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【終章完結】神谷神奈と不思議な世界  作者: 彼方
?章 神谷神奈と番外編 
620/622

神谷神奈と荒れる星喰 前編

 劇場版的なスケールとノリの話。

 少し長いので3話に分けて更新します。


 登場人物紹介


 神谷(かみや)神奈(かんな)

 四方八方に跳ねた黒髪の女子高生。異世界転生者であり、TS転生しており、さらに憑依転生して元の魂と融合した。前世で魔法を使いたくて修行していたせいか、かなりの魔法少女オタクになっている。


 (はやぶさ)兎化(うか)

 黒髪の少女。今年で中学二年生。隼家の長女なので殺し屋として育ち、実力はそこそこ。神奈のことを気に入っていて『お姉ちゃん』と呼ぶ。

 登場する話

 57〜57.1

 196 聖誕祭――クリスマス――

 番外編 元旦――普通のおせち料理を求む――


 王堂(おうどう)晴天(せいてん)

 赤髪オールバックの強面男。神奈と同じ伊世高校の生徒であり、地球人の突然変異らしい。

 登場する話

 58.593 自称王様登場

 65.1 町を守る人々

 11.1章 神谷神奈と政府の秘密

 12章 神谷神奈と七不思議


 天寺(あまでら)静香(しずか)

 空色髪の女性。他人の絶望が三度の飯より好き。性癖が絶望という救いようのない奴。

 登場する話

 4章 神谷神奈と運動会

 69.4 獅子神闘也――人間――

 6章 神谷神奈と魔力の実

 10章 神谷神奈と魔導祭

 11.1章 神谷神奈と政府の秘密


 斎藤(さいとう)凪斗(なぎと)

 狐色髪の男性。魔法が使えるけどそれ以外は普通の男子高校生。実は神音のことが異性として微かに気になっている。

 登場する話

 3章〜3.4章

 69.2 紫――不死鳥――

 10章 神谷神奈と魔導祭

 192〜195


 神野(かみの)神音(かのん)

 かつて大賢者と呼ばれた転生者。現在は泉沙羅という名前であり、時の支配人がかつて住んでいた屋敷に住んでいる。趣味はガーデニング。

 登場する話

 5章〜6章

 10章〜11章

 11.2章〜11.3章

 終章 神谷神奈と自由人


 ゴッデス・GGGGG・クレストリア

 大量の加護を宿す男性。世界トップクラスの実力者。とある宗教を広めており、信者を多く獲得している。

 登場する話

 304 恋物語――打ち上げ花火――

 終章 神谷神奈と自由人


 アスアン

 神音の究極魔法で地球の核を擬人化した存在。

 登場する話

 番外編 七夕――新たな守護者の街歩き――








 宇宙のとある惑星では悪が栄えていた。

 荒れ果てた道を歩けば強盗強姦。危険な薬物の売買。誰かに殺されただろう死体が道端に転がり、悪臭を放つ鳥が屍肉を貪る。

 正に無法。正に地獄。

 見るに堪えない光景がこの惑星ではどこでも見えてしまう。


「団長、この星もダメですね」


「ああ。今まで見てきた星で一番酷い場所かもな」


 荒廃した町を白い集団が堂々と歩いている。

 白い軍服を身に纏い、白い帽子を被り、肌も雪のように白いという白ずくめの集団。彼等は町とそこに住む人々を観察しながら町を渡る。彼等からは住民への隠しきれない嫌悪感が滲み出ていた。


「おい」


 清潔感のない荒れた町で白い集団は目立つ。

 白い集団を目障りに思う者や、金目の物を奪おうと画策する者は多い。今声を掛けてきた緑肌の痩せた男もそういった者達の一人。男の顔には欲望がはっきり出ていた。白い集団の中には女性も居るので卑猥な視線を向けている。


