第64話 ひ弱な神とマッチョメン
破壊神を見つけた創造神は、椅子の陰から破壊神を引っ張り出した。
「こんなところに隠れちゃダメだよ!早く出ておいで」
「嫌です〜!誰か助けてください〜!」
姿を現した破壊神はこれまた俺の想像の斜め上をいっていた。
俺と同い年くらいの青年で、日弱そうな見た目だった。
「この神が破壊神?」
「そうだよ〜♪さぁ!仕事するよ!」
「嫌だぁ!離せぇ!」
「そんなに重要な仕事なの?」
「すごく重要なの!」
「どんな仕事?」
「この子に似合う女の子の服を見つけたから着せたくって!そしたら、逃げ出しちゃったの!」
「・・・」
その場にいた全員が言葉を失った。
「創造神よ、それは仕事じゃないぞ」
「仕事だよ!私の着せ替え人形っていう仕事!」
俺は破壊神を創造神から放し、庇った。
「邪魔しないで!」
「嫌がることを強制しちゃダメだよ創造神」
俺は普段とは違い低い声で創造神に向かって喋っていた。
その声に驚いたのか、創造神は止まった。
「また昔みたいになりたいの?」
「・・・やだ」
「じゃあやめてあげよ?」
「・・・」
創造神俯いたまま喋らなかった。
振り向くと破壊神は憧憬の眼差しを向けていた。
「大丈夫?」
「ありがとうございました!兄貴!」
「ふぇっ!?」
驚いた拍子に変な声が出た俺を周りが笑い出した。
「ちょっと待って!兄貴ってなに!?」
「かっこよかったです!」
「あ〜うん・・・ありがとう?」
なにやら舎弟らしきものができてしまったようだ。
「創造神、面白いのはいいけど相手が嫌がることはダメだよ?」
俺はいつもの声で創造神に向かった。
「・・・わかった」
ピッ!
創造神の指先が光り、俺の体も光り出す。
「ちょっ!まさか!?」
そこには破壊神に着せようとしていた服を着た俺がいた。
「またかよ!」
「似合わな〜い♪」
「似合わないにゃ」
「お主じゃダメじゃの」
「兄貴・・・カッコ悪いっす」
全員のダメ出しで少し傷ついた俺だった。
流石に似合わなかったのか、創造神はすぐに服を戻してくれた。
「さて、破壊神は見つかったがお主らはもう帰るのか?」
「帰らない!冥界について聞きたいことがある!」
「お、おぅ・・・」
俺の勢いに押され、たじろいだ冥王。
「ごめんごめん。初めて来た場所だから気になっちゃって」
「それで、なにが聞きたいのじゃ?」
「前に案内神に聞いた話だと更生施設って聞いたけど、どれがそうなの?」
「見えてる建物の半分がそうじゃ」
「・・・は?」
見える限り、大小含め数千は超える建物が建っている。
「これの半分・・・?」
「そうじゃ、死者の判決の話は聞いておるの?」
「一応聞いたよ」
「その判決では殆どが冥界へ送られる」
「そうなの?」
「完全に善行を積んだ者は殆どおらんからの」
「まぁここまで言えば、冥界で更生しとる数は予想できるじゃろう」
「・・・」
あの時、俺が神界に行きたいと言わなければここの住人になっていたかもしれない。
「じゃあみんな一生懸命やり直してるんだね」
「そうじゃ。ここは罰を与える場所ではない。もう一度生き方を学ぶ場所じゃ」
「しかしのぉ、ここに来た時は短い更生期間なのじゃが、殆どの死者は期間が伸びるのじゃ」
「なんで?」
「わしのことを子供扱いするからの」
「あ〜・・・」
俺は怖くてその先が言えなかった。
「まぁその見た目じゃそうなるにゃよ」
「猫神様!なんてことを」
「ははは!よいよい。すっかり慣れてしもうたわ!」
「冥王はかわいいからね〜♪」
創造神は冥王に抱きつきながら頭を撫でていた。
『う〜ん・・・ベストショット!』
「それにしても、それだけの数を一人で管理してるの?」
「そんなわけなかろう!流石にわし一人じゃ無理じゃ」
「優秀な側近がおるわい」
冥王が合図をすると、奥から一人の男性が現れた。その男は人間界のスーツを着ており、肉付きのいいマッチョメンだった。
「おぉん!?」
俺と怪猫神が同じ反応になった。
「えっと・・・初めまして?」
「どうも、初めまして。冥王様にお使いしております。亡鎧と申します」
「これはご丁寧に、好奇神と申します」
『見た目と喋り方が違いすぎんか!?』
「人は見かけによらにゃいにゃあ」
「猫神様!?」
亡鎧が怪猫神を睨む。
「・・・猫ちゃん」
途端に顔が緩み、溢れんばかりの笑顔に変わった。
『あ、この人俺と同類だから大丈夫だ』
「こやつはこのナリで動物が好きでな、たびたび人間界の動物園に行きたいと言っておるのだ」
「おっけ!それも組み込む!」
再び溢れんばかりの笑顔になる亡鎧。
「ははは!よかったの亡鎧!」
「はい、好奇神様に感謝します」
「いいよいいよ!楽しい方がいいからね!」
『絶対面白くなるやつだし』
「亡鎧よ、せっかくじゃから冥界を案内してやるのじゃ」
「かしこまりました」
そういうと亡鎧は俺を左肩、破壊神を右肩、怪猫神を頭に乗せ、創造神をお姫様抱っこした。
「マジか・・・」
「この人・・・すごいですね」
「乗り心地悪いにゃ」
「わ〜!お姫様抱っこだぁ♪」
「それでは参りますよ」
亡鎧はそのまま歩き出した。
『この人・・・喋り方は丁寧なのに案内の仕方は豪快なんだな』
読んでいただきありがとうございました!
次回 第65話 冥界探索
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