第七章 俺の世界
老人は人生の終わりを迎えていた。
だが恐れていたのは死ではない。
「死後の世界ってどんな所なんだろうな」
そんな好奇心を抱いたまま死んだ男。
そして死後の世界で神と出会った彼は――
「観光していい?」
神界、世界管理庫、魔界、冥界。
見たいものは全部見る。
これは好奇心だけで神々を振り回す男の物語。
管理神まで好奇心に感染していた。
案内神はそう思った。
そして。
その予感は当たっていた。
「見るか?」
管理神が言った。
俺は即答した。
「見る!!」
案内神は頭を抱えた。
「即答か」
「だって見たいじゃん?」
当然だった。
気になるものがある。
なら見る。
それだけだ。
管理神は光へ手を伸ばした。
俺の世界。
俺が生きた世界。
その記録。
光が静かに広がる。
景色が変わる。
神界が消えた。
管理庫も消えた。
気付けば。
真っ暗だった。
何も無い。
本当に何も無い。
「管理神?」
「見ていろ」
管理神が言った。
その瞬間だった。
光が生まれた。
小さな光。
本当に小さな光だった。
だが。
次の瞬間。
世界が広がった。
「おぉ・・・」
思わず声が漏れる。
光が広がる。
星が生まれる。
消える。
また生まれる。
世界が形を作っていく。
「これが・・・」
俺は呟いた。
管理神は頷く。
「お前の世界の始まりだ」
俺は言葉を失った。
宇宙。
銀河。
星々。
何億年。
何十億年。
時間が流れていく。
そして。
一つの青い星で時間が止まった。
「あっ」
思わず声が出た。
「地球だ」
管理神は少し驚いた。
「分かるのか」
「そりゃ分かるよ」
見慣れた星だった。
だが。
誰も見たことのない姿だった。
時間が流れる。
海が生まれる。
雨が降る。
大地が形を変える。
そして。
小さな命が生まれた。
「これが最初?」
俺が聞く。
「そうだ」
管理神が答える。
俺は食い入るように見つめた。
今まで当たり前に存在していた世界。
その始まり。
誰も見たことのない景色。
それが今。
目の前にあった。
気付けば。
時間を忘れていた。
どれくらい経ったのか分からない。
数分かもしれない。
何億年かもしれない。
「どうだ」
管理神が聞く。
俺は即答した。
「最高だね」
管理神は少し笑った。
案内神は嫌な予感しかしなかった。
そして。
その予感は当たった。
「管理神」
「なんだ」
俺は目を輝かせた。
「これ全部見れるの?」
管理神は頷く。
「見れる」
「全部?」
「全部だ」
俺は少し考えた。
本当に少しだけ。
そして。
「縄文時代も?」
「見れる」
「恐竜も?」
「見れる」
「アノマロカリスも?」
「見れる」
俺は立ち上がった。
「最高じゃん!!」
案内神は顔を覆った。
管理神は少し笑った。
やはり。
こうなると思っていた。
その時だった。
俺の視線が地球から離れない。
気になる。
まだ見たい。
もっと見たい。
知らない景色が山ほどある。
管理神はそんな俺を見ていた。
そして小さく呟く。
「なるほどな」
「何が?」
俺は聞く。
管理神は少しだけ笑った。
「お前が面白い理由だ」
「??」
俺はよく分からなかった。
だが。
そんなことより。
気になることがあった。
「管理神」
「なんだ」
「次どこまで見れる?」
案内神は天を仰いだ。
まだ始まったばかりだった。




