくなったの、これが原因かな」



わたしの言葉にみんな察してくれたようで表情が険しくなった。



「ヴラド、他の職業はなんとある?」

「神官、傭兵、魔導士、貴族、騎士、貴族令嬢、貴族夫人、幼児… 旧道を通った者を攫ってきたのかね」

「行方不明者続出で誰も近寄らなくなった、と」

「ひどい」

「最後は討伐隊でも編成されて逃げてこの地を放棄したとでもいったところか」



子どもまでも犠牲にしたなんてこの実験をした人たちは人間の心を持っていない悪魔だ。

絶対に許せない。



「ここはもう得られる情報はなさそうだね。もっと下に降りればまた隠し部屋があるかも」



わたしたちは地下鉱山をさらに降りることにして

その部屋を後にした。


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