「金寄越せよ。あと、女は真っ裸になれ」


 男は鞘から短剣を抜き、集団の先頭の人物へと向ける。


「やれやれ。腐りきっているな、町も、人も」


「団長、アレを呼びましょう」


 先頭の人物、団長と呼ばれる男は頷く。


「そうだな。目の前の汚物を掃除したら呼ぼう」


「おい何言ってんだお前はよお! 金寄越せつってんだろうが!」


 自分に従わない集団に男が痺れを切らして襲い掛かる。

 しかし、白い集団は男よりも遥かに強い。

 団長は短剣を最低限の動きで躱し、男を空中へと蹴り上げる。さらにそこから仲間が淡い紫の魔力弾を撃ち、男は悲鳴を上げながら魔力弾の爆発で粉々になってしまった。


「さあ、アレを……星喰(せいじき)を呼べ」


「了解」


 集団の一人が空に向かって信号弾を打ち上げる。

 赤い信号弾だ。薄汚れた空に赤が溶けていく。


「よし、脱出するぞ」


 白い集団が去った後、この惑星に怪物が近付いた。

 白いミミズのような単眼の怪物は惑星よりも大きかった。

 怪物が大きく口を開き、惑星を呑み込む。


 誰が最初に名付けたのか。怪物の名は星喰。

 広大な宇宙で惑星を餌とする巨大生物である。




 * * *




 テレビのニュース番組は毎日、多くの事件が報道される。

 強盗。虐待。性的被害。誘拐。詐欺。殺人。自殺。

 毎日世界のどこかで犯罪が行われている。

 真の平和とは、そういった犯罪が消えた世界なのではないだろうか。


「ひゃー、物騒な世の中だよねお姉ちゃん」


 隼家の居間でテレビを見ながら(はやぶさ)兎化(うか)が口を開く。

 彼女に『お姉ちゃん』呼びされる少女、神谷(かみや)神奈(かんな)はスマホで漫画を読んでいるので視線は動かない。一応話を聞いてはいるので返事はする。


「殺し屋が何言ってんだか。物騒な奴等の筆頭だよ殺し屋って」


「依頼されなきゃ誰も殺さないもん。依頼が来なきゃお金稼げないから困るけどね。お姉ちゃんもお金ないと困るでしょ?」


「普通の会社で働けよ」


「幼い頃から殺し屋の修行させられてるのに、今さら普通の会社へ就職しろとか言われてもなあ。お姉ちゃん誰でも働ける仕事とか知らない?」


「私の友達を頼れば就職は出来ると思うよ」


「あー……藤原家の人」


 いくつもの会社を経営する藤原(ふじわら)才華(さいか)に限らず、喫茶店の店長候補に挙がっているレイ、今や大監獄ハーデスの所長を務める天寺(あまでら)静香(しずか)も居る。他にも神奈が頼めば働かせてくれる知り合いは多い。


「じゃあ、私はゴミ掃除の仕事しようかな」


「そのゴミ掃除って普通のゴミじゃないよね? 社会のゴミだよね? 言い方変えてるだけで結局殺し屋だよね?」


「あっ、ゴミといえば今日のゴミ当番はお姉ちゃんじゃなかったっけ?」


「あーそうだ私だわ。私まだ隼家の一員じゃないのに」


「もう家族みたいなもんじゃん」


 最近神奈は一週間に六日のペースで隼家に留まっている。実家に帰ってやることは掃除とゴリキュアコレクションの手入れくらいだ。近々ゴリキュアコレクション含めた荷物を纏めて、隼家に住み着こうかなと考えている。隼家の人間もそれに大賛成している。


 実家は神奈以外誰も居ない。

 親も、相棒の腕輪も、既に生きていない。

 誰との会話も出来ない寂しさを消したくて、隼家への滞在時間が日に日に延びていく。その分だけ実家で過ごした記憶が薄くなっていくが、忘れてしまわないよう頭に繋ぎ止めている。


