第92話 吾もまた紅なり
「吾もまた紅なり・・・」
管理神が小さく呟いた。
「なに?」
「いや、吾亦紅を分解するとそう読めるなと思ってな」
「どういう意味なんだろう?」
「わからん。関係があるのかもわからん」
「直接、吾亦紅神に聞きに行こう!」
創造神が提案するが管理神が否定した。
「創造主様、それはできません」
「なんで!?まだ神界にいた時に向かえば会えるでしょ!?」
「・・・いないのです」
「どういうこと!?」
「吾亦紅神が消えた日を境に過去の吾亦紅神の存在も消えているのです・・・」
「じゃあなんで吾亦紅神のことがわかったの?」
「映像では残ってはいませんが、文章として残っていました・・・」
「神そのものが消える?じゃあなんで創造神は覚えていたんだ?」
創造神が俺を見て口を開いた。
「巻き込む力・・・」
「もし、吾亦紅神が好奇神だったとしたら好奇心の力を使えると考えると辻褄は合うよ」
「そうだけど・・・強引すぎない?」
「でもこれだけ好奇神との関係が深くなった以上、偶然では済まされないよ!?」
「待って!もし俺が元々吾亦紅神だったとしたらいずれ俺も消える可能性があるってこと!?」
「!?」
「そんなことはさせない!絶対に!」
だがわからない以上対応のしようがない。
「もう・・・直接会いに行こう!作者神に!」
創造神が真面目な顔で全員に言った。
「でもどうやって!?」
「私が生まれた時まで遡る!そこに作者神がいるはずだから!」
「しかし、それでは過去のあなたと干渉してしまいます!」
「それでもいくの!私は好奇神が消えるのは嫌だよ!」
ジ・・・ジジ・・・
ノイズが走る。怪猫神が反応し、空間が歪む。
作者神が現れた。だが、格好が違った。
それを見た創造神が驚き固まっている。
「吾亦紅神・・・?」
「なんだと!?なぜここにいるんだ!」
その時、吾亦紅神が口を開いた。
「好奇神・・・僕の生まれ変わり・・・もう少しだね」
「どういうこと!?」
俺の質問に答えず、吾亦紅神は消えた。
「うっ!」
「「好奇神!」」
その時俺は激しい眩暈に襲われ、そのまま意識を失った。
???ーー
目を覚ますと俺は何もない空間にいた。
「ここはどこだろう?」
「やぁ、やっと来れたね」
声のする方を見ると、吾亦紅神が立っていた。
「吾亦紅神!?」
「そうだよ?」
『なんか軽いな・・・』
「聞きたいことがあるんだけど」
「何かな?」
「俺の先祖って本当なの?」
「近からずも遠からずかなぁ」
「気になるものは?」
「追求する」
「面白いことには?」
「首を突っ込む」
「猫は?」
「好き」
「金毛神は?」
「もふりたいよねぇ」
「うん、間違いない。俺だわ」
「最初からそう言ってるよ〜」
俺自身だとわかって安心したのか、緊張していた体がほぐれていくのがわかった。
「作者神ってなんなの?」
「今はまだ言えないかな。言っても君が現実世界に戻った時には忘れているよ」
「じゃあ10と28の意味は?」
「10は永遠、2はに、8は∞。つまり永遠に転生を繰り返すって意味だよ」
「なんか単純だなぁ」
「吾亦紅に拘ったのは?」
「花言葉は知っているよね?常に変化を繰り返す。つまり転生。創造神は気付くと思ってたんだけどね〜」
「あぁ、創造神はそういうの無理だよ。バカだし」
「猫に転生したのはなんで?」
「だって猫好きじゃん?」
「それだけ!?」
「それだけだよ?」
必死になって考えていたのがバカみたいに思えてきた。
「魔族になったのは?」
「見聞を広げるためだったけど、忘れちゃったら意味ないことに後で気づいたんだ」
吾亦紅神は笑っていた。
「まぁ安心しなよ。君は自分が異質な存在だと思ってたんだろう?大丈夫。君は君さ!」
「いや〜そんなこと言われても情報が多すぎてねぇ」
「吾もまた紅なり」
「それ!管理神が言っていたことだ!」
「何度姿を変えようとも俺は俺。つまり君も君さ!」
「俺は俺・・・か」
「じゃあそろそろお別れの時間かな?現実世界でも自分を忘れずに貫き通しなよ〜」
そこで意識は途切れ、現実世界に戻された。
「好奇神!起きてよ!」
創造神の呼びかけに、目を覚ます。
「起きるにゃ!」
突然怪猫神のお尻が顔面に向かって迫っていた。
「猫神様?これはなんのご褒美なの?」
「起きたにゃ!」
「よかった〜!目を覚まさないかと思ったよ〜!」
創造神が泣きながら抱きついてくる。
「大丈夫か?」
案内神も心配してこちらを見ていた。
「うん、大丈夫」
「どのくらい気を失ってたの?」
「ほんの数時間だ」
「・・・それはほんのとは言わないんじゃ」
俺は立ち上がり、違和感に気づく。
「何をしてたんだっけ?」
「みんなで神界の事を話してたんだよ?覚えてないの?」
『神界の事?いや、もっと大事な事を話していた気がする』
しかし思い出せなかった。だが頭に唯一残っている言葉があった。
「俺は俺・・・」
「なに?」
「いや、なんでもないよ」
意識の端にふと出てくる吾亦紅神の残滓。今はまだ思い出せないがいつかまた思い出す気がしていた俺だった。
???ーー
「よぉ、おつかれ」
「うぃ〜」
「好奇神はどうだった」
「いい感じに育ってたよ」
「今回の個体は当たりだったか」
「そうだねぇ、これからが楽しみだなぁ」
俺の知らないところで、何かが動き始めていた。
読んでいただきありがとうございました!
次回 第93話 もふろう作戦
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