27 神殿跡を探して
「王女様、ジュリアさんが祈りを捧げていた神殿ってどの辺り?」
「王家の敷地内としか知らん。だが徒歩で毎日王女が通っていたくらいだ。ここから大して距離はないだろう」
魔王も場所は知らないようで辺りを見回している。
同じく周囲を見回しても乾いて草木一つない大地ばかりで神殿らしき建物はない。神殿なら石造りがこの世界は主流なので、何かしら跡が残っていると思うのだけれど見える範囲にはなさそう。
「箱入りだったくせにどれだけ歩きまわっていたんだアイツ」
魔王の舌打ちに苦笑いが浮かんだ。
確かにこう見渡せる範囲に神殿跡がないということはもっと遠くにあるのだろう。そう自由に出歩けないだろう王女様は体力があまりないだろうに。
「ジュリアさん、よっぽどアーサーさんが大切だったんだろうね」
「近場で祈ろうが遠くで祈ろうが同じだろうに手間のかかる…」
「まあまあ、そのおかげで地球の神様と接点がもてたのかもしれないし」
めんどくさそうにしているものの、王女様に対するくだけた言い方に親しい間柄を感じさせる。
なんだかもやもやするけど今は神殿探しをしなければ。
わたしは辺り一面の瘴気を感知する。目で普通に見て見つからないなら、感知能力で調べたらどうだろうと思ったのだ。聖女の力で瘴気ははっきり見え、なければその場所もはっきりわかる。神殿がまだ神の加護があれば瘴気がその場所にはないからわかるはず。
「…瘴気しかないね」
「俺の感知にも瘴気しか引っかからないな。どうしたものか。ここら一帯歩き回って探すなど手間すぎるしな」
瘴気がない場所がなかった。
これは加護がないということであり、神殿に祀られていた神様はもういないのかもしれない。女神ウララの森のように祭壇なり神殿の祭具が無くなっていたり、精霊石が壊れて昌石なり最悪瘴気石に変質してしまっている可能性もある。
瘴気ばかりでもなにか手がかりがないかと思い、より意識して見回すと1箇所気になる場所があった。
「あのちょっと窪んでいるところ…」
「ん? なにか見つけたか」
「瘴気が濃い」
「あ?」
「魔王城の謁見の間くらい濃い」
「…妙だな。この世界において一番瘴気が濃い場所は元凶である邪神の封印された謁見の間だ。なぜこんな場所が…」
「…行ってみよう」
探している神殿と関係あるかはわからないけれど、何かわかるかもしれないと歩き出そうとしたら腕を掴まれた。
「飛んだ方が早い」
「きゃっ」
魔王はわたしの膝裏に腕をいれ、抱き上げて空に浮き上がり城の屋根の先端付近まで上昇して停止した。
「つかまっていろ」
速度を上げて窪地に向かって移動していく。
「落としたりしないからそう怖がるな」
魔王の服にしがみついていたらしい。
高い場所に急に上がったのだから怖いのは仕方ないと思う。
なのに人が怖がっているというのになんだか楽しそうな表情をしていて腹が立つ。
しばらく横移動して窪地が眼下に見えたので地面に降りた。魔王に恨めしい目を向けるもどこ吹く風だ。
「ここか。確かに瘴気が濃い。…転がっている石くれに整形された様子がみてとれる。おそらくはここが例の神殿跡だな」
「ここが…」
直径20メートルくらいの窪地には白い石のカケラがいくつも転がっている。城や離宮、騎士団の宿舎跡には建物が崩れかけとはいえ、大部分が残っていたのにどうしてここには建物の影も形もないのだろう?
その時、背中に悪寒が走った。
ガキンっと刃物と刃物が当たる大きな音と風圧が背後からわたしを襲った。
「誰に手を出している」
低い冷酷な魔王の声が鼓膜に響き血の気が低く。
わたし、背中から何かに襲われた…?
ゆっくり背後を振り返る。
魔王がわたしの背中を守るように立ち塞がり、剣を構えて相手の剣を受け止めている。
「こいつの髪の毛一筋、触れられると思うな。鎧野郎」
魔王は交えた剣を弾き返し突然の襲撃者、首無し騎士デュラハンを睨め付けた。
頭部がない金属鎧の魔物デュラハン、それが周囲の地面からゆらりゆらりと次々姿を現していく。
わたしたちを取り囲むように。
「随分と歓迎されているようだ。リンカ」
「な、なに?」
「俺が鎧どもの相手をする。お前は魔法の結界を張って身を守ってゆっくり眺めていろ」
「え? 一人で戦うの?」
「ここのところお前ばかり働かせているからな。俺にも見せ場を作らせろ」
わたしが連日浄化でがんばっているから疲れさせないための気遣いだろう。…気配り上手な魔王様だこと。
お言葉に甘えてわたしは自分の周りに結界を張った。これで魔物はわたしに触れられない。
「気をつけてね」
「誰に物を言っている」
それもそうだ。魔王にとっては赤子の手をひねるが如くってやつだろう。それならーーー
「お手並拝見しますか」
「はっ 言うじゃないか」
魔王VS首無し騎士デュラハン無限湧きの戦いの火蓋が切って落とされた。
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