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第73話 朝っぱらから

二日目ーー

朝はまだ冷え込み、布団から出るのが嫌になる程寒かった。

だが、目の前の亡鎧の顔を見たら起きざるを得なかった。

「なんでこんなに近いのよ」

布団から出ると、怪猫神が頭の上に乗ってくる。

「おはよ〜猫神様」

ぺしぺし。

怪猫神は大きなあくびをしながら尻尾で顔を叩いてきた。

破壊神は昨日の疲れがあったのかまだ寝ていた。

俺は起こさないように、部屋から出ていく。

廊下を歩いていると後ろから声をかけられた。

「お客様!」

振り返るとホテルのスタッフが立っていた。

「なんですか?」

「頭の上の猫はなんですか!?当ホテルはペット禁止となっております!」

「あ・・・いや、これは・・・」

「ぬいぐるみです!」

咄嗟にぬいぐるみと答え、走って逃げた。

「危なかった〜」

「猫神様、人型になってほしいんだけど・・・」

「しょうがないにゃあ」

ボンっ!

煙が晴れると、そこには人型になった怪猫神が立っていた。

その瞬間

ヂリリリリ!

煙感知器が作動してしまった。

「やばっ!逃げろ!」

俺は怪猫神の手を引っ張りまた逃げ出した。

「なんで逃げるにゃ!?」

「この音はまずいんだよ!」

当てもなく走って逃げていると、前から影宰が現れた。

「何かあったのですか?」

「実は・・・」

俺は影宰に今起きた事を話した。

「あなたはトラブルも巻き込むのですか?」

影宰が笑いながら冗談を言った。

「冗談を言ってる場合じゃないよ!なんとかしなきゃ!」

「任せてください」

そしてスタッフに見つかる俺たち。

「あなた方ですか!?危険物を持ち込んでいる不審者は!?」

「なんのことでしょう?」

「煙感知器が動作したのも後ろの二人が原因ではないですか!?」

「何か証拠でもありますか?」

「監視カメラに映ってますよ!」

「では、確認しに行きましょうか」

影宰は淡々と対応していたが、監視カメラの存在を知らなかったらしく、驚いた顔をしていた。そして監視室へ向かう俺たち。

監視カメラの映像を確認する。

スタッフに詰められる好奇神、ぬいぐるみと言って逃げる好奇神、煙を上げながら人型になる怪猫神。

「ちょっと待ってください・・・」

ホテルのスタッフが慌てた表情をしている。

「猫が人に・・・?」

「どう言うことですか!?」

俺は言い逃れは出来ないと思い、影宰を見る。影宰も察したのか黙って頷いた。

「この話は内密にお願いします」

俺はホテルのスタッフにお願いして怪猫神に言った。

「猫神様、猫の姿になってもらってもいい?」

「わかったにゃ」

ボンッ!

煙が晴れるとそこには猫の姿をした怪猫神がいた。

ホテルのスタッフたちは口を開けて固まっている。

「俺たちは神の者です。訳あって人の姿に扮し、人間界に参りました」

「か・・・神・・・様?」

「お騒がせして申し訳ありません。どうかご内密にお願いできますか?」

俺は記念式典で貰った神衣を纏った。

その瞬間、ホテルのスタッフが全員が跪き、手を合わせ出した。

「当ホテルにお越しくださいまして、ありがとうございます!」

「今、支配人をお呼びします!」

「いやっ!ちょっ!そこまでしなくていいんだけど!?」

「そう仰らずに!どうか!どうか〜!」

『なんかめんどくさいことになったなぁ』

しばらくすると支配人が監視室に入ってきた。

「あなた方ですか?神の者というのは」

「はい」

「にわかには信じられませんな。私にも神の御力を見せていただくことは可能ですか?」

俺は怪猫神と一緒に消えて、すぐに戻ってきた。

その時、怪猫神は人の姿に変わっている。

「これでいいですか?」

「おぉ・・・神よ!」

支配人は膝をつき、祈りをしていた。

「じゃあ俺たちはそろそろ行っていいかな?朝食もまだだし・・・」

「おい!料理長に連絡を取れ!最高のおもてなしをするぞ!」

支配人が立ち上がり、周りのスタッフに指示を出していた。

「いや!普通でお願いします!」

「神様にそのようなご無礼はできません!お連れの方も全員特別室へご案内します!」

「頼むから普通に食べさせてくれぇぇ!」

俺の叫びは虚しく響き、結局全員を特別室へ連れていくことになった。

「どういうこと?」

創造神が首を傾げてこちらを見ている。

そりゃそうだ。急に特別室へ向かうことになったのだから。

「また好奇神が何かやらかしたんでしょ!」

太陽神がにやにやしながらこちらを見ていた。

「俺は何もしてないよ太陽神。頭に猫神様を乗せて歩いてたらこうなっちゃった・・・」

「さすが好奇神じゃのう、見事に巻き込みおったわ!」

「神々の皆様!お話し中失礼します!」

支配人の声が聞こえた方を見ると、ほぼ全てのスタッフが跪いていた。

「これから朝食をご用意させていただきます!食したい物があれば何なりと申し付けください!」

「魚食べたいにゃあ」

怪猫神の呟きを聞き逃さなかった支配人。

「おい!魚だ!ありったけの魚料理を猫神様に提供して差し上げろ!」

「わ〜・・・」

珍しく創造神が引いていた。そして全員も同じ反応をしていた。

「支配人さん」

俺は支配人を呼んだ。

「はい!好奇神様!」

「俺たちは普通に食事をしたいんだ。だからそんなに畏まらなくてもいいよ。料理も人間に提供している普通の物でいいから」

「しかし・・・」

「普通にしてくれたらまたこのホテルを利用するかもしれないよ?」

支配人は納得して、普通の朝食を提供してくれた。

怪猫神だけは魚ましましだったが・・・

その後、特別室という部屋を除けば普通の朝食を済ませ、俺たちはホテルを後にした。

支配人だけは俺たちの姿が見えなくなるまで玄関でお辞儀をしていた。

読んでいただきありがとうございました!


次回 第74話 止まれない、止まらない


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