第96話 記憶
第96話 記憶
飲み会から数日過ぎ、俺は金毛神の元へ通っていた。
仲良くなる為でもあるが、もう一つ目的があった。
「金毛神!お願い!もう一回幻視をかけて!」
「いやよ、それにそんなことに使う物でもないわ」
「もう一度あの世界に行きたいんだ!今度はもふもふしてくるから!」
「そういう問題じゃないわ」
「こいつ言ったら止まらないにゃ」
「はぁ・・・」
金毛神が能力を使う。
だが景色が変わらない。
すると頭の上の怪猫神が・・・
「魚にゃ〜!・・・あれ?」
「お前!私に能力使ったにゃ!?」
怪猫神に幻視を使ったようだ。
「いいなぁ!俺もお願い!」
「はぁ・・・仕方ないわね」
そう言いながら幻視をかける金毛神。
その瞬間、世界が変わる。
そこは前に来た雰囲気とは全く違い、重苦しい雰囲気だった。
「前のとことは随分と違うなぁ。もふもふはどこだ?」
俺は辺りを見回す。突然、吾亦紅が地面いっぱいに生えてきた。
「吾亦紅だ・・・」
「好奇神!」
金毛神の叫び声で引き戻され、抱きしめられていた。
わけのわからない状況だったが、とりあえず嬉しかった。
「何が起きたの?」
「あなたの欲を覗いてみたら、以前とは違う全く異質な空間が広がっていたから流石にやばいと判断して呼び戻したわ」
「あれはなんなの?」
「わからない・・・突然吾亦紅が沢山生えてきた」
「吾亦紅?なんでそんなものが・・・」
「・・・」
俺は頭の中に時折出てくる"俺は俺"と言う言葉が妙に引っかかっていた。
「あなた・・・本当にもふもふしたいだけなの?」
「どう言うこと?」
「私の幻視は"その者の欲を体現させる"能力なの。稀に欲ではなくその者の深層を体現させることがあるのよ。さっきのは多分あなたの深層だと思うのだけれど」
「わからない・・・でも引っかかってる言葉がある」
「教えなさい」
「"俺は俺"」
「・・・」
金毛神はその言葉について考えていた。
「・・・吾もまた紅なり」
「なに?」
「吾亦紅の花言葉は"変化"よ。それに分解すると吾もまた紅なりとも読める。意味は・・・」
俺は黙って話を聞いていた。
「姿形が変わっても・・・私は私、になるかしら」
どこかで聞いたことがあるが思い出せない。何かもやがかかっているような感覚だった。
「いいわ!あなたに興味が湧いてきた!少し調べましょうか!」
仲良くなるために来たが、結果オーライとなった。
「というかいつまで抱き合ってるにゃ?」
「あっ!」
ドゴォン!
金毛神に突き飛ばされた俺は壁にめり込んだ。
「ひどいよ、金毛神・・・」
「ごめんなさい!つい!」
壁から引っ張り出された俺は、さっきのことについて金毛神に質問された。
「あなたの引っかかってる言葉"俺は俺"はいつから引っかかっているの?」
「えっと・・・ちょっと前に創造神たちと神界について話してた時からかなぁ。不思議とその前の記憶がないんだよね」
「どういうこと?」
「気付いたら目の前に創造神たちが居て、頭の片隅にその言葉が残ってた感じ」
「記憶がないのも関係してそうね。どこまで記憶が残ってるの?」
「人間界にある空の休憩所で殞亡神に合ったところまでは覚えてるよ」
「吾亦紅について何か知っていることはないの?」
「人間だった頃に調べたことあるからなんとなくはわかるよ?花言葉と10月28日の誕生花ってことくらいだけど」
「吾亦紅を調べたきっかけは何?」
「俺が生まれた日の誕生花だったからだよ」
「誕生日が同じ・・・偶然かしら?」
金毛神が口を閉じ、考え始める。
「その空白の記憶を取り戻す必要があるわね。創造神たちにも話を聞きに行きましょうか」
「わかった〜」
俺たちは創造神の元へ向かった。
ジ・・・ジジ・・・
「・・・」
神界某所ーー
創造神、案内神そして管理神に話を聞く俺たち。
「あの時は殞亡神に会った後、急に好奇神が『神界に戻らなきゃ』って言い出したんだよ?」
「神界に戻ってからは人が変わったように神界の今後について話していたぞ」
「急に真面目になったのかと思って驚いたな。あの時は」
俺は話を聞いても全く思い出せなかった。
「おかしいわね」
「何が?」
「今のあなたと、創造神の話の中のあなたよ。違いすぎるわ。あなたはそんな真面目に考える人かしら?」
「確かに〜。好奇神って気になったことに全力だよね」
「そうだな。だからこそ我らも驚いたのだ」
「・・・その時の好奇神は本当にあなたなの?」
金毛神の一言でその場が凍りつく。
「ちょっといいかにゃ」
怪猫神が口を開いた。
「私は猫科だから、普通は見えないもの見えるにゃ。多分好奇神が『俺と俺』という言葉が残っている時からだと思うけど、ずっと好奇神の周りに黒い靄があるにゃ」
怪猫神の言葉に全員が驚き金毛神が口を開く。
「なんで先に言わなかったの!」
「いや、好奇神がまた変なことを始めたと思ったからにゃ」
「その靄は今どこにある!?」
「あそこにゃ」
怪猫神が尻尾を指す方向を見ると、金毛神の尻尾を指していた。
「好奇神!尻尾を触りなさい!」
「え!いいの!?」
「構わないわ!でも、触るだけよ!」
「もふもふ〜!」
俺は尻尾に触れようとした。
その瞬間、靄が部屋を包み込む。
ジ・・・ジ・ジジジ・・・ジジ・・・
ノイズが部屋全体に広がる。
その時俺たちの頭の中に『作者神』『吾亦紅神』『1028』『転生』という言葉が流れ込んできた。俺たちは空白の記憶を思い出したのだ。
金毛神を除く者は皆黙る。
「どうしたの!?」
「金毛神・・・俺思い出したよ。空白の記憶を」
読んでいただきありがとうございました!
次回 第97話 謎の整理
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