「ゴミ捨て行ってくるわ」


「いってらっしゃーい」


 神奈は纏められたゴミ袋を持って外に出た。

 膨れた白いゴミ袋はやたら重い。神奈なら問題なく持てるが、重量は約六十キログラム。普通は両手で持ち上げるのも一苦労な重さである。

 近所のゴミ捨て場に着いた神奈は立ち止まる。


「たぶん、他の家のゴミ袋より重いよなあ。何が入っているのやら」


 少し気になった神奈はゴミ袋を開けて中を覗く。


「うおっ!?」


 一番上には頭蓋骨が入っていた。

 ゴミ袋の中に人骨があるとは思わず驚いてしまう。


「ええ……骨ええ……? 骨って燃えるゴミでいいのか?」


 他には折れた刀、手裏剣、苦無など物騒な物もある。全てがそんな物ではなく、ティッシュやお菓子の箱も一応入っている。


「燃えるゴミでいいんだよな? 燃えるよな? うん燃える。高火力なら溶けてなくなるはず。この世のゴミ全ては燃えるゴミ」


 袋の口を結び直した神奈はゴミ袋を捨てた。


「――そこの女、待て!」


 ゴミ捨ては終えたので家に戻ろうとした時、いきなり呼び止められる。

 神奈を呼び止めたのは白い集団だった。

 服も帽子も肌すらも真っ白な見慣れない集団。


「そのゴミ袋の中を(あらた)めさせてもらおう。ゴミの分別は重要なルールだ」


「えっ、いやいや、何お前等。何かのコスプレ? 法月の仲間?」


「我々は星騎士団(せいきしだん)。宇宙の平和を守る組織だ。私は団長のドットリネル」


「目的がでかいのにやること小さいな」


 ゴミの分別は確かに大事だが、宇宙の平和を守るならそれよりもやるべきことがあるはずだ。大きな犯罪を無くせるように活動すべきである。


 神奈は大人しく星騎士団にゴミ袋を渡した。

 星騎士団の団長ドットリネルが袋を覗き込む。


「おい何だこれは。地球人の頭蓋骨が入っているぞ」


「何か問題あんの? たぶん燃えるだろ?」


「愚かな。アトラスコース、教えてやれ」


 ドットリネルがそう言うと、眼鏡をかけた女性がメモを取り出す。


「はい。この地球という惑星の日本という国では、遺骨をゴミ捨て場に捨てるのは違法です。死体、遺骨、遺髪などを損壊、遺棄した場合、三年以下の懲役に処されます」


「マジかよ。知らなかった」


 日本の法律を宇宙人に教えられるとは思わず、神奈は愕然とする。


「我々の惑星では遺骨を粉砕し、海や山に撒いていました。この国では散骨と呼ばれる葬法です。あなたも遺骨を捨てるなら粉状にして自然に撒いてはどうですか?」


「参考になったよ。教えてくれてありがとう」


 神奈にとって物を粉砕するのは大得意だ。

 骨は拳で粉微塵にするか、魔力弾で消し飛ばすことに決めた。しかし処理するのは簡単だが、隼家のゴミ袋に入っていたのだから隼家の誰かに処理してほしいとも思う。


「骨の他には、武器が入っているようだが? この武器は燃えないだろう」


「いや知らない知らない! そもそも私はゴミ捨て当番なだけで、袋の中身に一切関わってないから! 文句言う奴を間違えてるって!」


 神奈が捨てたのはお菓子の箱やティッシュのみ。他の骨やら武器やらは隼家の誰かが捨てたことになる。なぜそんな物騒な物がゴミ袋に入っているのか神奈の方が知りたい。


「どちらにせよ、減点だな」


「……減点? 何それ」


「我々星騎士団は惑星の原住民を採点する。一度の減点で厳重注意。二度の減点で減点原因となった原住民の捕縛。三度の減点で愚かな原住民には滅びてもらう、惑星ごとな」


「なんじゃそりゃあ!」


 唐突に地球人絶滅の危機が迫る。

 たった三度、法を破っただけで滅ぶ。


 法を破るのはいけないことだが、それだけで地球人全てを抹殺対象にするなんて善良な人間からしたら堪らない。自分が法を守っても、他人が破れば殺されるのだから。


「なんて自分勝手な組織だ。地球人を滅ぼさせはしないぞ」


「ならばあと二度減点されないようにするのだな」


 神奈とドットリネルの視線がぶつかり、火花を散らす。


「――ちょっとお姉ちゃん、大声出すと近所迷惑になっちゃうよ」


 張り詰めた空気の中、兎化が割り込んできた。

