45 全部ヴラドが悪い
少々主人公に対する下劣な態度をとる人物がでますが、サクッと退場します。ご了承ください。
彼ら冒険者パーティ・シルバーウルフは中級から上級にと目覚ましい成長をしていた。まだ20歳そこそこの若い彼らは故郷の幼なじみ三人組で、幼い頃から勇者物語に憧れ、いつか田舎町を出て冒険者としてやっていく夢を抱き念願の冒険者になった。
リーダーは剣士のアルフ。
冒険者としての信条は『人助けをすること』。
勇者にはなれなくても勇者の世界を守る志を受け継ぐことはできる。世界にとってはささやかでも自分にできる範囲で誰かの力になりたい。
今日も冒険者ギルドで受けた、近隣の村からのオーク討伐依頼。村を囲む森の中にオークが現れてしまったようで、森に狩りや森の恵みをとりに行った村人が何人も犠牲になってしまったらしい。見事オークの討伐を成し遂げ、気分よく打ち上げの酒盛りを仲間三人でしていた。しかしまさかオークが二体いるとは思わなかった。見抜けなかったのは反省だ。だが冒険者ギルドに情報と違って二体いて死にかけたと抗議したら倍の金額を支払ってもらえたのは思わぬ臨時収入ですっかり怒りの感情は消え去った。我ながら現金なものだ。
「今日は飲むぞ!!」
ガンガン飲み食いしながらお互いの良いところを褒め、悪かった点は幼なじみの気安さでズバズバダメ出しをして口喧嘩をし、労い合っていた。
そんな中、場違いな客が酒場に来た。
お忍びの高貴さが滲み出た若い男。あれは貴族だ。
時々、ある貴族からの魔物のいる地域でしか採取できない薬草の納品依頼を受けている。目の前の金髪の男はその貴族と近い人種の空気感がある。
その男が呼び寄せ続いて入店したのは、長い艶やかな黒髪の美少女。凛とした少々つり目の黒い瞳は、視線を動かして店内の様子を伺っている。動きやすそうな体にフィットした服装からして冒険者なり護衛なのだろう。出るところが出て、締まるところが引っ込んでいる見事なプロポーションに目がいってしまう。長さのある得物を手にしていない様子からして格闘家だろうか。
またさらにその後から10代後半だろう不機嫌そうな青年が入ってくる。右目に付けた眼帯に初見は目がいくが、注目したのはその体運び。重心移動がスムーズで背も一本金属棒が入っているかのように真っ直ぐブレない。若さに侮られかねないが相当強靭な体作りをしている。こちらは腰に剣を佩いているが、そちらもやれそうな雰囲気がある。
貴族の男、冒険者らしき少女、実力者らしき青年。
揃って若く背景はおそらく貴族の依頼者と依頼を受けた冒険者二人。
変わっていて目立つ三人に酒場の中の人間は興味津々だ。みんなこっそり視線で追い、聞き耳を立てている。
ニヤニヤ笑いのタチが悪いと噂のある三人パーティも見ていてまずい雰囲気だ。いかにも金を持っていそうな男をカモとみなしたかもしれない。それにあの美少女の体を舐め回すような視線を向けてもいる。
遅れて入った青年はそんな周囲の好奇の視線に気づいているようでどんどん不機嫌さが増していく。
これは場が荒れそうだ。
「アルフ」
「いざとなったら」
「ああ、助けに入るよな? わかっててくれて嬉しいぜお前ら」
魔導士のシュレと双剣使いのワズは以心伝心で自分と同じく、連中に貴族一行が絡まれそうになったら助けに入るつもりだった。こいつらとパーティ組めた自分は幸せ者だ。
そんな中、動きがあった。
テーブルで会話していた貴族一行は揉めたようで青年がテーブルを叩き立ち上がった。
「茶番に付き合っていられない」
そこに例の三人組が素早く近づいた。
しまった出遅れた!
二人と目を合わせれば力強く頷いたため、俺たちは絡まれたテーブルに向かった。
「よう、貴族のにいちゃん達。揉めてんのか? 俺たちが相談に乗ってやるよ」
「おや、協力してくれるのですか? それは助かります。では一緒に飲みましょうか。僕のおごりです」
「いやいや、ちょーっと場所を変えてもっと秘密の話をしやすい人のいないところに行こうぜ! なあ、そこのお姉ちゃんも一緒に!」
「ここでは駄目なのですか?」
「ここじゃあダメだなダメ。ほーら、そこに行ったら俺たちがなんでも教えてあげるぜ。いいこともワルイこともいろいろとなぁ?」
ゲハゲハと酒臭い息を吐き、ニヤニヤ笑いの三人組は明らかにわたしたちに舐めてかかった態度をとっている。そしてわたしには気持ちの悪い視線を向けてきたため鳥肌がたった。
「さっさと失せろ、クズども」
そんななか、ゲーデが吐き捨てるように地を這うような低い声で告げた。
「ああん? なんだとこのクソガキが」
「オレンジジュース飲んでるお子ちゃまが俺たちみたいな大人に歯向かっていいと思ってんのか!?」
「黙ってろチビ!!」
わたしには壁に向かって飛んでいく何かの残像が見えただけだった。音がしてそちらを見ると漆喰の壁に人が一人突き刺さっていた。
「な、なにをしたてめぇえ…!?」
また一つ残像が見え今度は客のいるテーブルに人が激しく叩きつけられ、テーブルが真っ二つに割れた。
さっきまでその男がいた場をみればゲーデが腰に佩いていた剣を逆手に柄を掴み、鞘がついたまま下から振り上げるところだった。鞘に顎下を打たれた男はその勢いのまま打ち上げられ酒場の天井に突き刺さって動かなくなった。
ゲーデは鞘のついたままの剣を払った。
「チッ、つまらん者のせいで鞘が汚れた」
酒場の中は静まり返り、みんな固まって動きを止めていた。
「すっげー・・・」
なぜか近くに立っていた三人組の一人の呟きだけが響き、わたしは頭を抱えた。
情報収集のために忍ぶどころか大立ち回りして騒ぎを起こしてどうすんの!?
お読みいただきありがとうございます!
おもしろかったと思っていただけたらぜひブックマークや評価をお願いします。
執筆のモチベーションが上がります!