 マイペースな彼女のおかげで一触即発の空気が緩む。


「兎化! お前の家のゴミが異常なせいで変なのに絡まれたぞ!」


「……あー……えー……近所の佐藤さんおはようございます」


「近所の人じゃないよ! 地球人ですらないよ!」


 肌が白人よりも白く、眼球の白黒が逆の地球人は居ない。

 仮に居たとしても近所には住んでいない。


「見ろ兎化。ゴミ袋に人間の頭蓋骨が入ってたんだけど」


「あっ、これ私の枕じゃん」


「……枕?」


 兎化はゴミ袋の中の頭蓋骨を見て『枕』と言った。


「そう、髑髏枕(どくろまくら)。リアルな形でしょ」


「リアルすぎるよ! え、マジで枕なの!?」


「長く使って寝心地悪くなってきたから捨てたんだよね」


 確かに使い心地が悪くなったら枕は捨て時。

 神奈は髑髏枕を宙に軽く投げると、両手で押し潰す。

 怪力で潰れた髑髏枕はバンッと破裂して、中の羽毛が勢いよく外へ出された。これを見た神奈達は本当に枕だと理解した。


「……星騎士団、減点」


「なぜ我々が減点されなければならんのだ!」


「冤罪かけたからだよ!」


「ふっ、冤罪だと? 頭蓋骨は枕だったらしいが、刀や手裏剣も枕と言うつもりか? この小ささで枕と宣うのは無理があるだろう」


「いやー、枕じゃなくても他の道具だろ。なあ兎化」


 兎化はゴミ袋の中にある刀や手裏剣を見つめる。


「……お菓子だね。蘭兎の奴が食べかけで捨てたんじゃない?」


 疑いが晴れた瞬間、神奈は嬉しさで拳を握る。


「ほら! ほらほらほらあ!」


「ぐぬう、食べ物か。ならば問題はない。しかし食べ残しは感心せんな。食べ物への感謝が足りない者は平気な顔で食べ物を捨てる。貧しさを知ればこんなことはしないはずなんだがな。無駄にしない為に俺が食べよう」


「えー、汚いって。止めとけって」


「そうだよ止めなよ。それ不味いし」


「味は関係ない! どんな味でも俺は感謝する! 星騎士団は高尚な精神を持っているのだ、食べ物を無駄にはしない!」


 ドットリネルはゴミ袋の中から手裏剣を手に取った。


「団長、止めた方がいいですよ」

「腹壊しますって」

「俺は食べませんよ絶対」

「俺も」

「私も」


「部下は高尚な精神じゃないみたいだけど?」


 普通に嫌がる部下達を放ってドットリネルが手裏剣を口に入れる。


「痛っ」


 ドットリネルの口の端が切れて、赤い血が垂れる。

 なんて硬い食べ物だ……とは誰も思わなかった。

 そもそも食べ物ではない。ただの刃物だと全員が察する。

 ドットリネルは魔力を纏った手で手裏剣を握り砕く。


「ごめんなさい嘘吐いて。お姉ちゃんを助けたかったの」


「……兎化」


 善意の嘘なのは神奈も分かる。

 助けたくて口を動かした兎化を責められない。


「でもゴミの分別はみんなやってるから、不燃ゴミ交じったのはお姉ちゃんが間違えて一つの袋に纏めたからだと思う。私は悪くないから許してください」


「おまっ、お前!」


「私は悪くない! 家に帰らせてもらうからね!」


「待てええ! でもお前が悪くないのは本当だよなごめん!」


 神奈は兎化を呼び止めるのを諦めた。


「なあ、減点を取り消してくれないか? 反省するからさ」


「取り消さん。あと二度の減点で地球人を滅ぼす」


「頑固な奴等め……!」


 全て燃えると思って分別しなかった神奈にも非はある。それでも反省の旨は聞いてほしかった。二度と同じミスを繰り返さないと宣言したら、納得して帰ってほしかった。


「ま、まあ、地球人なら大丈夫。平和なところを見せてやるよ」


「ほう、案内するというわけか。面白い」


 神奈は星騎士団六名を連れ歩くことにする。

 減点を受けたが、これ以上減点されなければ問題ない。地球が平和な場所だと見せつければ、星騎士団も地球から出て行くだろう。頭の中にはパーフェクトなプランが浮かんでいた。


 過去に何度か地球や人類滅亡の危機はあったが、最近は大事件に遭遇していない。宇宙人が侵略してくることも、転生者が暴れることも、悪霊や魔法使いに襲われることもない。神奈にとって最近の地球は平和そのもの。問題なんてあるわけがない。


 神奈は星騎士団を観光させながら案内する。

 そんな大事な時、危険な男を発見してしまった。


 オールバックの赤髪。目の下に傷がある強面。屈強な肉体は目にするだけで威圧感があり、周囲の人間が彼を避けて通り過ぎていく。


 しかし何事にも例外があるようで、余所見しながら歩くリーゼントの男が肩をぶつけてしまった。そして一瞥した後、謝ることなく立ち去ろうとする。


「――跪け」


 リーゼントの男の態度が赤髪オールバックの男の怒りに触れた。

 赤髪の男、王堂(おうどう)晴天(せいてん)は自己中心的で傲慢な性格。自分をこの世の王と言い張る彼の固有魔法は、彼の性格を表すかのような能力である。


 〈命令(キングコマンド)〉。

 彼が死ねと言えば、声を聞いた者が自殺する。

 彼が退けと言えば、声を聞いた者が道を開ける。

 彼が跪けと言えば、声を聞いた者が膝を地に着ける。

 リーゼントの男の両膝がアスファルトに倒れ、骨にヒビが入った。


「ぐあああっ!」


「俺様にぶつかったら誠心誠意謝罪しろ」


「うっ、うるせえ! 兄貴に言いつけんぞ! 俺の兄貴は不良グループのリーダーなんだ。泣かされたくなきゃお前が謝れ!」


 ヤクザの跡取りである晴天には何の脅しにもならない。対応を致命的に間違えたリーゼントの男は、顔を顰めた晴天に両足の骨を踏み砕かれた。


「ぐぎゃあああああああああ!」


 制裁を加えた晴天は満足したのか去って行く。


「減点。心が狭い」


「くそっ、初っ端から最悪な奴を見つけてしまった」


 まさか今日、晴天を見かけるとは思わなかった。

 厳しい星騎士団と驕慢放縦(きょうまんほうじゅう)な晴天は最悪の組み合わせ。減点されるのは当然だ。地球人滅亡まであと一回の猶予があるとはいえ、三度目の減点をされれば星騎士団と争うことになるので安心出来ない。


 町をさらに歩いていると子供の泣き声が聞こえてきた。


「うわーん! もう帰るううう!」


「ぷっぷっぷ。ガキの絶望顔は良いわねえ」


 カードショップの近くから幼い子供が走り去って行く。

 幼い子供が先程まで居たのはショップ前の遊戯スペース。そこにはベンチと机があり、カードゲームを行うことが出来る。幼い子供はそこで空色髪の女性と遊んでボコボコにされたらしい。


 邪悪に嗤う空色髪の女性は天寺静香。

 世界中の極悪人を収監する監獄ハーデスの看守長である。


「なんでお前がここに居る! 今は監獄だろ!」


「あら神谷じゃない。その言い方だと私が捕まってるみたいね。囚人を管理する仕事だってのに。自分でも立派な仕事やってると思うわ。世界を平和にする仕事よね」


「その立派な仕事はどうした。サボりか?」


「サボりとは人聞き悪い。息抜きよ、息抜き。たまには休まないと精神が疲れちゃうからね。カードゲームでガキを完封して絶望させて、心を癒やさないといけないの」


「最低な癒し方だな! このドブカスが!」


 天寺と星騎士団の相性は晴天同様に悪い。

 減点待ったなしで地球人が滅びかねない。

 世界を平和にするとか言った彼女が破壊の原因となってしまう。


「悪意は見えるが、ルールに従ってカードゲームをやっているなら罪はない。仕事に息抜きが必要なのも確かだしな。やり方は最低だが」


「せ、セーフだったのか、焦った」


 神奈は安堵した。知り合いで星騎士団の減点を受けそうなのは晴天と天寺のみ。その二人とは既にエンカウントしたので、後は本当に平和な日常を星騎士団に見せられる。満足いくまで平和を見せつけて帰らせるのは簡単だ。


「――ひったくりよおお! 誰か捕まえてええ!」


 目の前で、道を歩いていた老婆が鞄を男に盗まれた。

 全く知らない男だ。神奈の安堵は早々に消える。

 とりあえず神奈は盗人の男に急接近。軽く殴って気絶させた後、男から鞄を取り返して老婆まで届けた。


「ありがとうねえ、お嬢ちゃん」


「当然のことをしたまでです。今後は気を付けてくださいね」


 鞄を受け取った老婆は笑顔で去って行く。


「さて、もう案内出来る場所はない。そろそろ帰ったらどうだ?」


「減点だ。地球人の運命は決まった」


 ドットリネルが冷たく言い放つ。

 神奈はひったくりを即解決して誤魔化そうとしたが、やはり無理だった。頑固な星騎士団は罪を許してくれない。


「天寺! 今すぐ私とこいつらを無人島に瞬間移動させろ!」


「は? 何言って――」


「いいから早くやれ!」


「ああもう、後で説明しなさいよ!?」


 町中で戦闘を行えば人々に被害が出てしまう。

 敵は星騎士団。宇宙の平和を守る組織だ。当然悪人を捕縛出来る実力を持っている。そんな彼等と神奈が戦えば町の一つや二つ軽く壊滅するだろう。


 天寺の固有魔法で神奈と星騎士団は無人島に飛ばされた。

 緑溢れる島だ。戦場にするのは心が痛むが状況的に仕方ない。


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